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黒川博行 0
染井為人 0
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陽はメコンに沈む【電子書籍】[ 伴野朗 ] 残念ながら明らかな独り善がり本でしたな。 しかも筆力不足は否めない。 結局何を訴えたかったんだろうな。 日本人の怪人が、戦争の根幹にいて、終わったら衆・参両議員になって、さらに、東南アジアでフィクサーのような動きをしていたという話なのか。 結城という新聞記者が、CIAから狙われる話も入っているな。 どうもよくわからんのです、この辺の話が。 人は死ぬけれど、なぜ殺されたかもわからないし。 そういう傍流の話をわれわれに分かりやすく書いてもらわないと、なんともならん。 まあそれにしてもこのクール、本当にエスピオナージが多かったですな。 だましだまされまただましみたいな中で人がよく殺されていた。 そういうサスペンスが本作にはないのですよね。 だからちっとも面白くない。 やはり作家の筆力、取材力の差なんだろうね。 多分この時期の作者は書けば売れるみたいな状況、つまり、多作家症候群に陥っていたのではなかろうか。 文学は、作家のみのものにあらず。 読む人と奏でるシンフォニー。 決して独り善がりになるべからず。 これだけは、今の作家に警告しておきたいな。 さて、次のクールは何を選ぶか。(2/27記)
2024.05.29
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第三の原爆【電子書籍】[ 伴野朗 ] しかしそれにしても、世紀末驚くような名作がたくさん書かれていたんだなと今更ながら感心する。 そもそも本作は、長崎の原爆投下では、もう一発の不発原子爆弾があったということから始まり、終戦のどさくさ火事場泥棒のソ連野郎が、北海道を占領するかもしれないなどという動きがあったという話を絡めて、終戦日前後の実にタイトな時間を描いている。 まるで見てきたような、否、見ていたような筆力である。 この作品も一気読了だ。 読み手にとっては、これくらい面白い読み物はないという感じだ。 しかしこと被曝者側からみたら、また敗戦国民から見たら、どうもこんな風な触れられ方はされたくない、と思えるような、ナイーブな問題もはらんでいる。 それはともかく、ミステリーリーダーの直感で、第三の原爆は、なかった、ということで読み進めた。 そこが読み手にとっては一つの大きなポイントだった。 本作の仕組みは、第三の原爆、日本では8.9物体、ソ連では恐竜の卵、をめぐって丁々発止の駆け引きがめぐらされ、それが、北海道占領に至るや否やというサスペンスも生んで、実に素晴らしい読み物になったのだった。 こんな風に素晴らしい作品が次から次へと書かれていた時代もあったんだなと、今更ながら、昔人の文化の高さに驚いている。 何も今の人が劣っているということを言っているわけではない。 しかしきちんとした取材力、歴史考証を経て書かれた作品の良さは、今の作者にもきちんと身に着けてほしいものだ。 文学は、決して感性のみではないはずだ。(2/26記)
2024.05.27
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九頭の龍【電子書籍】[ 伴野朗 ] この作家はなるほど外国語学部中国語学科出身。 中国に詳しい。 フランスに発注した日本の軍艦畝傍に関わってベトナムの宗主権国中国や植民地としたフランスがごちゃごちゃにからみ、終盤大ドタバタ劇を演じた。 そうだねえ。 本作は私の守備範囲ミステリーを越えているので私もいらんことごちゃごちゃ書きたくない。 だがリアルの点で双生児の内の文人の方がフランスに入って下手な尾行をしたり、マラリアで命を落とすなんてえのは朝ドラ好きの読み手にはどうにも許せんこと。 それからアフリカ系の方に対する明らかな人種差別、行きすぎたパワハラなど今の世では考えられない蛮行が飛びかってハラハラドキドキだった。 私自身もそっちの方に気が取られてしまったのだった。 さてこの話がどれだけの真実にもとずくものなのかは、私自身読み手の勉強不足で、なんとも言えん。 そもそも畝傍なんて戦艦本当にあったのかどうかもわからん。 それでも本当に面白い読み物だった。 つまりこの作家には類いまれなる筆力があるということだ。 こういうカのある作家が、今いないもんな。 結局、小説というのは、取材力、筆力、そして、読み手の存在によるものなんだと、つくづく思った。 こういう読み物を読むと私たち日本人がいかに国際オンチかがわかる。 自国の防衛のことなんだから我々はもっと国際情勢を真摯に考えなればならない。(3/25記)
2024.05.21
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五十万年の死角【電子書籍】[ 伴野朗 ] 結構前とはいえ乱歩賞受賞作品だ。 やはりそれなりのなにかが本作にはあったという感じがする。 本作は、北京原人の話。 つまり北京原人の化石で儲けようとする軍部やらなにやらかにやらが中国大陸を舞台に騒ぎまくるという話だ。 その壮大なスケールに則った話の展開が、はっきり言って今の作家にも真似してほしい。 今の作家になくて伴野朗にあるのは壮大感だろうね。 本作の弱点は、人物名が複雑であること、人物の相関関係が複雑であることかな。 そもそも舞台が昭和はじめから昭和28年までの話だから、そりゃあ、壮大感が出るわな。 そして、ちょっとしたトリックですな、A、B、Cと準備してだ、それぞれを順に移して、本物だと思わせることになるのであれば、たしかに精巧な偽物でもそれが本物だと思うだろうな。 さて、この北京原人の化石、残念ながら作中大爆発をして中国大陸の露と消えてしまう。 なんちゅうこった。 それ以上に私が考えたこと。 それは、私の終活テーマが、私は何者?だから、そうして、私とは、気づきであり、サティであり、認知であり、自覚であるなどと考えつつ坐禅をしているうち、それもまた危ういことになってきて、最近は悟りであるとか、生命の大元まで行きついたわけだ。 その結果、本作を読んだら、私とこの北京原人も同じ生命の元から発していることに気づき、それが五十万年もの時を経ているということで、まさに悠久ということを感じてしまって、また別の側面から本作を味わったのだった。(2/19記)
2024.05.18
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