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脳科学捜査官 真田夏希 イノセント・ブルー【電子書籍】[ 鳴神 響一 ] 小説における警察の主体は神奈川県警察である。 今作において書写の警察に対する取材力の高さがうかがわれる。 そんじょそこらの警察小説の作家とは違い例えば、本庁と書いて本部とルビを振るなど非常に素晴らしい取材力だと思う。 ただしその取材は多分この作家の場合警視庁からのものではなかろうかと思う。 なぜなら先述の本庁(本部)とは多分神奈川県警では言わないだろう。 また捜査一課長が警視正としているけれど、これは多分警視庁の捜査一課長のことであり、神奈川県警では警視ではなかろうか。 それはともかく、「そうだ。どこの企業でも組織のフラット化が進んで、オレの会社でも十二あった部が七にまで減らされた。同じ世代で五人が部長の椅子に着けなくなったわけだ。さらにいくつかの部では、部という組織からチームとかいう名前に変えられて、部長に当たる者はマネージャーとなった。実質上は課長級に落とされたわけだ。しかも部長級、課長級は、団塊から下の世代がひしめいている。オレたちが昇進できる余地はない。そもそもいまの不景気を作ったのはあの連中じゃないか。違うか?」 「たしかにそういう考え方もあるけどね……」 「オレは担当課長とかいう、部下が一人もいない役職で飼い殺された。課長なんて名ばかりで残業手当を切るための方便に過ぎない。役職手当も雀の涙でお笑いぐさだ。上のヤツらのエゴさえなけりゃ、オレの実力や能力だったら、取締役にまで出世できたはずなんだ」という動機は、今日の社会を浮き彫りにしているわけで、本作は社会派小説ということができる。 そういう意味で無理に残虐な殺人シーンを織り込む必要はなかったかなとも思う。 本作のヒロインは真田夏希と言う巡査部長である。 巡査部長と言いながら超一流の臨床心理士でもある。 そういう突飛な構想はリアリズムに基づいているならば許容されるものだと私は思う。 確かに臨床心理士の資格を持った巡査部長などということが現実的ではない。 しかしありえないことではない、 つまりそれは現実的だということだ。 捕らえられた真田夏希は、犯人のとの丁々発止のやり取りで心理戦に持ち込み、やがて同僚が助けに来るわけだ。 最初死体を見て気を失うようなやわなヒロインに嫌気がさして、これは思ったより面白くなかろうななどと思っていたが、実は後半そして終盤にさしかかりまるでボレロのように素晴らしい物語性を帯び、そこに社会的な問題や心理性を織り込んで素晴らしい社会派サスペンス作品に仕上げたのである。 作者に快哉である。 いやあ、小説って本当に面白い!
2021.12.27
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脳科学捜査官 真田夏希 (角川文庫) [ 鳴神 響一 ] ミステリー作家がどのくらい取材しているかなんてことはわからないが、少なくともその道で飯を食おうというのならそれこそ本職が知らないことまで知っていなければリアルな作品など書けはしない。 本作にミステリー臭さはないが、警察のお出ましだからそれ相応のリアルさが必要だと私は思う。 しかるに何なんでしょう科捜研に警察官を置くなんて…。 科捜研の女というテレビドラマを観てご覧なさい、沢口靖子は職員ですから。 ただ捜査権がないにもかかわらずときどき脱線していますけれど。 真田夏希はなぜ警部補なんですか。 公平であるべき鑑定になぜ警察官が関わるんですか。 この辺の詰めが甘いとリアリティーを求める読者はそっぽを向くのです。 どうも本作はシリーズものらしい。 果たしてこの先読み続けていくべきかどうか悩んでいる、上記の理由から。 テロリストに警察犬、それにSNSの組み合わせもこれまであった小説とか映画のまんまで独創性を感じられないのが気にかかる。 この先何年後かにこの作品が生き残っていられるのだろうかと心配になる。
2020.07.27
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