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2007.04.29
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テーマ: お勧めの本(7897)
太田光・中沢新一(2006)「憲法九条を世界遺産に」集英社新書.


最近憲法九条に関する論争がメディアで取り上げられることが多いです。
そこでこの本を読んでみました。
太田光の物言いはストレートで心に響くものがあるので,それが正しいか間違っているのかは別として好感が持てます。
著者二人は憲法九条を残そうという立場=護憲派です。
そして本書では,憲法九条のメリットと,改憲したときのデメリットについて書かれています。

まず,宮沢賢治が童話で平和を訴えたのに,宗教的な政治活動にのめり込んでいった背景を手がかりにして,戦前の日本における思想を解こうとします。
宮沢賢治の童話は,誤解を伴ったディスコミュニケーションに閉ざされた世界を乗り越えたいという,強烈な宗教的願望に突き動かされているといいます。
そういう思考と,戦後の平和思想で人々の間に透明なコミュニケーションと繁栄をもたらすものが強烈に求められたこととはつながっています。
そういう意味で,宮沢賢治は戦前の戦争的思考と戦後の平和的思想をつないでいる存在だといいます。


この奇蹟の憲法をむやみに変えるべきではないと主張します。
太田によると,憲法九条というのは,ある意味,人間の限界を超える挑戦であるが,それでも,挑戦していく意味はあるんじゃないかといいます。
僕らが戦うべき相手が何なのかは分からない。
人間のつくり出した神という存在なのかもしれないし,人の心に棲む何かなのかもしれない。
人間はしょせん死んでいくもので,文明は崩壊していくけれど,自分が生まれて,死ぬまでは,挑戦していくほうにベクトルが向いていないと,面白くないといいます。

憲法九条をわざわざ世界遺産にするということは,人間のおろかさを知るためのものとして必要な手続きだといいます。
美しい景色,そこに残された精神的な価値が守られているのならば,わざわざ世界遺産にする必要はない。
最後に,護憲派と改憲派が意見を戦わせることは大事で,どちらの方が戦争に巻き込まれる現実に対する覚悟ができるかに尽きるといいます。
そして憲法九条を守ることで,状況によっては殺される覚悟ができるかといった議論にまで発展します。




サンデーモーニングの「風を読む」でも 憲法九条の改正
護憲派は,アジアの平和のために必要なものであると主張します。
憲法九条は未完の体系であるから,それを完成させなければならないと述べていました。

一方,改憲派は,憲法九条のおかげで主体性が奪われる。世界の国同士の関係は,パワーポリティクスの論理が働いているので,発言力を増すために改憲は必要な作業だといいます。
財界からも,日本企業の海外展開が進んだことで,自衛隊に安全を守ってほしいといった願望があるといいます。
憲法九条はアメリカの安保体制のもとでの単なる理想でしかないので改憲は免れないとします。



このような議論が最近活発になってきたのは,政治的イデオロギー対立が,冷戦の終結でなくなったことがあげられます。
また近年,自衛隊が海外展開する中で,これまでは何とか憲法九条の拡大解釈で行われてきたことが限界にきつつあるというものです。
憲法九条を守る一方で拡大解釈を続ける怖さも認識しておかなくてはならない。
とりあえずこれまでタブー視されてきたものを議論の俎上に載せること自体は重要だと思います。
自分は当初,現実の状況に合わせて自衛隊活動との論理的整合性をもたせるために改憲することはやむをえないと思っていましたが,最近は護憲派の意見に賛成しています。
憲法九条で掲げられた理想を守ることの意味をもっと考えなければならないと思います。
改憲派は憲法九条を他国との関係の中で現実の状況に合わせるために必要だといいます。
しかし,政治的発言力を増して,アメリカと対等に話し合うための手段として改憲することの危険性をもっと考えなければならないと思います。
同時に憲法九条を守ることで,戦争やテロにさらされたときに覚悟しなければならないことも考えていく必要がありそうです。

次回の参院選は間違いなくこのことが争点の一つになるでしょう。

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最終更新日  2007.04.29 12:11:18
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