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2015/02/11
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「長時間労働による疲労の蓄積は、虚血性心疾患などの原因となる高血圧や動脈硬化を促すことが分かっている」と、東京慈恵会医科大学環境保健医学講座教授の柳澤裕之さんは指摘する。

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心疾患、脳血管疾患、がんといった「働き盛り世代」を襲う病気の多くは、生活習慣の問題から起きる。仕事のやり方=働き方に大きく左右されるビジネスパーソンの生活習慣を改善するには、「どう働くか」から見直す必要がある。特に問題になりやすいのが、長時間労働だ

がんは遺伝的な要因が強いのでは……と考える人もいるが、「実際は、遺伝するがんは全体の5%程度の特殊なもので、生活習慣の影響により起きるものが多い」(国立がん研究センターがん対策情報センターセンター長の若尾文彦さん)。

人の体は、およそ60兆個の細胞でできていて、この細胞は日々分裂を繰り返している。細胞が分裂する時に遺伝子のコピーミスが起こると、異常細胞が生じる。こうした異常細胞は、健康な人の体内でも毎日生まれているが、通常は免疫機能により排除される。しかし、免疫機能をすり抜けた異常細胞が分裂を繰り返し、さらに悪性化して増殖することで、がんとなる。「がんのリスクを下げる生活習慣を守ることで、がんにかかるリスクを下げられることが確認されている」(若尾さん)。

運動や食事を改善することはもちろんだが、まずは、残業時間を減らすのが最も大切。自分の体を守れるのは、自分だけなのだ。

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世界保健機関(WHO)などの国際機関は、世界中の医学データを集めて、がんと生活習慣の関係を分析している。そこから抜粋したのがこの表だ。ちなみに、日本人に限定して調べた研究では、「禁煙する」「節酒する」「食生活を見直す」「身体を動かす」「適正体重を維持する」の5項目をすべて守ると、男性で43%、女性で37%もがんのリスクを減らせることが分かっている。これらのデータを、生活習慣を改善するうえで参考にしよう


■【対策1】残業時間を減らす>/B>

残業時間を減らすといっても、ゼロにはなかなかできないもの。では、どのくらいまでなら許容範囲なのだろうか。

「『ひと月の残業時間が80時間を超えないこと』を1つの目安にしたい」と柳澤さんは言う。「80時間を超えると、虚血性心疾患や脳血管疾患などの発生件数が増えることが、多くのデータから示されている」からだ。労働災害認定でも「時間外労働が1カ月平均80時間以上」というラインが重要な基準になっている。

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数々の疫学調査(医学データの分析結果)から、ひと月の残業時間と、突然死の原因になる心疾患・脳血管疾患の発生件数に明らかな相関があることが分かっている。残業時間が月80時間を超えたあたりから突然死の発生頻度が急激に上がり、逆に月45時間以下の場合はほとんど発生しない。残業は1日に2時間に抑えることができればベストだ。(グラフは複数の疫学調査をまとめた結果をイメージで表したもの)

「月80時間」というと、ひと月の勤務日数を20日とした場合で「1日4時間」に相当する。「基本の仕事時間(8時間)」と合わせると、仕事の時間は12時間。残りの12時間から「基本の生活時間(6時間)」を除いた分が、睡眠に充てられる時間だ。「基本の生活時間は通勤や食事、だんらん、入浴などに要する時間で、どんな人でも1日6時間程度とあまり変動がない」。すると、睡眠時間は6時間という計算になる。

つまり、1日の残業が4時間を超えると、睡眠時間は6時間を切る結果に。これでは日々の疲れが取れず、疲労が蓄積するばかりだ。「睡眠時間は削らず、家族のだんらんやリラックスの時間を減らせばいい」と思うかもしれないが、これもNG。「そこを削ると、長期的には心身のバランスを保つのが難しくなる」(柳澤さん)からだ。

やはり、残業時間を減らす以外の選択肢はない。業務効率を上げ、早く帰宅できるよう努力しよう。

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1日24時間のうち、基本の仕事時間(8時間)と基本の生活時間(約6時間)の長さは、毎日あまり変わらない。変動するのは残業時間と睡眠時間。だから残業時間が延びれば、その分睡眠が削られ、疲労の回復が難しくなる


■【対策2】運動を習慣にする

「運動」は、スポーツやエクササイズに限らない。職場の中で歩いたり、駅などでエスカレーターの代わりに階段を使うのも、立派な運動。こういった日常的な身体活動を増やすだけでも、健康作りには十分効果的だ
運動が体にいいことは、誰でも知っているだろう。だがそのうえで、ここは声を大にしてお伝えしたい。運動の健康効果は、多くの人が想像するよりもはるかに強力だ。数ある健康対策の中で、効能の範囲が際立って広いのだ。

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運動の効能としてまず浮かぶのは「脂肪を燃やす」効果だろう。確かに運動はダイエット法の定番。だからこそこれまでは、「運動すると肥満が解消され、健康になる」という理屈で説明されてきた。

だが、近年の医学研究から、運動には「がん抑制」「うつ抑制」「アルツハイマー病予防」「免疫機能アップ」といった、肥満とは直接関係なさそうな効果があることも分かってきた。また、肥満と関連の深い糖尿病のような病気も、運動をすれば、体重があまり減らなくても病気が改善することが判明。さらには、運動は脳に働きかけて学習能力や集中力を高める効果も証明されている。

つまり運動は、脂肪燃焼にとどまらず、広く全身に働きかける強力な作用を持っているのだ。

なぜこれほど広範囲の効果があるのか。詳細は現在研究が進められている最中だが、ここ数年注目を集めているのが「マイオカイン」という体内物質。これは筋肉が作るホルモンのような成分の総称で、筋肉を動かすと分泌され、体内の様々な部位に働きかけて健康を保ち、病気を予防する働きをしている可能性があるという(ページ下、囲み記事「最先端研究watch!」参照)。

では、どんな運動をすればいいのか。ジムに通ったり、ウオーキングやランニングに取り組んだりするのはもちろん理想的だが、その前にまず「椅子に座っている時間をなるべく短くすること」を心がけたい。デスクワーク中心の仕事では、1日何時間もパソコンの前に座りっぱなしという状況も珍しくない。だが、1日に6時間以上座っている人は、3時間以下の人よりも、早死にするリスクが2~3割高くなるというデータがある。「座りっぱなし」は命を縮めるのだ。

そして、できるだけ歩くこと。厚生労働省は、日常生活の中で、毎日合計60分歩くことを勧めている。まずはこのあたりを目安にしてみよう。


【最先端研究watch!】 運動すると、「善玉ホルモン」が出るのか…

「筋肉がホルモンを分泌する」。驚くかもしれないが、現在、米国を中心に、筋肉が分泌するとされる善玉ホルモン「マイオカイン」の研究が進められている。「血糖値を下げたり、がんの発生を抑えるなど、総じて健康に寄与する作用を持つものが多いため、恐らくマイオカインが、運動による健康効果の一翼を担っているのだろう」。マイオカインの機能解明を研究テーマにする首都大学東京人間健康科学研究科教授の藤井宣晴さんは、こう説明する。

研究は近年始まったばかりで、実態は未解明の部分も多い。「『筋肉が出すホルモン』というコンセプトの面白さから、話題が先行している面も。物質を特定したり、はっきりとした効果を証明したりするには、まだ研究が必要」という。

藤井宣晴さん
首都大学東京大学院人間健康科学研究科ヘルスプロモーションサイエンス学域教授。専門は骨格筋と筋収縮の生物学。筋肉が分泌するホルモン「マイオカイン」の機能解明に取り組む。


■【対策3】食生活を改善する

食事も健康を左右する大きな要因。「食べ過ぎを控えたり、栄養バランスを整えたりすることが大切である」というのはもはや常識だが、毎食、厳密にカロリーや栄養素を計算するというのは非現実的だ。そこで頭に入れておきたいのが、東京慈恵会医科大学教授の柳澤さんが提案する5つのポイント。これらを守るだけで、食生活は理想に近づくという。

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外食する場合は、ラーメンや丼物などの単品ではなく、栄養バランスの取りやすい定食メニューがお薦めだ。「昔から言われる『一汁三菜』(ご飯に汁物、おかず3種で構成される献立)を念頭に置き、緑、赤、黒などいろいろな色の食材が食べられるメニューを選べば、栄養バランスも自然と良くなります」。

個別の成分で言うと、「塩分」と、肉の脂身などに多い「動物性脂肪」は、虚血性心疾患などのリスクを高めるので、なるべく減らしたい。

一方、病気のリスクを下げるとされるのは野菜や果物類と、魚などの油成分(n-3系脂肪酸)など。とはいえ野菜や魚ばかり食べるのも、栄養が偏ってしまうというデメリットがある。

毎食が理想的である必要はない。食事のバランスは1日のトータルで考えればいいので、どこかで帳尻を合わせながら、楽しく食べることが大切だ。


■【対策4】酒を減らす・たばこをやめる

最後は酒、たばこなどの嗜好品。健康を損なうリスクが最もはっきりしているのは、たばこだ。肺がんをはじめ、心疾患、脳血管疾患、ぜんそくなど呼吸器系の病気の危険も高める。最近は、うつとの関連も指摘されている。

喫煙をやめれば、こうした病気にかかるリスクは下がるか、横ばいに収まる。喫煙者は禁煙した方がいい。今は禁煙指導をする医療機関も増えているので、受診するのもいいだろう。

アルコール類は、適度な量に収まっていればがんのリスクを上げることはない。目安はアルコール成分で1日23g。ビールなら633ml(大瓶1本分)、ワインなら250ml(ボトル1/3本文)程度だ。「これは蓄積量なので、ワインを1本空けてしまった場合は、飲まない日を作って調整すればいい」(国立がん研究センターの若尾さん)。

ただ、この量を大きく超えると、各種がんのリスクが高まることを覚えておこう。

(出典:日本経済新聞)





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最終更新日  2015/02/11 06:31:43 AM
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