青森の弁護士 自己破産 個人再生 

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2011.11.10
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カテゴリ: 損害賠償
会社社長の詐欺容疑逮捕に関するテレビジョンの報道番組について、社長に対する名誉棄損の不法行為の成立が認められた事例(札幌地裁 平成23年2月25日判決)

「事案の概要」

X1は、飲食店業等を目的とする会社であり、X2は、平成20年10月25日、冬季雇用安定奨励金を詐取したという被疑事実により逮捕、勾留されたが、同年11月14日、不起訴処分となった。
Yは、平成20年10月27日の報道番組において、X2が会社ぐるみの詐欺行為を行ったとする犯人視報道を行った。そこで、X1とX2は、Yの上記報道により名誉を棄損されたと主張して、Yに対して損害賠償を請求した。
これに対し、Yは、上記報道は、警察の捜査担当幹部に対する取材結果に基づき行ったものであり、真実であると信じるについて相当の理由があるから名誉棄損は成立しない等と主張した。

「判旨」

本件報道は、文字表示及びナレーション等で「容疑者」、「容疑」又は「疑い」という言葉が多数回使用され、また、まとめ部分においてX2が容疑を否認している事実を指摘していることを考慮しても、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準にみた場合には、X2が本件被疑事実により逮捕された旨の事実の摘示に止まらず、X2が「A」という人気ラーメン店を経営する一方で、これとは別の建設会社の元社長として、「雇用保険制度を悪用」した「悪質巧妙」な「詐欺」である「奨励金」の「不正受給を繰り返していた」との事実(以下「本件摘示事実」という。)を摘示するものといわなければならない。

そして、本件摘示事実がX2の社会的評価を低下させる内容のものであることは明らかであるから、本件報道は、X2の名誉を棄損するということができる。本件摘示事実は、公訴の提起前の犯罪行為に関するものであるから、公共の利害に関する事実に当たり、また、専ら公益を図る目的で報道されたものと推認することができる。

しかし、Yは、本件摘示事実が真実であることを証明していない。また、Yは、公的機関である警察の本件公式発表及びその直後の中央警察署の捜査担当幹部に対する取材結果に基づいて本件被疑事実が真実であると信じて本件報道を行ったと主張するものの、本件報道は、X2が本件被疑事実により逮捕された旨の事実の摘示に止まらず、本件摘示事実、すなわち、X2が雇用保険制度を悪用した悪質巧妙な詐欺である奨励金の不正受給を繰り返していたとの事実を摘示するものであるのに、Yは、本件摘示事実が真実であると信じたとは主張していない。仮に、Yとしては、本件摘示事実が真実であると信じたのだとしても、その信じるについて相当な理由があるという根拠となるような事情を認めるべき証拠は存在しない。

したがって、本件報道に違法性がなく、又はYに故意も過失もないといえる事由があるとは認められないとしてX2の本訴請求を一部認容したが(慰謝料70万円、弁護士費用10万円)、X1の社会的評価を低下させるような事実の摘示がなされたとは認められないとして、X1の請求を棄却した。

           判例タイムズ1351号201頁






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Last updated  2011.11.10 17:27:21


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