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土地の売買について,土地上にかつて存在した建物内で殺人事件があったことが,隠れた瑕疵にあたるとされた事例 (大阪高裁平成18年12月19日判決)
「事案の概要」
XはYから地続きの2筆の土地(以下「本件土地」という)を購入したが,うち1筆の土地上に以前存在していた建物で殺人事件があったことを後から知ったことから,本件土地には隠れた瑕疵があるとして,Yに損害賠償請求をした。
「判旨」
(1)売買当時本件建物は取り壊されていて,嫌悪すべき心理的欠陥の対象は具体的な建物の中の一部の空間という特定を離れて,もはや特定できない一空間内におけるものに変容していたとはいえるものの,この事件は女性が胸を刺されて殺害されるというもので,病死,事故死,自殺に比べても残虐性が大きく,通常一般人の嫌悪の度合いも相当大きいと考えられること(2)事件は新聞報道もされており,売買から約8年以上前に発生したものとはいえ,その事件の性質から付近住民の記憶に少なからず残っていると推測され,また現に売買後,本件土地のうち事件が起きたほう土地部分の購入を決めた者が,本件土地の近所の人から事件のことを聞き及び購入を見送っているなどの事情に照らせば,本件土地には,住み心地の良さを欠き,居住の用に適さないと感じることに合理性があると認められる程度の嫌悪すべき心理的欠陥がなお存在するというべきである。
類似の裁判例によくみられる自殺ではなく,殺人事件があったことが問題とされ,しかも,売買当時には既に取り壊されていた建物内での出来事であったことが特徴。
判例タイムズ1246号203頁
参考
仲介人は,賃貸借契約につき建物の階下の部屋で半年以上前に自然死があった事実につき説明すべき義務があるか(東京地裁平成18年12月6日判決)
「判旨」
一般に,不動産媒介業者は,宅地建物取引業法上,賃貸目的物の賃借人になろうとする者に対して,賃貸目的物に関する重要な事項を告知すべき義務があるというべきであり,賃貸目的物に関する重要な事項には,賃貸目的物の物理的欠陥のほか,賃貸目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥も含まれるものと解されるが,本件建物の階下の部屋で半年以上前に自然死があったという事実は,社会通念上,賃貸目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥に該当するものとまでは認め難いといわざるを得ず,したがって,賃貸目的物に関する重要な事項とはいえないから,かかる事実を告知し,説明すべき義務を負っていたものとは認め難いというべきである。
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