PR
Calendar
「事案の概要」
Xは,Yに雇用され,工場においてプレス機の操作に従事していたところ,同プレス機に両手を挟まれて両手の親指を除く各四指を失う事故にあった。同事故は,Yが労働契約上の安全配慮義務に違反したことにより発生したものである。Yは訴訟追行を弁護士に委任した上で,Yに対し,債務不履行に基づく損害賠償請求等を求める本件訴えを提起した。一審は弁護士費用も損害と認めたが,原審は弁護士費用を損害と認めなかった。
「判旨」
労働者が,使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起することを余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り,上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害というべきである。
本判決は,労働者が使用者に対し,安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合,その主張立証すべき事実が不法行為に基づく損害賠償請求の場合とほとんど変わらず,弁護士に委任しなければ十分な訴訟活動をすることが困難な類型に属する請求権であることを根拠に,弁護士費用の請求を肯定した。
本判決はあくまで労働契約上の安全配慮義務違反について判示したものであるが,その説示に照らすと,労働契約以外の法律関係において安全配慮義務違反の債務不履行があった場合にもその射程は及ぶと思われる。他方,安全配慮義務違反以外の債務不履行が問題となっている場面については,その射程は及ばないと思われる。
判例時報2144号89頁
ショッピングセンター運営会社の安全配慮… 2013.12.04
ビル内のエスカレーター事故におけるビル… 2013.10.09
訴訟上の和解の成立過程での弁護士の説明… 2013.08.27