団塊定年日記
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最近、YouTube『一月万冊』にはまっている。反権力の視点からの清水有高氏との約1時間のトーク番組で、佐藤章氏とここで紹介する反オリンピックの急先鋒、本間龍氏の番組をよく観ている。 番組の中で本間氏の著書『原発広告』の紹介があったので、現役時代30年、原子力ムラの片隅で仕事をしてきたものとして読んでおく必要があると思い、Amazonで購入した。装丁は真っ黒で本のタイトルは白い文字で書かれており、異色な感じがした。 本の内容の骨子は原子力の安心・安全のプロパガンダのために、電事連、電力会社などを通じ、大量のお金を3.11までは流してきた。広告の内容は時代に応じ、内容が変化し、戦略的によく練られた内容であった。 原子力の高コスト構造に繋がるものであり、電力と広告会社の関係は電力と建設会社、電力とプラントメーカに相通じるものがる。3.11前のプラントのコストは110万kw級で3000億から4000億といわれていた。 原子力は安全・安心というプロパガンダと安全・安心を担保するための品質保証活動、試験検査がおこなわれたが、3.11には有効でなかった。 【主な内容】 1.原子力の歴史と対比しその当時の広告が紹介されており、原子力の出来事を知る のに役立つ。 2.原子力推進関連団体は20以上ある。大手電力9社が1970年度から2011 年度までの42年間で、2兆4000億円を超える普及開発関係費(広告宣伝費) を支出していた。 3.2010年度に東電の普及開発関係費が269億円だったとき、電事連は866 億円の普及開発関係費を投入していたので、その年だけでなんと1000億円を 超す原発PRが展開されていた。 4.「販売促進費」というメディア以外のPRやイベントに使われいた予算も毎年 数百億円あった。 5.すべての原発協賛団体の原発推進予算を積み上げれば、42年間で2兆4000 億円どころか軽くその数倍、少なくとも4~5兆円を超える巨額の広告費が費や されていたと推測できる、 6.さらに、全国44ヶ所の原発立地自治体にはこれとはまた別に電源三法交付金、 電力会社寄付金、核燃料税などの「原発マネー」がこれまで3兆円も注ぎこまれ ている。 7.原発の歴史とは、数えられないほどの事故とトラブルの連続。さらにそれを必死 に隠そうとする隠蔽の歴史。あまりにトラブルが多すぎて隠蔽がままならなくな ったため、巨額の広告PR費でメディアを籠絡し、事故が起きてもなるべく軽微 に報道してもらう必要にせまられた。 8.不祥事発覚前年の2001年に239億円だった予算が2002年は事故隠しの 余波で203億円に減り、翌年こそ213億円と微増ですが、2004年にはほ とぼりがさめたとばかりに268億円に増額された。 9.2002年の不祥事発覚前、原子力ムラの年間目標は放射性廃棄物の地層処分処 理にシフトしていく。 10.原発自体は発電時に二酸化炭素を排出しないが、発電に伴い、行き場のない 大量の放射性廃棄物を発生させるので、エコでもクリーンでもない。しかし、 原子力ムラによる「二酸化炭素を出さないエコでクリーンなエネルギー」と いうフレーズをまとった大量の広告出稿によって、国民は本質的な問題は遠 ざけられていた。 11.有権者である国民の洗脳が原発広告の第一の目的とすれば第二の目的は巨額の 広告費投下によるあらゆるメディアの懐柔である。 12.チェルノブイリ事故の1986年の普及開発関係費年間121億円が87年に は一挙に24%増の150億円に増額され、その後88年180億円、89年 は206億円、90年には224億円とわずか4年でなんと倍額近くになった。 チェルノブイリ事故後原発に対し、懐疑的になった世論を引き戻そうと必死に なっていた。 13.東電の普及開発関係費は1989年に200億円を突破してから2011年の 福島第一の事故まで200億円を下回ることは一度もなかった。 14.表では巨大広告主としてとくにテレビ局に対してにらみを利かせ、裏では活字 メディアの記者たちを接待攻撃で骨抜きにし、ネガティブ記事そのものを書か せないようにもっていく。原発推進方針まで批判する論調にはならないように 電波メディアと活字メディアの両方に対して、二重の防波堤を構築していた。 この防波堤は約40年に渡り機能し続けた。 15.メディア各社の収益源の大半を占めるのは自社の制作物や発行物ではなく、 スポンサー企業からの広告出稿料。 16.テレビ局は収益の実に7割、新聞社でも3割を広告収入に依存。雑誌にいた っては、広告が集まらなければ新雑誌の創刊もできない。 17.メディア各社が最も恐れているのは、売れ行き低下によって広告媒体としての 価値が下がったと判断したスポンサー企業が離れていくこと。 18.スポンサー側の立場にたてば、何億円もの広告費を投入しているのに悪口を言 われるのでは割に合わない。問題はメディア側がそれを嫌って、しなければな らない批判を自主規制してしまうこと。そのもっとも極端な例が原発報道。 19.広告予算が肥大化し、大手スポンサーへの依存度が高まるとスポンサーが意識 するしないにかかわらず、メディア側が勝手にスポンサーのネガティブニュー スを流さないよう、「自主規制」を始めてしまう。 20.1970~90年代にかけて原子力ムラの圧力に抗して様々な反原発番組が作ら れては潰され、次第に原発は「スルーするもの」という雰囲気が出来上がり、 メディアコントロールが完成されていった。 21.「原子力PA(パブリック・アクセプタンス)方策の考え方」に見るメディア 支配の方法。 (1)PA(Public Acceptance)パブリック・アクセプタンスは社会的受容の 意味。 (2)対象を明確に定めて、対象毎に効果的な手法をとる。 ①父親層がオピニオンリーダとなった時、効果は大きい。真正面から 原子力必要性、安全性を訴える。 ②女性(主婦層)には訴求点を絞り、信頼ある学者や文化人等が連呼 方式で訴える方式をとる。 ③不安感の薄い子供向けには、マンガを使うなどして必要性に重点を 置いた広報がよい。 ④対象は父親、主婦、子供(教育も含む)、訴える内容は原子力発電所 の必要性と安全性、食品の安全性、原子力を中心とした科学的知識の 普及など。 (3)頻度 ①繰り返し繰り返し広報が必要。繰り返し書くことによって、刷り込み 効果が出る。 ②短くともよいから頻度を多くして、繰り返し連続した広報を行う。 (4)時機(タイミング) ①タイムリーな効果は効果大。定期的に出ているコラム広告などは、 効果は小さい。 ②国民の関心が原子力に向いている時期に広告すれば国民は注目する。 ③事故が発生したときは、国民の関心が高まっている。原子力広報の タイミングは最適。 (5)内容(質) ①広報は”危険だ”を前提に置いて、徐々に安全性を説いていく方が よい。 ②訴求点をストレートに出す。ごまかしてはいけない。 ③情緒に訴えるやり方は避ける。 ④原子力には、隠されたものというイメージがある。堂々と正面から 訴える。 ⑤一般人が信頼感をもっている人(医者、学者、教師など)からの メッセージを多くする。 (6)手法 ①放射線や放射能が日常的な存在であることを周知させる必要がある。 ②安全性や生活との密着性を機会ある毎に直接的に訴えていく。 ③利用実態をオープンに知らせる。 ④原子力広報はまず”安全だ”と打ち出すのではなく、”核分裂という 現象は危険だその危険をどう安全に変えているか”という手法を探る。 ⑤世の中に危険でないものは無いのに、原子力だけは「安全だ」という こと自体おかしい。 (7)広告 ①国民の反対が出るくらいの、アピール度の高い、強烈な広告。 ②国民を一つの対象として広報効果を上げるのは難しい。 ③漠然とした情報の垂れ流し的広報は無意味。 ④イメージ広告はやめて、情報をきちんとダイレクトに出す。原子力は 化粧品の広告と同じ調子でやるべきではない。 ⑤必要性を訴える場合、主婦層に対しては現在の生活レベル維持の可否 が切り口となる。電力会社や関連機関の広告に必ず”1/3は原子力” を入れる。小さくともどこかに入れる。いやでも頭に残っていく。 ⑥「エネルギーの三分の一は原子力」というスローガン訴求はあらゆる 広告で徹底され、完全に定着したと言える。 (8)ロビーの設置 ①原子力に好意的な文化人を常に抱えていて、何かの時にコメンテータ ーとしてマスコミに推薦できるようにしておく。 ②原子力では反対派の人が多い。高木仁三郎氏は最も有名なコメンテイ ター。 ③数名からなるロビーをつくり、コメンテイターの養成につとめる。 ④1990年代以降、「原発文化人」の育成を大々的に展開、各種メデ ィアに華々しくプッシュしていく。 (9)活字メヂィアの活用 ①パブリシティ広報がベスト。素材の提供をして、あとの料理の仕方は まかせる。「正しい知識」の押し売りはだめ。停電は困るが、原子力 はいやだという虫のいいことをいっているのが大衆。 ②反対派が出す書物に対して推進派の手に成る書物は絶対量が少ない。 (10)映像メディアの活用 ①癒着排除のため、毎年業者を変えて工夫をすることが必要だ。予算を 処理するだけのようなPAをやっても意味がない。 ②テレビで討論会、対談、講座などを行う(政府提供では視聴率が悪い ので工夫を要する。)まじめで面白い番組なら人はついてくる。 原子力を、政治経済、国際情勢など時局に結びつけてやる方がよい、 ③クイズ番組に科学技術庁関連の問題を提出し、その中にエネルギー ・原子力を盛り込む。 ④単発ドラマを制作・放映する。原子力は”事故”で映画の対象になるが、 もっとプラスイメージでドラムの中に入れる工夫をする。 ⑤ドラマの中に、抵抗の少ない形で原子力を織り込んでいく。原子力関 連企業で働く人間が登場するものといったものでもよい。原子力を ハイテクの一つとして、技術問題として取り上げる。テレビでエレク トロニクスは技術紹介番組としてよく取り上げられる。なぜ、原子力 は取り上げられないのか。そこには、懸命に取り組み、汗を流してい る人もいる。 ⑥ドキュメンタリー的番組を制作・放映する。NHKが時々やるが、 NHKのは批判色が強かったり、くせがありすぎる。 ⑦アニメマンガ番組を制作・放映する。テレビでのアニメのアイデアが 不足。 ⑧現在のようにニュース番組の視聴率がよい時代には、国会議員や役人 がテレビ出演するチャンスも多い。その機会を大いに利用する。 テレビ局に積極的にアプローチし、自らニュース番組への出番を作る 努力をする。 科学技術庁記者クラブのテレビ各社の記者と話し合ってみる機会を作 る。 ⑨事故に対して関係者がどのように対応したか、といったようなドキュ メンタリー番組を制作・放映する。事故を側面から見つめる番組。 ➉テレビスポットを数多く流す。何を訴えるかが大切。 ⑭何かの時には、原子力に好意的な文化人を、コメンテイターとして 推薦できるようにしておく。新聞、テレビがこの人のコメントを載せ てほしいと思う人をリストアップし、その名前が自然にしみこむよう に、日頃の仕事の中で心がけていくことが大切。 (11)広報担当官(者)はマスコミ関係者との個人的なつながりを深める 努力が必要。 (12)関係者の原子力施設見学会を行う。見ると親しみがわくし理解も深ま る。テレビや新聞の内勤者の人たちに見せるのが効率がたかい。 (13)5~6人からなるロビーを作り、常に交流を図る。 (14)テレビディレクターなど製作現場の人間とのロビー作りを考える。 特定のテレビ局をシンパにするだけでも大きい。テレビ局と科学技術 庁の結びつきは弱い。テレビディレクターに少し知恵を注入する必要 がある。 (15)人気キャスターをターゲットにした広報を考える。原子力について 有名な人に話してもらい、質疑応答する。何か事故が起こり原子力が ターゲットとなったときに人気キャスターを集めて理解を求めること ができる。 (16)日頃から、役立つ情報をできるだけ早く、かつまた、積極的に提供し ておく。 (17)記者のポストが変わっても、情報の提供を継続していく。情報資料は 郵送する。 3.11直前はここに書かれた方策の多くが実行され、原子力のPAはまさに 完成の域に達していた。 22.2010年の国内広告宣伝費ベストテンに姿を表した東京電力は1989年以 降、毎年200億円以上の普及開発関係費(広告宣伝費)を投入。テーマの中 にはオール電化などもあったが、その中核が原子力だった。 23.メディアバイイングとはメディア(の広告枠)の購入のこと。メディアバイイ ングの戦略は、あらゆる広告の根幹であり、それによって広告の浸透度(どれ だけ話題になるか)が左右される。 24.東電の番組提供はほぼ16時以降のニュース番組に集中しており、通常のスポ ンサーセオリーとは明らかに異なる傾向がある。 25.これらのスポンサーは東電・電事連・NUMO(原子力発電環境整備機構) などの各法人がバラバラで計画しているのではなく、誰かが全体を俯瞰して 万遍なくコントロールしている。 26.電通が一括して全体のメディアバイイングを担っていて、報道番組買占めによ る「報道番組シフト」を敷いていた。 27.バラエティやドラマに比べて報道番組は人気が低いので、安定的なスポンサー はありがたい存在。 28.スポンサーを批判するような報道はしづらいという、ある意味報道番組として は致命的な欠点を抱えている。 29.現在夕方から深夜にかけて放送されている報道番組と称している番組の多く は、現場を知らないタレントや有名人がキャスターとして登場。そこで放送 されているニュースがどのような経緯で原稿になったのか、またなぜ原稿に ならないニュースがあるのかなど、彼らには知る由もない。ニュースを紹介 しているただのショーであり、報道番組とはいえない。 30.「〇〇特集」のように、数週間あるいは数か月かけて批判的なスクープ特集を 組む場合、スポンサー企業をターゲットにすることなどあり得ないこと。日本 の報道番組で、大企業の内部告発やスクープが少ないのはこのため。「報道 番組シフト」は原子力ムラへの批判的報道を抑制するために甚大な効果を発揮。 31.2010年4月に東電、NUMO、電事連、Jパワー(電源開発)が放映した CM本数は合計で275本、推定広告費は1億5928万円。 32,関東キィー局だけの本数で、福島県、青森県などの原発立地県のローカルテレ ビ局は入っていない。さらに、2020年度に放送された前述4社のCM本数 は5044本、推定広告費は36億5312万円となっている、 33.メディアにとって年齢を年間を通じて収入が見込まれる大変ありがたいも の、企画進行中に報道現場からがそのスポンサーへのネガティブ報道をや ろうとしても営業から文句が出てストップがかかる。 34.3.11直前の原子力ムラによるプロパガンダ体制は完成した。 35.田原総一朗氏が1976年に発表した『原子力戦争』(筑摩書房)は当時 すでにメディアの間でタブー視されていた原発問題について切り込んだ作 品として大きな話題。 36.大手広告代理店が原発反対の住民運動への対策を東京電力と組んでやって いた。いかに住民たちを反対派から推進派にしていくか。 37.当時テレビ東京は弱い局だった。スポンサーに代理店を経由して乗ってもら っていた。それをやめると言ってきた。田原総一朗氏はテレビ東京の上から 「連載をやめるか、会社をやめるか」という選択を迫られ連載を止めないで、 会社をやめた。 38.スポンサーの圧力で掲載中止か会社を辞めるか迫られた、というのはとんで もなく重いこと。当時東電と組んでいた大手広告代理店とは電通。 39.テレビ東京は、最後発のキー局として当時まだ経営母体が弱かったので、 スポンサー探しを電通に依存。 40.電通という会社の隠然たる力、その圧力に抗しきれなかった、テレビ東京の 貧弱さを証明。 50.経営基盤が貧弱で地域経済の雄である電力会社に大きく依存しているローカ ル局は次第に自主規制に縛られていく。 51.広島テレビの岡原 武氏は,1992年日本のプルトニウム利用の動きを追 った、『プルトニウム元年・ヒロシマから~日本が核大国になる!?』を制 作、日本テレビ系列の「NNNドキュメント」の枠で全国放送、93年の 「『地方の時代』映像祭大賞」「日本ジャーナリスト会議奨励賞」を受賞。 ところが、地元の中国電力と電事連から執拗な抗議をうけ大問題に発展。 提供が決まっていた番組から中国電力が降りるという事態になる。本人を 含む報道局4名が営業局に配置転換という降格人事がおこなわれた。 52.1988年に青森放送が製作し、「NNNドキュメント」の枠で放送された 「核まいね」は、六ヶ所村の核燃料サイクル施設の建設をめぐって分断され る地元の苦悩を鋭く描き出した番組で「日本民間放送連盟賞」「『地方の時 代』映像祭賞」「ギャラクシー賞」を受賞。ところが、その内容には科学技 術庁、日本原燃から強いクレーム。社長の首のすげかえ、番組の製作母体で あった報道製作部を解体した。 53.電力会社のようなビッグスポンサーとはなるべく問題を起こしたくないので 何事も穏便に済まそうとする空気を生み、デリケートな問題はスルーしよう とする(自主規制)に繋がる。 54.バルブ崩壊後の長期不況で広告収入減に悩んだメデイア各社は、次第に原子 力ムラと闘う気骨と体力を失った。2002年の東電トラブル隠し発覚以降 は、完全な自主規制モードにはまりこんでいった。 55.「合意の捏造」において、国民を騙すために大きな役割を果たしたのが原発 広告。 56.東京電力や電気事業連合会などは、もともと競争相手のいない、地域独占企 業群なのでそもそも広告など打たなくてもよい存在。 57.通常の新聞広告製作の場合、単独の15段広告は掲載料が「朝日新聞」全国 掲載で約5000万円。 58.東電や電事連の新聞・雑誌、CMなどの制作者名はほとんど隠蔽されるか消去 されているが、わずかに残っているデータから類推すると、一般企業同様に 電通と博報堂でほとんど分け合っている。 59.悲惨なチェルノブイリ事故が起きたのに、なぜ日本は危険な原発に頼らなけ ればいけないのか、その不安を打ち消すために、疑問を無視するのではなく 懇切丁寧に説明するというこの形式は、その後の原発広告の典型的なパター ンとなっていく。 60.原子力の危険性に敏感な女性層に対するPRは、原子力ムラにとってかなり 難易度の高い問題だった。 2000年代の原発PR訴求ポイントは ①原子力発電所の必要性(二酸化炭素をださないクリーンエネルギー) ②プルサーマルの必要性(資源小国ゆえのエネルギーリサイクル) ③地層処分の重要性(放射性廃棄物処理問題) 61.女性だけにターゲットを絞り込んだ広告というのは原子力ムラにとっても非 常に画期的であった。「anan」のシリーズ広告は当初2002年12月 25日号から始まり、毎回テーマを変えて2008年3月12号まで16回 掲載された。評判がよかったのか、2005年から同じ媒体の「クロワッサ ン」でもほぼ同じ原稿を使用し、2008年まで14回掲載された。 62.1979年(昭和54年)から2009年(平成21年)まで発行された 「広告批評」は広告業界には大変な発信力を持っていた。1987年はチェ ルノブイリ事故を受けて東電が広告宣伝費を30億円近くも大幅にアップさ せた年。 63.それまで100億円台だった予算が1989年には200億円の大台を突 破。 64.福島第一原発の事故はチェルノブイリと同じ最悪のレベル7だったが、幸運 にもほとんどの日本国民は生き延びることができた。 65.大量の無責任な広告を制作してばらまいた者の責任も問われなかった。 66.原発広告の大半は意見広告。国論を二分するような意見広告は、反論権があ って載せられるもの。同じスペースを無料で反論者に提供される制度。日本 には反論権がないから、一方的に金持ちの意見だけが広告できる。 67.意見広告に対する「反論権」を認めない日本。資金を豊富に持つ巨大資本の 一方的な意見主張に対する抑制策としてドイツやフランスで提唱。 68.日本でこの反論権が注目されたのは、産業経済新聞社と共産党が争った 「サンケイ新聞事件」。1973(昭和48年)12月2日の紙面。 「前略 日本共産党殿 はっきりさせてください。」というタイトルで、 自民党が共産党の政策を批判する意見広告を記載。 69.これに対し共産党が憲法二十一条から反論権(アクセス権)があるとして 「同一スペースの反論文の無料掲載」をサンケイ新聞に求めましたが、 サンケイ新聞側は「自由民主党と同じ有料の意見広告であれば掲載するが、 無料では掲載しない。」として裁判。 70.最高裁まで争い、共産党が全面敗訴。「反論権」という権利が日本社会 でもクローズアップされた活気的な出来事。 71.原発が安全といっても結局は科学的に実証されていたわけではなく、 メルトダウンは絶対にしない、事故は100万年に一回以下の確率 だという記述も単なる「意見広告」のようなもの。 72.原発が「クリーン」であるという表現は疑義があるという申し立てが 2008年にJARO(日本広告審査機構)におこなわれた。JAROが 異議申し立てを審査した結果「原子力発電はクリーンな電気の作り方」とい う広告のコピーについてJAROが「原子力発電にクリーンという表現を使 うことはなじまない」と裁定し、電事連に表現の再考を促がしていた。 75.安全性について十分な説明なしに、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さない ことだけをとらえて『クリーン』と表現すべきではない。 76.マスメディアは権力を監視する強い力を持ち「第四の権力」と言われる。 その「マスメディア」も「広告費」によって生殺与奪の権をにぎられてい る。その広告費の分配を差配し、日本のマスメディアの根幹を牛耳ってい るのが、電通と博報堂という二大広告代理店。 77.「電通」は売上高約1兆8334億円と第2位の博報堂の倍近い企業規模。 78.電通が時の権力者である自民党と強く結びつき、早くからその政策実現に 積極的に関与していた。 79.政権との結びつきはあらゆる情報の質と早さで他社を圧倒。戦後に実施され たイベント関連の一極集中を招く。オリンピックやワールドカップ、万国博 覧会などの巨大イベント利権はすべて電通に集中。 80.2020年オリンピック招致活動も東京都は最初からすべて電通に発注して おり同社にはその費用として70億円近い税金が支払われる。 81.田原総一朗氏がテレビ東京を辞めるきっかけになったのも電通の圧力。 82.博報堂は伝統的に政治とは距離をおくスタンスであったとはいえ、長年にわ たり東電や電事連の広告を制作、扱ってきたことで、間接的に原子力ムラを 支えてきたことは間違いない。 83.電通はメディアにニュースを提供する共同通信社・時事通信社の大株主。 また民放テレビ局の株主。電通に対するネガティブニュースは極めて報道さ れにくく逆に電通の意向は非常にストレートに反映されやすい状況。 84.広告宣伝費の多い巨大スポンサーのネガティブ報道が世に出ないように、 日夜メディアチェックに余念がない。3.11以前は原子力ムラのネガティ ブニュースをことごとく摘んでいた。 85.広告代理店は掲載前・放送前にどのようなニュースが出るのかあらかじめ把 握。もし電力会社に不利益な内容のニュースや番組があるとわかった瞬間に メディアの現場から広告代理店に報告が入り、間髪をいれずに電力会社にも 情報が伝わる。 86.その瞬間から、その記事の差し止めや放送中止の要請が広告代理店を通じ て、あるいは電力会社から直接メディアに伝わる。現在行っている広告ス ポンサーを降りるという脅し文句で揺さぶりをかける。 87.原発ネタはニュースにしない、ワイドショーなどでも話題にしないという 空気が完全に出来上がっていたので、「反原発」はないにも等しい扱い。 88.「広告出稿」という巨大な利権を盾にほぼすべての大手メディアにそのよう な「自主規制」をさせる電通・博報堂の力は、喧嘩をするはるか以前の段階 で勝負がついているようなレベル。 89.「自主規制」を生んでいることは間違いなく、「自覚なき第五の権力」と なっていると確信。 90.世界規模の環境問題に取り組むNGO(グリーンピース・ジャパン)は、 2013年の春から「原発にもメーカ責任を」という署名キャンペーンをし ている。現行の原倍法(原子力損害の賠償に関する法律)では、どのような 事故が起きても原発製造メーカの製造責任は問われない。福島第一原発の 事故を踏まえて見直すべきという運動。 91.福島第一原発の復旧作業は現在も東電が主体となり、原子炉メーカは 「協力する」という形。東電は実質的に国有化され、この2年間で国民の税 金3兆円がつぎ込まれている。 92.原子炉の製造に関わったゼネラル・エレクトリック、日立製作所、東芝は原 子炉損壊とメルトダウンに対し何の責任も問われず。 93.牛乳で食中毒事故を起こした雪印はグループ会社の牛肉偽装事件も重なって 会社の解体・再編を余儀なくされた。それだけ製造責任は重い。 94.原発災害関連だけで1400名もの死亡者を出し、数十万人の生活を破壊し た原発の製造者が何の責任も賠償も問われないのは、明らかに異常な事態。 95.原発広告を延々と作り続け、メディア掲載料をもらい続けた、広告代理店 中でも最大手の電通と博報堂にも、広告を作り国民を騙した責任がある。 96.四媒体(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)の枠取りは事実上、電通と博報堂を 窓口にしなければ確保することができない。約40年間で巨額の管理料 (マージン)が両社に落ちていたはず。 97.「企業コンプライアンス」を口にして社会に貢献したいとするのであれば、 原発プロパガンダの片棒を担いでしまった過去の過ちを認め、今後原発広 告は一切制作しない、または扱わないと宣言すべき。 98.2010年の年間広告費が東京電力と電気事業連合会合わせて1000億 円。 99.本来ならその危険性を指摘しなければならないメディアが、その広告費ほし さにいかに弛緩していたか。原子力ムラの「専門家」たちに交じって実に多 くのタレントや文化人が出演しており、読者の判断を誤らせる手助けをして いた。 100.原発広告の中で一番メッセージ性が強く、一度に多くの読者に届くのが 新聞広告。新聞は他のメディアよりも読者の信頼度が高い。 101.2010年度の原発全面広告掲載回数は「読売新聞」がダントツの10 回。読売の掲載料は正価なら15段が1回約4000万円。年間ざっと 4億円の収益になっていたはず。 102.「エネルギーの安定供給にかかわる原子力への期待と信頼」というキャッ チコピーで、エネルギー供給には安心できる原発が必要だと規定し、原発 は必要不可欠だと読み手を誘導する。 103.東芝は福島第一原発事故の製造物責任を負っていない。同じ製造者である ゼネラル・エレクトリックと日立製作所とともに原賠法(原子力損害の 賠償に関する法律)に守られ、国費から3兆円を支出しての復旧・廃炉 作業にビタ一文拠出していない。 104.2010年度、多かったのがNUMO(原子力発電環境整備機構)による 広告。NUMOはたまり続ける放射性廃棄物の地層処分を推進する団体。 地震国の日本で数万年先まで地下300メートルの処分場が安定する保証 はどこにもない。 105.NUMOも電事連も電力会社も元は同根の原子力ムラで、経営側にして みれば「一つの顧客」。毎年定期的に大きな広告紙面を掲載してくれる 上得意客。「お客様」の不祥事やネガティブ記事を書くのはできるだけ 控えよう、という空気が醸成。 106.自らの足を引っ張るような記事を書けるはずがなかった。しかし事故は 起こり、安全神話は崩壊した。 107.「もんじゅ」は20年間で1兆円以上の国費を投入したのに一度も発電 しなかった実態には全く触れていない。原発広告は純然たる記事と広告の 境目をわざと曖昧にしていた。 108.「もんじゅ」は2013年になって原子力規制委員会から1万カ所以上の 点検漏れと組織的な企業コンプライアンス欠如を厳しく批判され、運転 再開の準備行動さえ禁じられる事態に陥った。 109.コピーで宣言した設計・建設・運転・保守が本当に最高水準であったなら なぜレベル7の過酷事故が発生したのか。東芝はもっと主体的に原因究明 に関わるべき。 110.現在、最も求められているのは一刻も早い事故収束と避難している方々の 生活支援。同原発の設計・建設に携わった企業として事故責任を明確にし 生活を破壊された福島県民に対し謝罪と賠償をすることは、最低の企業責 任。 111.原子力ムラが行った推進事業のもっとも罪深いものは「原子力ポスター コンクール」経済産業省と文部科学省の共催で2010年まで17回実 施。危険性について何の知識もない子供たちに一方的な情報を与え、 その純粋な心を利用してきた役人たちの罪は万死に値する。 112.広告やシンポジウムのすべてが国民の電力料金と税金で成り立っていた。 電力会社は総括原価方式で苦もなく集めたカネを湯水のように関連団体に 提供していた。 ー以上ー
2021.05.30
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