本日は久しぶりの小説回。
原田マハさんの「楽園のカンヴァス」(新潮社)を紹介します。
原田マハさんは、美術の専門家ということもあり、美術作品をテーマにした作品が多くあります。
今回紹介する「楽園のカンヴァス」も、画家・ルソーが描いた絵をテーマとした作品です。
「美術のことよくわからないんだけど……」という人でも(私もそうです)惹き込まれます。
ちなみに以前このブログで紹介した、「スイート・ホーム」は美術要素はありません。
スイート・ホームの記事はこちらから↓
https://fanblogs.jp/ringocandyyy1/archive/46/0?1668997857
★あらすじ
2000年。日本の美術館の監視員として働く早川織絵(はやかわ おりえ)は、ある日美術館の職員に呼び出され、「ルソーの美術展を開きたい。作品をMoMA(ニューヨーク近代美術館)から借りたいから、力を貸してほしい」という趣旨の話をされる。
一介の監視員である自分になぜそのような話を?と思っていると、MoMAのチーフ・キュレーター(学芸部長)であるティム・ブラウンが、織絵が交渉の窓口になることを望んでいるとのことだった。
織絵は最初はティム・ブラウンという名前を知らない振りをしていたが、実は知っていた。
織絵はかつてフランスで美術史の研究をしていた過去があり、その時に出会っている。
時はさかのぼり、1983年、ティムの目線で語られる。
ティムはバイラーという美術コレクターから、ルソーの「夢をみた」という絵画の真贋を見極めてほしいという依頼を受け、その仕事で織絵と出会ったのだった。
物語はその1983年を中心に、かつての織絵とティムが、絵画の見極めをめぐって調査し、謎を解き明かしていく。
★ネタバレなし感想
原田マハさんの作品は、これを含めて今まで7冊読みました。
7冊中7冊、全て面白いのですが、これはその中でも1、2を争うと思います。
ポイントは3つ。
1つ目は、冒頭やあらすじにも書いた美術要素。
ルソーの絵はなんとな〜く知っていましたが、ピカソやゴッホに比べたらややマイナーな印象でした。
でも、この作品を読んで、絵だけでなくルソーの生い立ちや人柄も知ることができて、一気に存在感が強くなりました。生で作品を見てみたくなるし、美術館へ行きたくなりました。
さらにルソーはピカソに注目されていたとのこと。これも驚きでした。
作品内で絵の名前がちょこちょこ出てきたのですが、タイトルだけではどんな絵かわからなくても、すぐスマホで調べられるので便利な時代ですよね!
2つ目は、ミステリー要素。
ただ単にルソーの絵画の真贋を見極めるのではなく、何者かが書いた「物語」を1日1章読んで判断してほしいと言われる織絵とティム。誰が書いたのかもわからない「物語」(劇中劇的な感じ)も興味深い内容でした。
「物語」だけでなく、絵画をめぐる個々の思惑や、取引、悪意など、まるでミステリー小説のような展開にはドキドキさせられます。
3つ目は、読後、じんわりとした感動があるところ。
お涙頂戴的な感じではなく、心の芯から温まって自然と目が少し潤む感覚の感動です。
ハッピーエンドはハッピーエンドですが、無理矢理感がなく、心から「読んで良かったな〜」と思える読後感です。
美術に詳しくなれて、ハラハラドキドキもあって、最後は心温まる、素敵な小説でした
★以下、 ネタバレあり感想
ちょいちょい出てきた謎の女性・ジュリエット。ただのインターポールじゃなくてバイラーの孫だったなんて!
しかもバイラーってジョゼフのことだったのが1番驚いた。
ジュリエットはもしかしたらヤドヴィガの子孫かな?とチラッと思ったけど孫だったとは。二等親!近っ!
バイラーがルソーに、「夢をみた」にこだわっていた理由も納得だった。
妻のヤドヴィガがモデルになった絵だから、ヤドヴィガが「永遠に生きる」ために絵を守りたかったんだなっていう……。
使い古された表現になるけど、「どんでん返し」がエモいにもほどがある。
なおのこと、この絵がジュリエットに渡って良かったわ。
あと、織絵とティム。出会った当初は仲が悪かったけれど、だんだんと心を通わせていく様子が心に残った。
そういう過去があったから、17年ぶりに再会するラストも感動した。
現実的に2人がこのあと恋人関係になるかはちょっとわからないけど(日本とアメリカという距離だし、織絵には母と娘がいるから)、再会の様子は本当に幸福に満ちている感じが伝わってきた。
まとまりのない文章になったけど(いつものこと)、読んで後悔のない作品でした。
ではこのへんで!
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