中村航さんの「デビクロくんの恋と魔法」(小学館)を紹介します。
出典:「デビクロくんの恋と魔法」より
こちら、2013年に発売された小説で、翌年には映画化もされた作品です。
ずっとタイトルだけは知っていて、図書館へ行くとなぜかよく目に入ってくることが多かったのですが、手に取ったことはありませんでした。「デビクロくんって何?」って気になってはいましたが。
でも今年に入って図書館に行った際、また目に入ったのでついに読むことにしました!
★あらすじ
書店員として平凡な毎日を送る主人公、光(ひかる)。
でも、夜になると変装をして、自分で書いた「デビクロ通信」なるものを不定期にバラまくという活動をしている。
それは誰にも内緒だが、唯一知っているのは、女友達の杏奈だけ。
ある日、光は道端でぶつかってしまった相手、韓国人女性のソヨンに一目ぼれをする。
実は光のことを好きな杏奈はショックを受けるものの、それを隠して光の恋を応援することになるが……。
★ネタバレなし感想
タイトル的にはファンタジーものなのかと思っていましたが、ファンタジーのようなキラキラ感を閉じ込めた、現代の現実世界の小説でした。「魔法」要素はないけれど、魔法が使われたのではないかと思うような出来事がちょこちょこありました。
なぜデビクロくんという名前になったのかも読んでいくうちに明かされます。摩訶不思議な名前ではなく、ちゃんと理由があるんです。
主人公の光は一見ほわわんとしていて天然なのかなと思う部分もありますが、優しくて、決めるときは決めることのできる人で、実在しないとはいえ、素敵な人なんだろうなと思い巡らすのが楽しいです。
映画はまだ見ていませんが、光の役は相葉雅紀さんが演じたみたいで、なんとなく合ってる気がします。笑
ファンタジーが苦手な人には「ファンタジーじゃないよ!」と言えるし、ファンタジーが好きな人には「ファンタジーだよ!」と言える作品です。良い意味で、ファンタジーであり、ファンタジーではありません。
長いですが、まとめると、「ファンタジーであり、ファンタジーではない恋愛小説」です。
★ここから ネタバレあり
中盤、杏奈が光のデート服を見立てるために出かけるところが切なかった。杏奈、このために可愛い服を着てきたようで、光も「可愛いね」という始末。
レストランで、告白の練習をさせるところなんて特に切なさMAX。自分には言ってもらえないから、練習という名目で「好き」って言わせるの、言葉の音としては嬉しいけど、気持ちがともなってないから悲しいよね。
でも、見立てた服も、レストランも、ソヨンの前で着る(行く)機会はなかったのはそういう運命だったからなんだと思う。ソヨンからの誘いが急だったから、着替える時間もレストランを予約する時間もなかったみたいだけど、結果、杏奈しか見て(行って)いないっていうのが杏奈ENDの伏線だったんだろうね。
本屋さんでカニカニダンスを踊った先に杏奈がいた時点で「あ、これは杏奈ENDだな」ってなんとなくわかってたけど!笑
それにしても、子どものころの初恋が叶うって、ロマンチックでときめいた。
この記事の前半で「ファンタジーであり、ファンタジーではない」って書いたことについて補足。最後、杏奈にとっては光が走ってきてくれたことがファンタジーのようだけど、光にとっては違うよね。光本人の強い意思だからね!ここが好き。
光と杏奈のその後とか、絵本作家になれたのかどうかとか、続きが気になる
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