仕事を辞めてやりたいことに挑戦したり、拒絶される可能性を承知した上で好きな人に告白したり、人生で価値のあることには、通常リスクが伴うものだが、リスクを負うことが必ずしも正解ではなく、そのリスクと結果を比べて評価した上でリスクを負うべきかどうかを判断する能力が必要だろう。
チェスはあえて自分のコマを犠牲にしてより有利な戦略を展開することが求められるため、このリスクを評価する能力が求められる場面がよくある。
そこで研究者チームは、これまでチェスをしたことがない、イギリスの15歳から16歳の子ども400人を対象に、チェスを教えながら子どもたちの認知能力を評価する実験を行った。
その結果、子どもたちはリスクを回避する頻度が減少したことがわかった。
さらに、数学の成績が上昇し、論理的および合理的な思考スキルの向上が見られたと述べている。
また、チェスで学んだスキルは長続きするようで、研究終了後1年経っても、ほとんどの子どもたちのリスク評価能力は維持されていたという。
研究チームは、チェスというゲームはあえてリスクを負うことで勝利に近づく場合があるため、子どもたちがリスクのある行動を取ることに自信を持つようになるのに適していると述べた。
一方で、子どもたちは無計画にリスクを負うことを避けることも学んでおり、リスクを意味なく負っても好ましい結果につながることはほとんどないことも理解していたようだ。
リスクがもたらす結果を評価する場面がチェスでは非常によく見られるため、チェスをプレイすればするほど、リスクを判断する技術が研ぎ澄まされていったと語っている。
しかし、「チェスを学ぶと知能が上がる」という現象は確認できず、数学以外の成績の向上や創造性の向上など、他の認知能力の変化を示す証拠は見られなかったと研究チームは発表している。
これは、日本の将棋にも同じことが言えるのではないだろうか。
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