2017年9月9日00:15投稿。
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ぼたぼたと雫が落ちる。
雨がアスファルトを濡らして独特の匂いがふんわりと世界を包む。
僕はナイフを自分の腹に刺しっ放しで、雨に濡れながら歩いていた。
抜いたら出てくるんだろうな。
お気に入りのコートだったのに。
黒のトレンチは、赤黒い液体で染みになっていた。
口から血が出てこないから、大したところに刺さったわけじゃないのだろう。
僕は部屋に帰って風呂場へと向かう。
止血用のタオルを手に、刺さりっ放しのナイフの引き抜くと、一気に血が噴き出して、少しふらついた。
お気に入りのコートを脱いで、シャツの上から傷口にタオルを当てる。
ぼーっとする意識を何となく保ちながら、僕は血液が止まるのを待った。
大したところに刺さっていないからだろう、暫くして血が止まったようだった。
引き抜いた時に血が噴き出しはしたが、少し噴き出した程度で止まったようだった。よかったよかった。
本当に、恐ろしいことがあるもんだ。
僕はタオルを当てたまま、先程を思い出す。
どうして君が僕を棄てたくせに、君に刺されなきゃいけないんだ。全く、酷い話もあったもんだ。
僕は血が止まった腹部の傷に、そっと指を突っ込んで見る。
僕の身体の中はどくどくと熱くて、まるでいつかの君の中みたいだ。
そう思うと、自然、僕は僕を抑えられなくなる。
君はもう、同じアパートにはいないのにね。
おしまい
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