【禍因子育て企画】「大正妖怪異聞-廓座お仙-」


2013年05月02日投稿。




確かそらぁ、江戸も終わりに近付いた頃だったかの、上方の廓にそれはそれは妖艶な遊び女がおったそうでな、ほんによう流行っておったらしい。元々は下町のひっそりとした廓が、その遊び女のお蔭で一時栄華を極めたという話だで、たいそうなおなごじゃったんじゃろう。
しかしそれも長くは続かんで、それでも二十年、三十年、店の歴史では一瞬のことでも、人の歴史では長いこと、そのおなごはずっと、ずっとずっと、そこでは一番最高の遊び女じゃった。
それがある日、急に姿を消してしもうたらしいてね。
ほんにある日、急に。
部屋に仕えの下女が上がったら、真っ赤な振袖一枚、それだけ残して消えておったらしい。そう、もう、紅差しからなんから、全部全部消えてしもうて、真っ赤な振袖たった一枚床に広げて。
たいそう女将は怒りを露にしたらしいが。それもそうさね、その遊び女おってこそ栄えた廓じゃき。それで旦那も女将もそらもう必死に探しまわって、それでも見つからせなんだ。
人々は噂した。
どこぞの男と駆け落ちしたんじゃなかろうか、て。
噂もほうぼういろいろ出たが、やっぱりこれが一番有力でな、それだけ以外はどんな噂かも残っておらん。
その後どこに行ったともしれん。
それから幾年過ぎ、幕府ものうなってしもて、そこの廓ものうなって。
なぁ、
あの遊び女は、どこにいってしもたんじゃろなぁ、











こんにちわ。
はい!いつもお世話になっている屍。様のお宅の禍因ちゃんなるさんぷる子育てのお話をぼんやり連載させていただけることになりました!
今回は、その元となるお話の世界観をぼんやり先に紹介しておこうと思います。
というわけで、まずは、大正妖怪座の方から。
短い小話です良かったらお目通し下さい。
ちなみに他にもいくつか設定等々練り込んだのですが、こういう設定です、と晒すのは後にして、文章で世界観を読んでもらえると嬉しいですー。
ぶ、文章力不足はあまり突っ込まないで下さい(爆死)
遅筆なので子育てはゆっくりゆっくり連載させていただこうと思います(苦笑)

ちなみに、
廓(くるわ)
遊び女(あそびめ)
お仙(おせん)、お妲(おたつ)
銀の字(ぎんのじ)
佐之助(さのすけ)
お愁(おしゅう)、きい、棗(なつめ)、鴉または殻守(からす)
妖(あやかし)
妖し(あやし)
読めない方がいるかもしれないので一応ふっておきます(苦笑)











お国が開いて早や何年、気がつきゃ明治も終わりを告げた。
生きにくい世の中になったもんさね。
お仙は煙管を燻らせて思った。
徳川の時代は、それはそれは良かったもんだ。徳川は武士こそ縛っていたが、田圃も畑も町も、どこも賑わっていた。町に出れば何でも手に入る。その日暮らしでも小銭稼ぎはどこぞにあって、泊まる宛てがなければ遊郭でごろり。おなごも寝床も手に入った。
そして何より、人々の心にも信心ってものがあった。
神さんに手を叩き、仏さんに手を合わせ。妖の類だって、存在しているのが当たり前だったもんだから、それはそれは生きやすい世の中だった。
それが今じゃどうだい。
お仙は周りを見渡した。そこには、頭を垂れた、様々な異形の者達。
異国の利器に酔いしれて、神さんいれども手は叩かず礼もなく、妖しの輩はいておらぬように感じている人間ばかりじゃないか。
嘆かわしいね。
何が嘆かわしいって、それを仕方ないと頭を垂れるしかないと思ってる、それが何より嘆かわしいね。
そうしてお仙は煙管を置く。
「なぁ、アンタら、ちょいと妖しの誇りを取り戻す気はないかい」
そこから、一座は始まった。

お仙とお妲は古くからの中だった。お仙の秘密を知っているのもお妲だけだし、お妲の秘密を知っているのもお仙だけだった。
お仙もお妲も、里を同じくする妖だった。猫と狐と種族の違いはあったものの、二人は小さな頃から中が良かった。
お妲が上方に行ってしまってから暫くお仙は里の民家で暮らしていたのだが、密貿をしていた主人が、
「そろそろ国を開かねばならん時が来る」
と言ったのに対し不安を覚え、上方にお妲を迎えに行くことにした。
そうして暫く、主人と三人でぼんやり暮らしていたのだが、江戸も終わり、明治を迎え、半ばには主人も死んでしまった。
人と妖の違いさね。
お仙はそう言って、独り煙管を燻らせていた。
さてね、これからどうしようか。
そうなった時、お妲はお仙に行った。上方に行こう。いろんな物がある。いろんな者がいる。あそこなら何かしら職があって、奇特な者も多いから、食うに困らぬ。だから上方に行こう、と。
お仙は始め乗り気でなかったが、独り生きてなどいかれないし、お妲について行くことにした。
そうして上方まで旅をしていると、人里から追われひっそり山奥で泣き暮らす妖しの多いこと!
お仙は自身が人に飼われていたため、人に虐げられる妖しの存在が悲しくて悲しくて仕方がなかった。
だから、上方に向かいながら考えた。
妖しが日の本で過去の存在になってしまわないためには、何が出来るのか。
それが、異形の者達による妖怪見世物座、廓座であった。
廓座は、数人の妖しで構成されていた。
上方に本拠を置き、妖しの見世物を公演する。呼ばれれば地方にも行く。そうやって、一年も経たぬ間に有名になった。
これはそんな廓座の、妖の達の物語である。

2020年05月04日

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