2013年09月21日投稿。
君が眠りに落ちた宵に、僕は君を壊してしまいたいんだ。
凍てつく眼球
「ねぇ、見えないってどんな気分?」
声に目蓋を開こうとしてもそれは重く、そもそも開いたところでそこには何も存在しない。
だからただ、闇の中でそれをなぶる舌先の音を、耳に感じていた。
くちゅ、くちゅ、
「ねぇ、どうして似せて作ってるのに、同じ彩りを放ってはくれないんだろう、ねぇ」
それをなぶるのに飽きたのか、柔らかな声が降ってくる。
そして膝の上から重みが消えたかと思うと、何度かの足音の後、何かを洗う水音が室内に響いた。
それを聞いて、溜め息を吐いた。
何をそんなに御執心なんだか。
と、思うと同時、こどものような無邪気な声が、また耳に届く。
「さ、お仕事だよ」
ねぇ、君、僕を、ずっとずっと愉しませておくれ、ねぇ。
こんばんわ、さまにゃんこです。
久しぶりにドルメです。懐かしいです。いや割と頻繁に妄想はしてるのですが、書こうと思ったのは久しぶりです。
某お方の所為で眼球ブームが到来しました。
眼球ったら…、ドルメだろ…、というわけで、ヤマもオチもイミもないドルメの詰め合わせです。
ちょっと普段と違ったギャグ…、と、普段通りのグロ、がいくつか。です。
「DollsMaker no-title」
「ねぇ、何してるの」
不愉快そうな声に顔を上げると、靄が掛かったその向こうに、いつもの姿がぼんやりとあった。表情は見えないが、そうとう不機嫌な表情をしているに違いない。こいつはそういう奴だ。
「何って、見て分からないか、石膏を彫ってる」
「あぁ、そうなの」
尚も不愉快そうな声のまま、声を続ける。
「彫像と口付けでもしようとしてるのかと思ったよ」
「は?」
ぎしりっ、すぐ近くで揺り椅子が軋む音がする。それから規則的に、ぎぃいいいぃ、ぎぃいいいぃ、ゆっくりそれを揺らすもんだから、よほど不機嫌なのだと思う。
何故かは判らないけれども。
一つ、溜め息を吐く。そして彫刻刀を脇に置いて作業着の粉を叩いてから揺り椅子の方に向き直ると、声を掛けた。
「何だ、人が趣味に興じているのが不愉快なのか」
「べっつにぃ」
ぎぃいいいぃ、ぎぃいいいぃ、椅子を揺らしながら言うその声は、不愉快を詰め込んだような、そんな声だ。
「仕事があれば俺もこんなことはしていない」
「なに、僕が仕事を持ってこないのが悪いみたいな言い方じゃないか」
「むくれるな」
「むくれてない! 見えもしないくせに!」
ぶーぶー椅子の上から抗議するその声は、見えようが見えまいが、むくれていると想像に難くない。
再び溜め息を吐く。
「あぁ、そうか、そうだな。もういい、一服する。だから紅ち……、」
「あぁ聞いて! 変わった薬草が手に入ったんだよ! ちょうど実験台になって欲しかったんだぁ。煎じて茶葉にしておいたから、今から淹れてくるね!」
ぎぃいいいぃ、
そうして揺り椅子から乱暴に立ち上がると、嬉しそうに弾む足音と共に、部屋の外へと消えていく。
「……、」
何度目かの溜め息を吐く。
「ティータイムに付き合ってほしいなら初めからそう言え!」
この声が本人に届くことは、ない。
「DollsMaker no-title」
「ねぇ、それって美味しいものなの?」
くりくりとした瞳で、真っ赤なべべ着た人形が尋ねてくる。
それを聞いて、口に含み掛けたそれを、手のひらの上にころりと出した。そしてぺろりっ、舌でそれを撫ぜた後、嬉しそうに言った。
「そうだね、美味しい方ではないと思う。一般的に」
だけどね、
言い掛けて、また愉しげにそれを舌先でなぞりながら、くすくすと笑った。
「なぁに、どういうこと?」
人形は怪訝そうな声色で尋ねてくる。
その頭を何度か手で撫でてやってから、ゆっくりと言った。
「だけどね、熱を失う間際、たった二つしかないこれを抉って千切って口に含んでいると、これは確かに生きていたんだと思うことが出来るんだよ」
そう言って頭から手を離すと、また、両の手でころころとそれを弄んだ。
「ふぅん、へんなの」
「うん、そうだね」
苦笑いが零れる。
うん、そうだね、人の熱を愛することが出来たら、そんなこと、する必要ないのにね。
そう思いながら手の中のそれを見ると、たった一つになって尚も、こちらを懇願するように見つめてくるものだから、背筋をぞくぞくと走るそれが心地よいだなんて。
ねぇ。
もう涙は凍ってしまったんだ。
あの日、冷たくなった君を抱き締め続けたあの日に。
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