艦発隊での特別警備隊(SBU)に関係する研究について

『艦発隊装備実験部で特別警備隊関係の研究開発!』

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艦艇開発隊装備実験部に配属された、ペンギンです。

艦発隊装備実験部に関わると、特別警備隊(SBU)関係に関与することになります。

以前は記事にしにくかったのは、特別警備隊の装備品全般の開発を担当していたためです。

今回は、話せるレベルで書いてみようと思います。
装備課程修了!艦艇開発隊勤務を命ずる!
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(1)艦艇開発隊と特別警備隊の関係性について

艦艇開発隊と特別警備隊、一見関係が無いように思える2つの部隊ですが実は関係しています。

特別警備隊装備品全般の研究開発や、性能調査試験を艦艇開発隊が実施しています。

艦艇開発隊は研究開発専任部隊として、航空機を除く艦艇全般にかかる研究開発を行います。
(海自航空機関係の研究開発は、第51航空隊で実施)

1.1 研究開発体制の集約から艦発隊で試験実施が決定

特別警備隊の創設当初は、特殊性を考慮して研究開発も特警隊で実施することも検討されました。

しかし研究開発体制の集約から、実用試験の実績のある艦発隊で実施されることになりました。

特警隊の創設当初は、部隊規模が小さく、研究開発まで手が回らないことも考慮されています。

1.2 艦発隊装備実験部全体にて特警隊装備研究を実施

特別警備隊の装備品は、多岐にわたる装備品を研究する必要がありました。

そのため艦艇関係全てを網羅できる艦発隊装備実験部で、実施することになった経緯があります。

また艦発隊は試験関係の予算配分や関係各社との連携体制の構築という点で、利点がありました。

1.3 艦艇開発隊というゲートにより情報秘匿を実施

当初から、特別警備隊への情報秘匿に留意する必要がありました。

特に装備品等では、直接特別警備隊に納入してしまうと、情報漏洩の問題が付きまといます。

そのため艦艇開発隊での試験で、物品補給のルート作りが行われています。

海上自衛隊の物品管理では、秘匿性の高い物品の納入・部隊への輸送に関して横須賀に独自のルートがあります。

このルートを通すことにより、物品納入先から特別警備隊の情報を隠すことができる利点があります。
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(2)自動小銃をどうするべきか?長く続いた議論

特別警備隊の自動小銃については、発足当初からの議論が続いていました。
図1 89式自動小銃
640px-89R(初期生産).jpg
引用URL:wiki

当初から89式のみでは任務遂行に支障があると判断されており、特警隊側からも自動小銃の要求が続いていました。

2.1 HK416は当初から検討はされていた。

ネット上の世界では、HK416がSBUに配備された!という話題が上っております。

真偽については論評を避けますが、当初からHK416が候補に挙がっていたのは事実です。

私がいた当時にも艦発隊装備実験部検討会議資料の中に、HK416がありました。

ただ検討されていた時に、米軍内でのゴタゴタ(HK416の導入中止)などがあり、すんなり導入できるか不明だった点があります。

自動小銃の導入について、当初はFMSでの購入が検討されていました。

その中で候補のHK416が米軍装備品リストから外されることがあり、バタバタしていました。
図2 HK416
640px-HK416.jpg
引用URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/H%26K_HK416#/media/File:HK416.jpg

2.2 7.62mmか?5.56mmか?

装備品検討の時に大きく問題になったのが、どちらの口径を使うか?という問題です。

目的任務を達成するために、必要な自動小銃の口径についての議論は紛糾しました。

これは、単に自動小銃を装備するだけでなく、その他の装備選定に影響を与えるためです。

・防弾衣はどこまでのレベルにするのか?
・隊員落水時の浮力確保への重量配分の検討が不十分
・SB(特別機動船)の馬力と隊員輸送への影響があるか?
・船内戦闘における威力、取り回しの問題をどうするのか?
・弾薬供給について、国産弾をそのまま使用できるか?輸入するのか?
・導入する狙撃銃との弾薬の共用性を持たせるべきか?

かなりの論議となりました。

2.3 装備品の秘匿という問題

論議の中で大きな条件とされていたことは、装備品情報の秘匿です。

当初からの方針として、特別警備隊の装備品情報については全て秘匿するという方針がありました。

その為、FMSでの導入についても秘匿性の問題があります。

米国側では、FMS契約情報は原則公開というルールがあります。


FMS契約では、装備品が入手しやすいものの、公開情報として判明しやすいという問題もあります。

そのため、導入方法についても慎重に検討されました。

陸自のS(特殊作戦群)は、FMSでの導入で行うとの方針が最初からありました。

海自の場合、FMSのデメリットを熟知していたため、FMS購入に慎重でした。
『存在しないことになっている装備品』
いろいろな検討を重ねた結果、装備品の情報については、『存在しないことになっている装備品』という方式で行くことになりました。

そのため今後もこれが配備されているのか?という情報照会には、『存在しない』という回答が出ることになるでしょう。
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(3)契約情報に関する話

艦艇開発隊において特別警備隊関係の調達・試験等を実施していますが、契約情報から漏れることはないのか?という疑問があるかもしれません。

実は契約情報と秘密保全の観点から、横須賀地方隊契約でカラクリが存在します。

3.1 契約と要求部隊のカラクリ

横須賀地方総監部は、契約のみを担当しています。

実際の契約要求や試験役務契約要求は、艦艇開発隊で実施しています。

艦艇開発隊は、横須賀地方隊の隷下部隊ではありません。

しかし横須賀地区での地方契約は、横須賀地方総監部経理部長のみが実施できます。

そのため契約情報で、横須賀地方総監部の契約で「警備器材等」といった不思議な契約品が登場します。

3.2 契約情報公開と秘密保全の兼ね合い

艦艇開発隊の試験役務などは、情報保全との兼ね合いが非常に難しいところでした。

契約情報については、原則全ての情報を公表となっています。

秘密保全が優先される契約であっても、契約件名などについては公表しなければなりません。

そのため横須賀地方総監部経理部契約課とは、かなり特別警備隊に関する契約で折衝を重ねました。

契約金額や個数などに関しては、非公表とすることは了解が取れました。

しかし契約件名・契約相手に関しては、かなり揉める事態となりました。

秘密保全優先か?契約規則優先か?という葛藤がありました。

最終的には、契約件名の工夫という形で決着しました。

契約件名は試験などの件名を記入するが、具体的情報は件名に入れないという方式になりました。

そのため契約情報から、試験内容・具体的な調達物品を推測できない形になりました。



契約課職員や、原価計算課の職員でも、具体的な物品名は伏せられたままになってます。

そのため、いろいろと苦労をおかけした点があります。
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(4)話せるギリギリの所まで・・・

特別警備隊関係の情報に関しては、かなり話せる範囲が限られています。

そのため、どうしても歯に物が詰まったような言い方になります。

それでも、ちゃんとした一定の情報を話すことで、間違った情報が悪用されることのないようにしていきたいと思います。
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2020年02月21日

この記事へのコメント
三菱F-2さま、コメントありがとうございます。
89式にて不足していたのは「拡張性」の部分ですね。
船内での暗い空間での使用を考えるとき、標準用のレーザー照射器等の付加器材をハンドガード部分に取り付けるのが難しかったのが要因です。
当時はナイツ社のRISがもてはやされていましたので、部隊要求でもRIS搭載希望がありました。
Posted by 管理人 at 2020年05月14日 10:14
>当初から89式のみでは、任務遂行に支障があると判断されており、特警隊側からも自動小銃の要求が続いていました。
とありますが、89式に不足していた能力とはなんだったのですか?
Posted by 三菱F-2 at 2020年05月14日 07:58
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