その滑走路は、しっかりとコンクリート舗装されています。
戦時中も、三沢や厚木など、一部の基地では舗装された滑走路もありましたが、多くの滑走路や南方の島々では、背の低い草の生えた草原を作り、滑走路として利用していました。
草原の滑走路の手入れは大変です。季節によっては、すぐに草が伸び、プロペラで草は刈るし、尾輪には草がどんどん詰まって回らなくなっちゃたりして…
もしも、1955年に自衛隊に導入されたジェット戦闘機F-86Fセイバーを、
そんな草原の滑走路に招いたとしたら、かっこいいハチロクも、
まるで掃除機になってしまいますよ〜(> <;)
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ここでは、戦時中の飛行機のほとんどが尾輪式であったことに注目します。
当時、前輪式の飛行機がなかったわけではありません。
海軍では、中島製初の前輪式航空機である大型4発式の陸上機、「深山」、
特殊攻撃機として試製された、日本初のジェット機、「橘花」などが存在しました。
中島13試陸上攻撃機「深山」(深山改輸送機)
中島特殊攻撃機「橘花」
前輪式の軍用機は、尾輪式の数には及びませんでした。
しかし、多くの尾輪式が存在したのに、どうして今は少ないのでしょう。
1955年、海上自衛隊に導入されたSNJ(T-6)は、唯一、尾輪式の練習機でしたが、1970年には引退しました。
SNJと同期のF-86Fセイバーは1983年まで飛んでいたのに対し、早い引退でした。
North American SNJ(T-6)Texan(鹿屋航空基地にて)
一応、私も写っています
尾輪式が消えていった要因は、当時、SNJを除く全ての練習機が前輪式だったことや、
タキシング(地上滑走)中における、前方の視界の悪さ、
尾輪式に不慣れなパイロットが、 グランドループをおこしやすいことなどが考えられます。
【グランドループ】
ラダーの利かない低速スピード(機種によって速度は異なる)にて
重心に対し、横揺れの力(yow moment)が働いたときに限り
前車輪を中心に回転運動を起こす(横揺れの力・・・ブレーキの片利きや、横風)
それに比べ、前輪式は、タキシング中のグランドループをおこすことはありません。
着陸時の操縦性をふまえて、何よりも前方の視界が良好であることは安全上、最優先事項でしょう。
ちなみに、自衛隊で使用されていた前輪式のT-33Aは、1954年から2000年までといいう長期運用されいた実績を誇っています。
しかし、この機体だけは、他の前輪式とは違った特性があります。
まれに、 ノーズコックといって、直進できなくなることがあるのです。
ノーズコックとは、前輪が、機体の進行方向に対して、直角になってしまう現象です。
イラストは、ノーズコックの様子。前席が訓練生で、後席は教官です。
タキシングをスロースピードで、急旋回中におこしやすく、
曲がる方向のブレーキを踏みすぎた場合になりやすいそうです。
でも大丈夫。
エンジンの力を利用して、元に戻れるそうです。
やり方は、80パーセントほどパワーを出しつつ、徐々に旋回し、
前輪がまっすぐになりかけたところで、パワーをアイドルに戻すとのことです。
ノーズコックはT-33特有のものなので、他の前輪式は、このような現象にはなりません。
近代の飛行機の多くは前輪式です。
利点しかないような魅力ある前輪式にも、やはり悩み(?)があるのです。
誤って前輪から着陸した場合、ポーポイズといって、飛行機が、ピョンピョンうさぎちゃんみたいに跳ね、なかなか止まってくれない現象があります。(めったにならないけど…)
また、草原や土の上に、ちょっとしたデコボコがあると、タキシング中にガタっと機体が揺れます。
少々の揺れは問題ありませんが、機体にスピードがあったり、跳ねた直後の機体の姿勢によっては、プロペラが地面を叩くことがあります。
まさしく畑を耕す耕運機です…こればっかりは、パイロットの腕と言うより、地面が悪いというか、運が悪いというか…
プロペラが傷つく程度ならともかく、エンジン内部も曲がったり折れたりと、エンジンまるごと駄目になる可能性もあるのです。
モグラが、ぽこぽこと土くれを盛り上げる草原には、プロペラが土を耕さない可能性が強い、尾輪式の飛行機が向いているかもしれませんね。
それを昔の人達は、知っていたのでしょうか…
風雨により安定しない地面、ましてや爆撃により、でこぼこの滑走路を利用する時代には、万が一の事故に備え、前輪式を控えていたのかもしれません。
もちろん、前輪式でも、草原の滑走路から離発着できます。
しかし、舗装された滑走路の現在では、自衛隊も前輪式パラダイスになってしまいました。
前輪式には、ここに述べた以上の良い評価があるからこそ、多く存在するのでしょうね。
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あなたは通勤中に(もしくは通学中に)、「土」や「草」を踏むことがありますか?
私はありません。
草の上を歩くなんて、1ヶ月に一回あるかないかくらいです。
でも、踏んでみると、意外にこれが必要だったような気がしてくるから不思議です。
優れたスニーカーが売れるのは、それだけ人工的な固い地面からショックを和らげるからでしょう。
私たちは、本物の土の代償として、靴の底に、土を作っているのです。
草原の滑走路を、ゆるやかに滑走する尾輪式の飛行機の姿は、失われつつある者だけに、ちょっぴりさみしいような気もします。
尾輪式の特徴のひとつで、個人的に好きな点があります。
それは、零戦の「 ずっと空を眺めている姿」です(^-^)
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