ウェイターを呼んだもの、と思っていると、女性が一人向かってくる。
ブロンドで、ミニのドレスからスラリと長い脚、真っ直ぐワタシたちの席に迫る。
彼の席の脇で、立ち止まる。
その女性が、サングラスを外す。
女のワタシが思わず息をのむ、本物のブロンドに青い瞳の彼女。
一瞬、何故か、懐かしい思いに包まれる。
ナニ?怪訝に思いながらも、彼をみる。
二人ともにブロンドに青い瞳、悔しいけどお似合い。
彼が口火を切る。
「紹介しよう」
彼女が、立ったまま彼に寄りかかるようにする。
「今回の僕のパートナー、まぁ君は、別格だから」
何故か半ば笑いながら、彼が言う。
誂えたドレス姿の彼女に、市販のワンピースのワタシ。
「よろしく」
言って、彼女が右手を差しのべてくる。
左手は彼の肩に置いたまま。
「よろしく」
右手で彼女の手を握りながら、思わぬぶっきら棒な自分の口調に驚く。
嫉妬?思って直ぐに打ち消す。
握り返してくる彼女の手に、やさしさを感じて、強く握ろうとした自分の手を思わず引っ込める。
魅了するような笑顔で、ワタシを見つめる彼女。
彼女が笑いながら言う。
「ごめんなさい、彼とはなんでもないから」
言い終わらぬうちに、踵を返して歩いていく。
彼にかワタシにか分からないが、ポーチを持った片手を上げて出て行く。
艶かしいミニドレスの後ろ姿と、ピンヒールの白い脚を残して。
その姿に、何か引っかかるものを感じるが、今はその正体が分からない。
堪えていたらしい彼が、とうとう声をあげて笑う。
何故か、ホッとしている自分にドギマギしながら、悟られまいと、笑う彼を睨みつける。
ワタシの視線に応えるように、彼が言う。
「すまない、彼女の素振りが、あまりに可笑しくて…」
「二人してワタシを笑いにきたの?」
腹立ち紛れに、残ったエスプレッソを一気に飲み干す。
本当に可笑しそうに笑いながら見ている彼が、言葉を継ぐ。
「そんなつもりはないよ、何かで二人、協力してもらうことも、あるかと思ってさ」
「…」
「それで、引き受けてくれるかな」
「そのつもりだけど、確認したいことがあるから、返事は明日にでも連絡するわ」
「いろいろと、期待しているよ」
言って、彼がウィンクする。
彼の妙な魅力に惑わされないよう顔を背ける。
「ごちそうさま」
言うと同時に立ち上がると、彼の横を通って、振り返らずに片手を上げてみる。
笑われてるかしら?。
blond & blueカラーに対抗するように響かせるピンヒール。
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