しばらくして、互いにパスタの皿が空く。
ウェイターが皿をさげる。
彼女が、見計らったように言う。
「初めて会う人とは、なるたけ食事を一緒にするようにしてるの」
「…?」
「食事の仕方をみれば、そのヒトのことは、ほぼ分かるから」
そうなのかしら?と思いながら、彼女の言葉を待つ。
「少なくとも、これまで会ってきたヒトの判断は、間違ってなかったわ」
「…それで、ワタシは?」
恐る恐る訊いてみる。
彼女が、満面の笑みを浮かべて言う。
「最高よ、今まで会った中で、一番気が合うはずよ」
「あっ、ありがとうございます」
思わず俯いてる。
面と向かって言われると、相手が同性でも嬉しい反面、照れくささも募る。
俯いていると、ウェイターが飲み物を運んでくる。
辺りに、いい香が漂う。
「あなたも、好きだといいけど」
彼女が言いながら、グラニュウ糖を一匙、エスプレッソに入れる。
ワタシも、いつものように軽く一匙入れる。
一口含む。
苦味が、口中から鼻腔に広がる。
思わず呟く。
「うん、おいしい」
瞬間、エスプレッソの飲み方を教えてくれた彼との思い出が蘇る。
知ってか知らずか、ワタシの仕草をみて、彼女が言う。
「よかったわ、気に入ってくれて、あなたも一匙なのね」
「ええ、甘党ではないですし、苦味のほうがおいしく感じられて」
彼女が大きく頷く。
「やっぱり、あなた、きっと私と最高の相性よ」
彼女が、エスプレッソの最後の一口を残して、カップを置く。
その様子を見て、ワタシと同じと思いながら、ワタシもカップを置く。
「あなたも、最後の一口残すのね」
「ええ、ワタシにはどうにも甘くて、それに残骸にしか見えなくて」
「残骸?エスプレッソの残骸か、面白いことをいうのね」
「可笑しいですか?」
「いえ、何となく分かる気がする、私も使わせてもらうわ、エスプレッソの残骸」
最後は笑いながら言って、彼女が席を立つ。
席を立って後を追う。
斜め後ろを歩くワタシ。
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