「あなたに用はありません」
言って、歩き出そうとする彼女。
左ハンドルの運転席が開く。
恰幅のいい運転手、兼用心棒?らしい男が降りてくる。
警護という言葉が憚られるような風貌で、彼女の前に立ちはだかる。
もう一度、後部席の政治家?ワタシには政治屋にしかみえない男が言う。
「手荒なことは、したくないんだが」
「あなたにも、あなたの関係する集団にも、私は興味ありません」
彼女が、再度言って一歩踏み出す。
運転手兼用心棒の男が、彼女の腕を掴む。
後部席の男は、笑って見ている。?「はなしなさい」?彼女が、身を捩って逃れようとするが、男の力は容赦ない。
両手で押しのけようとする彼女を、意にも介さない。
スーツケースから手を離すと同時に、ピンヒールトゥの前蹴り。
彼女の身体のカゲから、男の向こう脛に容赦なく極まる。
男が、彼女から手を離す。
彼女が一歩下がる。
ワタシが一歩踏み出す。
丁度、彼女と前後を入れ替わる形になる。
脛をさする男が、ワタシに向かって悪態をつく。
「貴様あ、やられたいのかっ」
スーツを着ても隠せない、用心棒らしい本性が現れる。
間合いを見切るように、身構えるワタシ。
その様子を見て、男が続ける。
「女のくせに、この俺とやろうってのか」
男が言い終わらぬ内に、重心を移動するワタシ。
左脚を軸に右中断の蹴り。
男の左大腿裏に鮮やかに極まる。
男が、堪らず片膝をつく。
「てめえっ」
男が言って、左脚を震わせながら立ち上がる。
反撃に備える。
「手加減はしねえぜっ」
言うと同時に、男が右の拳を飛ばす。
ワタシの顔に迫る拳。
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