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2024年08月05日

F-15在来機へのAMRAAM搭載改修を考察してみる

■F-15在来機にAMRAAM搭載は不可能ではない

■ただ費用対効果的には疑問が残る

■F-15在来機は出来るだけ早く退役させ、最新機種へ更新させるべき


ペンギン先生の掲示板 において、F-15在来機へAIM-120(AMRAAM)搭載の可能性を論じられていたので、こちらでも考察してみることにします。ネタを提供していただいたペンギン先生で感謝であります。

まず、F-15在来機にAMRAAMを搭載するには以下の改修が必要になります。

1.ランチャ改修
2. 畿内配線追加
3. バスインターフェイスモジュールの追加
4. RADAR/OFPの改修
5. アダプタ・パッド/ストレージボックスの追加


1. ランチャ改修
ランチャの改修ですが、まず胴下ランチャであるLAU-106AをLAU-106A/Aに改修します。これは改修キットが用意されており、既存のランチャから改修できます。

外観等について、よく纏められたサイトがありますので、こちらをご覧ください

EAGLE応援団 F-15J/DJ MRM改修機の識別ポイント
http://www.f-15j.com/archive/mecha/mrm/mrm.htm

写真を比べてみると、銘版があった部分に新たにコネクターが追加されているのが確認出来ると思います。これがAIM-120用のアンビリカルコネクタで、既存のAIM-7用のものとシーソーのようにつながっており、どちらかが突き出すと、もう一方が引っ込むようになってます。なお、ミサイルとランチャのコネクタはシアウェハと呼ばれる板の上下にコネクタがある器材を挟みます。あと、AIM-7では必要だったミサイル・モーターファイアリングケーブルがAIM-120では不要になります。これは一長一短があるのですが、一手間省けるという点ではメリットでしょう。

ランチャで問題となるのは内弦ランチャです。ここは既存のLAU-114をAIM-120運用可能なLAU-128へ変更しなくてはなりません。その際はランチャアダプタも既存のADU-407からADU-552へ変更します。
ここで一つ問題があります。在来機には後述するデータバスの配線が無いこと、LAU-128へ国産ミサイルであるAAM-3及びAAM-5を適合させる必要があることです。現在も生産されているAAM-5を適合させることはそれほど難しくはないと思いますが、AAM-3を適合させるのは難しいかもしれません。そうなると、AAM-3との適合は諦める等の判断が必要となるでしょう。

無人機研究システム無人機及び90式空対空誘導弾(AAM-3)
1280px-JASDF_UAV(1001)_&_AAM-3_at_Gifu_Air_Base_October_30,_2016_02.jpg
画像引用元: Hunini - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=53091006 による

2. 機内配線追加
機内配線追加ですが、MSIP機へのAIM-120搭載改修においてもLAU-106へデータバスの機内配線追加は行われていますので、在来機で行うこともそれほど難しくないかもしれません。問題は内弦ランチャへの機内配線追加です。これは少なくても本邦では実績が無いので、慎重な検討が必要になると思います。

3. バスインターフェイスモジュールの追加
F-15在来機の元々のデータバスはH009ですが、AIM-120とのインターフェイスはMIL-STD-1553/1760が使われています。AIM-120は発射の際にこのデータバスを介してミサイルへ目標までの慣性データを送信し、この慣性データを元にミサイルは慣性誘導で目標へ向かいます。そのため、H009とMIL-STD-1553の間をやり取りさせるインターフェイスモジュールが必須となります。

これに関してはNASAが興味深い資料を公開しています。

NASA HiDEC F-15A with F-18
1387px-NASA_HiDEC_F-15A_with_F-18.jpg
画像引用元: Jim Ross - Cropped from EC91-677-1 from [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3089363 による

Predicted Performance Benefits of an Adaptive Digital Engine Control System on an F-15 Airplane
f15_deec.png
画像引用元: https://ntrs.nasa.gov/api/citations/19850007420/downloads/19850007420.pdf
Produced by the NASA Center for Aerospace Information (CASI)

これは在来機であるF-15AにMIL-STD-1553Bデジタルデータバスで制御されるデジタルエンジン制御システムとデジタルCAS(Control Augmentation System)を追加するにあたって、既存のデータバスであるH009へインターフェイスユニットを介して統合しています。このような機器を介すれば在来機へMIL-STD-1553Bデジタルデータバスを追加するのも可能でしょう。というか現状のMSIP機においてもH009と1553が並列で用いられています。従って、MIP機においてもこのようなインターフェイスユニットが存在すると思われます。1553を導入した場合、もう一つのメリットとしてLINK-16の端末であるMIDS-LVTの搭載もポン付けで可能になります。コクピットのディスプレイ追加も必要でしょうが。。。。

4. RADAR/OFPの改修
F-15在来機へAIM-120管制能力を付与するためには、レーダーや中央コンピューターのソフトウェア(OFP Operational Flight Program)の改修が必要となります。これに関しては平成10年度契約の『飛行教導隊F-15型機のAIM-120B搭載改修(その2)』において在来機用AIM-120管制OFPが米国ボーイング社から提供されたとの噂レベルの話があります。管理人はこの件についてGM関連の方に直接尋ねたことがありますが、その方もご存じないような感じでした。

あと、以下の写真の赤枠内のACS(Armament Control Set)の改修も必要ですね。MSIP機のように青枠内のAN/AWG-20 PACS(Progmable Armament Control Set)だとソフトの改修だけで済むのですが、ACSだとスイッチ等の物理的な改修が必要と思います。丁度、お店のレジスターとタッチパネルのPOSの違いを思い浮かべて頂ければ分かり易いでしょう。

ACSを装備したF-15のコクピット
A close-up view of an F-15 Eagle aircraft instrument panel.
F-15_Eagle_Cockpit.jpg
画像引用元: DoD DF-ST-82-05603 National Archive#NN33300514 2005-06-30
アメリカ合衆国連邦政府の著作物として、この画像はアメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。

PACSを装備したF-15Cのコクピット
F-15C_Eagle_cockpit.jpg
画像引用元: By SSGT. JAMES WILLIAMS - http://www.dodmedia.osd.mil/Assets/Still/2007/Air_Force/DF-SD-07-36540.JPEG, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3066785

5. アダプタ・パッド/ストレージボックスの追加
AIM-7とAIM-120では直径が1インチ違いますから、AIM-120をLAU-106へ搭載する際はパッドを介します。そのため、それらのパッドとパッドを機内に収納するストレージボックスが必要になります。

なお、海外にはMIL-STD-1553Bが搭載されていなかった機体に搭載改修を実施してAIM-120の運用能力を付与した例は幾つかあります。写真のドイツ空軍のF-4F ICEやシンガポール空軍のF-5Sなどはその代表例でしょう。

AIM-120を発射するF-4F ICE。ランチャから射出されたAIM-120の姿勢に注目。

F-4F ICE Phantom launches AIM-120
955px-F-4F_ICE_Phantom_launches_AIM-120.jpg
画像引用元: By U.S. Navy - U.S. Navy National Museum of Naval Aviation photo No. 1996.253.7324.035, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=24584829

シンガポール空軍のF-5S。同じく1553を介するAGM-65 Maverickを搭載しているところに注目。

Maverick armed RSAF F-5S
Maverick_armed_RSAF_F-5S.jpg
画像引用元: By Dave1185 at English Wikipedia, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6809201

どうでしょう?  在来機へAIM-120を搭載するのは結構大変なのがお分かりいただけると思います。F-15在来機は航空機としての能力は兎も角として、搭載電子機器が古く、電子戦能力も高いとは言えません。AIM-120を搭載してもその能力を生かしきれないと思います。だとしたら、 現状は小改修(AAM-5搭載等)に留めて早期に新しい機体(F-35、XF-3)へ更新した方がコスパが良いんじゃないでしょうか。





タグ: AIM-120 在来機
この記事へのコメント
Keenedge様

返信ありがとうございます。
私の読解不足でした。MSIPについて読みのがしていました。申し訳ありません。

在来機、退役後にエンジンを輸出する話がありましたが輸出できるか気になりますね。
Posted by ssao at 2024年08月08日 00:45
ssao様、

コメントありがとうございます。

>F-15でのAMRAAMの搭載が難しいというのは今後改修されるF-15JSI改修予定機にも言えることなのでしょうか?

難しいというか面倒なのは在来機に関してのみです。

MSIP機については平成10年度契約で飛行教導隊機に対してAIM-120搭載改修を実施しており、その改修と同等なことを平成12年度契約のAAM-4搭載改修からMSIP機に対して順次実施しています。ですので、AAM-4搭載改修を行ったMSIP機は同時にAIM-120運用能力を持っています。既に多くのMSIP機はAIM-120を運用出来ると考えてよいです。

XAAM-4開発担当者に直接聞きましたが、AAM-4とAIM-120を同時に運用出来るようにしたのは主に運用側からの要求だそうです。XAAM-4から量産型AAM-4の大きな変更部分はアンビリカルコネクタとインターフェイス情報をAIM-120と共通化したことです。
Posted by keenedge1999 at 2024年08月07日 01:24
Keenedge様

コメント失礼します。

F-15でのAMRAAMの搭載が難しいというのは今後改修されるF-15JSI改修予定機にも言えることなのでしょうか?改修内容がF-15EXと同じEPAWSSの搭載やJASSM-ERの対応なので気になりました。
Posted by ssao at 2024年08月06日 21:55
ペンギン先生、

コメントありがとうございます。

近代化対象は在来機からという話もありました。その場合はF-4EJ改以上の魔改造機が登場したことでしょう(w

記事には書きませんでしたが、データバスの代わりに無線で飛ばすという方法も既にあります。AAMでは難しいと思いますが、誘導爆弾なんかでは使えそうですね。機内に持ち込んだタブレット端末で操作とか。。

現状、継子扱いされている在来機ですが、こんな改修も行われているんで目が離せません(w

https://x.com/nite103/status/1467881681223032832/photo/1


Posted by keenedge1999 at 2024年08月06日 19:35
お世話になっております。

早速AMRAAMの搭載改修の話を取り上げていただき、大変感謝いたします。

やはり専門家の話を聞くにつれ、いきなり応急でAIM-7搭載機にポン付けでAMRAAMを搭載して運用するのは不可能と言えますね。
(近代化など多数の改修をすれば可能)

Posted by ペンギン at 2024年08月06日 14:59
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