2010年12月20日
「野獣死すべし」
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伊達邦彦
この名前を聞いてシビれない方は、この小説をご存じないからです。
故大藪晴彦氏が、大学生時代に書き、江戸川乱歩賞を受賞した短編小説です。
極めて短かく、ちぎるような文節の中に、
作者である自分が置かれている当時の社会に対する反骨精神が叩き込まれています。
物語では、若さとその経歴、優れた頭脳・体力などから、
完全犯罪に手を染めてゆく若者を簡潔に描いています。
映画の松田優作氏の作品は残念ながら、別物で感動には程遠いものです。
原作である小説の冒頭部分については、
あの三億円事件と内容が酷似しており、
事件発生が 作品の発表と同時期でもあったため、
大藪氏が警察の事情聴取を求められたほど、その描写がリアルです。
ハードボイルド小説と片付けるには、あまりにも もったいない秀作です。
その伊達邦彦シリーズは、
・野獣死すべし(1958年)
・野獣死すべし 復讐篇
・野獣死すべし 渡米篇
・血の来訪者
・諜報局破壊班員
・日銀ダイヤ作戦
・優雅なる野獣
・マンハッタン核作戦
・不屈の野獣
・野獣は甦える
・野獣は、死なず
・女豹シリーズ(ゲストとして)
が全作となりますが、その処女作である野獣死すべしは、
ハードボイルドに生きることを望む、すべての「男」のバイブルです。
勿論、44の永久保存版本棚にも全作が揃っています。
生前、作者の大藪氏は世界有数のハンターでもあり、
実銃についても類を見ないほど詳しかったそうです。
また、仲間とともにレーシングチームを立ち上げるなど、
車についてもプロ以上の知識を持ち合わせていました。
作品の中でも、この「銃」と「車」に関する描写は異常なほど細かく
当時は、「大藪から銃と車をとったら何も残らない」と酷評されたほどです。
誰もが好む文体ではありません。
で、この物語では、様々な銃を使いますが、ゆくゆく邦彦の愛銃となってゆくモーゼルHSCがこれです。
今回、ご紹介の銃については、
自信を持っておススメできる機構のモデルがなかったため、リンクは貼っておりません。
この小節を初めて読んだのは44が中学生の時でした。
、
私の人生にガツンと釘を刺した作品ですが、
30年が経った今も輝きを失うことはありません。
短編なので、軽く読み切れます。
銃もしくは車が、少しでも好きな方には、ぜひご一読いただきたい作品です。
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