私達が英語を勉強したとき、「へぇ〜! こんなに発想がちがうんだ」と思うのと同じように、外国人だからこそわかる”日本語の良さや面白さ”があるようです。
アメリカや日本で日本語を教えて30年以上になる、十文字学園女子大学の平野映子さんに、外国人が驚く日本語の魅力を教えていただきました。
■私達日本人は気付かない、日本語の面白いところ
(1)相手との絶妙な距離感
日本語を学ぶ多くの外国人が驚くのが、敬語や丁寧語、謙譲語、タメ語といった相手による言葉の使い分けの複雑さです。さらに女性と男性でも使う言葉に違いがありますし、書き言葉と話し言葉でも違います。
外国人向けの日本語テキストでは丁寧語から教えたり、決まった型を習いますが、実際の生活場面にはそぐわないことも多いわけです。ですから、かなり上級者にならないと使い分けができないという難しさがあります。
この点は、もっとシンプルでストレートな英語などの言語とは大きく異なる点ですね。
日本では、礼儀正しさや思いやり、尊敬といった気持ちを言葉に込めたり、相手によって微妙なニュアンスを表現することが重要です。その文化が、日本語によく現れているわけです。
(2)自然や季節感が生きた言葉
日本語には自然や季節に関する語彙が多いと言われています。例えば、雨なら”小雨”、”時雨”、”夕立”、”春雨”など語彙が豊富です。それは雨の降り方ばかりでなく、まわりの情景まで連想させるもので、とても情緒的です。
また、”入道雲”といえば夏、”鶯”といえば春の季語というように、和歌や俳句には季語があり、手紙は必ず時候の挨拶から始まります。色にも、”山吹色”、”紅色”というように植物の名前がついていますよね。
生活の中で季節感を大切にする心が日本語の文化的背景になっていることは、多くの外国人が感銘を受けるところだそうです。
(3)日本語に独特の言葉
他にも、日本語には外国語であまりみられない特徴があります。
例えば、”しとしと” ”ぶるぶる” ”しーん”といった擬音語や擬態語。オノマトペと言われるこれらの言葉は、日常会話や文章中に頻繁に登場しますし、マンガでもお馴染みです。
状況や音を言葉にするのはとても面白く、外国人にも覚えやすいといいます。
また、数を表す概念がないことも日本語の特徴です。複数形がなく、主語の単複が動詞に影響することもない日本語は、シンプルでわかりやすい言語なのだそうです。
そして、日本語は歴史的に多くの外国語を取り入れてきている言語でもあります。古くは中国から、鎖国の時代でもスペインやポルトガルから多くの言葉が日本語に採用されました。
”さぼる”はフランス語から、”イクラ”はロシア語から……というように、もはや教えられなければ外来語だとわからない言葉もたくさんあります。
よく考えると、日本語は実にフレキシブルな言語でもあるのですね。
■親から子どもに伝えたい日本語の大切なところ
では、日本の家庭で育った日本語ネイティブであれば、誰でも自然に上手な日本語が話せるようになるでしょうか。実は、家庭での親の役割が重要だと平野さんは話します。
まだ小さい子どもでも、幼稚園や小学校に通うようになれば、友達と話す言葉と、病院のお医者様や学校の先生に話す言葉づかいは違うことがわかってきます。それを意識的に教えてあげることが大切なのです。
そして、家庭での言葉遣いも注意が必要です。
母親が汚い言葉遣いをすると、子どもも汚い言葉遣いをする子に育ちます。特に、感情に駆られるような場面での親の言葉遣いには注意が必要だそうです。
また、”口に出さないのは美徳”だったのは昔の話。
「ありがとう」といった言葉はもちろん、相手を思いやる気持ちや、自分の考えをはっきりと言葉にして伝えられるよう、日頃から家庭で気をつけるようにしましょう。
いかがでしたか? 「なるほど……、それは日本語だけだったのか!」と思ってしまう、普段日本人が気づかない日本語の良さや、面白さがありますね。
そういった日本語の特徴を知り、これからの日本の子ども達にも、母国語としての日本語の素晴らしいところを意識的に伝えてあげたいものです。
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