音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2010年03月20日
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テーマ: musica latina(82)
ラテン・ポップス界の“お騒がせ女”、人気絶頂期のアルバム


 グロリア・トレビ(Gloria Trevi)、本名グロリア・デ・ロス・アンヘレス・トレビーニョ・ルイス(Gloria de los Ángeles Treviño Ruiz)は、1968年にメキシコ北部で生まれ育ち、1990年代前半のメキシコおよびラテン・ポップ界において一世を風靡したシンガーである。1985年からボキータス・ピンターダス(Boquitas Pintadas)というグループで活動した後、1989年にソロ・デビューした。母国メキシコで火がついた後は、91年の2nd、92年の3rdアルバムで他のラテン系諸国でも人気が出始め、スターダムにのし上がった。こうして、上記2ndアルバム 『トゥ・アンヘル・デ・ラ・グアルダ(君の守護天使、Tu ángel de la guarda)』 (1991年)、『マス・トゥルバーダ・ケ・ヌンカ(史上最高のお騒がせ、Más turbada que nunca)』(1994年)などのアルバムを次々にリリース、シングル曲も続々とヒットさせた。そうした人気絶頂期の只中、1995年にリリースされたのが本作『シ・メ・ジェバス・コンティーゴ(もしもあなたが私を連れていったなら、Si me llevas contigo)』である。

 グロリア・トレビと言えば、アーティストとしてというよりは、海外の芸能ニュースでその名を見たことがあるという方もいるかもしれない。上記のような、彼女の順調なキャリアに狂いが生じ始めたのは、1998年のことだった。一冊の暴露本を契機として、彼女と元夫の二人が未成年者略取の罪を犯しているとの告発がなされた。いったんは姿を消して雲隠れしたものの、挙げ句の果てにはインターポールにまで手配され、2000年にリオデジャネイロ(ブラジル)で身柄を拘束される。ところが今度はブラジルでの拘留中(国際手配で拘留されたがブラジルでは裁判にかけられてはいなかった)になぜか妊娠し、男の子を儲けている。2002年にはメキシコへ戻り、ついには司法の裁きを受けることになるが、結局は証拠不十分で釈放された。ちなみに、この騒動の頃、現地のCDショップからは彼女の作品は一時期総撤去された(釈放された現在は普通に売られているし、新作もリリースされている)。

 本作『シ・メ・ジェバス・コンティーゴ(Si me llevas contigo)』は、そんな一連の騒動が始まる前、いわば黄金期の最後を彩るアルバムで、1995年に発表されたものである。当時、グロリア・トレビには、“メキシコのマドンナ”という形容がよくなされていたが、今から思えば、スマートにダンサブルに迫るマドンナとはかなり毛色が異なる。敢えてこじつけるならば、伝統的女性観に対して挑戦的なパフォーマンスを見せるという点では共通するが、音楽的にはまったく別物なので、マドンナをイメージを期待してグロリア・トレビを聴かない方がいい。

 グロリア・トレビの特徴は、叩きつけるような、ややどすの利いた(したがって低音も強い)ヴォーカルと、激しく動き回るパフォーマンスにある。家出した不良少女が、胸を強調してヘソを出したセクシー系の衣装をまとい、そのままステージを駆け回っているというイメージである。こうしたふざけたパフォーマンスを売りにしていた割には、中身は意外とまとも(?)で、曲と詞は基本的に自作で演じており、ヴォーカルの擦れたハスキーヴォイスが印象的である。

 そうした彼女の特徴のうち、勢いという部分だけで言えば、それ以前のアルバムにも力の入ったおすすめ作もある。けれども、トータル5枚目のアルバムということもあってか、この『シ・メ・ジェバス・コンティーゴ』は、全体の完成度では一番か二番にくる作品と言えると思う。いくつかのスローなナンバーもしっかり歌い上げているあたりが、キャリアの積み重ねを感じさせる。例えば、4.「エジャ・ケ・ヌンカ・フエ・エジャ(決して彼女ではなかった彼女)」では、親に人生の道筋を強要され、なりたい自分になれずにいる若い女性をテーマに歌い、7.「メ・エストイ・ロンピエンド・エン・ペダソス(私はばらばらになっていく)」でも、恋に悩む女性の心情を歌っている。

 何ともお騒がせだったグロリア・トレビも今年ですでに42歳。騒動の後、2004年、2007年とアルバムを発表しているらしいが、残念ながら筆者はこれら2枚はまだ聴いていない。そのうちに入手して聴いてみたいと思っているが、とりあえず現段階では、本作『シ・メ・ジェバス・コンティーゴ』が、上記2ndと並んで最もよく聴いた一枚なので、ひとまずはこのあたりがおすすめといったところである。


[収録曲]

1. El fin del mundo
2. Si me llevas contigo
3. Colapso financiero
4. Ella que nunca fue ella
5. El curita, la niña y la loca
6. Los perros tristes
7. Me estoy rompiendo en pedazos
8. No, no quiero
9. Lloran mis muñecas
10. Soñando

1995年リリース。




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