音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年03月30日
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テーマ: 洋楽(3317)




 ジョン・クーガー・メレンキャンプ(John Cougar Mellencamp、かつてはジョニー・クーガー、その後はジョン・クーガー、また、現在はジョン・メレンキャンプと名乗っている)が1989年に発表した10枚目のアルバムが本作『ビッグ・ダディ(Big Daddy)』である。彼は1951年生まれで、このアルバムの発表時点では37歳だった。アーティストとして不本意な売り出され方をされたものの、やがて一人立ちし、『アメリカン・フール』(1982年)や 『スケアクロウ』 (1985年)のような大ヒットも飛ばした後、つまりはスターの座も名声も手にしてしまった後に発売された1枚ということになる。いったんスターになったら、そのままスター街道を走り続けるロッカーもいる。しかし、その一方で、成功を得て、家族ももち(当時の彼は二人目の妻との間に子供もいた)、ふと我に返る瞬間がそのままアルバム制作や曲作りに反映されるというパターンもある。本作は後者の方で、それまでのアルバムよりも内省的で、ルーツに近づく試みとなっている。

 ジョン・クーガー・メレンキャンプ自身は、本作を評して「今まで作った中で、もっとも基本的で土臭いレコード」と語っている。レコーディングでは、それまでのアルバムのようにシングル曲を意識してのリハやデモテープ作成を重ねるのではなく、演奏メンバーそれぞれが基本的なアイデアを出し合った上で一気に録音した。スタジオに入っていたのも16日間だけだったという。とはいえ、単純な楽器編成ではなく、前作『ロンサム・ジュビリー』(1987年)に続いて、フォーク=アコースティック寄りの音作りをしていて、特に、アコーディオン、ヴァイオリン、ドブロといった楽器の音が印象に残る。

 曲の内容は、パーソナルな性格のものが多い。1.「ビッグ・ダディ」のように個人の人生を歌ったものもあれば、11.「J.M.’s・クエスチョン」(ちなみにJ.M.とはジョン・メレンキャンプのイニシャル)のように、環境問題など一人の人間として疑問を投げかけるものもある。6.「ポップ・シンガー」や7.「ヴォイド・イン・マイ・ハート」では、商業主義的な音楽シーンに生きるアーティストとしての疑問や苦悩を告白する。また、10.「カントリー・ジェントルマン」では、レーガン大統領の人気取りを風刺している。

 おそらく、ジョン・クーガーという人はあまり器用な人間ではないのだろう。彼はインディアナの小さな町で生まれた。その町シーモアは、アメリカ合衆国の南北・東西を結ぶ鉄道の交差点として知られるそうだが、現在も人口2万に満たない(世帯数では7000ほど)の小規模の町である。決して“洗練”や“都会的”という言葉が似合わない場所であり、また彼自身もそういう言葉が似合わない人物である。どちらかと言えば不器用で、飾るよりはストレートな表現で発露される彼のメッセージ性は、ジョン・クーガー自身が生まれ育った環境に由来するということなのだろうか。実はこのアルバムの後、ジョン・クーガーの人生には苦悩の時期が訪れる。今となっては、本作の詞の中ですでに暗示されていたようにも思えるが、二人目の妻との結婚生活の終焉である。その意味でも本作にはパーソナルな告白が含まれていた。

 大人社会に反発し、「ロックは生き様だ」という主張するというロック観が一方にはある。けれども、一人のロック・ミュージシャンの人生や生き方がそのまま音楽に反映され、作品として残されていくというロック観もまた成り立ち得るのだと思う。その場合、その一人の人間(アーティスト)の人生は、10代、20代、30代、40代と、年齢を重ねながら移り変わってゆくものである。ジョン・クーガー・メレンキャンプの場合は、きっとこの後者のパターンなのだろう。その時々に、そのタイミングでの作品が仕上げられ、発表されていく。それは、何も流行に流されるとか、使い捨てられる音楽ということではなく、後で並べてみれば一つ一つの年輪になっているような作品という意味である。本盤は、そうした彼の“年輪”の中でも特に目立った1本の年輪として位置づけられるのだと思う。



[収録曲]

1. Big Daddy Of Them All
2. To Live
3. Martha Say
4. Theo And Weird Henry
5. Jackie Brown
6. Pop Singer
7. Void In My Heart
8. Mansions In Heaven
9. Sometimes A Great Notion
10. Country Gentleman
11. J.M.'s Question
12. Let It All Hang Out *隠しボーナストラック(クレジットはなし)

1989年リリース。




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