ウェイン・ネルソン(Wayne Nelson)を中心に“生きながらえた”リトル・リバー・バンド(Little River Band)による2000年の復活作。このネルソンという人物はオリジナルメンバーではない。1970年代後半にオーストラリア出身バンドとして世界進出を果たし、その絶頂期の終盤、1980年に加入したメンバーである。以前にリトル・リバー・バンドの最高作として紹介した『光ある時を』に所収のヒット曲「ナイト・アウル」のリード・ヴォーカルも担当していた人物だ。その彼が、現在ではバンドをリードする中心メンバーとなっている(実際には他のオリジナル・メンバーとバンド名使用をめぐる複雑ないきさつがあって、相手側の立場からはネルソンがバンド名の使用権を奪い取ったと批判されている側面もある)。
『ホエア・ウィ・スターテッド・フロム(Where We Started From)』(われわれがスタートした場所から)というタイトルが示すように、本盤は、原点回帰を目指したアルバムである。とはいえ、別にサウンドそのものが70年代に完全に回帰するわけはない。上の通り、もはやオリジナル・メンバーはいない。それゆえ、近年のリトル・リバー・バンドは“懐メロ・バンド”とか、“再生産ばっか”と非難されることがある。要するに、過去の栄光(「リミニッシング(追憶の甘い日々)」に代表されるような70年代後半~80年代前半のヒット曲の栄光)にしがみついて、メンバーは変われども同じ曲をやり続けているという非難である。しかし、本盤をちゃんと聴けば、このバンドはそうした批判とは違う方向性にちゃんと向かおうとしていたことがわかる。
1. Where We Started From 2. This Place 3. Magazine Girl 4. Just You And I 5. Night Owls 6. I Think I Left My Heart With You 7. Who Made The Moon 8. Look In Your Eyes 9. American Way 10. Lead Me To Water 11. Cool Change