やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2007年06月19日
XML
カテゴリ: 名作の散歩道
ひょいと読み返したくなり捜したが、岩波文庫のは品切れ、講談社文芸文庫の略本で間に合わせた。

『デカメロン』またの名を『ガレオット公』は14世紀のイタリア文学。古典中の古典。

所はイタリアフィレンツェのペスト蔓延の死の影から逃れて、妙齢の貴婦人7人、騎士3人が田園領地につどい、10日間に1人一短編、1日十篇を語る、百物語。

百話もあるのだから多岐にわたっているのだが、機知に富んだ話し振りは軽妙かつ、色っぽく(エロっぽく)あたかも人生哲学を呈しているからおもしろい。

今にして思えば、エロと言ったって直接の言葉は使わずぼかしているので、なお想像力が増したのである。岩波のは挿絵があったので、よかったけど。

この講談社文芸文庫には略されているけれど、昔読んで強烈に覚えている話は、

ワインの大きな樽だかなんだかの不具合を、亭主にもぐらせて見てもらっているおかみさんが、覗き込んでいるその姿のまま、恋人になにをさせる…。当然息遣いも荒く、亭主もぐりながらも「???…どうした」そしておかみさんの答えが「…」。

もちろんこんなのばかりではなく、腐敗している聖教者を見てかえって信仰心がわくだとか、日本の「安寿と厨子王」みたいなのや、オカルトっぽいのもある。

百話のうちには、地理的にもヨーロッパ全土をかけめぐり話を集めているので、職業、階級、地域、14世紀ヨーロッパの世界がわかるのである。

特に話し手に貴婦人が7人もおり、女性崇拝の騎士が3人もいるので女性像が生き生きしているのがいい。ボッカチョも「あとがき」で女性よ頑張れとあかるく後押ししているみたいである。


追記。私が10年前にイタリア旅行した時、フィレンツェの中央駅のそばにあった「聖女マリーア・ノヴェッラ教会」の壁をもっとよく見ておけばよかったとつくづく思う。そこがそもそも『デカメロン』の出発地点、終点であったのだと今回わかった。おぼろにしか覚えていないのが残念。


デカメロン(上) (講談社文芸文庫) [ ジョヴァンニ・ボッカッチョ ]


デカメロン(下) (講談社文芸文庫) [ ジョヴァンニ・ボッカッチョ ]





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020年02月04日 19時06分24秒
コメント(0) | コメントを書く
[名作の散歩道] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

ばあチャル

ばあチャル

コメント新着

牧子嘉丸@ Re:「古本」松本清張(09/25) New! お邪魔します。この主人公にはモデルがい…
ばあチャル @ Re[1]:『時の扉』(06/23) todo23さんへ 邦生→邦生 ありがとうござ…
todo23@ Re:『時の扉』(06/23) 懐かしい名前を見かけ、私も久しぶりに読…
alex99 @ Re:2024年1月の読書まとめ(05/26) おひさしぶりです ご無沙汰しております …
七詩 @ Re:あれから(05/09) おかえりなさい ばあちゃるさんの読書日記…

お気に入りブログ

日常にしのびよる…… New! analog純文さん

「刀伊入寇~藤原隆… New! 七詩さん

北海道猟友会がヒグ… New! tckyn3707さん

(後編)必ず護身に… New! alex99さん

パブロ・ベルヘル「… New! シマクマ君さん

10/19-1:山形県:鶴… 天地 はるなさん

フリーページ

耽溺作家の作品群


山本周五郎の世界


清張ワールド


クリスティの手のひら


時代物の神様正太郎


宝石箱


子供の頃の読書


作家別読了記録【あ】行


【あ】 日本文学


【ア】 外国文学


【い】 日本文学


【イ】 外国文学


【う】 日本文学


【ウ】 外国文学


【え】 日本文学


【エ】 外国文学


【お】 日本文学


【オ】 外国文学


作家別読了記録【か】行


【か】 日本文学


【カ】 外国文学


【き】 日本文学


【キ】 外国文学


【く】 日本文学


【ク】 外国文学


【け】 日本文学


【ケ】 外国文学


【こ】 日本文学


【コ】 外国文学


作家別読了記録【さ】行


【さ】 日本文学


【サ】 外国文学


【し】 日本文学


【シ】 外国文学


【す】 日本文学


【ス】 外国文学


【せ】 日本文学


【セ】 外国文学


【そ】 日本文学


【ソ】 外国文学


【た】行


【た】 日本文学


【タ】 外国文学


【ち】 日本文学


【チ】 外国文学


【つ】 日本文学


【ツ】 外国文学


【て】 日本文学


【テ】 外国文学


【と】 日本文学


【ト】 外国文学


【な】行


【な】 日本文学


【に】 日本文学


【ぬ】 日本文学


【の】 日本文学


【ノ】 外国文学


【は】行


【は】 日本文学


【ハ】 外国文学


【ひ】 日本文学


【ヒ】 外国文学


【ふ】 日本文学


【フ】 外国文学


【へ】 外国文学


【ほ】 日本文学


【ホ】 外国文学


【ま】行


【ま】 日本文学


【マ】 外国文学


【み】 日本文学


【ミ】 外国文学


【む】 日本文学


【メ】 外国文学


【も】 日本文学


【モ】 外国文学


【や】行


【や】 日本文学


【ゆ】 日本文学


【ユ】 外国文学


【よ】 日本文学


【ら】行 【わ】行


【ラ】 外国文学


【り】 日本文学


【リ】 外国文学


【ル】【レ】【ロ】 外国文学


【わ】 日本文学


【ワ】 外国文学


【共著】【マンガ・コミック】


「読みたい本・注目の本」記事録


『世界の「今」に迫る10冊』


吉屋信子『私の見た人』の昭和の作家


ウェヴスター『あしながおじさん』に出てくる本


日本の作家(ちくま日本の文学全集収録)


昭和の作家(1962年 朝日新聞記事より)


映画鑑賞会


2024年


カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: