森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2016.07.02
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生活の発見誌28年7月号に水谷啓二先生の「純な心」の説明がある。

入院生が炊事をしていて皿をわった時の話です。
「しまった。おしいことをした。なんとかならないかな」思わず驚いてつなぎ合わせてみる。
あるいはまた、掃除機を持ってきて人がケガをしないように、こわれた破片を片付ける。
これが「純な心」です。

ところが、みんな一瞬「しまった」という心はひらめくんだけれども、自分でははっきり自覚しない。
そこで、すぐに第2念、第3念というものが起きてくる。
こんなところへ皿を置いておくのが悪い。いまさらつなぎ合わせても仕方がない。
このことを人が知ったら笑うんではないか。
あるいはアイツはどうもそそっかしいといわれるんじゃないか。
能力のない奴と見なされるのではないか。
森田先生にしかられるかもしれない。考えただけでも気が重くなる。
その時にどう言い訳をしたら許してもらえるだろうか。等と考える。
こわれた皿のことはもはや頭の中にはない。
これは「純な心」からどんどんかけ離れてしまっています。

「純な心」は同じ過ちはしない。
それは自己内省ではなく、物事本位に頭の中も体も動いているからである。
今度近くに皿があれば、割れないところに移したり、すぐに片づける。
こういう人は自分の心が皿に向いているので、自分とその皿の持ち主の気持ちが、その大事な皿そのものになって、残念という気持ちが一致しているので、ともに惜しみ、ともに悲しむという「共感」の心が生まれる。

「また叱られる」と思うような人は何度でも同じ過ちを繰り返す。
注意しなければと、左右を見渡し、ハラハラした落ち着きのない行動をとる。
これは皿に心が向いてなく、自分の心に注意が向いているからである。
「どうぞお許しください」と言えば、その皿はどうでもよい。
自分が許してもらうことができれば、一件落着という気持ちが強いから、持ち主と一緒に品物が惜しいという共感は持てず、ますます小言をいわれるということになる。

入院生の場合、こっそり外出して、どこかで皿を買ってきて返してみたりする。
返したのだから自分のミスを無かったことにしようとしている。
こんな人は神経症から解放されることは程遠い。

また第2念、第3念から出発する人は、もともと神経質性格を持っているために、すぐに自己内省して悲観的になり自己否定するようになる。
どうも俺みたいに内気な奴はだめだ。俺は不器用だ。
こういう人間では、社会にでて立派に成功することができない。
ああ情けない。死んだ方がよさそうだ。
ちょっとしたことを、自分の今後の人生を左右するような大問題に発展させてしまうのである。
いつも核爆弾の発射ボタンを押すかどうかというような選択に迫られるのである。
つまり容易に自暴自棄になり、なんでも投げやりな気持ちになってしまう。

ではそういう人はどうすればよいのか。「純な心」は誰にも湧いてくる。
しかしそれは一瞬であり、ともすれば見過ごされてしまう。
そのあとで第2念、第3念がのさばってくるという流れになっている。
ほとんどの人はその流れになっている。
そして普通は第2念、第3念の感情に基づいて対応策を観念的に決定しようとしているのである。

ここが問題なのである。
だから第2念、第3念の感情が湧いて来た時に「ちょっと待てよ。これって純な心だろうか。それとも2念、3念だろうか」と少し立ち止まって考えてみればよいのである。
そして最初に湧いてきた「純な心」を思い出してみることである。
「純な心」が思い出せればしめたものだと思う。そういう癖をつけることである。
なかなか自分のものにならないと思う。
最初は10個あれば1個ぐらい立ち戻ることができれば十分である。
うまくいかないのは想定済みなのである。罪悪感、自己嫌悪に陥る必要はない。
そういう方向に向かっているということが大きな意味を持つ。
そしていつか遠い将来そういう能力を身につければよいのだ。
だいたい能力の獲得というのは試行錯誤を繰り返すものだ。
二歩前進一歩後退の繰り返しの方が確実に自分のものになる。
でも、この「純な心」の体得は事実本位の生活態度を身につける上では、ひとつの大きな柱となるということを忘れてはならない。





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