森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.05.05
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最近適応障害という言葉をよく聞く。
症状的にはうつ病とよく似ている。うつ病になると、次のような症状がある。
憂鬱である、何をしても面白くない、食欲がない、睡眠障害、じっとしていられなくてつねに体を動かしている。意欲が湧かない、自分は価値のない人間だと思う、物事に集中できない。
私が生きていては、周りの人に迷惑がかかる。自殺願望がある。

適応障害の人が誤ってうつ病と診断されて、薬物療法に入ることもあるそうだ。
この場合は、本当の意味のうつ病ではないので、なかなか治りにくい。
特に最近「新型うつ病」と診断される場合、そのほとんどは適応障害であると言われている。
その場合でも、本人は死ぬほど苦しいことに変わりはない。
「新型うつ病」も、症状的にはうつ病とほとんど変わらないという。
だが、休職に入り、ストレスを取り除くと途端に元気になる。
休暇中は、気分転換の趣味や旅行などには積極的に取り組んでいる。
資格試験に挑戦するような人もいる。
つまりストレスがなくなると、いろんな症状が速やかに霧散霧消してくるのだ。
本当のうつ病の場合は、ストレスがなくなっても、すぐに元通りに元気にはならないという。
だから「新型うつ病」の場合はただ単に仕事をさぼっているとみなされることもある。

それでは適応障害というのはどういうものなのか。
家庭、学校、職場環境にうまくなじめないことで生じる心のトラブルで、うつや不安、意欲や自信の喪失、体調面の不良などを示しやすいが、ケースによっては、イライラして怒りっぽくなったり、嗜癖的な行動にのめりこむといった行動上の問題となって表れることも少なくない。
環境やライフスタイルの変化、負担や責任の増大にともなって起き、挫折や失敗、叱責や非難といった否定的体験、孤立的状況などが誘因となることが多い。
適応障害は、不適応を起こしている環境から離れたり、ストレスが減ってくると、速やかに回復するのが特徴である。
(ストレスと適応障害 岡田尊司 幻冬舎新書参照)

私の場合は、中学、高校と大学卒業後に就職した2つの職場で適応障害が起きた。
対人恐怖症があったために、他人から非難されたり、無視されることを恐れていた。
人から見捨てられるようなことがあると、社会的には死んだも同然と考えていた。
それだけはなんとしても避けたいといつも思っていた。
自分の弱みや欠点だと思えるようなことは人目に触れないように隠してきた。
ミスや失敗をすると見捨てられてしまうのではないかという極度の恐れがあり、積極的な行動はできなかった。心から心を許せる友人はほとんどいなかった。職場になじむことはできていなかった。
そういう防衛的な生活をしていると、抑うつ気分が強くなり生きていくことが本当につらかった。

それでも定年まで仕事を続けて、今こうして生きているのはどうしてだろうか。
生活の発見会の集談会で出会った人たちが、「心の安全基地」と機能していたからではないかと思う。
そこで会った人たちとの交流がなかったとしたら今はなかったかもしれない。
森田理論学習では、神経症からどうすれば回復できるのかが分かった。
また神経質性格を活かして、これから先どう生きて行けばよいのかも理解できた。
これも大いに役立ったと思っている。

職場での人間関係のほうはとうとう最後まで改善はできなかった。
職場での人間関係は定年まで悪かったのだ。
そこで私は仕事は生活費を稼ぐところと割り切っていた。
生活のために仕方なくしているのだと言い聞かせていた。
タイムカードを押しに行く「月給鳥」というスタイルを踏襲していた。
立場上中間管理職の仕事もしたことがあったが、それ以上出世しようとは考えていなかった。

その代り、仕事以外のことには積極的に手を出していった。
スキー、テニス、釣り、トライアスロン、楽器演奏、資格試験の挑戦などである。
職場での人間関係は薄氷を踏む思いだったが、仕事以外にいつも夢中になって取り組むことができるものを持っていた。芸が自分を助けていたのである。
上司から見ると、なんというやつだと思われるかもしれないが、会社での適応障害を抱えながらも定年まで勤めあげ、満額の退職金を手にした自分をほめてやりたい気持である。
今振り返ってみると、岡田尊司先生が言われているように、無意識のうちに、不適応を起こしている環境から離れたり、ストレスを減らすための方策を自然にとっていたのである。





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Last updated  2017.05.05 06:30:06
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