森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.08.07
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形外会の記録にこんな話がある。
松本さんが森田先生に質問した。
森田先生が「絶えずハラハラしているようであれば、神経症がよくなる」と言われた事は、自分は1人で自分の部屋にいるときには、その必要はないのではないか。
松本さんは、仕事をしているような時はハラハラしていてもよいが、家にいるときはリラックスして精神が弛緩状態になっても構わないのではないか、といわれているのだ。

これに答えて森田先生は次のように言われている。
松本君の質問の仕方は、自分をハラハラさせなければならない、自分をかくあらなければならぬと、人為的に作為しようとするものである。
ハラハラというのは、あれもしなければならない、これもしたいという欲望の高まることであって、これがために自分の異常に対して、ひとつひとつこだわっていられなくなり、そこに欲望と恐怖との調和ができて、神経質の症状がなくなるのである。
ちょっと考えると、忙しくて気が紛れる、という風に解釈されるようであるけれども、決してそれだけでは無い。
ここの療法で、その症状だけは、単に苦痛もしくは恐怖そのものになりきることによって、治すことができるけれども、これが根治するのに、さらに欲望と恐怖との調和を体得することが必要であります。 (森田全集第五巻 112ページより引用)

このやり取りを私なりに考えてみた。
松本さんは、神経症を治すためには仕事を見つけて、いつも精神状態を緊張させておくということは大切だということはわかりました。
だから糸車を回しつづけるハツカネズミのように、日中は動き回ればいいですね。
でも日中動き回っていると、夕方には心身ともに疲れてきます。
そんな時は緊張状態から解放してあげて、心身を休ませてあげる必要があるのではないですか。
それだけ聞けばもっともな理屈のように思えてくる。
しかしこのような論法で森田理論に議論を吹っかけていけば、なかなか話が噛み合っていかない。

議論を噛み合わせようとすると、どうすればいいのだろうか。
それは森田先生が形外会に集まった人に対して何を伝えようとしているのかを考えることだと思う。
森田先生は、神経症を治すためには、神経を四方八方に張り巡らせて、 「無所住心」の生活態度の養成が極めて大切であると言われている。神経症に陥った人は、自分の気になる症状、一点に神経を集中させている。
一点に集中された注意や意識が、周囲にまんべんなく分散されるようになると、症状だけに関わっておられなくなる。
すると、精神交互作用が働かなくなってくる。神経症がアリ地獄のそこに落ち込んで、固着してしまうということを防ぐことができる。観念上の悪循環、行動の悪循環を断ち切ることができるのである。
反対に、生活のほうは張り合いが出てきて、観念上の悪循環がなくなり、行動の良循環が始まるのである。

松本さんは、頭の中で、 1日中緊張状態で生活していると心身ともにおかしくなってしまうのではないか、と考えられたのであろう。森田理論を学習していると、言葉尻にとらわれて、ああでもない、こうでもないと議論する方向に向かうことがある。
こういう時は、森田先生が手を変え品を変えて何を我々に伝えたいのだろう、という原点に戻って考えてみる必要があると思う。我々は森田理論から神経症からの解放、神経質性格者としての生き方を学びたいのであって、森田先生の言われていることが、正しいとか間違っているとかの判定をしているわけではない。





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Last updated  2017.08.07 06:30:05
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