森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.05.10
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水谷先生が森田先生のところに入院されていたときにこんなことがありました。

水谷青年が、一年草の草花に一心に水をやっていました。
森田先生がやってきて「君は何をしているのだ」といわれました。
この草花は一年草で、花はすでに咲きつくし、自然に枯れるべき運命にある。
じっと見ると誰にでもすぐに分かることだ。君にはそれが分からないのか。

水谷青年は、森田先生に「見つめよ、見つめよ」と繰り返し指導されていました。
普段からその言葉を繰り返して反復していたそうです。
学校から帰ると、すぐに草花のところにとんで行って水をやっていました。
森田先生の言葉にとらわれて、先生の言われたとおりに実行しなければいけないと自分に言い聞かせていました。

いつも草花のことを気にかけていなければならない。
ほかのことは放り投げても、草花から目を離してはいけない。
草花に注意や意識を無理やりでも振り向けていなければならない。
そういった「かくあるべし」にがんじがらめに縛られているために、心は草花には向いていないのです。一年草の草花がその命を終わらせようとしていることにはまったく気づかない。

その時意識はどこに向いているのか。
自分の行動を見て、森田先生が「君は私の言ったことを忘れないで、きちんと実践している。大したものだ。これからもこの調子で頑張りなさい」などいう評価を期待しているのだ。あわよくばみんなの前で、水谷君を見習って行動するようにと誉めてもらうことを期待している。

森田先生の「見つめよ」という言葉は、じっと見つめていると何らかの感情や連想が沸き起こってくるはずだ。もともと備わっている豊かな感情を泉のごとく湧きださせることを狙っているのだ。事に触れ、時の経過とともに、様々な豊かな感情が生まれてくる。
森田ではそれがないとなにも始まらない。
感情が湧き出てくると、関心や興味が湧き、気づきや発見や工夫などを思いつくようになる。
それをもとに行動していくと、生活はどんどん建設的、生産的、創造的に発展していく。

水谷青年と森田先生の決定的ともいえるようなすれ違いはいかにして生まれたのか。
水谷青年は劣等感が強く対人恐怖症といわれている。
そういう人は他人の言動に振り回されやすいという特徴があります。
裏を返せば、自己信頼感が持てない。自己肯定感がないわけです。
自分はこう思います。自分はこうしたいのです。自分はこうして生きていきます。
そういう芯のようなものが確立されていないので、他人に振り回されてばかりなのです。

今まで地に足のついた生活習慣がないために、小さな成功体験の積み重ねができていないのです。小さな成功体験を積み重ねていると、自信がついて、自分はやればできるという自己信頼感が育ってきます。そのためには、まず森田の言う「凡事徹底」の生活習慣を維持することが大切になります。これはやる気になれば誰でもできます。

そのうえで高良武久先生は、「これは誰にも負けないという特技・専門分野を持ちなさい」と言われています。10年一つのことに取り組めば、誰でもその道のエキスパートになれるでしょう。
それが自信となり、その後ろ盾があると、どのような人生の艱難辛苦に対しても、立ち向かっていけるようになるのです。対人恐怖症は、あってもほとんど問題にならなくなるのです。
感情を発生させて、生活を活性化する前に、自己肯定感を作り出すことに取り組む必要があります。





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Last updated  2020.05.11 07:26:07
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