森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.11.04
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私たちはどういう境遇の下でこの世に生を受けたかにより、その後の人生が運命づけられてしまいます。

どんな国に生まれたのか、どんな時代に生まれたのか、どんな家に生まれたのか、どんな親から生まれたのか、男に生まれたのか、女として生まれたのか、どんな性格に生まれたのか、どのような潜在能力を持って生まれたのか、五体満足の身体で生まれたのか、そうではなかったのかなどです。

このような境遇は自分が選択することはできません。
その事実を価値批判しないで受け入れるしか方法はありません。

ところが人間という生き物は、なかなかその事実をすんなりと認めようとはしません。
知恵がついてくると、現実、現状、事実を上から下目線で見下ろして、価値批判するようになります。そして反抗し、否定するようになります。
自分という一人の人間の中で、敵と味方に分かれて、絶えず戦いを繰り返しているようなものです。力関係から見ると、観念のほうが圧倒的であって、事実の方を痛めつけています。
事実の方は誰の援助も受けられず、無援孤立状態に陥ります。
雲の上にいる自分が現実の自分に寄り添ってくれるようになると精神的には楽になるのですが、そういう方向に向かいにくいのが人間の性かもしれません。

例えば自分を生んで育ててくれた親の恩を忘れて、親に反発してしまう人が多いのが現状です。親がパーフェクトであったならば、今の自分はこんなに苦しむことはなかったはずだ。
親のしつけ、子育て、教育はあまりにも問題が多かった。
不幸な子供をこの世に作り出しただけだ。あってはならなかったことだ。
だいたい親になる資格のないような人が、子どもを作ったのだから救いようがない。

一方親は子供のことは目の中に入れてもいたくない。
むしろかわいくて、心配で仕方がないのです。
でも子供の方は「親の心、子知らず」で反発するばかりです。
こうなりますと、必然的にいがみ合い親子の断絶となります。
そして自分が親になった時に、実の子供から同じような目にあわされることになるのです。
まさに歴史は繰り返されているのです。

こういう人は、親だけを拒否し、否定しているだけでは済まないのです。
生まれた国、時代、家柄、性別、性格、能力、容姿などすべての分野にわたって、批判的・否定的な立場に立っているのです。これらの多くが自分と敵対関係にあるのです。
自分と対決している存在として自己認識しているのです。
心穏やかに暮らせるはずがないのは当たり前のことです。

この問題の解決策は森田理論の中にあります。
一言でいうと事実唯真という考え方です。
難しい言葉ですが、「かくあるべし」という態度を減少させて、事実本位に生きていくということです。事実を受け入れていくと、無駄なエネルギーを浪費することがなくなります。
事実を見つめていると、建設的、生産的、創造的な課題が見えてくるようになります。
そこにエネルギーを投入すると、生きがいが生まれてきます。
目標が達成できれば自信もつきます。
そしてさらに大きな目標を持てるようになります。
人生の苦しみはありますが、神経症的な葛藤や苦悩はなくなります。

森田理論は、自分の境遇を価値批判することはやめましょう。
どんなに過酷で理不尽だと思っても、その事実を認めて受け入れる態度が何よりも大切なのだと教えてくれています。そこにしっかりと足場を固めましょう。
足場を固めたら、それぞれの人が、それぞれの能力、持てる力を精いっぱい活用して、運命を切り開いていきましょうという理論なのです。
その方向性を目指すことが、人間としてまっとうな生き方ではありませんかと教えてくれています。

事実本位の立場に立てば、どんなに反発していた親でも、同じ時代を懸命に生きてきた仲間として、親しみが湧き上がってくるのではないでしょうか。
いつの時代でも100%完全な親はいません。
不完全な親でありながらも、元々は子供の成長と幸せを願ってきたのです。
そんな親が子どもに対して、何とか幸せになってもらいたいと思っていたのに、思い通りにならなかった。むしろ子供との人間関係がぎくしゃくしてきた。
心の中では申し訳なかった。親としては失格だったねと謝っているのです。
その思いをくみ取って、心から許してあげることができないものでしょうか。
親を許せるようになった時、親子の関係はよくなります。
さらに自分を取り巻く境遇に対しても、寛容な気持ちで受け入れることができるようになるのです。対立関係にあった状態から、友好関係に変わるわけですから、生きやすくなるのです。
そうならないと、自分が親になったときに、子どもに対して申し訳なかったと懺悔するようになるかもしれません。
この問題は、不完全な親、理不尽なことをいう親であっても、その事実を認めて受け入れることができるかどうかにかかっているように思います。





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Last updated  2020.11.04 20:42:08
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