森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.12.10
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高良武久先生のお話です。

「あるがまま」の第一の要点は、症状あるいはそれにともなう苦悩、不安を素直に認め、それに抵抗したり、否定したり、あるいはごまかしたり、回避したりしないで、そのまま受け入れることである。

第二の要点は、症状をそのまま受け入れながら、しかも患者が本来持っている生の欲望にのって建設的に行動することで、ここが単なるあきらめとは異なるところである。

症状に対してもあるがままであるとともに「向上発展の欲望」にたいしても、あるがままなのである。(森田療法のすすめ 講談社 124ページより引用)

青木薫久先生は、第一の要点を「受動的側面」、第二の要点を「能動的側面」といわれています。そして「能動的側面」のほうがより大事であるといわれています。

「あるがまま」という言葉には2つの要点がある事は間違いない思います。
まず不安、恐怖、違和感、不快感をそのまま受け入れるという側面があります。
それを取り除こうとし、逃げまくるというような態度で対決しないということです。
不安共存の態度です。そういう状態を堅持したうえで、第2の要点は、日常茶飯事、家事、仕事、勉強、子育て、介護、趣味などに真剣に取り組みましょうということです。

ここで私が違和感をもつのは、この2つの要点を対立的に捉えられているということです。
第1の要点を身につけた上で、第2の要点に取り組みましょうという点です。
また第一の要点よりも、第2の要点の方が重要ですといわれているように感じるのです。
この指摘を見誤らないようにしてくださいと言われている点です。
好意的に考えると、分かりやすく説明するために、便宜的に分けて考えられているのかなと思います。しかし別々のものとして取り扱うと、実生活には役に立たなくなる。

私の考えは、不安と欲望はあざなえる縄のようなものであると思っています。
ですから対立的に捉えるよりも、この2つは密接な相関関係があるという考えです。
その2つの調和させて、いかにバランスを維持していくのかにエネルギーを投入していくべきであると考えているのです。

不安は生命の安全を確保するうえでなくてはならないものです。
不安を感じることで、ミスや失敗を未然に防ぐことができます。
また不安を感じることで、欲望の暴走を制御しているという側面もあります。
つまり、不安は私たちの生活の中で大いに活用していくべきものだということです。
これは不安をただ単に受け入れるというよりは、むしろ不安が元々持っている役割を積極的に評価して、生活の中で活かしていくべきだということです。

この不安の役割と生の欲望の発揮との関係性はどうなっているのか。
これは自動車のアクセルとブレーキの関係で考えると分かりやすいです。
目的地に行くためには、アクセルを踏み込んで車を走行させることが前提になります。
そうしないと、そこにとどまったままになります。
つまり生の欲望の発揮がなければ、何も始まらないということです。
ストレスが溜まり、無為の人生で終止符を打つということになります。

では何も考えないでアクセルを踏み続けるだけでよいのでしょうか。
信号無視をする。坂道や急カーブでアクセルを踏み続けてもよいのでしょうか。
そんなことをすれば、自分の生命の安全は確保できません。
他人を巻き込んで大惨事を引き起こします。
つまり状況に応じて、ブレーキを適宜踏み込んで、事故を未然防ぐ必要があるのです。

私はこのブログでサーカスの綱渡り、ヤジロベイの話を何回も取り上げてきました。
不安と欲望は、それぞれを単独で取り上げて問題視するという態度ではダメなのです。
相対性原理を視野に入れて、2つをいかに調和、バランスさせていくか。
そこにきちんと焦点が当たっていないと、混迷の度を深めるばかりであると考えているのです。
森田理論全体像の中では、不安と欲望のバランスの維持というテーマは、東の横綱にあたると考えています。それほど森田理論の核になる考え方です。
ちなみに、西の横綱は、どんな状況に陥ろうとも、事実を大切にして、事実から出発するという態度を身につけることです。
ここで声を大にして言いたいことは、不安と欲望を別々のテーマとして取り上げるのではなく、一つのテーマとして取り上げましょうということなのです。





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Last updated  2024.06.01 23:30:11
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
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