森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2021.04.25
XML
森田先生が入院患者の日記を紹介されている。

「彫刻をしたいと思ったが許されなかった。それで靴下の修繕をした。自分はやはり何かに専念したい」

これに対して森田先生曰く。
「専念したい」という文句が、どうも面白くない。
自分は絶えず何かをしていたい。そうでないと、迷いが出てきて困ると言っている。
絶えず何かをしていたいなら、白鼠が車を回すような、あんな仕掛けでもするとよい。
精神病者で、絶えず室内をグルグル回っていることがあるが、そんな真似でもしたらよいかも知れない。迷いを払いのけるために、何かをするとは、ちょっと面白い工夫のようではあるが、それはかえって精神錯乱法に過ぎない。
ここでは迷いは迷い、疑いは疑い、苦痛は苦痛しなくてはいけないと言って教えるのである。
(森田全集第5巻 659ページ)

神経症で日常生活が後退していた人が森田理論を学ぶと、「不安を抱えたままなすべきことをなす」ことを実行することが大切なのだなと理解します。
そして馬車馬のように変身してがむしゃらに行動するような人が出てきます。
すると注意や意識が内向きから外向きに変わってきます。
神経症の苦しみがすっとなくなってくるように感じるのです。

これ自体は間違いありません。
むしろその実行力に対して、最大限の拍手を送りたいと思います。
普通は理解できても、ほんとにそうなのかなと頭の中で思考錯誤するばかりで、実行には至らない人も多いのです。
神経症が治るということからすると、この段階は10段階の5ぐらいにあたると考えています。
今まで0だったものがいきなり5に上がるのですから、たいしたものだと思います。

しかしこのやり方は、自分を無理やり奮い立たせて行動に駆り立てていますので、自然に体が反応して、習慣化しているとはいいがたい。
最初は規則正しい生活、日常茶飯事を丁寧に行うために、自分を行動に駆り立てていくことは必要になると思います。習慣化するまでは自分を叱咤激励することが肝心です。

問題はある程度生活力が回復し、精神的に安定した時です。
その時に行動の意味について考える必要があります。
森田で理論では、不安を軽減するために実践や行動力をつけましょうと言っているのではありません。それは人間として生きていくためには、当然なことではありませんか。
必要なことであり、人間であれば誰でもが取り組むべき課題です。
それを今まで神経症を隠れ蓑にして、してこなかっただけのことです。
必要なことに必要なだけ取り組むことが本来の旨趣なのです。
白鼠が車を回すような行動で、不安を軽減させようとする過剰な行動は長続きしません。
エネルギーを使い果たして、しんどいと思うようになると、元の木阿弥になる可能性もあります。

つぎに、不安の役割や特徴、不安と欲望の関係、不安への対処の仕方を学習する必要があります。森田理論では、神経症のもとになる不安は、取り除いてはいけない。
自然現象なので、取り除くこともできない。
またイヤな感情から気分に振り回されて逃げ回るようなことは避けなければならないと言っています。不安との共存共栄を目指しているのです。
このことが分かるようになると、不安を目の敵にしなくなります。
今まで戦う相手として認識していたものが、実は自分の味方だったということが分かるということです。不安は信号機でいえば、黄色や赤色を点滅させて、注意喚起を促してくれているのです。それをありがたくいただいて、慎重に行動するようにすればよいのです。
不安と欲望の関係では、欲望の暴走に歯止めをかけるという重要な役割を持っています。
これらのことを森田理論学習で深耕して、不安への対処方法を誤らないようにする必要があるのです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2021.04.25 06:20:05
コメント(0) | コメントを書く
[不安の特徴と役割、欲望と不安の関係] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

森田生涯

森田生涯

Calendar

Comments

X youhei00002 フォローしてください@ Re:愛着障害について(03/12) X youhei00002 フォローしてください
森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
stst@ Re:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、こんばんは。 過去に何度かコ…

© Rakuten Group, Inc.

Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: