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6月13日 角川文庫 縁切り姫の婚約 白土夏海さん6月17日頃 スピラnovel 追放された期待外れ聖女ですが、 聖婚により魔霊伯爵様に嫁ぐことになりました 綾束乙さん6月下旬 レジーナブックス 捨てられ令嬢、皇女に成り上がる 追放された薔薇は隣国で深く愛される 冬野月子さん7月12日 富士見L文庫 暴君公爵の不敵な溺愛 「思い出すまで逃がさない」と迫られてます 教山ハルさん 7月22日 密猫F文庫 初恋の美貌の魔公爵の一途な溺愛 末姫様は実は前世は魔女でした!?(仮) 葉月エリカさん7月27日頃 スターツ出版文庫 鬼神の100番目の後宮妃~深紅の寵愛~ 皐月なおみさん 皇后さまの官能小説 香久乃このみさんこれで7月まで出揃った感じですかね。とはいえ、実際に書店で見ると購入してしまいそうな本も多々あるので取捨選択をきちんとしなければ。
2024.05.31
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2024年5月刊スターツ出版文庫著者:クレハさんあやかしの本能を失った玲夜だったが、柚子への溺愛っぷりは一向に衰える気配がない。しかしそんなある日、柚子は友人・芽衣から玲夜の浮気現場を目撃したと伝えられる。驚き慌てる柚子だったが、その証拠写真に写っていたのは玲夜にそっくりな別の鬼のあやかしだった。その男はある理由から鬼龍院への復讐を誓っていて…!?花嫁である柚子を攫おうと襲い迫るが、玲夜は「柚子は俺のものだ。この先も一生な」と柚子を守り…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 鬼龍院柚子=玲夜の「花嫁」 入籍後は将来の夢の為に調理師専門学校に通っている。 鬼龍院玲夜=あやかしの頂点・鬼の一族の次期当主。 鬼龍院千夜=玲夜の父。鬼龍院家の当主。 狐雪撫子=妖狐一族・狐雪家の当主。夫との関係に悩み、謎の人物から預かったあやかしの本能(花嫁への執着)を消し去る・神器で見事離婚を成し遂げた「花嫁」の穂香。彼女は神器で玲夜をも刺し、結果彼もあやかしの本能を失うことに。だが、玲夜の柚子への想いは本能など無くとも揺らぐことなく、二人は離婚の危機を乗り越えた。神器はあやかし・烏羽一族が管理していたそうだが、何者かに持ち出されていた。そこで神子・サクの生まれ変わりである柚子によって神の元に丁重に返還することになった。事件はこれで終息したように思われたが、気になるのは穂香の証言で、神器をくれたのは玲夜そっくりの青年だということ。同じ頃、玲夜の側近の一人・桜河は女性秘書からのタレコミで玲夜の浮気を示唆され、首を捻っていた。良くも悪くも今は柚子一筋の主が不倫するなど有り得ない。だが、主の名誉のために桜河は調査に乗り出した。一方、柚子は調理師専門学校の同期で友人の芽衣からショッキングなものを見せられていた。それは、玲夜らしき人物が女とイチャつき、ホテルに入って行く姿の画像。離婚調停になった時に有利を取れるようにとわざわざ何枚も撮影してくれたようだが、確かに似てるし、親しい人でなければ本人と勘違いしそうだが、柚子には一目で別人だと判った。紅い瞳もしているしあやかしなのは間違いなさそうではあるけれど、服のセンスといい雰囲気もやはりどこか玲夜とは違う。そして、穂香の証言を思い出した柚子は芽衣に頼み画像を自分のスマホにも送ってもらった。後日、最近起きた事件と神器の取り扱いについてを公表するため、大規模なパーティーが催された。千夜によって事件が一応解決したこと、そして柚子が神子であることが明かされ、一気に注目された時は冷や汗を掻いたが、未だに鬼龍院の分家筋の一部から彼女は玲夜の妻として認められていない。千夜によればそんな柚子が神と意思を通わせる稀有な存在だと知らしめることが重要だと言う。話を聞き、古参の側近達に自分が気に入られないのは人間だからではなく、「花嫁」だからではないかと漠然とだが感じ始めていた。なのにここに来て玲夜の本能が消えた。反対派にしてみれば好機だろう。彼らがただの人間の娘など不要だと騒ぎ出す前に千夜が手を打ってくれたことに柚子は感謝した。そして、撫子も交えて穂香が起こした事件について話し合った。例の画像を穂香に見せた所、間違いないと証言したらしく、この人物が関わっているのは確かなようだ。しかも、桜河の調査によれば、現在ネットでも玲夜の不倫を匂わせる画像がわんさか出て来たらしい。早々にもみ消したが、これだけ似ていれば勘違いされるのも無理はない。元の神器の管理者である烏羽家が沈黙を貫いているのも気になるが、同じ御三家ながら鬼龍院家とは徹底的に仲が悪く、撫子の方から探りを入れることになった。そもそも、今回の件、バックに烏羽家が関わっている可能性が高い。あの青年はもしかして烏羽家の者ではなかろうか。そんな最中、撫子の息子で次期当主の藤史郎の「花嫁」菜々子が、夫婦関係に悩み、神器を貸してくれないかと柚子の元を訪れ・・・。柚子LOVEの玲夜の様子を見て、夫の真意を確かめたくなった菜々子さん。まろとみるく、二匹の神獣たちにより神器は奈々子に貸与された後、柚子たちを交え、藤史郎との話し合いに臨みます。そこで知った夫の本音に「花嫁」だからではなく、愛しているという言葉を聞き、無事狐雪家次期当主夫妻は元鞘に。本能が消えたとして本当に愛し合っているならば不幸にはならないはず。でも一難去ってまた一難。屋敷に訪れたのは玲夜そっくりの5歳くらいの少年・朝霧。余りにも似ているので最初は玲夜の隠し子かと一瞬疑ったものの、有り得ないと本人が否定し、一先ず本家預かりとなります。その子供を見て千夜の母・玖蘭が語ったのは自らの夫であった先代当主のこと。実は先代当主の妻は「花嫁」であったこと、妻に執着し溺愛していた彼は後にその「花嫁」から捨てられ精神を病んでしまったこと、その後に玖蘭が嫁いで生まれたのが千夜であると明かされ、一同は騒然。柚子は「花嫁」に対して嫌悪感を持つ一部の古参幹部たちの心情を知るのでした。「花嫁」は所詮は人間であり本能に縛られない。実はこの手の裏切りも珍しくは無い様で、義祖父が被害に遭ってたという事実に胸を痛めます。そして、玲夜そっくりの人物の正体も明らかに。義祖父の子を身籠ったまま烏羽の当主の元に行った「花嫁」がそこで産んだ子、千夜の異母兄だと判ります。鬼龍院家と烏羽家が犬猿の仲なのが納得の因縁話でありました。最後ではその人物が柚子に会いに来たエピソードも有ったり、朝霧も恐らくこの人の子じゃないかなーと予想してますが、どう決着をつけるのやらって感じで次巻へ続く。書き下ろしの短編は引き続き、本編では出番が少なくなった透子とにゃん吉のお話です。秋にコミカライズ版の6巻が出るらしいから、こちらも早ければ同時で発売かな。評価:★★★★★
2024.05.30
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2024年5月刊マーマレード文庫著者:西篠六花さん未来を見通す千里眼を持つ絢音は、親戚に利用され軟禁状態の生活を強いられていた。逃げ出した先で、御曹司の哉に保護されることに。ある事件の調査を頼まれた絢音は彼の力になろうと健気に頑張るが、哉は何よりも彼女の身を案じ、過保護に愛を注いできて…!今まで能力しか求められなかった絢音は、彼に与えられる初めての激情に揺さぶられー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 渡瀬絢音=特殊能力「千里眼」を持つ女性。 親代わりの伯父一家の元で軟禁生活を強いられていた。 日坂哉=総合商社の御曹司。とある偶然から絢音と知り合う。 天堂祐成=絢音の従兄。 倉成詠美=日坂邸で知り合って以来、絢音と交流している令嬢。対象者の手を取ることでその者の未来を見通す「千里眼の巫女」10歳の時に両親を亡くし、母方の実家である天堂家に引き取られた絢音は不思議な力を持っていた。千里眼と呼ばれるこの力は未来だけでなく現在や過去のことも言い当てることができる。母は至って平凡な人だったが、絢音を引き取ってくれた祖母・御影も同じ力を有しており、彼女からは力のオンオフの仕方も教わった。常に全開にしていては心が疲れてしまうからと。そんな御影も、絢音が天堂家にやって来た1年後に病気で他界。以降は伯父一家が家を取り仕切るようになると、祖母がしていた仕事を絢音が引き継ぐよう強要してきたのだ。伯父は祖母の存命中から「千里眼の巫女」を旗頭にして宗教法人「磴会」を設立。未来を見てもらえるという触れ込みで政治家や大物芸能人等富裕層を顧客に荒稼ぎをしていた。絢音は伯父たちに大切にされ、豪華な食事や衣服を提供されたけれど、逃亡や誘拐を恐れてか碌に学校にも行かせてもらえずほとんど自由は無かった。それでも流石にストレスで能力が衰えるかもしれないという懸念があったのか、月に2度、従兄の祐成と一緒の時だけ外出が許されるように。この家に引き取られて10年が過ぎた。絢音は成人し、亡き両親の死亡保険含め約数千万の遺産が彼女の意思で使えるようになったと先日顧問弁護士の岡田から知らされた。岡田は息子一家に思うう所があったのか生前の御影が絢音に付けてくれた。彼は遺産のことだけでなく、伯父一家にいいように搾取され続けている絢音にこれは人権侵害に当たると諭すと、彼女に決断を促した。当の本人も虐待と思ったことは無いものの、監禁同然の生活には嫌気がさしていた。岡田が力になると言ってくれたので、次の外出時に決行すると決めた。この日はどうしても祐成が付き添えない事を千里眼で見て知っていたので、家政婦を伴い出掛けた先で逃げ出した。しかし、右も左も判らず人ごみで男性にぶつかった絢音はその拍子に転倒、頼みの綱のスマホを落とし破損してしまった。付き添い無しで外出したことのない絢音が困り果て茫然としていると、先ほどぶつかった男性が責任を感じてか謝罪して来た。足を怪我していた彼女を手当てし、スマホも弁償させてほしいという青年は日坂哉と名乗った。渡された名刺には、絢音も聞いたことがある総合商社の名前とその肩書に驚いたが、彼に懇願され素直に申し出を受けることにした。手当の最中に哉から電話を借りて、祐成にもう戻らないからと別れの挨拶をすると、当然ながら納得がいかないらしい彼と言い合いに。一方的に通話を切ると、人権侵害やら監禁、搾取というワードが耳に入った哉がどういう状況なのか尋ねられた。好奇心ではなく絢音を気遣う様子の彼にこれまでの事情と自らの力のことを話すと、さすがに千里眼については俄かには信じられない様だった。だが、実際に力を見せると、彼は少し考えこんで彼女にある提案をしてきた。衣食住など当座の面倒は見るので、俺の妹・優佳を死に追いやった人間と原因を突き止めて欲しい、と。優佳は明るく人当たりも良く品行方正で美しい、家族に愛される子だった。そんな妹が半年前に自死。司法解剖の結果妊娠していたことが判り、彼らは悲しみに暮れた。優佳が交際していた男性の素性も判らず真相は闇の中。きっと藁にも縋る気持ちで絢音に依頼したのだろう。必死さが伺える彼の心情も判るし、力になることを約束した。それに、ATMの使い方すら判らない自分にとって哉のサポートはありがたい。セキュリティが万全だと言う日坂邸で世話になると聞いた時は気が引けたけれど、彼の両親も良い人達で娘の死の真相を知ることより、絢音の身の上に同情してくれた。親切なこの人達の力になりたい。故人の千里眼行使は初めてだったが、日坂家の客室で暮らし始めて数日経った頃、朧気ではあったが優佳の遺品でのサイコメトリーでデートに行ったらしい施設やレストランが見えて来て哉と一つ一つその足取りを探った。だがやはり今一つ決め手が無い。焦る絢音は偶然街中で顧客の接待帰りらしい祐成と再会。悶着になりかけたが哉の仲裁でその場は祐成が引く形で別れた。帰宅後、祐成はどうやって彼女を連れ戻すか思案し、以前、絢音の千里眼によって首が繋がった反グレ組織のリーダーに依頼。彼らには岡田の事務所と日坂家の顧問弁護士・水守に警告という名の嫌がらせと、チャンスがあれば絢音を浚うよう頼んだが、相手が大手企業のCEO一家となると分が悪い。一方、その頃、哉からの告白で交際することになった絢音は、彼の母・千佐子の友人の娘である詠美とも仲良くなりプライベートも充実していた。優佳の件も早く彼らを安心させてあげたいと、彼女が遺体で発見されたという納戸に来ると意識を集中させた。そこには死を決意した様子の優佳の姿が見えて、紛失したと思われていた彼女のスマホの行方が分かった。しかしやはり見つけたスマホは充電切れ。電源が入れば頻繁に連絡を取り合っていたであろう交際相手が誰か判るはず。だが、先日から詠美の様子がおかしい。やけに絢音を束縛し、度を越したメールの数に恐怖を覚え、少し遠慮して欲しいと告げると態度が急変。哉と結婚するのは私で、早々にそこから出て行けと絢音を詰り・・・。不思議な力を持ったヒロイン・絢音と、不審な死を遂げた妹の死の真相を探るヒーロー・哉が出会い、恋に落ちるお話。絢音を奪い返すべく、従兄の祐成が反グレ組織と手を組むも、お坊ちゃまにそいつらを操る手腕は無く呆気なく手のひら返しをされてしまいます。何かと距離感のおかしい友人・詠美の心変わりと嘘によって日坂邸を飛び出した絢音は反グレ達に捕まりピンチに。その際、彼女を棄てて保身に走った祐成がしっかり幻滅されてたのには笑いましたが、おかげで間一髪で警察を伴い現れた哉の株が上がることw祐成は拉致の教唆をしたとして逮捕され、岡田の告発によって磴会も解散を余儀なくされるのでした。まぁ、問題ありまくりのエセ宗教法人だったから当然の結果ですね。詠美の方は虚言により大事になったとして厳重抗議され、親からの薦めでカウンセリングを受けることが決まり、スマホの復活でついに優佳が死を選んだ理由も判明。予想はついてたけど案の定交際相手はクズ野郎でした。複数人の女と多重交際した挙句、妊娠した優佳を棄てたそいつは有名議員の息子で、結局は同じような被害に遭った女性から告発され破滅します。人生舐めてるからだよ。祐成は執行猶予がついたものの、見事に落ちぶれて哉との対比が如実に(^_^;)もう使うことのなかった千里眼がふいに見せた絢音の未来が幸せそのもので何だかほっこりしました。いい人に出会えて本当に良かったねぇ。評価:★★★★★ちょっと経路の違うTLでしたが面白かったです。詠美のサイコパスっぷりが怖い
2024.05.29
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2024年4月刊富士見L文庫著者:唐澤和希さん荒ぶる神に生贄として捧げられた如月千代。彼女は弟を守るため、神の力を封じる毒と一緒に食べられたい。その瞬間を待つ千代の前に、秀麗な龍神・銀嶺が現れる。誰もが恐れる龍神は、けれど千代を花嫁として丁重に扱うばかりでーーいっこうに食べてくれない! 銀嶺の優しさに癒やされつつも、食べられようと自分磨きに励む千代。一方で、千代の不憫な境遇を神の力技で解決しようとする銀嶺。から回りながら共に暮らす二人は、やがて互いの隠し事を通じて向き合うようになりーー。生贄乙女と龍神様、運命の婚礼物語が始まる。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 如月千代=霊力を持つ「神士族」の娘。両親を早くに亡くし、弟共々叔父一家か ら使用人以下の扱いを受けていた。 銀嶺=荒ぶる神として恐れられる龍神。如月万里子=千代の従姉妹。 如月柊=千代の弟。荒川に居を構える名家・如月家の長女千代は10年ほど前、当主を務めていた両親を事故で亡くした。残された姉弟を叔父の正道が面倒を見てくれると言う。両親が健在だった頃は優しく人当たりの良い人達に見えた正道夫妻は、屋敷に移り住んだ途端に態度を急変。遺産を横取りした挙句、千代たちを虐げるように。そればかりかお嬢様育ちの千代を使用人としてこき使い、気に入らない事があれば躾と称して暴力を振るった。食事が与えられない事も多々あって弟の柊を庇いながら、それでも生きるために耐え忍んできた。今思えばどうしてあの時叔父の手を取ってしまったのだろう。上っ面に騙されて容易に他人を信じた自分の落ち度だと、ずっと悔やんでいる。そんなある日、千代が次の龍神の花嫁として決まったと知らされ愕然とした。そして、柊も5年後の花嫁として捧げられる予定だと言う。その昔、敵対していたあやかしと共存していくために神士族の元となった術師5人がある協定を結んだ。それは天神契約を交わしてあやかしを神として崇めること、あやかしは受け持ちの地を守護し人を襲うことを禁じた。その見返りとしてあやかしには神士族の者を5年に一度生贄として捧げるというもの。これは男女限らずで、18歳以上の者。建前上生贄は「花嫁」と呼ばれるのが習わしだ。しかし、あやかしと言えども残忍なものばかりではなく、争いや殺生を好まないものがいる。後者は和御魂と呼ばれ、花嫁のことも食うこともせず大切に扱っていると聞く。だが運悪く、この荒川を守護する黒龍は荒御魂と呼ばれる残忍な気性の方だった。当然、生贄など餌としてしか捉えていない。叔父夫婦にしてみればもはや二人は用済み。花嫁を出した家は莫大な報奨金が出るので、邪魔者を消せるだけでなく金も貰えて一石二鳥というわけだ。それでも自分だけならばまだいい。でも柊が生贄にされるのは何としても阻止しなければ。しかし、どうにも悔しくて今となっては唯一の友である白蛇の「ハク」に、やるせなさをぶちまけた。ハクはまだ両親が存命だった頃、怪我をして死にかけていた所を千代が助けて以来、懐いて屋敷の裏手にある藪に住み着いていた。叔父達に殴られたり心無いことを言われて泣く千代の涙を舐めとりハクなりに慰めてくれていたように思う。黒龍の生贄になんてなりたくない、本当は死にたくない。号泣する彼女を見て、何を思ったのかハクは千代の腕に噛みつきその血を啜ると飛び降りて藪の中へ消えて行った。そして、輿入れの日。白無垢姿で龍神が住まう屋敷にやって来た千代はある決意を胸に秘めていた。亡き母は「毒華の一族」という神の力さえも無効化できる毒を作り出す一族の末裔だった。まだ幼かった千代も母からもしもの時のためにとその毒の作り方を教わっていた。龍神が自分を食べる際にその力を無効化すれば力無い妖に戻る。現れた人型の龍神を前に、食らいついて来た時がチャンスだと機を伺っていると、銀嶺と名乗った彼の態度は予想に反していた。銀嶺は千代を労わり、よくぞ来てくれたと上機嫌。そして、お前を虐げていた叔父一家に天罰を下してやると鼻息を荒くしていた。最後の物騒な言葉以外は、どうみても邪悪な黒龍には見えない、どこか無邪気さが残るその言動に呆気にとられながら、恐る恐る自分を食べないのか?と尋ねると、何を言ってるのか判らないと言う顔をされた。そればかりか性的な意味の方か?と妙に照れている。彼はあかぎれと傷だらけの手を見て眉を寄せると、式神を呼び出し、千代の世話を任せた。痩せ細り傷だらけの女には食欲もわかないと言うことかと彼女は一応納得したが、あれからひと月以上経ち、血色の良くなった千代を見ても彼は彼女を食おうとはしないばかりか、何か欲しいものはないか等、気遣いを見せてくる。どうも噂の黒龍と銀嶺の人となりが一致しない。取り敢えず、千代を食う気が無いのは確かなようで、ここまで来ると疑う余地も無いように思う。銀嶺は本当に優しくてだからこそ叔父一家に激怒している様だった。もしや彼は荒御魂ではなく和御魂なのでは?首をひねりつつ、穏やかな日々を過ごすうち、気になるのは叔父の元に残っている柊のこと。先日、貢物を届けに来ていた花京院家の次期当主・忠勝と会う機会があり、千代が生きていることに驚いた彼に謝罪された。自覚は無かったが千代には優れた霊力があり、本来なら忠勝の許嫁になる予定だったことや、叔父は本家を通さず花嫁役を千代に決めてしまったそうで、気付いた時には取り消しが間に合わなかったと申し訳なさそうにしていた。それでも忠勝は千代が大事にされているなら良かったと安心しており、ここ最近、この地の守護の質が変わったと溢してもいた。前はもっと荒々しかったと。この会話から余計に弟のことが気になってしまい、銀嶺に弟をここに引き取りたいと頼むとすぐに許しが出た。一緒に来てくれると言う彼と二人、如月家に赴くと、正道は腰を抜かさんばかりに驚いていた。しかし、すぐさま姪に向かってお役目を放棄したなと責め立て、横にいた銀嶺の不興を買っていたのは滑稽だった。叔母と万里子は銀嶺に媚びを売っていたものの彼らの悪行は既に彼に知られていたので靡くはずもなく、凝りもせずに千代に対して高圧的な態度をとる万里子達に怒りを露わにしていた。彼のおかげで柊を無事に黒龍の屋敷に連れ帰ることが出来て一安心だったが、何故か弟は銀嶺を見るや彼態度を変えた。その尋常でない雰囲気に二人きりになった際、理由を尋ねると柊が両親を殺したのは黒龍だと言い出し・・・。和風シンデレラストーリーです。銀嶺って本当に邪悪な黒龍なの?最初からかなりの違和感があったんですけど、やはり別人だったことが後に判ります。恐らくハクの件で気付いた方も多いんじゃないでしょうか。銀嶺は荒御魂・黒龍の8人の子供たちのうちの一人で、唯一白い鱗を持っていたことで迫害されていました。そんな中、毒華の一族により、好き放題悪さしていた兄弟たちは力を奪われた挙句に処罰され、生き残った子供は銀嶺のみ。でも彼は父に心底嫌われていて棄てられた所を幼い千代に救われたのでした。千代は稀血であり、その血を啜り身を食えばあやかしは力を得ることができる。彼女の涙を舐めていた銀嶺は図らずも徐々に力を付けて行き、あの生贄の話を知ることに。千代の血を啜って更に強大な力を持った彼は父を討ち封印に成功。黒龍に成りすまして彼女を迎えたというのが真相でした。でも、黒龍は万里子に唆され疑心暗鬼になった柊を操り、銀嶺への復讐を企みます。一方、彼は千代がそうだと知らず毒華の一族の末裔を探し、父の力を無効化するべく奔走。そして結果的に銀嶺と千代のお互いへの想いが力となり黒龍を倒すのでした。万里子は貴重な文献である千代の母の手記を勝手に読んで処分すると言うやらかしによって千代の怒りを買い、諸々の罪状も相俟って銀嶺の意向で叔父一家の神士族としての身分を剥奪。一文無しで追い出される羽目に。この件は読んでてスッキリ。銀嶺は和御魂として新たに天神契約して黒龍の代わりにこの地を守護することになり、千代と新婚生活を始めた所で〆このお話、続編があるそうで秋頃に2巻が出るとか。新たな試練という煽り文句に嫌な意味でドキドキ(^_^;)評価:★★★★★序盤の銀嶺と千代の噛み合わないやり取りが可愛い。
2024.05.28
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2024年5月刊ベリーズ文庫著者:真彩-mahya-さん幼い頃に父を亡くした看護師の七海は、弟の学費を稼いで早く母を楽にすることが目標。憧れの心臓外科医・圭吾がいる病棟に異動が決まり意気込んでいた。仕事では超冷徹人間の圭吾だが、優しい一面も。そんな中、ある理由で彼から契約結婚を持ち出される。家族のための援助と引き換えに承諾したら…。「俺と結婚してよかったと思わせてやる」まさかの溺甘豹変! 熱情露わに迫られ、七海は陥落寸前で…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 槇七海=病棟看護師。憧れの外科医・笠原から契約婚を申し込まれた。 笠原圭吾=凄腕の心臓外科医。安藤菜美恵=特別室に入院している医療機器メーカーの社長令嬢。 千葉=七海の同期の男性看護師。病棟看護師の七海がこの職業を選んだのは偏に生活の為だった。母子家庭で育ち、6歳下の弟・瑞希はまだまだ金がかかる。頭の良い弟には出来れば希望の大学に進学させてやりたい。下手なOLより稼げるのではと聊か同期は不純であったが、現実は厳しい。学校はともかく実習先で早くも挫折を味わったのだ。実習生担当の看護師がかなりの気分屋で気に入らない新人をいびり倒して辞職に追い込むと言う最悪な人物だったのが災いし、七海もその洗礼を受けた。さすがに辞めるまではしなかったけれど、休憩室で号泣する羽目に。そんな彼女をさり気なく励ましてくれたのが外科医の笠原圭吾であった。新人看護師が泣いていたので、彼はさぞ驚いただろう。実習担当看護師のことを告げ口するのは簡単だが、敢えて触れずに自分の至らなさからだと話すと、君は患者さんに頼りにされているし、きっといい看護師になれる、と。ただの社交辞令かもしれない。それでも、彼の言葉は七海を奮い立たせ、いつか笠原のいる循環器科で働くのを夢に頑張ろうと決めた。あれから3年。漸く念願が叶い循環器科に配属されることになって七海は大喜び。ここには専門学校で同期だった千葉もいるし、なにより先輩たちも明るく穏やかな人達ばかり。色々勝手も違うので初日は千葉に付いて病室を周り作業を覚えた。師長の薦めで笠原が執刀する手術を見学できたのもこの科に配属されたおかげだ。あの日から憧れの人である彼の手術はやはり凄くて余計に尊敬度が増したほど。そんなある日、循環器のことをもっと学びたくて図書館を訪れた七海は偶然にも笠原と遭遇。あちらも気付いたので挨拶すると彼も調べものがあって訪れたのだと言う。その程度の会話だし邪魔しない様後は黙って自分も本を探していたら、何だか笠原は迷惑そうにため息を吐いた。プライベートの時間まで付き纏わないでくれと言われ、思わずカチンと来て偶然図書館で会っただけでどうしてそこまで言われるのかと言い返してしまった。少し自意識過剰なのでは?とまで言い切ると彼は面食らったような表情の後、謝罪して来た。さすがに言い過ぎた感はあったので内心反省していると、笠原が疑心暗鬼になっていた理由を話してくれた。病院長の息子で名の知れた心臓外科医ともなると擦り寄って来る女性が多いらしい。ストーカー紛いに付き纏われることもあるようで、なるほどそれで自分も疑われたのかと納得した。しかも、現在進行形で被害に遭ってるのに自意識過剰なんて憧れの人に対してなんてことを。内心で冷や汗を掻いている七海を他所に、この一件以来、笠原の態度が軟化。千葉の恋バナ相談に乗っていた際、偶然出会った彼が渋い顔をしていた様に見えたのは気のせいか。それからまた暫く経った頃、特別室に入院した医療機器メーカーの社長令嬢・安藤菜美恵が笠原の婚約者だと言う噂が看護師たちの間を駆け巡った。噂の婚約者とは案外早くにお目にかかれた。見るからにお嬢様然としたその人は、七海が検温に訪れた時に何故か笠原と揉めていてビックリ。取り乱す彼女を笠原が冷静に往なしている風。婚約している割には妙な雰囲気に訳ありな感じがする。その後、何故か笠原に菜美恵とは婚約などしていないとわざわざ否定された。そして話があると夕食に誘われた七海は彼から協力して欲しんだと契約婚を持ち掛けられ複雑な心境に。理由は菜美恵の付き纏い行為を止めさせるため。実はあのお嬢様は元々、彼の兄の縁談相手だったのだそうだ。だが、兄には恋人がおり政略結婚など出来ないと断った。これには双方の親も渋い反応だったが頑なに固辞すると流石に諦めた。しかし、当の菜美恵は納得がいかず兄の恋人の方に嫌がらせを始め、恋人は命の危険すら感じたと言う。どうやら、今回の縁談、菜美恵は両親から何としてでも兄を射止めろと言い含められていたらしい。自分が理由で断られたわけではないのに彼との結婚に固執し、恋人を排除しようと躍起になった挙句、自ら車道に飛び出して事故に遭い重傷を負った。兄は恋人を守るためと一連の責任を取り後継者の座を降りて病院を辞め、恋人と入籍。今は小さなクリニックで働いているとのこと。あの穏やかそうな菜美恵がそこまでやらかしていたとは。兄が後継者でなくなったので憑き物が落ちたかのように彼女は嫌がらせと付き纏いを止めたのだが、今度は弟の笠原をターゲットに変えた。金さえ払えば入れる特別室に居座りっては彼の婚約者のように振舞っているので、ほとほと参っているという。そこで、七海を見込んで期間限定の契約婚をして欲しいというわけのようだが、彼に想いを寄せる身としてはこれは喜ぶべきなのか。でも、彼から提示された報酬はあまりにも美味しい。弟の進学費用も出してくれると聞いて覚悟を決めた。契約婚を承諾した七海は、数日後には笠原と入籍。病院近くの彼のマンションで同居生活が始まった。いざ、夫婦としての生活が始まると彼は七海を名前で呼び、自分も圭吾と名前で呼ばれたがった。万全を期してとはいうけれど、そこまで徹底的なの?入籍したことは師長にだけ告げ、発表に関しては折を見てと話し合った。菜美恵がどう出るか不明だったためだ。しかし、探偵でも使って調べたのか、菜美恵の態度が数日後には変化。彼女の物言いに不吉さを感じていた頃、七海が何者かに付け回されるという出来事が。危険を承知で引き受けたとはいえ、恐怖に震える七海のため、菜美恵に釘を刺した圭吾であったが、これが思いの外、相手を刺激したらしく・・・。兄の元縁談相手に付き纏われ、難儀していた圭吾は図書館の一件から興味を持ち、好意を抱いていた七海に契約婚を持ち掛けます。勿論、事が片付いても彼女には改めて求婚して夫婦生活は続けるつもりでした。菜美恵も結婚すれば諦めるかと思いきや、逆に手段を選ばない状況にまで追い込んでしまっていて、人を雇い七海を襲わせるという暴挙に。異変に気付いた千葉のファインプレーにより、すぐ圭吾に連絡が行ったおかげで事なきを得るも、これがきっかけで、菜美恵の親がようやく動いて娘を更生させると約束。当時、何としても彼の兄を射止めろとけしかけたことが多大なストレスになって娘を苦しめていたと悟ったのでした。猛省した両親の説得により、カウンセリングを受けることになった菜美恵がやっと落ち着いたと安藤家から正式に謝罪が来たようで、事件は幕を閉じます。兄とその妻子とも七海は懇意になり、この事件後に両想いだと判明した二人。周囲に祝福されて式を挙げる二人の様子が描かれて本編は幕。おまけの番外編は、結婚発表後すぐのかなり遅れた七海の循環器科配属歓迎会のエピソードでした。この作家さんは割と作中クスッと笑えるシーンが多かったりするんですが、今作は題材故かコメディ要素少な目。でも、頑張り屋なヒロインの性格がヒーローの人柄にも影響して事態を良い方向に導いていくという鉄板ながら良いお話だったと思います。評価:★★★★★
2024.05.27
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2018年2月刊レジーナブックス著者:夏目みやさん一年前、異世界に聖女として召喚された紗也。持ち前の責任感で渋々ながらも役目を果たす彼女は、護衛のリカルドに淡い恋心を抱いていた。しかし、彼には婚約者がいるという噂もあり、紗也は役目が終わり次第、諦めて日本へ帰ることを決める。そして聖女退任後、王城で帰還の儀式に臨んだのだが、なぜか裏山へ飛ばされてしまった! 今さら城へ戻るに戻れず、紗也は日本に帰る方法を探しつつ街の教会で歌い手となることに。そんなある日、彼女のもとにリカルドが現れ、有無を言わさず彼の屋敷へ連れていかれる。彼の真意がわからないまま保護されていた紗也だけど、、新たな聖女が現れたことで、事件に巻き込まれーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 川本紗也=異世界召喚された日本人の少女。 1年間の聖女としての役目を終え現代に帰るはずだった。 リカルド=サヤの護衛騎士。エルンハス=ローラント国の王子。ギルバート=リカルドの幼馴染で侯爵家子息。 オリガ=次代の聖女として城にやって来た少女。1年前、天涯孤独の少女・川本紗也は異世界召喚されてこのローラント国にやって来た。お偉い人達の話によれば自分は聖女としてここに呼ばれたらしい。期間は1年。彼らにしてみればたった1年ではないか、と言いたいみたいだがそう簡単に割り切れるものではない。それでも、お役目を全うすれば相応の報酬を支払い、何でも願いを聞いてくれると言う。ならば、必ず元の世界に戻して欲しいとサヤは彼らに約束を取り付けた。聖女の仕事は、毎日国の平和を願い神に祈りを捧げること。祈りの言葉には旋律があり、歌が大好きで亡き母にも褒められたサヤには打って付け。最初は渋々ながらだったのでいくら大好きな歌う仕事でも抵抗感はあった。だが、真面目な性格故かしっかりと日課をこなし、1年後無事に役目を終えることとなった。最初は不満を爆発させて護衛騎士のリカルドにしょっちゅう突っかかっていたものだが、今思うと単に八つ当たりしていただけで申し訳なく思う。実は密かに想いを寄せていたのだけど、リカルドには婚約者がいると知り告白する前に失恋確定。結局、当初の予定通りに現代に戻してもらうことにした。こちらの金銭は現代では使えないが、その代わりにと宝石をいくつか貰ったので、これを換金すれば暫くは生活に困らないだろう。何かと気遣ってくれて友人関係になっていた王子のエルンハスと、リカルドと共に護衛や雑事を引き受けてくれたギルバート。そして、何か言いたげなリカルドに別れを告げて、魔術師達による転移魔法陣の中央に立ったサヤは光に包まれて次に目を開けた時には現代に戻って来ているはず、だった。草むらに投げ出されたサヤは、周りを見回してここが城の裏手にある山の中だと知って愕然。まさか、転移に失敗したの?魔術師達は全員優秀だから送り返すことなんて造作もないとか言ってたくせに。と怒りも沸いたが、城には戻らないことにした。やはりまだリカルドに未練があるのか、いざこうして帰還に失敗すると複雑な気持ちになる。一応、金銭も多少は受け取っていたので市井で仕事を探せば暮らせるだろう。いつの間にか降り出した雨の中、出会った気の好い女将が気に入りその宿で暫く過ごすことを決めた。そんなある日、近くの教会で祈りの歌を歌う歌い手が突然辞めて困っていると耳にし、代理の歌い手を務めることになったサヤ。彼女の歌を聞くと体の調子が良くなったなどの声が多く寄せられ、数日の間に彼女は人気者に。教会預かりの子どもたちからも好かれ、楽しい日々を過ごしていた。それから暫く経った頃、教会の新しい歌い手が素晴らしい、という噂を聞きつけてリカルドが来訪。サヤと再会した。もしやと思って来てみれば本当に君だったんだな、と安堵の表情を浮かべる彼に思わず胸が高鳴ったが、リカルドは強引に彼女を自分の屋敷へと連れ帰ってしまった。どうしてまだこの世界にいるのか、聞きたいのは私の方。どちらにせよ、儀式は失敗したみたいだと告げると、ならすぐに城に助けを求めるべきだったと叱られる羽目に。元とはいえ、聖女だった人を邪険にするはずがない。しかし、リカルドへの想いから城に戻れなかったとか言えるはずも無く、一人で色々考えたかったからとごまかした。その後、リカルドの伝手で賢者と会うことになったサヤは、そこにいた賢者の娘なる人物にこれからのことを含め帰還魔法の失敗の理由を占いと言う形で見てもらった。先ず、帰還の失敗については何者かの意図的なものだろうとのこと、そして、サヤ自身は色々厄介事に巻き込まれるもこれは気の持ちようで状況も変わるだろうとアドバイスされた。一番の懸念事項は失敗の原因だったので、もしも誰かの策謀なら現状誰にも言わない方が良いだろう。そして、報告しないわけにもいかなかったようで、城に呼び出されたリカルドによれば国王たちがサヤに会いたいと言っているそうだ。更に頼みたいことがあるという。どうやら、現在城には新しい聖女がいるらしく・・・。こんな短期間のうちに次代の聖女が?実は聖女自体、稀有な存在で早々現れないので、オリガと名乗る少女の扱いに困っていました。そこで、サヤにオリガの指導役を頼みます。それはちょっと無神経じゃ、とリカルドは反対するも、彼女自身は構わないと引き受け、オリガに聖女のノウハウを教えます。でも、田舎育ちらしいオリガはエルンハスに見初めてもらうことの方が重要なようでてんで聞いちゃいない。まだ16歳と聞くし、自覚が無いのも仕方ないかと根気よく指導することにしたサヤは、自称リカルドの婚約者・ルイーゼとバチバチ。未来の妻ならどんと構えてればいいのに、何故かルイーゼの方が随分焦っている様子に首をかしげている中、オリガとその知人らしい青年との会話が耳に入り、彼女が聖女だと偽っていたことを知り唖然。しかも、サヤの元護衛の一人であるギルバートが首謀者だったようで、彼が自分の地位向上のために仕組んだことだと発覚。その理由がねぇ、ライバル視していたリカルドに立場上勝ちたいから、でした。オリガを聖女に仕立て自分が護衛騎士になれば親族にも認められると。あまりにも自分本位な動機に上層部は呆れて、彼に相応の罰を与えます。オリガはただ都会暮らしと玉の輿に憧れた子で利用されていただけと判り、故郷に強制送還となるようだけど、根は良い子だったのでこの程度で済んで良かった。一方、サヤには未だに聖女の力があることが判明して、あと1年だけお役目を引き受けることに。そして、婚約云々はルイーゼの独り相撲と判って誤解が解けた後、リカルドからの告白で晴れて二人は交際に至って終わっています。タイトル通り聖女ものです。でも、お役目を終えてからのお話なので、そこから展開すると言う珍しいパターン。その時はお互い告げられなかった想いも再会後に再燃し、次代の聖女の出現というトラブルに巻き込まれながらも、聖女時代よりも距離を縮めて行くのでした。帰還の失敗の原因はエルンハスによるものと後に自らがばらしてましたが、それは二人が焦れったかったから。お互い両想いのくせに想いを告げずに二度と会えなくなったらきっと後悔する。それは本当にそう。荒療治だったけど、上手くいったのは彼のおかげだったというオチでした。評価:★★★★☆聖女モノにハマりたての頃にアママケで購入したうちの1冊。どうして、書き下ろしがある文庫版を買わなかったのか激しく後悔。
2024.05.26
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昨日(24日)までの購入タイトルです。アルファポリスノベルス5月刊富士見L文庫4月刊2点。夜叉王の方は感想記事をUP済みです。ベリーズ文庫5月刊2点。友野さんと滝井さんはまだ購入できてません。マーマレード文庫5月刊。富士見L文庫5月刊。アルファポリス文庫5月刊。レジーナ文庫5月刊。シリーズ2作目。まだ1巻を読めていないのでいつになるやら。noicomiCMICS 5月刊。早いものでコミック版も5巻目。スターツ出版文庫5月刊2点。金欠でベリーズとマーマレードを買うのがいつもより遅くなってしまったため、今読んでる積読本のストック分1冊の記事を26日に上げたら、その後に3冊中どれか1冊のネタバレ感想をUPする予定です。他は追々。それでも鬼の花嫁は続きが気になってるから割と早めに上げられるかと。
2024.05.25
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2024年4月刊DIANA文庫著者:朝陽ゆりねさん27歳の誕生日を迎え、そろそろ結婚をと考えながらカレシの家に向かった愛衣。そして、そこで見たのは、なんと浮気の現場! よりにもよって、なぜ誕生日に浮気をされなければいけないのか。だが、開き直ったカレシから告げられたのは、隣の女こそが本命で自分はスペアだったこと……。はらわたが煮えくり返るような思いの愛衣を励ましてくれるのは14歳のゴールデンレトリバー、凜太郎だけ。だが数日後、その凛太郎すら、天国へと旅立ってしまった。悲しみに暮れる愛衣は会社でミスをしでかし、帰宅の途中には元カレに遭遇し嘲笑され、絶望のどん底に。そこに現れたのは王子様衣装を身に纏ったイケメン青年カイン。異世界バーニア、コーリエント王国の王子だという彼は、愛衣の足もとに跪いた。「あなたは私にとって『運命の姫』であり、国を守る『聖女』なのです」──なにを言ってるんだろう、この人。そう訝しむ愛衣を、カインは半ば強引に馬に乗せ、天高く舞い上がり、異世界へと連れていく。果たしてカインの正体は何者なのか? そして愛衣は本当にカインの運命の姫、王国を守る聖女なのだろうか? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 梅島愛衣=大手企業に勤めるOL。 人の好さが災いし周囲から都合の良い女扱いされていた。 カイン=異世界からやって来た王子。 凛太朗=愛衣の愛犬。 エルメ=愛衣付きの筆頭侍女。 横山崇=愛衣の恋人。彼氏に出張が入ったと誕生日の約束をドタキャンされた愛衣。留守の間に掃除でもしといててあげようと部屋を訪れると留守のはずの彼・崇は他の女とベッドの中にいた。しかも、開き直った彼によれば実はそっちが本命で自分の方がスペアだったと発覚。逆ギレした崇に都合がいいだけの女と罵られ、自分の男を見る目の無さにため息が出たが、そういえば飼い犬の凛太朗は死ぬほどこいつを嫌ってたっけ。きっと動物の勘で崇の本性を見抜いていたからかもしれない。崇には当然その場で別れを告げ、自宅に戻った愛衣は凛太朗に泣きついた。変わらずこの子は私を好きでいてくれる。男尊女卑を拗らせた毒親は弟ばかりを可愛がって娘は放ったらかし。居場所の無い彼女にとって凛太朗だけが家族だった。だから上京した時も凛太朗を連れて来たのだ。でも、この子ももう14歳。ゴールデンレトリーバーの平均寿命は11歳と聞く。いつお迎えが来てもおかしくはない。覚悟はしていたつもりだったのだが、崇との別れから1週間後。凛太朗は静かに息を引き取ったのであった。出来る限りの供養はしたものの、失恋の痛手も相俟って愛衣は虚無感に苛まれていた。単純なミスを繰り返した挙句、ついに今日は桁数違いの発注間違いをしでかして上司に心配されてしまった。叱責されたわけではないので余計に堪えてこれではいけないと気合を入れたものの、仲が良いと思っていた部下や同僚達に陰口をたたかれているのを耳にし落ち込む羽目に。調子が良い時は散々愛衣を頼っていた癖にいざミスを犯すと手のひらを返したように悪口三昧。崇も後輩たちも結局私のことを都合よく利用していただけだと判るとなんだか馬鹿らしくなっていた。大好きなチーズケーキでも食べて元気出そうと思っていた矢先、崇とその彼女・リコとばったり。彼は単にリコの前でカッコつけたいだけなのか愛衣に悪口雑言浴びせかけて来た。最低なのは自分のくせにと流石に腹が立ち言い返してやろうと思ったら、上からスポットライトのような光が愛衣を照らした。何事かと見上げるとそこから舞い降りて来たのは金髪のイケメン。青年はカインと名乗り、異世界のコーリエント王国の王太子であること、そして聖女である愛衣を自分の未来の妃として迎えに来たのだと告げた。呆気にとられる崇とリコを他所目に、今イチ状況を飲み込めていない愛衣を呼び寄せた馬車に乗せ、カインは彼女を異世界に連れ去ったのであった。馬車の中で一通り説明を受けた彼女は、これは夢ではなかろうかと内心でパニくっていた。それにしても初対面だと言うのにカインはどこか懐かしい雰囲気がする。私が聖女で、おまけにこんなカッコイイ王子様の妃になる?とか俄かには信じられない。しかし、いざ到着すると聖女召喚に国中が沸いており、その大歓迎っぷりにドン引き。でも、建物や空の色など、やはりなんだかんだとここは異世界だと信じざるを得ない。城に着けば自分付きの筆頭侍女のエルメを始め数人の侍女たちにお世話されお姫様になったような気分だ。しかも、彼女達を始め城で働く者たちからの忠誠度合いも凄い。エルメの話によれば、カインは優秀な人物で他の異世界の技術をどんどん取り入れ、国を発展させた立役者なのだと言う。そんな彼が運命の相手であり更に聖女たる愛衣を連れてきたことで、民たちは歓喜。それであの熱烈歓迎ぶりだったのかと納得した。夜になって公務からカインが帰ってきた際、彼から俺の正体に気付きませんか?と意味深なことを言われ彼女は考え込んだ。確かに妙なデジャブ感はある。自力で答えを見つけたら、ある制約が外れてもっと力を振るえると語るカインの言葉はどうにも意味不明である。それでも気にはなっていたので考えてみることにした。だが、数日も経たないいうちにカインから香る匂いや、頭を撫でてくれと甘える彼の仕がに、何故か凛太朗と重なり・・・。タイトル通りの内容です。ヒロインにとって家族以上の存在だった飼い犬が異世界転生を果たしていました。異世界と現代では時の流れが違うのでほんの一週間で32年を過ごして立派な王太子になった頃、本人曰くクズホイホイな彼女を不幸たらしめていた現代には置いておけぬと迎えに現れます。しかし、現代人をここに連れて来るには膨大な魔力ときっかけとなる縁が必要。そこで、カインは自分が誰か思い出して欲しいと彼女に告げていたのでした。そして思いの外早く愛衣はその正体に気付き、カインは本来持っていた強大な力を行使可能に。愛衣は愛犬(元)との再会を喜び、一緒にこの世界で生きていくことを決意します。これで幸せにと思いきや、異世界人のポっと出の女が王太子妃になるのは反対だという貴族も現れ、悶着が起こります。後日、二人の絆を見せつけたことで大多数は納得してくれたものの、やはり未来の王妃という地位は諦めきれないのか未だ無理難題を出してくる少数の反対派。これもまぁ、エルメたち側近の根回しで事なきを得るんですけど、ここに来て漸く愛衣に聖女の力が目覚め、反対派を黙らせることに成功。ぶっちゃけ、聖女要素は要らない気もしましたが、異世界物としては順当なのかな。カインは正式に愛衣との結婚が決まり幸せの絶頂ながら、彼女をコケにした者たちへの仕返しも忘れていませんでした。近習のブレスとエルメの力を借り、元カレの崇にいろいろ悔い改めないと不幸になる呪いをかけ、愛衣の家族にも相応の試練を課す手はずを整えていると言う。何もかも忘れて異世界で幸せになる、で終わっても良いけどちゃんと報復するよ?って構えのヒーローの容赦なさぶりがスッとするお話でした。評価:★★★★☆
2024.05.24
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5月27日 アルファノルンコミックス あやかし鬼嫁婚姻譚 3 七里ベティさん/朧月あきさん6月5日 オパール文庫 憧れの旦那様は私専属ストーカー!? イケメン御曹司の重すぎる求愛 七福さゆりさん6月上旬 レジーナ文庫 一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました! 当麻月菜さん6月18日 ティアラ文庫 悪女(と誤解される私)が、腹黒王太子様の愛され妃になりそうです!? ~人妻編~(仮) 栢野すばるさん6月28日 ビーンズ文庫 公爵子息の執着から逃げられそうにないので、逃げないことにしました さきさん 転生したら魔王の娘 うっかり最凶魔族をスキルで魅了しちゃって 甘すぎる溺愛から逃げられません! 三浦まきさん7月3日 ソーニャ文庫 長き純愛の果てに(仮) 蒼磨奏さん7月5日 フロースコミックス メイドとして生き残ります 1 悪女は砂時計をひっくり返す 67月29日 フェアリーキス 仮面伯爵は黒水晶の花嫁に恋をする 3 小桜けいさんやっぱり、7月期は多かった~(>_<)でも、最悪1年くらい空くと思ってただけに仮面伯爵の続きが出るのは素直に嬉しいです。後、フロースコミックス2点。「メイドとして生き残ります」は、せめて年2冊は出して欲しいけど売上次第かなぁ。
2024.05.23
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2024年4月刊スターツ出版文庫著者:水瀬蛍さん祓い屋の一族に生まれながら攻撃能力を持たず「治癒」しか使えない体で生まれてきた楪は、幼いころに妖魔に襲われ自身の顔と体に傷を負ってしまった。唯一の能力である治癒も自身には使えず、傷ものと虐げられてきた。しかしそんな楪の元に突如、祓い屋の名家である龍ヶ崎家の次期当主・十和が現れた。人間離れした美しさを持つ十和から自分の治癒係として契約結婚するよう持ち掛けられるーー。治癒能力だけが必要とされた愛のない結婚のはずが「俺は楪が好きだ。ずっとそばにいてほしい」十和に溺愛されて…? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 椎名楪=祓い屋家系の長女に生まれながら治癒の力しか無く疎まれている。龍ヶ崎十和=龍の血を引く祓い屋の名家の次期当主。 椎名姫花=楪の2歳年下の妹。姉を慕っている。 藤沢美月=楪のクラスメイト。瑠璃川夢子=十和の未来の花嫁を自称している令嬢。祓い屋一族・椎名家の長女である楪は治癒の力しか持っておらず、両親から疎まれ、使用人にすら見下されていた。それでも幼少時はそこまで顕著な扱いではなかったのだが、決定的になったのは楪の10歳の誕生日。2歳下の妹・姫花と普段は立ち入らない森の中で遊んでいたところ、妖魔に襲われ死にかけたという事件が起きた。幸い、妹は大事に至らなかったものの楪は姫花を守り額と背中に大怪我を負ってしまった。死を覚悟した時、二人を救ってくれたのは白い龍。龍はやがて少年の姿となって血だらけの彼女をよく頑張ったと労ってくれた。その後、楪は妹を背負い何とか家まで帰ったのだが、一目で重傷と判る彼女は後回しにされた挙句、呼ばれた治癒師に治療されたのは妹だけだった。当然ながら傷痕は残り、妹を危険に晒したことからこの事件以降、楪の扱いは一層酷くなってしまった。姫花は変わらず慕ってくれたけれど仲良くしていると楪が余計に両親から怒られるので、もう一緒に遊ぶことも無い。出来損ないな上、傷物の長女より、優秀で美しい次女を可愛がるのは仕方ない事。祓い屋の子女たちが通う学校でも、楪はクラスメイト達からバカにされていた。実技の成績も悪いのでこれ見よがしに笑われても気にしない様努めてるので、何をへらへらしているんだとクラスの中心人物である美月は一層イラつくらしい。彼女の取り巻き連中からの当たりもキツくなってきたように思う。そんなある日、父から結婚を命じられた楪はお相手が40過ぎと聞いてショックを受けていた。額と背中に傷があろうと気にしないというありがたい人だとは言うが、歳の差に関してはお構いなしか。そして、姫花も龍の血が流れているという龍ヶ崎家の時期当主・十和の花嫁候補に立てると言う。彼はその血故に類まれな力を持ち見目も麗しい。嫁がせたいと躍起になっている名家も多いので、ライバルも相当だろう。父は近年パっとしない椎名家を盛り立てるためにも龍ヶ崎家と姻戚関係になりたいようで母共々姫花への期待が凄まじい。当の本人は自分のことより姉の縁談に想う所あるようで何か言いたげだったが、登校時間になったので一先ず学校に行くことにした。やってられないので気楽に振舞うようになっていたけれど、やはりあの縁談は受け入れがたい。しかし、父は楪の言うことなど聞き入れないであろうし、いくら嫌でも従う他ない。一層実技にも身が入らず惨憺たる結果になり気晴らしに裏庭に行くと、ベンチで転寝している青年が。しかも、腕に怪我をしていてつい放って置けなくて治癒の力を使ってしまった。おかげで青年は起きてしまったが、綺麗に治っている腕を見て驚いている。青年は十和と名乗り、お返しとでも言うように実技で怪我をしていた彼女の手にキスをすると見事に傷が消えていた。治癒能力は本人には使えないため別人に頼むしかないので正直助かった。それにしても龍ヶ崎家の当主がどうしてこんな所に。色々聞きたいこともあったけれど、次の授業があるので楪はその場を後にしたのだった。下校時刻、今朝の話で帰宅が億劫になっていた彼女は、校門近くに止まっていた高級外車に連れ込まれた。乗っていたのは先程の十和。徐に彼から俺の婚約者になってほしいと頼まれた楪はビックリ。元々治癒の力が効き難く難儀していたと言う十和は彼女に自分の専属治癒師になってほしいのだそうだ。それに最近の花嫁候補騒ぎに頭を悩ませているそうで、それが原因か候補の者たちが傷害事件に巻き込まれていると言う。そこで、楪に協力してもらいたいと。要は治癒もしてもらえるし犯人もおびき出せて一石二鳥ということか。それに十和と婚約が成れば40男に嫁がなくても良い。なるほど楪にもメリットはある。少々考えた末、その申し出を受けることに。わざわざお披露目会も開いて、十和は楪との婚約を宣言してくれた。犯人も現れるかと思いきや出て来ず、当てが外れたがこれで楪だけが狙われることになる。龍ヶ崎家にいれば守りやすいからと同居することになったら、あまりの歓迎ぶりに面食らってしまった。椎名の両親は楪より姫花を、と粘っていたが十和に一蹴され退散して行き、あの縁談も彼のおかげで破談になったので感謝している。姑となる十和の母・雪も感じの良い人でくれぐれも息子を頼むと言われ、気不味くもなったけれどすぐに打ち解けて彼の留守中も穏やかに過ごすことが出来た。そんな折、美月の実家・藤沢家の本家筋に当たる瑠璃川家の令嬢・夢子は十和の妻になるのを夢見ていた筆頭で、楪に強い恨みを抱くように。呪詛を使って治癒の力を数日使えなくすると言う嫌がらせをした後、自分に逆らえない美月を使っ楪を瑠璃川家の別邸に攫い・・・。ドアマット系程ではないですが、家族に無能と疎まれているヒロインがヒーローに見初められるという和風シンデレラストーリー。花嫁候補達の傷害事件の犯人は勿論夢子。この人も全く相手にされてないのに付き纏い、自傷してまで彼に近づこうと目論むも楪のせいでパァ。一層恨みを買ってしまいピンチに陥ります。でもまぁ、元々囮を兼ねていたのもあったのと十和の式神が付いてたり、水のある場所ならすぐ駆けつけるといわれていたので誘拐されても肝が据わってましたが、夢子がサイコパス過ぎてね(^_^;)娘の暴走で一族もろとも罰を受ける羽目になった瑠璃川家の皆さんが気の毒。一方、楪は助けに現れた十和が龍の姿だったので彼があの時の龍だと気付きます。そして共に過ごすうちに彼に心惹かれていたことを自覚。当の十和は端から彼女を嫁にするつもりだったのですが、楪に不信感を持たれない様話した偽装婚約が悪手だったと母たちに責められ猛省。改めて想いを告げて終わっています。正直、夢子のところよりも姫花以外の椎名家の面々の方がムカついたから、彼らが未だに楪を見下してるのがモヤりました。続編があるならこの辺りは決着着けるのかしら。家柄的に祓い屋の才が無いと言うのは確かに致命的かもだけど、楪の治癒力は相当なもの。価値を見誤って後悔しても遅いのに。評価:★★★★☆ザマァ要素がちょっと足りない。
2024.05.22
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2024年3月刊DIANA文庫著者:河野美姫さん出社したら会社が倒産していた。オフィスからは物が消え、社長とは連絡がつかない。ビルのオーナーに倒産したと告げられたが、石川志穂は事実をまるで受け入れられなかった。その上、家賃が払えないなんて、同棲している三歳年上の恋人が不機嫌になるに違いない。沈んだ気持ちでアパートに帰った志穂を待っていたのは、明らかに“事後”だとわかる全裸の男女の姿。ショックと絶望感から怒りが沸き上がり言い合いになるものの、志穂は彼氏と浮気相手の女に侮辱され家を飛び出してしまう。仕事も住む家も失ったまま、カプセルホテルや漫喫を転々とする日々。そんな中、疲れ切った志穂に声をかけてきたのは、高校時代からの親友の一人・宏樹だった……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 石川志穂=再就職活動中の元会社員。 七原宏樹=志保の元クラスメイト。ごく普通の会社員の志穂は、お盆休み明けに出社すると部屋がもぬけの殻になっていて茫然としていた。小さなハウスクリーニング会社ではあったがまさか倒産するなんて。勿論すぐに再就職先を探すつもりではあるけれど、いきなり無職になったことで同棲中の恋人の順はきっと渋い顔をするだろう。彼の兄がニートで実家に寄生しているとかで、そういう面にはとても厳しく、生活費もきっちり分担されているからだ。水道光熱費と食費を彼が受け持ち、家賃は志穂担当という風に。一応、貯金はあるので暫くは払えるが、次の就職先が見つかるまでネチネチ言われそうで気が重い。取り敢えず、彼が帰ったら事情を説明しないと。しかし、帰宅するとこの時間にいないはずの彼が部屋にいて女を引っ張り込んでいた。お楽しみの後なのか二人とも全裸で、どういうことなのかと問い詰めると順が逆ギレ。お前のそういう所がウザくて嫌なんだよ、と、浮気したのもお前のせいだと責め立てられ持ってたバッグを投げつけた。財布諸々入ってたので当然回収したが、そんなふざけた言い分ならお望み通り別れてやると当座の荷物を詰め込み部屋から飛び出したのだった。あれから1週間。志穂は行く当てもなく宿泊施設を転々としていた。実家に帰ることも視野に入れたものの、地方な上に現在離婚して出戻った姉が子供を連れて住んでいるため3DKのマンションでは定員オーバーだ。同じ高校で未だに交流のある同郷の友人・美紀も彼氏と同棲中と聞き、さすがにお邪魔できない。なんか私結構詰んでない?途方に暮れていると、前から歩いて来たスーツ姿の青年に声を掛けられた。顔を上げると美紀と同じく、友人で高校時代のクラスメイト・七原宏樹ではないか。帰省の度に飲み会を開いて会っていたが、かれこれ1年ぶりだろうか。なんだかやつれている志穂を見て、何か察したのか宏樹の誘いで居酒屋に着くと彼女は現状を洗いざらい白状させられてしまっていた。宏樹は、だからもっとしっかりした会社にしろと言ったのにと呆れられたが、彼氏に浮気された挙句部屋を追い出されたことについては眉を顰め怒っていた。でも、今になって思えば気が強くてズケズケものを言う自分も良くなかったと思う。そう話せばお人好し過ぎるとため息を吐かれ、一先ず次の仕事が見つかるまで俺の部屋に住めばいいと強引に連れて行かれた。大学時代に同期数人とアプリ開発会社を起ち上げた宏樹は都心のマンションで一人暮らしをしていた。仕事部屋に入らなければ他は好きに使っていいと言われたものの、一時的とはいえ女性との同居とかいいんだろうか。生活費も受け取ってもらえず、なら食事の支度くらいは、と引き受け、休日になると宏樹に付き添ってもらい元カレと暮らしていた部屋に荷物を取りに行った。私物と志穂が買った電化製品数点もしっかり引き上げた際、帰宅した順と鉢合わせしてしまい悶着になりかけたが、浮気を正当化する元カレにガタイの良い宏樹がしっかり釘を刺してくれて少し気も晴れた。やはり、古い友人がああも馬鹿にされては彼も気分が悪かったんだろう。それから2週間ほど経ち、漸く次の就職先が決まった。宏樹に報告すると自分のことのように喜び、奮発してフランス料理のディナーをご馳走してくれた。その後、宏樹から連絡貰ったと美紀が電話して来て何で頼ってくれないんだと怒られた後、宏樹とそのまま付き合っちゃいなよ、と言われてそんな仲じゃないと思わず笑い飛ばしていた。先ずお互いそんな目で見てないし。でも、美紀が変な事言うから意識してしまう。そんな彼に部屋を見つけて近いうちに出て行くことを告げると、宏樹は暫くは物入りだろうからこのまま同居すればいいと猛反対。しかも、ずっとお前が好きだったと告白され・・・。友人だと思っていた男友達に想われていたと知り、パニくる志穂。しかし、今思えば卒業式の日、30まで独身だった時は俺が嫁に貰ってやるという彼の言葉は精一杯の告白だったのかもしれない。なのに、真剣に取り合わなかったことを猛省します。でも、いきなり恋愛対象として見るのも気恥ずかしい。悶々としていると宏樹の元カノが彼に復縁を迫ってるのを目撃して漸く自分の気持ちを自覚するのでした。その後、二人は正式に交際を始め、同居から同棲に。昔から宏樹の想いを知っていたと言う美紀ともう一人の友人・後藤からはやっとくっついたかとからかわれます。季節は過ぎて、志穂がクリスマスにプロポーズされて本編は完。おまけの番外編は宏樹目線の結婚式エピソードと、志穂に惚れたきっかけとなった出来事が描かれていました。近しい仲だからこそ中々告白できない。見守ってた友人二人は他人事ながらさぞヤキモキしてたでしょうね。しかも途中は違う相手と付き合ってたりしたし、宏樹よお前本当にそれでいいのかよ、と。早く告白しとけば志穂もあんな自己中男に振り回されなかったのにねぇ。浮気を正当化する奴は本当にクズ。しかも同棲中の部屋に浮気相手連れ込むとか、婚約してたら普通に慰謝料案件ですよ。評価:★★★★★シンプルイズベスト。
2024.05.21
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2023年9月刊ベリーズ文庫著者:Yabeさん空港で働く陽和は、エリート機長の悠斗と交際して約2年。幸せな甘い日々を過ごしていたある日、妊娠が発覚! その矢先、彼が実は御曹司で令嬢と見合いをすると知って…。自分の存在が迷惑になることを恐れ、身を引き双子を産み育てていたら、突然悠斗に再会し!? 戸惑う陽和を、彼は独占欲露わに囲いこむ。「もう二度と、君を離さない」--日ごと増していく溺愛に陽和は抗えなくて…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三島陽和=グランドスタッフで働きながら双子を育てるシングルマザー。 桜葉悠斗=大手航空会社社長の次男でパイロット。陽和の元カレ。上田奈緒子=陽和の母方の叔母。 上田浩二=奈緒子の夫。両親を早くに亡くし、母方の叔母夫婦の家に居候して双子の男の子を育てている陽和。2年近く前まで、彼女は大手航空会社でグランドスタッフとして働いていたのだが、当時交際していた8歳年上の恋人・悠斗との別れを機に退職。この時既に妊娠していたため事情を聴いた奈緒子からの強い勧めで叔母夫婦の元に身を寄せることになったのだった。そして、無事に生まれた双子の保育園も決まった頃、運良く地元の空港で雇用され再びグランドスタッフとして働くことが出来た。双子の送り迎えなど奈緒子達には暫く迷惑を掛けてしまうが、ずっと好意に甘えて居候状態だっただけに心苦しくもあったので、これで漸く生活費を入れられる。少々のブランクはあったが、即戦力だとありがたがられ仕事も順調。双子たちももうすぐ2歳。だんだん父親そっくりになって来たと思う。楠木悠斗は日本では数名しかいない34歳の若き機長で、その容姿も相俟ってCAを始め女性スタッフからの人気が高かった。そんな彼からいきなり交際を申し込まれた時は何の冗談かと一回断ったほど。しかし、彼は本当に真剣なんだと多忙なくせに暇さえあれば猛アプローチ。その必死さにいつしか絆されて交際に至った。しかし、付き合いだして半年ほど経つと彼が実は社長の息子で、特別扱いされない為に母方の名字を名乗っていた事、パイトットは続けるが業務提携先のお嬢様と近々政略結婚するらしいという噂が実しやかに流れ始め、何も聞かされていない陽和は不安に苛まれた。悠斗は主に国際線を担当していて、やっと連絡がついた時、どういうことかと尋ねると、名字についてはそろそろ打ち明けるつもりだったと言う。政略結婚については縁談は来ているけれど全て断ったと話していたが何とも歯切れが悪い。御曹司ともなると色々自由に出来ないのは判るけれど最近体調が悪いのも相俟って一気に不信感が増した。その後、彼とは中々会えなくなり、約束もドタキャンされてばかり。いよいよ我慢しきれなくなった頃に陽和の妊娠が判明。今後どうするつもりなのか相談したいのに煮え切れない彼の態度に怒りが増した。どうやら結局親に押し切られて見合いをしたらしい。お相手のお嬢様に付き纏われているのを見た時ついに爆発。陽和は悠斗にもうあなたとはやっていけないと別れを告げ、連絡手段も全てブロックすると叔母たちの住む高知に引っ越したのだった。悠斗はあの後あのお嬢様と結婚したんだろうか。今思えば自分も精神的に不安定な時期でもあったので、色々心無い言葉を彼にぶつけてしまったので心残りはある。そんな矢先、突然名前を呼ばれて振り返るとそこにいたのは悠斗ではないか。彼は大股で近付くと陽和を抱きしめ、やっと見つけたとため息を吐いた。しかし、間の悪いことに奈緒子が双子たちがママに会いたいと駄々をこねたからと陽和を迎えに来たことで子供の存在が彼にバレてしまった。自分そっくりな子達にピンと来たらしい彼に俺の子だなと問われ、つい正直に認めた彼女に話をしたいと悠斗から懇願され・・・。その夜、叔母の家で改めて話し合いの場を設けてもらい彼と再会。悠斗からは自分の煮え切らない態度で陽和に要らぬ不安や誤解を抱かせたこと謝罪します。名字についてはプロポーズの際に全て打ち明けるつもりだったようで、見合いの件と言い最悪なバレ方をしてしまったんですね。勿論、陽和にベタ惚れな彼は政略結婚など応じるつもりはなく、強行手段に出ようとする父と絶縁してでも断るつもりでした。味方になってくれていた兄と母ともすり合わせをしていたものの、見合い相手が一目で悠斗を気に入り、断ったにも関わらず付き纏い、外堀を埋めるためか人を使って不本意な噂を流し始めたのだと聞き、道理で広まるのが早かったわけだと陽和も納得。このお嬢様、やることが用意周到すぎてなぁ。断られてるのにしつこく付き纏って仲が良いアピールして陽和に見せつけてたんだから、彼女にフラれたあと悠斗がキレたのも判る。しかし、片を付けたはいいけれど肝心の恋人は姿を晦ましていて彼は真っ青。でも諦めるつもりはなくずっと彼女を探していました。子供がいたのは予想外だったようですが。事情も分かって、もう一度信じてみると彼とやり直す覚悟をする陽和。未だに悠斗の父は反対していたものの、あるトラブルを切欠に思い直したようで二人の結婚は認められ、陽和は子供たちと共に彼の暮らす東京へ。ハワイで近親者のみ参加の式を挙げて本編は完。書き下ろしの番外編はそれから約1年後、陽和の誕生日のサプライズパーティーの準備をする悠斗と双子たちのほのぼの話でした。シークレットベビーものですが、再会してすぐに誤解が解けたのもあってモヤモヤ度は少な目。別れの経緯もヒーローが結構ヘタレ系で後手後手に回ったせいで関係悪化したというパターン。でもこれは誤解されても仕方ないよなぁと納得できる系。実際、このジャンルでの離れ離れになる原因なんて奇をてらわずこういうのでいいんだよ、と思ったり。取り敢えず、お嬢様が復縁まで邪魔してくるとかじゃなくて良かったです。評価:★★★★☆
2024.05.20
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2024年3月刊夢中文庫プランセ著者:天衣サキさん今この瞬間だけは、あなたは私のもの──聖女だった母から蔑ろにされ、妹の第二王女には婚約者を奪われ、諦念を抱き生きてきた第一王女のセシリア。ある日、身を寄せていた教会で破滅的な影を纏った謎の男・ヴィルと出逢い、諦めるだけの人生だったセシリアは初めての愛に目覚めていく。けれど王女である以上、彼と寄り添える未来はない。そんなセシリアにある日縁談が持ち上がった。王族の義務から逃れられないセシリアはある決断を下してヴィルを誘惑する。震えるセシリアをヴィルは狂おしいほどの情欲で貫き快楽で蕩かしていくのだが……たとえ与えられるものが恐怖でも痛みでも、あなたからなら構わない── ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セシリア=両親と妹から虐げられていた第一王女。ヴィルヘルム=帝国の第二皇子。正体を隠してセシリアと知り合う。 ロイガール=セシリア付きの護衛騎士。 ロージー=セシリアの3歳下の妹。我儘で傲慢な性格。 ルドヴィカ=故人。元聖女で娘のセシリアを嫌っていた。パヴィエール王国第一王女・セシリアは、王妃・ルドヴィカを筆頭に父王と妹姫のロージーから虐げられて育った。父は聖女だった母にベタ惚れで盲目的に従っていただけのようだが、ロージーは苛烈な性格のルドヴィカそっくりで、とにかく姉を虐めるのが楽しくて仕方ないらしい。数々の嫌がらせをされてきたものの、婚約者のヘンリーまで奪われるとは思わなかった。申し訳なさそうに婚約解消を告げるヘンリーに心苦しくなったが、もはや決定事項なのだから仕方ないと割り切った。以前はロージーの我儘を父が度々諫めていたので本来なら姉の婚約者を奪うなど許さなかったであろう。だが、去年王妃が病気で崩御して以来、政務も放り出し放蕩に明け暮れていると聞く。父の目が無いことで一層ロージーがやりたい放題ぶりが悪目立ちしているので、家臣たちも眉をひそめていた。それにしてもなぜ母はこんなにも私を嫌ったのだろう。物心ついた頃には既に邪険にされており、たまに顔を合わせれば憎まれ口ばかり。母に似たロージーばかりを可愛がっていた。長い事こんな状況では諦めてしまう癖が身に付いてしまったが、流石に精神が疲弊しきってしまった。正直、耳障りな妹の声を聞いているのも苦痛で体調不良と称して国境にある別荘に行くことにした。そこはルドヴィカの故郷でハリアットという街。父が母の為に建てた別荘があり、そこに身を寄せることになったセシリアはルドヴィカの日記を携えていた。人の日記を見るのは気が引けたもののどうしても母の本心が知りたかったから。しかし、日記には聖女の術がかかっており開くことができない。諦めかけていた頃、妙な夢を見たセシリアは翌朝突然聖女の力に目覚めていた。恐る恐る日記に手をかざすと術が解除されてページが開き、驚愕の事実を知った。ルドヴィカは愛する夫との第一子であるセシリアの誕生を心待ちにしていて妊娠発覚から暫くは喜びの言葉で溢れていた。だが、いざ産まれて数か月経つとルドヴィカの聖女の力は薄れていき、セシリアに神聖力が溢れていることが判った。娘が次代の聖女と知り、母は力が使えるうちにセシリアの神聖力を封じていたという。喜びと幸せの文章から一気に娘を呪う言葉ばかりになって彼女は日記を閉じた。本来聖女の力は遺伝しない。だが次の聖女が現れると当代の聖女は力を失う。聖女であることに誇りを持っていた母は赤の他人ならともかくそれが娘だと言うことで余計に思う所があったのだろう。理由は判ったがこんな理不尽なことで嫌われていたのだと思うとやりきれない。でも、後々面倒なことになりそうなので自分が聖女だと言うのは当面隠しておいた方が良さそうだと漠然と思った。それから暫く経って、懇意にしていた女性神官からパヴィエールと隣国・カサンドロ帝国が戦争になりそうだと聞いた。そして国境にあるこの街から早く離れるよう忠告もされた。どうやら、父が未だに政務を放り出しているおかげで過激派の高官たちが呪術師を使い帝国に徒なそうと目論んでいるらしく、それが当の帝国の耳に入ったようだ。帝国の怒りは尤もで、攻め込まれればこの国はひとたまりもない。結局どこに逃げても同じだとセシリアはこの地に留まることを決めた。そんなある日、彼女は雨宿りさせてもらった教会で一人の青年と出会った。彼はヴィルと名乗り、一見近づきにくい印象であったが話してみると気さくで、少し変わった受け答えをするセシリアを気に入ったようだった。その後、街中で度々ヴィルと遭遇。会話しているうちに彼が帝国人だと判った。そしてヴィルもあの神官と同じく彼女に避難を薦めていた。固辞し続けているとそのうち説得を諦めたヴィルはハリアットから姿を消していた。数日後、護衛騎士のロイガールから王都で襲撃事件があったこと、その際、呪術師とその雇い主の貴族達が全員惨殺されたと報告を受けたセシリア。指揮を執っていたのは帝国の第二皇子らしい。カサンドロに悪さをする前に乗り込んで全て粛清したということはこれで戦争は回避されたとも言える。勿論、パヴィエールは相当の賠償を要求されるだろうが、直接王都に乗り込んでくれたおかげで結局一番危険視されていたこの街の民は救われたのだ。ほっとしたのも束の間、セシリアの元に怪我を負い更に呪詛を掛けられて弱っていたヴィルが訪れた。彼に心惹かれていた彼女は死なせまいと封じていた聖女の力を発揮しヴィルを救うと倒れ、目覚めた彼に聖女であることがバレてしまった。その後、すっかり距離が縮まった二人はロイガールが止めるのも聞かず仲睦まじく暮らしていたが、彼女宛に王宮からの書簡が届いた。そこには協議の結果、パヴィエールが帝国の属国化が決定したこと、忠義の証としてセシリアが皇帝に献上される旨が記載されていて・・・。一応、聖女ものになるんですかね?お互いの素性を知らず恋に落ちたセシリアとヴィルヘルム。ヴィルは彼女がいるハリアットを戦場にしないために直接呪術師をせん滅することで戦争回避させることに成功するも、呪詛を受け死にかけた所、セシリアの神聖力によって救われ、一層彼女に惚れるのでした。そのうちにセシリアが王女と知り、ロイガールから彼女の境遇を聞くと怒りに燃え、先ず国王とロージーの抹殺を心に誓います。そんな折、彼女が皇帝の側室になることが決まり、せっかく結ばれたというのにセシリアは彼に別れを告げ王都に帰還。その間、ヴィルは手をこまねいているわけはなく、父である皇帝に呪術師を一掃した褒賞として第一王女は俺が貰うと談判し、皇子妃にする許しを得たのでした。セシリアは、処女でない事を理由に後宮入りを辞退する覚悟だったものの、迎えに来たのがヴィルでビックリ。ちゃんと皇帝には筋は通したと笑う彼が自分の夫になると判って嬉し泣き。国王は政務の放棄で国を危険に晒したこと、ロージーは国費の使い込みによる贅沢三昧と使用人たちへの傷害など数々の罪に問われて王籍剥奪の上処刑が決まった時はスッキリしました。あの妹が歪んだのは過分に両親のせいではあるんでしょうけど、善悪分別つかない年でもないんだからその後の悪事は完全に自己責任だと思います。とはいえ、極刑になるようヴィルが手を回したようなので、妻を虐げた連中に慈悲など要らんという徹底ぶりが凄い。それだけに諸悪の根源であるルドヴィカが逃げるように早死にしてるのがモヤりますが。王位は王が侍女に産ませた王子・ジョージが継ぐことになるんですが。この子はセシリアと仲が良かったことでヴィルからも可愛がられていることがおまけの後日談で語られていました。お話自体は貴族TLとして割と王道展開だったと思います。評価:★★★★★
2024.05.19
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2022年9月刊夢中文庫プランセ著者:ととりとわさん心優しい彼との新婚生活は、私にはじめて訪れた幸せ──親友に巻き込まれ異世界へきてしまった瑠衣は、ならず者に追われていたところを黒衣の騎士に助けられる。しかし彼こそ『異界人』を捕らえる命を受けた騎士団長・ギドゥだった。素性を隠しながら働く瑠衣は逞しく優しいギドゥに強く惹かれていくのだが、ある日突然彼から求婚されて……。『何があっても君を必ず守ってみせる。命が尽きるまで一緒だ』 ギドゥの与えてくれる甘く深い愛情にとかされながらも、抱える秘密の重さに悩み続ける日々。そこへ、瑠衣がこの世界にやってくる原因となった親友そっくりな女性が現れて……!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 榊瑠衣=親友と共に異世界トリップして来た日本人女性。 ギドゥ=王国騎士団長。ワケありの瑠衣を匿う。志田真莉奈=瑠衣の親友。 ローセ=ギドゥの育ての親で旅籠の女将。その夜、マンションの屋上で瑠衣は、恋人が心変わりしたのはお前のせいだと親友の真莉奈に責められた挙句、自殺をほのめかされ必死に宥めていた。しかし、興奮している親友は耳を貸さず、瑠衣を巻き込み身を投げた。死を覚悟した彼女に衝撃は訪れず、それどころか柔らかい草の上に落ちていて茫然。おまけに何故か真っ裸。近くにいたならず者に追いかけられ死に物狂いで逃げていた瑠衣はガタイの良い黒衣の青年に助けられた。彼はギドゥと名乗り、王国騎士団長だと言う。王国?騎士団長?一体なんのこっちゃとパニ来る彼女に外套を掛け、旅籠に連れて行くと女将のローセに瑠衣を預けた。彼が立ち去り、ローセに話を聞くとギドゥは見るからにワケありな者を一先ずここに連れて来て結構な額を預けて世話を頼むのだそうだ。養い親の自分を信頼し頼りにしてくれてるのは嬉しいんだけどねと女将は笑っていたが、瑠衣のことも色々察しているようだが敢えて尋ねずに、誰にも自分の素性を明かしてはいけないと告げた。でないととんでもないことになるからと。あれから瑠衣は考えた。状況的にこれが俗に言う異世界トリップというやつなのかと。帰れる方法も無いのならここで生きて行かなければならない。ローセの忠告もあって瑠衣は「ルイゼ」と名を変え旅籠の従業員として働いていた。このアルダノア王国はたまに現れる異界人に対して良い印象を持っていない。なんでも、その昔やって来た異界の男が当時の王妃を誑かし王位簒奪を目論んだらしい。ローセによれば若干盛って伝わっている話だと言っていたが、今でも続く異界人狩りを思えば王妃と異界人が恋仲になったのは事実で王家の恨みを買ったのだろうとのこと。そして、ギドゥ率いる騎士団の主な仕事が異界人狩りであった。彼はあれ以来、度々訪れては瑠衣と話をして行く。見かけによらず穏やかなギドゥに心を寄せていた彼女は胸を痛めた。ローセが口を酸っぱくして素性を明かすなと言っていた意味が分かったから。それから暫く経って、瑠衣がこの世界にやって来て半年が過ぎた頃、彼女はギドゥからプロポーズをされた。実は一目惚れだったと聞いて嬉しかったけれど、彼に素性を偽らなければいけない事が心苦しくもあった。王国には明確な貴族制度は無く、何かしらの才があれば重用されると言う。孤児だったギドゥが腕っぷしだけでのし上がり今の地位に付き、一城の主と聞いて嫁いで来た瑠衣はその居城の大きさに驚くばかり。彼は使用人たちからも慕われており、その妻になった瑠衣も歓迎された。特に専属侍女となったダァヤとは歳も近いので仲良くなって穏やかな日々を過ごしていた。一方、ギドゥは今日またもや現れた異界人の少女を匿い、ローセの元に預けた。今回の出動は近隣住民からの通報だったが、異界人は何故か全裸で出現するので見つかればすぐにバレる。だが、動物を彼らと見間違えた誤報も多いので今回も上には小型の熊だったと報告書を出すことにした。宰相のガーダスはあれほど定期的に現れていた異界人の捕縛が無くなったので訝しんでいるようだったが、いつまで昔話に踊らされて罪のない彼らを処罰するのか。無能と罵られたが甘んじて受け入れ愛しい妻の待つ城へと帰ろうとすれば、最近やけにガーダスから薦められる名家カルージアの令嬢・アルミナからしつこく迫られ辟易としていた。自分はもう結婚しているのでと断っても、騎士団長なら愛人の一人や二人囲って当然とありがた迷惑極まりない。ギドゥが剣の指南をしている国王ソックが諫めてくれているがどうすれば諦めてくれるやら。だが、今日は本当にしつこい。腹に据えかねてきっぱり拒絶したら、ルイゼを害すると仄めかされて慌てて帰城すると、使用人たちが大騒ぎしていた。ルイゼが行方不明になったと聞き、宰相を問い詰めるべく王宮へ逆戻りするギドゥだったが、その頃、瑠衣は王宮の地下牢でかつての親友・真莉奈と再会していて・・・。異世界トリップしたヒロインがそこで出会ったヒーローと恋に落ち結ばれるという、タイトル通りの内容です。瑠衣(ルイザ)の素性などギドゥは出会った当初から気付いていました。他の国では異界人を迫害などせずに受け入れて共存しているようなのに、いつまでもこの国は変わらないまま。国王のソックもギドゥの考えに賛同しておりこのルイザの誘拐事件を機に改革に乗り出します。一方、瑠衣はかつての親友もやはり同じく転移していたことを知り再会を喜んでいましたが、奴隷商人に捕まったと話す真莉奈は壮絶な体験していて一層卑屈になっていました。でも、カルージア家の当主に取り入ってまんまとその養女に収まってアルミナと名を変え、ギドゥのの妻の座を狙っていた。なのに、瑠衣が彼と結婚してしておりその目論見もパァ。前の世界と同じく、あんたは目障り極まりないと理不尽な恨みをぶつけられて瑠衣は戸惑います。とはいえ、恋人が瑠衣に惚れて真莉奈が捨てられたと言うけども、それって彼女のせいじゃないからなぁ。この直後、助けに来たギドゥの姿を見て逆上した真莉奈に刺されて瑠衣は重傷を負うも、一命をとりとめ、現行犯で捕まった真莉奈は罪を問われることに。彼女の逮捕で宰相とカルージア家も騎士団長夫人の誘拐に手を貸したとして芋づる式に捕まり、異界人狩りを推奨していた過激派は瓦解。ソックの宣言の元、異界人への迫害は禁止となるのでした。それからまた少し時が経ち、瑠衣も素性を偽る必要は無くなり、ギドゥとの子を妊娠したと報告したところで幕。正直、設定が設定なので、数回あったラブシーンを1回削ってでもその分補完して欲しい所がチラホラあったのが少し残念。内容自体は面白かったと思います。評価:★★★★☆
2024.05.18
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2021年1月刊ベリーズ文庫著者:桃城猫緒さん5歳の誕生日に突然前世の記憶を取り戻したサマラ。かつてプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたと気づく。このまま16歳になれば断罪エンド確定。破滅回避のためには世界最強の偉大な魔法使いである父・ディーを味方につけて守ってもらうしかない! クールで人嫌いなパパの溺愛をゲットするため、サマラは今日もいい子で頑張ります! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 サマラ=魔公爵・ディーの一人娘でゲームの悪役令嬢。 乙女ゲー大好きな日本人女性だった前世の記憶を持つ。 ディー=大陸一の魔法使いで魔公爵。サマラの父親。 レヴ=サマラが出会った正体不明の魔法使い。 リリザ=ゲームのヒロインで膨大な魔力を持つ「奇跡の子」乙女ゲーム大好きな佐藤由香がハマりにハマった「魔法の国の恋人」当然ながら全ルートコンプを達成済みでファンブック2冊も読み込んだ。だが、ネットの噂で隠しキャラルートがあるらしいと聞き及び試行錯誤したもののイベント発生条件が全く分からない。ただの噂ではと半信半疑になりながらも諦めきれずにいたある日のこと、由香は居眠り運転のトラックに轢かれ25年の人生は幕を閉じたのだった。ふと気づくと彼女はニンジン色の髪色をした幼女の姿になっていた。そして突然流れ込んで来る5年の人生の記憶。幼女の名前はサマラ。由香の記憶も相俟って彼女は悲鳴を上げた。サマラとは「魔法の国の恋人」の悪役令嬢ではないか。攻略対象の一人・魔公爵ディーの一人娘でとにかく性格が悪く、どのルートでもラスト近くに現れる魔人の暴走に巻き込まれて死んでしまう。前世で早死にしたのに生まれ変わっても16歳までしか生きられないなんて酷過ぎる!しかし、隠しルート達成はいかずともサマラである自分はこの世界を熟知している。ストーリーを改変する事になるけれど、二度目の人生順風満帆に長生きしたっていいではないか。取り敢えず、今までの我儘放題な態度は改め良い子になろう。あと、父であるディーを自分にメロメロにさせればこれ以上頼もしい味方はいない。丁度、ディーはサマラの誕生日である今日、屋敷に帰って来るから即作戦実行だ。 媚びて媚びて媚び捲くってやる。そう意気込んではみたけれど、ディーは手強かった。そもそも、サマラは彼の実子ではない。離婚したディーの妻・ナーニアが浮気して出来た子だった。しかも妻は娘を残して男と駆け落ち。ディーがサマラを遠ざけていた気持ちも判ると言うもの。そして彼女が我儘に育った原因も寂しさからであった。この辺りの事情はディーのルートやちょっとした裏話もファンブックに載っていたので承知している。だが、こっちは命がかかっている。いくらウザがられようがめげずにアプローチをし続けた。その際、一緒にやって来たディーの友人で同じく攻略キャラ・カレオが色々気を回し、仲を取り持ってくれたおかげで1ヶ月も経つと彼の態度は少しずつ軟化。最初はディーに気に入られるために始めた魔法の勉強も今後何かの役に立つかと打ち込むようになったのも要因になったようだ。才能が無いのは重々承知しているが、あるトラブルに巻き込まれた時に妖精との契約にも成功。ディーも勉強を見てくれるようになったので魔法を使えるようにもなっていた。時は流れ、サマラは16歳になり、今までの努力が実りディーが所長を務める魔法研究所に通うことになった。そこには昔、彼女を助けてくれた正体不明の魔法使い・レヴもいて、良い友人関係も築けている。しかし、問題はここからゲームのストーリーが始まると言うこと。魔力を持つのは圧倒的に貴族に多いのに、平民ながら膨大な魔力を持ち神殿に引き取られた「奇跡の子」リリザがやって来る。そんな彼女が攻略キャラにモテモテになり、面白くないサマラは嫌がらせを繰り返した挙句、魔人の暴走という貰い事故で破滅する。幸いにも、ディーとカレオは味方に出来たが用心に越したことは無い。なるべく関わらないようにすれば、リリザにも同僚の一人としかとられないだろう。そう考えていたのだが、ここにきて抑止力がかかるのか、サマラは何かとリリザが引き起こすトラブルに巻き込まれ、何度危険な目に遭った事か。その都度間一髪でレヴに助けられていた。しかし、リリザが原因で研究所とそこにいる魔法使いたちの使い魔が多大な被害を被り、サマラの堪忍袋の緒が切れた。思わず責任を問うとリリザの味方である王太子たちに睨まれ万事休す。結局、破滅ルートなんだろうか。諦めかけたその時、彼女を助かたのはディーだった。そして、ドジなだけでは済まされない数々のやらかしを理由にリリザに退所勧告を出した。トラブルメーカーがいなくなったことで研究所に平和が訪れたのも束の間、レヴが魔力暴走を起こし・・・。悪役令嬢+ゲームの世界に転生というジャンルが大流行してた頃のお話です。そのせいか、展開もかなり王道。ただ、逆ハーではありません。努力を重ね、攻略キャラ二人を味方に付けたものの抑止力とヒロイン補正でリリザにはサマラは叶わない。先ず王太子が味方なのは権力的に強いよなぁ。そんな不利な状況下、サマラが親しくなったのはゲームでは出て来なかったレヴ。ディーには及ばないが魔法の才があり、幾度となく彼女の助けになってくれていましたが、ラスト間近で彼の魔力が暴走。魔人に変化してしまいます。そう、どのルートでもサマラを巻き込み殺してしまう正体不明の災厄。そこでサマラが思い付いたのは彼こそが隠しキャラだったのでは、ということ。彼を救うには「奇跡の子」の力が必要でリリザに頼むも、この子がもうとんでもない性悪で口だけ女。いざとなったら何の役にも立たない。絶望の中、サマラはレヴへの想いを自覚したことにより奇跡が起きて、という流れ。レヴの正体が実は妻に逃げられ落ち込んでいたディーが特秘組織に唆されて自分の血で作ったゴーレムだったりします。お父さんは飽く迄リリザの攻略キャラなので味方には出来ても攻略は出来ない。そしてレヴを救い攻略できるのはサマラのみ。このお話そのものが隠しルートの物語であったというオチでなるほどー、と。書き下ろしの番外編は、まだ距離感がある5歳の頃のサマラとディーの小話でした。前述の通り、ストーリー自体が割と王道展開で変に外してこないのも良いですね。評価:★★★★★
2024.05.17
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2023年11月刊NiνNOVELS著者:瑪々子さん「メイナード様を、あなたにあげるわ」フィリアは姉の言葉に驚いた。彼は聖女である姉の婚約者のはずなのに。姉中心のこの家ではフィリアに拒否権はない。けれど秘かに彼を慕っていたフィリアは、自らも望んで彼の元へ。そこには英雄と呼ばれ、美しい顔立ちをしていたかつての彼はいなかった。首元に黒い痣のような呪いが浮かぶ衰弱したメイナードは「僕には君にあげられるものはないんだ」と心配する。「ただメイナード様のお側にいられるのなら十分なのです」解呪の方法を探すフィリアは、その黒い痣に文字が浮かんでいると気づいて……? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フィリア=研究職をしている伯爵家の次女。 メイナード=元魔術師団団長。討伐で重傷を負い任を解かれた。アンジェリカ=聖女。フィリアの姉でメイナードの元婚約者。 ルディ=メイナードの弟。 イアン=フィリアに一目置いている研究所所長。聖女である姉・アンジェリカと比べられ、いつも肩身の狭い思いをしていたフィリアは、ある日、姉からメイナードを譲ると言われて驚いていた。平民ながら類稀な魔力を持ち、魔術師団を率いて魔物を討伐するメイナードは多大な功績を挙げいつしか英雄と呼ばれる人物。アンジェリカとの婚約も王命によるもので、近々爵位を授与される予定であった。しかし、先日の討伐で勇敢に戦った彼は重傷を負ったと聞き、フィリアは心配していた。なのに姉はそんな状態の彼との婚約を破棄し、次の魔術師団長・ダグラスと婚約するらしい。今までアンジェリカに物申したことのないフィリアは流石にこの時ばかりは姉を責めた。だが、王とメイナードも既に納得済みだという。どうやら尤もらしいことを言って都合のいいように話を進めたようだ。両親は元々アンジェリカに甘いので代わりにフィリアをメイナードの元にやるということに異を唱えなかった。寧ろ出来損ないを貰ってくれるなら万々歳と言った態度。だが、元々フィリアは心優しいメイナードに想いを寄せていた。重傷を負い寝たきりになっているとしても構わない。こんな私でも彼に寄り添うことができるなら、と少ない荷物を纏めてメイナードの住む屋敷へと足を運んだ。メイナードの屋敷は今やすっかり寂れていた。全盛期はそれなりの人数の使用人を抱えていたみたいだが、今やサムという男性が一人のみ。再起不能状態の主人に見切りをつけ、皆手のひらを返すかのように出て行ったそうだ。アンジェリカとの婚約も解消となり、フィリアが代わりに来ることも耳にしていたようでメイナードの寝室に通されると、彼の側には弟のルディが付き添っていた。メイナードは全身を包帯で覆われ、苦しそうな呼吸ながらフィリアを歓迎。そして、申し訳ないと謝罪された。しかし、名乗った途端にルディから激しく責められた。姉は別れ際にメイナードを罵り棄てた。その妹も伯爵家もルディにしてみれば憎い存在だろう。メイナードに諫められて部屋を飛び出して行ったルディに申し訳なく思いながらも、不本意でしょうが今後は私がお傍で支えますからと告げると彼は君で良かったと思うと言う。王命で決まった婚約ながら、アンジェリカとは意見の相違が多く、このまま結婚しても冷えた関係になったろう。それにフィリアと話す方がずっと楽しく好感を持っていたと語るメイナードの言葉に胸が熱くなった。新たな婚約者へのお世辞かもしれないけれど、当初から自分の気持ちは変わらない。彼をここまで弱らせているのは怪我だけでなく呪詛のせいとも聞いている。フィリアは自分が勤める魔術の研究所が役立てるのではないかと思い、所長のイアンが貸し出してくれた大量の書物から解呪方法を探し始めた。メイナードの話では対峙したのは竜とのこと。彼の身体に浮かぶ文字が解読できればヒントになるのだろうが、古代文字のようで似て非なるものにも見える。それに急がないとメイナードの命が危ない。どうもこの呪詛は掛けられた者の体力や生命力を徐々に奪っているようで、快方に向かわないのはそのせいであった。そこで、多少なりとも回復の魔力を持つフィリアが気休めにしかならないかもと思いつつ、毎日彼にかけ続けた。すると、少しずつだがメイナードの容体が良くなり始め、ルディとサムも大喜び。その間、自分が婚約できないからと姉からメイナードと早く結婚しろとせっつかれ、フィリアは彼と入籍。晴れて夫婦となった。メイナードの望みで同じベッドで眠るようになると、目に見えて彼は回復。暫く経つと一人で立ち上がるまでになっていた。フィリアも今ではルディにすっかり懐かれ、彼女の研究にも微力ながら手伝ってくれている。今までの研究結果では、竜はそもそも邪悪な存在ではない事。逆にあの討伐以来、あの地には瘴気が漂っているとイアンも言っていた。そして竜は生きながらえているようだとも。普通この手の呪詛は恨みで死に際にかけるもの。もし聖なる存在ならばメイナードの身体に浮かんでいるのは呪詛ではないのかもしれない。竜の呪いは聖女によって解けるともあったが、姉が出来ないのならお手上げだ。そんな頃、呪詛の文字が微妙に変化。書き写した文字をイアンに見せると古の神官たちが使う祈りの言葉だと判り・・・。出来の良い姉ではなく、実は妹の方が聖女で想い人と結ばれるというお話です。フィリアが聖女というのは作中では明言されてないんですが、文献の内容や竜を浄化したり、何より呪詛を解けるのは聖女のみっていう記載がもうね。フィリアの支えによって竜とこの国さえも救ったメイナードは無事返り咲き、伯爵位を貰います。アンジェリカは功を焦り、竜の攻撃で大怪我を負って魔力も失い聖女の任を解かれ、ダグラスとの結婚も破談に。最初はいい気味だと思いましたが、そんな姉を見捨てないのがヒロイン。影ながらアンジェリカを慕っていた魔術師のオーブリーと二人、アンジェリカの回復を助けるのでした。流石に妹の好意だと気付いた姉は未だ素直になれないながらもオーブリーとフィリアに内心で感謝していていました。綺麗ごとと言うなかれ、どうしてもザマァ展開に行きがちなジャンルなれど、こういう結末も良いなぁと。竜に纏わることやフィリアの真の力、メイナード復活の件、アンジェリカの妹へのコンプレックスなどはあんまりネタバレしてもアレなので割愛してます。紙書籍より電子版の方がおまけ短編が多いので読むなら電子版の方がお薦め。メイナードとフィリアの本編後のラブラブ(?)話が読めます。因みにこのレーベルのニューという文字、(ニューガンダムのニューね)機種依存で出ませんでした。ので、代替えの「ν」で記載しております。悪しからず。評価:★★★★☆
2024.05.16
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2023年9月刊ベリーズ文庫著者:惣領莉紗さん内気な会社員・杏奈は、幼馴染で勤め先の御曹司・響に長年恋心を抱いていた。しかし、ふたりの立場の差は歴然。響の態度も冷たくて、距離は広がるばかり。自分は不釣り合いだと諦めていたのに、突然彼から求婚されて!? お見合いを断るための偽装結婚かと思っていたら…。「欲しいのは君だけだ」--響は蕩けるほど甘く杏奈を抱き尽くす。予想外の溺愛にウブな杏奈は翻弄されっぱなしで…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三園杏奈=大手食品メーカーの総務部に勤める会社員。 北尾響=杏奈の勤め先の御曹司。父親同士が古い友人なことから幼い頃から仲が良かった杏奈と響。しかし、いくら家族ぐるみの付き合いとは言っても、響は大手食品メーカーの御曹司。彼の父・基の掲げる経営方針に共感を覚え、3年前にこのキタオフーズに入社したものの、今では副社長になった響との立場の違いを思い知らされ、次第に距離を取るように。それでも、お互いの誕生日を祝い合うという習慣は変わっておらず、先日響から誕生日だからと大ファンの画家の個展チケットと画集をプレゼントされた時は嬉しかった。ある日、杏奈は上司からプロジェクト案のコンテストへの参加を薦められ、チョコレートと人気画家とのコラボ案を提出した。すると最終審査5選に残り、総務部からの後押しもあってプロジェクトに参加することになった。味は良いのにイマイチな売り上げのうちのチョコもこんなパッケージにしたら手に取りやすいのではと何の気なしに出しただけだったのに。漠然とした案なので、開発部でどんなイメージにしたいかと問われても、上手く言葉に出来ず困り果てていたら、何とか意をくみ取っていい感じに纏めてくれる開発部の桐原には随分世話になった。だが、課長の甲田からはド素人の部外者と下に見られ、まともに取り合ってもくれない。しかもやけに敵視されているような。桐原によれば、甲田は仕事はできるがヒステリー気味でよく部下を困らせているのだそうだ。その上、同期の響に対しあからさまなモーションをかけており、彼が不在の日は一日中機嫌が悪いらしい。響と杏奈が幼馴染というのは社内では公然の秘密。甲田が勝手にライバル視しているだけだから気にするなと言われたが、何だかモヤモヤしてしまう。そんな心配されるような仲じゃないのに。それに、響にはしょっちゅう縁談が持ち込まれていると基が話していた。彼が結婚するならきっと名家のお嬢様とか会社に利益をもたらす人だろう。慣れない仕事に悪戦苦闘しながらも、リニューアルしたチョコレートは発売以来の大ヒット。杏奈に社長賞が贈られることが決まった。そこで、響が夕食をご馳走してくれるというので、ありがたく出向くと彼からいきなりのプロポーズにビックリ。今回のプロジェクト成功と社長賞で大分自信もついたのでは?と聞かれ、そこは素直に肯定したが、それが何故結婚と繋がるのか。響としては杏奈に余計な気を回されて距離を置かれてかなり落ち込んだらしい。子供の頃からお前が好きだったと告げられたが、そんな素振り一切なかったくせに。でも、以前彼は見合い話にうんざりしていると言っていた。もしかして、これは偽装結婚?盛大な勘違いをしている杏奈は少しでも彼の煩わしさが消えるならとその求婚に応じたのだった。その夜、響からの招集で両家の両親の前で改めて二人の結婚を報告すると父たちは大喜び。杏奈の母はこの子が社長夫人なんて大丈夫でしょうか、と少々難色を示したが、お互い幸せならと思い直し賛成してくれた。ただ、付き合いは長いが交際はしていないためまだ入籍はせず式と披露宴までは婚約期間とした。基は歓喜から一番ポロリしそうなので、然るべき時に公表するからと口止め。お互いの気持ちに多少はズレはあれど、婚約者になった途端響の溺愛は凄まじく、給料何か月分だろうと眩暈がしそうなほどの指輪を貰った時は杏奈にもいよいよ結婚するという現実味が沸いた。それから暫く経った頃、基の匂わせSNSを見た甲田が響の結婚に気付いて激怒。彼が現在進めている食事の宅配サービスの売りである無農薬野菜を作っているのが自分の祖父であり、彼との結婚を辞めないと取引させないと脅してきて・・・。お呼びでない横恋慕女からの脅しと自分の両親まで馬鹿にされに、杏奈は負けじと言い返した時初めて偽装結婚は嫌だと気付きます。まぁ、これは単に本人の勘違いなんですけど、言い合いが拍車をかけ体調を崩していた杏奈が昏倒しかけた所、間一髪間に合った響に助けられるのでした。自分も一緒に土下座するから捨てないでくれと縋る杏奈に甲田の脅しの内容にピンと来た響は彼女に引導を言い渡し、愛する人の誤解を解くことに成功。そもそも、ずっと好きだったって告白してたのに、そこは思い切りスルーされていた事にため息を吐きつつ改めてプロポーズの言葉を聞かされた杏奈は安心したのと気分の悪さも相俟って気を失い緊急搬送されることに。病院で検査の結果、杏奈の妊娠が発覚。式と披露宴の時にはかなりお腹も目立つ頃なのでドレスのデザイン変更を余儀なくされるも、数か月後、二人は式を挙げて終わっています。書き下ろしの番外編は、響が杏奈に贈った指輪秘話でした。ヒロイン・杏奈が地味で目立たないながらも実は優秀で仕事ができるって設定が良いですね。評価:★★★★☆
2024.05.15
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2023年11月刊LUNA文庫著者:瑞希ちこさん「アラン・アングラードは、ロズリーヌ・ベルジュに婚約破棄を言い渡す! 並びに、ひとりの令嬢を執拗にいじめ続けた罰として、お前を国外追放に処す!」ロズリーヌは、ずいぶん前からこうなることをわかっていた。ここは前世で読んだ小説の世界で、自分はその小説で“悪役令嬢”として登場するキャラクターだと把握していたからだ。ヒロインのジャネットが第二王子のアランとさまざまな困難を乗り越えて結ばれる物語。ロズリーヌはふたりの恋路を邪魔し、読者からのヘイトを買って、物語を盛り上げるためだけに存在していた。結果、ロズリーヌは悪行を重ねた罰として国外追放を言い渡されバッドエンドーー。最初こそ運命に抗おうとしたロズリーヌだったが、シナリオ強制力のせいで強制的に悪役を演じ続けなくてはならなかった。そんな辛い日々がやっと終わる。ロズリーヌは待ち望んだ婚約破棄と国外追放を言い渡され、解放感でいっぱいだった。ここからは第二の人生の始まりだと。しかし、そんなロズリーヌを待っていたのは、婚約者として王宮に迎え入れたいというアースベル国のリオネル王太子からの手紙でーー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ロズリーヌ=婚約者の第二王子に婚約破棄された公爵令嬢。 リオネル=アースベル王国王太子。 アラン=ラグニカ王国第二王子。ロズリーヌの元婚約者。 ジャネット=アランの浮気相手の伯爵令嬢。学園の卒業式で婚約者である第二王子・アランから婚約破棄を告げられた挙句、国外追放を言い渡されたロズリーヌ。彼の隣には伯爵令嬢のジャネットが寄り添っていた。ここが前世で読んでいた恋愛小説「my only prince」の世界だと気付いたの1年ほど前のこと。しかも過労死した自分が悪役令嬢のロズリーヌに転生していたとは。正直、婚約破棄はともかく国外追放は避けたい。ならば、悪役らしい行動をしなければ回避できるのでは?と思っていた。しかし、勝手に筋書きを変えられぬようにか因果律が働いて、ロズリーヌが直接手を下さずとも彼女の取り巻きの令嬢達により実行に移されてしまう。先回りをしようが取り巻き連中に注意しようが状況は変わらない。結局、抵抗しても無駄だと判ってジャネットへの嫌がらせの主犯格としてその罪を潔く認めることにした。物語のヒーロー&ヒロインがハッピーエンドになるためには悪役令嬢は去るべきなのだ。しかし、これからどうしよう。厳格な父母は王家からの知らせで娘に激怒しているはずだ。恐る恐る帰宅すると、予想に反して両親は大喜びでロズリーヌを出迎えた。アランからの婚約破棄に国外追放処分のどこに喜ぶ要素があるのかと思えば、大国・アースベルの王太子より求婚の申し込みが来ているとのこと。リオネル王子とそんな仲なら早く言ってくれれば、と父は満面の笑み。いや、こんな人知らないんだけどとは言えず内心で首をひねった。でも、リオネル王子に全く面識が無いので今後の人生がどう転ぶからわからないけれど、両親に勘当同然で追い出された挙句、国外に放り出されるよりは大国の王太子に嫁いだ方が断然良い。大急ぎで輿入れの支度をしていた数日の間に、流石に体裁を気にしてか国王から国外追放の件は却下されていたのはありがたいことだった。それから暫く経ってアースベル王国にやって来たロズリーヌを迎えたのは、結婚相手であるリオネル王子で長旅を労ってくれた。それにしても元の性格なのか初対面の割に随分気安い態度。思わずどこかでお会いしましたっけ?と尋ねると、クラスメイトのリオンだよと言われて驚愕。リオンってあの一番後ろの席にいた瓶底眼鏡の??素顔はこんなキラキラの美形だったのも意外だが、彼は正体を隠してラグニカ王国に留学していたのだそうだ。そこでロズリーヌを見初めたと言うが、婚約解消と同時なんて求婚のタイミングが好すぎる。思わず訝しんだが、のっけからの彼の溺愛ぶりにすっかり骨抜きにされるとどうでもいいように思えた。それから一か月後、二人の婚約が正式に発表され、大々的なパーティーを開くという。リオネルの話ではラグニカからは代表でアランが来ると聞き気が重い。当日やって来たアランと新たな婚約者になったジャネットは出迎えたロズリーヌたちを明らかな敵意を込めて見て来て・・・。恋愛小説のヒーローとヒロインだっていうのにこの性格の悪さがもうね。ジャネットはロズリーヌが取り巻き達を諫めていたことも知っていたものの敢えてそれは証言せず、邪魔者を追いやるべくあることないことアランに吹き込んでいました。アランも可愛げないロズリーヌよりジャネットが良いと婚約破棄に踏み切ります。でも、国外追放は普通にやり過ぎよね。自分達が悪く言われないようにするためにせよ、人一人の人生なんだと思ってるんだか。邪魔者を追い払いしめしめと思いきや、大国の王太子がロズリーヌに求婚。慌てて国王は国外追放を撤回してしまい彼らの目論見はパァ。王位を継げない王子とその婚約者より、未来の王妃になるロズリーヌの方が立場が上になり、ぐぬぬとなっていました。それを見てほくそ笑むリオネルは、留学中に側近に命じて彼らのことを探らせていたため婚約破棄するという情報を得ていたのでああもタイミングよく求婚の申し込みが出来たのでした。ページ数も少ないので、元婚約者たちに陥れられたヒロインがヒーローの根回しのおかげで知らぬ間にそいつらにザマァして終わり。そんなシンプルな内容でした。その割にラブシーンは3回と多目。ぶっちゃけ、これがなかったら50ページくらいで終わっちゃうストーリーではなかろうか。短めのTL小説が読みたい方には良いのかも。評価:★★★★☆
2024.05.14
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2023年6月刊ベリーズ文庫著者:藍里まめさんド真面目OLの成美は、母に頼まれたお見合いをしぶしぶ承諾。写真も見せてもらえずに当日を迎えると、相手は大企業の御曹司・朝陽だった。実は彼とは先日あるアクシデントで接触していた成美。まさかの再会に戸惑うが、朝陽は「ずっと前から好きだ」と溺愛全開で迫ってきて…。言葉巧みに追い込まれついに結婚を決断! 人生最大に甘やかされた堅物な成美は、心も体もとろとろに溶かされていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 藤江成美=清掃会社で働く事務員。朝陽と見合い結婚をした。 藤江朝陽=有名家電メーカーの御曹司で成美の夫。借金を残して蒸発した父の代わりに母と二人こつこつと返済を続けている成美に、ある日見合い話が持ち込まれた。母の勤め先である税理士事務所所長からどうしてもと頼まれ、渋々応じた成美だったが、お相手が先日スポーツジムで悶着になった青年でびっくり。しかも、彼は成美を探して伝手を頼ってこの見合いを申し込んで来たらしい。思っていたより時間がかかったと微笑む彼は藤江朝陽と名乗り、有名家電メーカーの御曹司。どう考えても自分とは釣り合わないし、一体どういう意図があるのか。それに借金の返済もあと20年はかかる。黙っているのはフェアじゃないと正直に朝陽に告げたが、まったく気にしないどころか、一旦俺の方で清算しましょうか?と言い出す始末。2億程度ならすぐに用意できると言われ、母と二人慌てて首を横に振った。正直、この借金がネックで結婚を諦めていた成美にしてみれば、これ以上ない縁談だ。朝陽の仕事の都合で予定より早くお開きになったが、是非また会いたいと連絡先だけはしっかり交換させられた。その後、朝陽とはSNSを通じて連絡を取り合っていたが彼が多忙のため、再会できたのはあれから2週間ほど経ってからのことだった。食事しながらの会話で実は朝陽はジム以前から成美のことを一方的に知っていた事を告げた。まだ彼女がお嬢様学校に通っていた頃、持ち前の正義感から先輩たちの悪ふざけで痴漢にでっちあげられた大学生を助けたことがあった。後にその大学生に感謝された上に交際して欲しいと言い寄られたのでよく覚えている。その大学生・鹿内と朝陽は当時友人関係で、先輩に臆せず冤罪だと証言したという成美に興味を持ち、鹿内がお礼を渡した時に付き添いでいたらしい。生真面目で融通の利かない性格から曲がったことが大嫌いな彼女にしてみれば、当然のことをしたまでと言い、鹿内からのアプローチをばっさり断っていたのも朝陽には新鮮だったようだ。女好きの鹿内は早々に成美を諦めたが、朝陽は話しかけるチャンスを伺っていた。しかし、家庭の事情で成美は学校を辞めてしまったのでずっと後悔していたのだと言う。それが、偶然にもあの日ジムで再会。今度こそはと色々手を打ち見合いに漕ぎ着けたと話す彼のバイタリティーが凄い。朝陽は念のため、成美の身上調査もしたようで大方の事情も知っていた。莫大な借金を残し消息を絶った父親は残された成美たちに返済しなくて済むよう離婚届も置いて行っていた。しかし、母に離婚の意思は無く夫が帰って来るの待つというので成美も覚悟を決めた。債務整理をし、残った分を母子二人で働きながら返済している。いくら金持ちでも返済にあと20年もかかる借金を抱える家の娘は敬遠される。だが、見合いの席での言葉通り、朝陽は気にしないし自分を頼ってくれと言わんばかり。さすがに2億なんて金額ではないが、それでもこれは家族がしでかしたこと。ケジメでもあるので自分達で完済したいのだと固辞した。朝陽にしてみればそういう態度も響いたのか、改めて自分と結婚して欲しいと告げた。そのめげない態度と誠実さを好ましく思っていたのと、母からの後押しもあって成美はそのプロポーズを受け入れたのだった。彼が結婚を急いだので、一か月後に二人は入籍。式は二人きりでハワイで挙げた。新婚旅行も兼ねた地で、成美は父と再会。地元のレストランで真面目に働く父を見つけてくれたのは案の定朝陽で彼女は10年ぶりに大好きな父と会うことが出来たのだ。彼を交え話し合った結果、家族のことなら娘婿の自分が力になってもおかしくないはずと説得され一旦借金分の金額を立て替えることで落ち着いた。父の問題が片付いたものの、真面目な性格故かお堅いマイルールにより朝陽が呆れるほど無理な生活をしていた成美は、これからは楽しみを見つけるべきと彼なりの矯正を受けた。子供時代は禁止されていた漫画を読んだりアニメを見るのはほぼ初体験で面白かったが、特にハマったのは格闘ゲームでこれがかなりのストレス解消になる。朝陽の提案で始めた家事の手抜きも最初は戸惑いもしたけれど、慣れてくると罪悪感も消えてかなり楽になったと思う。それから暫くして成美の妊娠が発覚。安定期に入るまでまだ互いの親には報告していないが、4ヵ月目に入り最近義実家からの電話が来るたびに朝陽が厳しい顔をしていることに胸を痛めた。結婚の挨拶の時に義実家を訪れた際も家族に無関心な義父と義兄の態度に驚いたものだ。逆に義母は朝陽に過干渉なようで成美を泥棒猫ばりに嫌っている。主に電話を寄越すのはその義母かららしいので、もしかしてその都度早く別れろとか言われているのでは?そう考えると居てもたってもおられず、アポなしで義実家を訪れた成美は成り行きで義母が無くしてしまったという思い出のネックレス探しを手伝うことになり・・・。夫の一大事とばかりに義実家に乗り込んだ成美は義母に罵声を浴びせかけられるもめげずに対話を望むと思い出のネックレス探しの協力を申し出ます。成美ちゃん、生真面目なだけでなく天然の気もあるので、義母の方もその反応に唖然。身重の身ながら休み休み探し回り、見事ネックレス発見に至り、義母に見直されるのでした。とはいえ、このお義母さん、根は悪い人でなく、家庭を顧みない夫と長男に不満があり、唯一相手をしてくれていた次男の朝陽に依存していただけという寂しい人でした。この出来事から、朝陽が間に入って義父母の仲を取り持ち、結果和解に至ります。そして、数か月後に成美は長女の清香を出産。中々タイミングが合わず、両実家の面々が顔を合わせる機会がなかったものの、清香の1歳の誕生日に漸く対面が叶い孫フィーバーに沸く親達との様子が描かれて本編は幕。書き下ろしの番外編は、相変わらずラブラブな夫婦のお話でした。ヒロイン・成美がとにかく好感持てる子で、外見も可愛いんだけどその性格に惚れたという朝陽の目は間違ってなかった。評価:★★★★★
2024.05.13
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2023年10月刊チュールキス著者:沢渡奈々子さん不妊と診断され、婚約破棄されてしまった菅原泉。そんな彼女は傷心旅行先のサンディエゴで極上の美貌を持つ九条蒼佑と出会う。言葉の通じない異国。ムードたっぷりのバー。非日常の雰囲気で何もかも忘れた奔放なセックス。けれど翌朝まどろむ彼の口から漏れたのは他の女性の名でーー。ショックのあまり身元も明かさず立ち去るも、何と妊娠が判明!? それから五年。シングルマザーとして可愛い息子と暮らす泉は偶然蒼佑と再会。ずっと泉が忘れられなかったという彼は、逸るあまり失言癖を発揮し泉を怒らせるのだけど、子どものため、そして泉のためにいくつかの提案をしてきてーー? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 菅原泉=家事代行サービスで働くシングルマザー。 九条蒼佑=有名商社の御曹司。 菅原佑=泉と蒼佑の息子。九条英美里=蒼佑の妹。 岸本了梧=泉に家事代行を頼んでいる有名小説家。 小川悠希=泉の元婚約者。歯科助手として働く泉は、結婚間近の歯科医師・悠希に不妊を理由に婚約破棄されてしまった。子供好きの彼は不妊の女性との結婚は論外らしい。泣く泣く別れ話に応じた泉だったが、別れて一ヶ月ほど経ったある日、悠希が歯科医院長の一人娘との婚約を発表。院長の話では二人の交際は半年ほど前かららしいが、思い切り泉との交際期間と丸被り。要は、二股掛けられた挙句、あのブライダルチェックの結果で見切りを付けられたということか。泉はこれ以上悠希の顔を見たくなくて退職を選んだ。両親を早くに亡くし、長らく親代わりを務めてくれていた姉が恋しくなり電話すると、気分転換も兼ねて旅行でもどうか、と現在姉夫婦が住んでいるサンディエゴに招待してくれた。姉・梢の夫は資産家、旅費の全てを負担してくれたので初めてのビジネスクラスに大はしゃぎ。姉夫婦の家で数日お世話になった後、観光とホエールウォッチングしてから帰国する予定だった。いよいよ明日は帰国となった日。ホエールウォッチングのツアーに参加し、早々に現れたイルカの群れに感動していると、同乗していた日本人の青年にストーカーと間違われて口論になってしまった泉。だが、先日まで〇〇県で歯科助手だったことを明かすと全くの接点の無さに誤解が解けて平謝りされた。青年が連れていた女性の話によれば、彼はしょっちゅうストーカー被害に遭っているそうで少々過敏になり、偶然にもツアー先で何度も遭遇する泉もその一人だと勘違いしたらしい。見れば成程、整った顔立ち。ストーカーされるのも頷ける。女性が感じの良い人でそれ以上謝罪させるのも悪いから取り敢えず怒りはひっこめた。青年は九条蒼佑、女性は九条英美里と名乗り兄妹だという。少しして英美里が船酔いとなり、梢が乗り物に弱かった経験を生かして泉が適切に処置すると大層感謝された。宿泊先のホテルも同じだと判り、英美里から夕食をご馳走したいと誘われ3人でレストランへ。確かにホテルも一緒じゃあ付け回されてると勘違いもされるかと内心で納得。この蒼佑、相当嫌な目に遭ったのか元の性格なのか、言葉がやけにキツイ上に余計な失言も多い。泉にしてみれば第一印象は最悪であった。しかし、泉の気の強さと目の綺麗さが気に入ったと、蒼佑に言われ悪い気はしなかった。英美里が気を利かせて二人きりにされた時には酒も進み、この旅行に来た経緯まで話してしまい、彼に慰められた。お互い気持ちが盛り上がってつい一夜を共にしてしまったのだが、眠る彼が寝言で呟いた「リカ、愛してる」の言葉に大ショック。ことに及ぶ前はなんだかすごく良い事言ってたのに、結局遊びかよっ。腹を立てた泉は蒼佑を残してチェックアウトすると予定通り日本に帰国したのだった。あれから約5年、泉は4歳の息子と暮らしていた。帰国後、すぐに就職活動を始めた彼女はそれから一月ほどたち妊娠に気付いた。でも私って排卵障害で不妊症だったんじゃ?疑問に思ったが、これも奇跡的なことで今後はもう授からないかもしれない。幸い両親が残してくれた家と財産があったのも助かった。その後、産まれた息子を父親から一文字取って「佑」と名付け、今は得意な料理の腕を生かして家事代行サービスに登録して仕事を受けている。現在のお得意様は若手ながら人気小説家の岸本了梧のマンション。週5日、掃除と買い物、食事の支度を請け負っていた。そんな岸本が結婚するという。だが、結婚相手が家事がからっきしということで継続して契約したいと頼まれ、記念のパーティーにも招待された。是非息子さんもと言われいざ赴くと、岸本のお相手が英美里でビックリ。元々蒼佑と岸本が同級生で仲が良くその縁で知り合ったそうなのだが、当然ながら彼もいて5年ぶりの再会に何とも気まずい雰囲気に。しかも、佑のこともバレてしまった。彼は不妊だと言ってたくせに騙したのかと激昂。相変わらずの失言ぶりにため息を吐きつつ、心底失望した泉は佑を連れすぐに帰った。翌日、岸本宅に赴くと英美里と蒼佑が。するとすぐさま蒼佑が泉に土下座し、諸々謝罪をされたので佑のことは彼が父親だと素直に認めた。色々と誤解があったのでそれを解きたいのだと告げられ、英美里と岸本の後押しで話し合うことになった二人。リカなる人物は実は犬だったと判って気が抜けたが、あの騙した発言は相当腹に据えかねている。その性格と失言を改めないと息子には会わせないと言ってやったが、せめて養育費は払わせてほしいと頼み込まれ、なら佑が好きな特撮とアニメを全部履修したら考えると条件を出した。特にアニメは200話以上ある長編だ。有名商社の後継で役職にもついている彼は多忙だろう。少々懲らしめてやるつもりだったのだが、蒼佑はすぐさま行動に移して現在入手できる円盤全てを購入。感想をわざわざ1話ずつSNSに挙げるという徹底っぷり。英美里にはそれくらい当然と言われたが少々気の毒になっていた頃、蒼佑の友人・秋山から彼がどれだけ忙しいのか知っているのかと責められた泉は号泣。蒼佑に謝罪し、佑に会わせると約束。後日、彼が佑のパパだと打ち明けると息子は喜び、すぐに懐いて蒼佑を恋しがるようになった。そして今までの養育費を払いたいと再三彼から頼まれ手続きに入ることになった矢先、佑と買い物中にかつての婚約者の悠希と再会し・・・。悪気はないけど失言多い人っていますよね、今作のヒーロー・蒼佑はそんな人。泉と結婚したい彼はこの厄介な性分を治したいと努力し、あの課題にも打ち込みなんとか息子と会う権利を勝ち取ります。本人は円盤の鑑賞も楽しんでやってたみたいなんですけど、秋山が誤解して泉を責めてたのがなぁ。まぁ、この一件が和解の原因になったのは良かったけど、失言男の友人も失言男だったという(苦笑)それはさておき、やはり一番ムカつくのは元婚約者の悠希でしょう。こいつとんでもない最低ヤローでしたよ。あの排卵障害の診断書、実は大学の後輩の医師に頼んで偽造したもので、不妊を理由に婚約破棄するつもりだったというから呆れる。これって犯罪だよね、てことで悠希を責めるも、反省するどころか佑を見て自分の子と勘違い。俺と復縁しようと迫って来てキモっ。しかも歯科医院長の娘の方が不妊体質だと判り後悔してるみたいなことまで言ってたんでクズも極まれり。奥さんのこともかなり責めてたようで、追い詰められた奥さんは佑を誘拐するという暴挙に。この事件から悠希の数々の悪行がバレて責任を問われ何もかもを失う結果になるのでした。まったく、逆玉狙うにしてももっとスマートにやりなよ、と。将来棒に振って馬鹿みたい。親も高い金出して歯科医師にしてくれたんだろうに。でもこの辺りのザマァぶりはスッキリしました。蒼佑と泉はこの騒動で絆も深まり入籍したところで本編は幕。おまけの番外編は蒼佑目線の後日談でした。評価:★★★★★よくあるジャンルながら、ヒーローの性格のおかげで面白かったです。
2024.05.12
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5月分も数点追加があります。5月15日 アルファポリス文庫 明治あやかし夫婦の政略結婚 響蒼華さん5月中旬 アルファポリス単行本 自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました 如月雪名さん レジーナブックス 政略より愛を選んで結婚。 ~後悔は十年後にやってきた~ つくも茄子さん6月5日 集英社単行本 婚約破棄の十八年後 ~不遇の娘は冷血公爵の心を溶かす~ 栢てんさん7月8日頃 マーマレード文庫 天敵社長と一夜を過ごしてしまったら、 婚約者になった彼の溺愛に翻弄されています(仮) 田崎くるみさん 迎えにきた狼神様に、前世からの激愛で娶られました(仮) 真彩-mahya-さん7月18日 ヴァニラ文庫Miel 結婚しましょう、一ヶ月間だけ!(仮) 玉紀直さん田崎さんと、真彩さんが立て続けに発売されるのは嬉しいんですが、おかげでベリーズと合わせると結構な冊数に(^_^;)でも、読むのが楽しみです。
2024.05.11
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2023年10月刊マカロン文庫著者:宝月なごみさん叔父の家具店が廃業となり無職になってしまった亜椰は、気分転換と家具の勉強を兼ね、フィンランドを一人旅することに。その道中、大手企業の若き社長であり、初恋相手でもある瑛貴と偶然再会! 秘めていた想いが燃え上がり、ふたりは蕩けるほどの情熱的な一夜を共にする。でも御曹司の瑛貴には縁談が決まっていると知り、亜椰は彼の前から姿を消す。ーー3年後、こっそりママとなった亜椰の前に、瑛貴が現れ…!? 「きみに、結婚を申し込む」戸惑う亜椰を、瑛貴は変わらぬ愛情で包み込み、心ごと満たしていき…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 新沼亜椰=二歳になる娘を育てるシングルマザー。 柴藤瑛貴=大企業の御曹司。亜椰の初恋の人。 新沼胡桃=亜椰と瑛貴の娘。 親代わりの叔父夫婦が営む家具店が閉店することになり、再就職する前にと憧れの職人が作った家具が見たいとフィンランドに旅立った亜椰。かなり値は張るものの、やはりこの職人の作る家具は素晴らしい。しみじみと眺める彼女の目に留まったのはおままごと用のミニキッチン。それを見て叔父の店のお得意さんの息子を強引に誘っておままごとしたことを思い出した亜椰は、その時大胆にも彼にプロポーズまでしていた。彼は面食らいながらも君ならいいよ、と返事してくれたっけ。そんな約束を交わしながらも再会は叶わなかったけれど、えーきくん元気かな。これも何かの縁、痛い出費ではあるものの購入を決めた亜椰だったが、先客がいた。20代後半くらいのスーツ姿の青年が店員に購入意思を伝えていて、慌てて自分も買おうと思ってましたと手を挙げた。少々問答になりかけたものの、よく見れば飛行機で隣に座ってた人ではないか。気圧で耳をやられかけた際、楽になるからと飴を貰ったのだが、それがえーき君がくれたのと同じものだったので驚いたものだ。彼は改めて亜椰を見ると少し考え、自分と食事してくれるならミニキッチンを譲ると告げた。身形も良いし貰った名刺によれば大企業の副社長ではないか。だが、柴藤瑛貴という名に思わず読み方を尋ねるとまさかの初恋の人と同じ。ミニキッチンの購入理由も昔を思い出したからだと言われ、間違いない彼があのえーきくんだと判り、食事の誘いを受けることに。食事をしながら話をすると彼もすぐに亜椰があの時の少女だと判っていたという。約束通りミニキッチンも譲ってくれると言い手配してくれた。そして、瑛貴にとっても彼女は初恋の人で、出来れば帰国してからも会いたいと言われ亜椰も頷いた。酒も入り盛り上がった彼らはそのまま一夜を共にしたが、瑛貴がシャワー中にスマホが光りメッセージの一部が目に入ってしまった亜椰は愕然。彼の父からと思われるメールに見合いについての確認らしき文面に、お相手らしい女性からのメッセージが続き、まさか上手い事言われて遊ばれてただけ?思わず、部屋から逃げ出した亜椰は自分の宿泊先のホテルに戻ってチェックアウトすると一番早い便で日本に帰国したのだった。あれから3年。店を畳み、実家の農業を継いだ叔父夫婦の元で亜椰は娘の胡桃と共に暮らしていた。帰国して暫く経って妊娠に気付いた彼女は再就職もままならず、結局叔父夫婦を頼らざるを得なくなってしまったが、彼らは孫が出来たようで嬉しいとその後産まれた娘を可愛がってくれている。そんなある日、彼女の留守中に高級外車に乗った青年が亜椰を尋ねて来たらしい。多忙らしく早々に帰ったようだが、なぜか瑛貴のような気がした。しかも、叔母が抱いていた胡桃を見られている。勘が良ければ自分の子だと気付かれていそうだ。数日後、再び瑛貴は新沼家に訪れ、亜椰と再会。ずっと探していたと話す彼は胡桃のことも気になっている様だった。そしてあのミニキッチンは胡桃のおままごとに使われていると聞いて喜んでもいた。瑛貴は徐に指輪を取り出しプロポーズをしてきたが、あの夜見たスマホのメッセージの一部のことを尋ねると、打診はされたが見合いはしていないと答えた。そもそも初恋の人と再会を果たし結婚を前提に交際するのに見合いなんてするはずがないと。あまりにもキッパリ言うのできっと嘘偽りはないのだろう。自分の早とちりだったのは認める。だが、胡桃の気持ちも聞かなければ。いきなり父親が現れたら流石に混乱するだろう。娘の意思確認をしてから真剣に考えたいと告げ、その日は別れた。しかし、近所に住み、よく胡桃と遊んでくれている湯浅家の次男坊・麻人が亜椰に告白して来て・・・。誤解も解けて復縁間近と思いきや、横恋慕男が告白して来て、それを知った瑛貴はヤキモキ。叔父夫婦は胡桃の父が会いに来たのだから自分の気持ちに正直になれと亜椰を後押ししてくれたので、早い段階で彼女は覚悟を決めます。麻人には気持ちはありがたいけれどと断り、胡桃にはパパがいることを打ち明け、後日会う約束を取り付けます。最初は緊張しつつもすぐに打ち解けたことから、亜椰は瑛貴からのプロポーズを受け入れるのでした。一方、瑛貴は幼少時に父と離婚をして家から出て行った母と偶然再会。自分を蔑ろにしていた母親の本心を知り、和解に至ります。昔の自分ならきっと真実を知っても許せなかったはず、そんな気持ちになれたのは亜椰を愛したおかげと、彼女と娘の存在に改めて感謝することに。その後、亜椰と胡桃は叔父夫婦の家を離れ瑛貴の住む東京へ。親子3人で暮らしている様子が描かれて終わっています。偶然の重なりで初恋同士が再会して結ばれたものの、誤解から一時期離れるというシークレットベビーものあるあるな内容でした。見合いのこともすぐ本人に聞けば良いのにとは思いつつ、ここで解決したら話が展開しないのでしょうがない。亜椰の叔父夫婦がとにかくいい人達で、ぶっちゃけ胡桃ちゃんより作中の癒しポジだったと思う。横恋慕キャラの麻人さんはきっといい人が見つかるよ、うん。でも、取り敢えず事情も知らないのに瑛貴のことを悪し様に言ってたのだけは謝れ。評価:★★★★☆
2024.05.10
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2023年11月刊メディアワークス文庫著者:雨宮いろりさんメイドとしてグラットン家の若旦那に仕えるリリス。若旦那に密かな想いを寄せていたもののーー彼の突然の結婚によって新しい妻からクビを言い渡されてしまう。失意に暮れるリリスだったが、容姿端麗で女たらしの最強軍人・ダンケルクに半年限りのメイド&偽りの婚約者として雇われることに。しかし、彼はリリスに対して心の底から甘やかに接してきて!?その上、リリスの持つ力が幻の最強魔術だと分かりーー。失恋から始まる、世界最強の溺愛ラブストーリー! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリス=グラットン家の若旦那に仕えるメイド。ダンケルク=軍人。解雇され行き場を失ったリリスを雇い入れる。ウィリアム=グラットン家の若旦那。 セラ=聖女。リリスと知り合い友人関係になる。幼少時から使用人としてグラットン家に仕えるリリスは、ある日突然、想い人でもある若旦那ウィリアムから結婚を告げられた。正直、ウィリアムは治癒魔術の使い手として少々名の知れたグラットン家の後継に相応しく優秀な治癒術師ではあるが、ぽっちゃり体型故か全くモテなかった。そんな彼が結婚!?いつの間にお相手を見つけたのか。デートしていた素振りも見受けられなかったし見合いしたとも聞いていない。しかも、妻と名乗る女性がメイドを引き連れてやって来て、これ以上のメイドは不要とリリスは追い出されてしまったのだった。途方に暮れるリリスはウィリアムの友人・ダンケルクが雇い入れてくれることに。彼は軍人で暫く激戦地に派遣されていたようだが、無事帰還し暫くは王都の本部での勤務になるらしい。リリスは掃除魔術の使い手で散らかり放題の部屋もあっという間に片づけてしまう。しかし、実際に目にしたダンケルクはそれが掃除程度に使われるような代物ではない事に気付き、数日後、顔なじみの魔術師にリリスの掃除魔術を見せた。すると案の定、友人の見立てではこれは「秩序魔術」だろうとのこと。150年ほど前、大聖女と共に邪悪な黒煙の龍を倒した大魔女・アレキサンドリアが使用していたのと同じもの。一方、数日ぶりに再会したウィリアムのやつれ具合にリリスたちはびっくり。ダンケルクによって着飾されていたとはいえ、彼は長年一緒にいたリリスのことすら判らなくなっていた。どう考えても嫁が怪しい。伝手を頼り、当代聖女・セラの力を借り、何かしらの術を掛けられていたウィリアムを救い出すことに成功。正気に戻った彼は案の定何も覚えていなかった。夫人を名乗っていた美女は紡績業で羽振りの良いキャンベル家の次女。ダンケルクの話ではそもそもキャンベル家自体、何かときな臭い家だという。黒い靄を使いこなす姉妹たちは、何かしらの方法で黒煙の龍の力を取り込んでいることが判り・・・。設定や展開をかいつまんで書いても相当な長文になりそうなので大分割愛してます。一介のメイドが扱う掃除魔術が実は秩序魔術という、かの大魔女と同じ力だと判明。なし崩しに黒煙の龍の力を持つキャンベル姉妹たちと戦う羽目に。実はリリスは大魔女の転生?って話かと思いきや、龍の呪いで転生できなくされた大魔女が自らの記憶の欠片を分けてあちこちに飛ばしており、その一つがリリスにというからくりでした。正気に戻ったウィリアムと聖女のセラ、そしてダンケルクの力を借りてキャンベル五姉妹を倒すべく奔走するリリス。ダンケルクはリリスに想いを寄せており幾度も求婚するも、彼女には想い人がいるのでなんだか気の毒でした。まぁ最後は色々報われて相思相愛になるんですけど、リリスのモノローグで綴られているため、一人称の小説は読むのがキツイという方には正直お勧めしません。それに全体通して割と好き嫌い分かれそうな内容だとも思います。キャラ自体は皆魅力的なんですけどね。個人的に読むの早い方だと思ってたんですが、この本も何だかんだと時間かかってしまったなぁ。所謂目が滑る系。評価:★★★★
2024.05.09
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2024年4月刊蜜猫文庫著者:七福さゆりさん母の再婚で公爵令嬢になったエステルはその可憐さを王子に見初められ婚約者となった。だが聡明に成長した彼女は不真面目な王子に疎まれ婚約破棄されてしまう。皆の前で辱められ悲しむ彼女を救ったのは、エステルにあえて自分を義兄とは呼ばせなかった公爵令息ジェロームだった。「はいと言ってくれるまで求婚し続けるよ」密かに想っていた彼に溺愛され幸せなエステル。しかしそれを面白く思わない王子が嫌がらせを始めて!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エステル=婚約者である第二王子から突然婚約破棄された公爵令嬢。ジェローム=エステルの義兄。ギャツビー=王国の第二王子。 サンドラ=エステルの友人の伯爵令嬢。 ノエ=第一王子。美しく心優しいカヴァリエ公爵令嬢のエステルは、僅か7歳の時に第二王子・ギャツビーに見初められ、婚約者となった。第一王子のノエの母は平民で後ろ盾も無いため、王位はギャツビーが継ぐだろうともっぱらの評判だった。しかし、エステルは公爵夫人の連れ子で元は男爵令嬢。将来王妃になってから血筋のことで侮られてはいけないと義父である公爵は娘に厳しく教育を施した。毎日勉強と習い事に明け暮れるエステルを慰め、父上には内緒だよと禁止されている甘いお菓子をこっそり差し入れてくれたのは4歳上の義兄・ジェロームだった。彼はエステルをとても可愛がってくれた。継母の連れ子なんて蟠りもありそうなのに、初っ端から好意を向けてくれていたので彼女もすぐに懐いた。今は忙しくてあまり会えないけれど、ジェロームがいればこの辛い勉強も耐えられる気がした。しかし、この仲睦まじい姿をギャツビーに見られてしまい、気分を害した彼は公爵にジェロームを寄宿制の騎士学校に入れることを命じた。挙句にエステルとの手紙のやり取りまで禁じたのだ。大好きな兄と引き離され、エステルは泣き暮らした。義父も王子の命令に逆らうことが出来ないことは理解できる。それでも10年は会えないと思うと悲しくて堪らない。そんなある日、見知らぬ令嬢から届いた手紙の中身はジェロームからの近況報告と妹を気遣う内容の手紙。同級生の妹が協力してくれてたらしい。定期的に送られるその手紙で立ち直ったエステルはお妃教育にも身を入れ始め、18歳になると令嬢の中の令嬢とまで言われるようになっていた。その日、王宮に呼び出されたエステルはギャツビーから一方的に婚約破棄を申し渡された。彼の横には勝ち誇ったような友人のサンドラの姿が。少し前からギャツビーから肉体関係を強要されていたエステルは貴族の婚前交渉は禁じられているからと突っぱねていた。それがどうもお気に召さなかったようだ。未来の国王の命令を聞けない女はいらない。サンドラはそんなギャツビーに取り入って彼を寝取ったということか。相手が王子ではこの理不尽過ぎる婚約破棄にも文句を言うわけにもいかず義父は申し出を受け入れたが、屋敷に帰ると激怒していた。娘の将来を思い、厳しい教育を娘に課していただけに申し訳なさから義父は涙ながらにエステルに詫びていた。これも親心故だったのだから謝らないで欲しいと告げ、今後どうするかを話し合ったが、エステルには今後まともな縁談は望めないという辛い現実が圧し掛かった。あのバカ王子のせいでと歯噛みする義父は可愛い娘を高齢の貴族の後添えに出すくらいならと修道院に行った方が良いと告げた。しかし、それを止めたのは10年ぶりに帰宅したジェロームであった。学校を首席で卒業し騎士団長にまで登り詰めた義兄はエステルの前で片膝をつくと指輪を差し出してプロポーズをした。修道院になど行かずとも俺の妻になればいいと。息子のエステルへの想いを知っていた両親はその手があったと大喜び。この国では義兄妹の結婚は禁じられていないのだしなんの問題も無い。手紙のやり取りを切欠にジェロームに想いを寄せていたエステルは、叶わぬ恋だと思っていただけにこの幸運を噛み締め彼からの求婚を受け入れたのだった。これを機に持病がある義父は母と共に領地で静養することを決め、ジェロームに爵位を譲った。その後すぐに彼はエステルとの婚約を発表。話を聞きつけたギャツビーは惜しくなったのか、手近で手を打つくらいなら俺の愛妾にしてやるとふざけた手紙を寄越しジェロームと義父を怒らせていた。社交界では義兄妹同士の結婚に口さがないことをいう者も多かったが、二人は気にしない様努めた。こうした揶揄が出るのは承知の上での結婚なのだから。後日、舞踏会でギャツビーはエステルに言い寄りきっぱり拒絶され怒りに燃えていた。そもそも彼女は外見だけでなく優秀過ぎた。自分が一番でないと気が済まない彼はジェロームを遠ざけ、彼女には俺を褒めろと強要していた。素直な性格のエステルから褒められることはなく寝室に誘えば断られ、腹を立てたギャツビーは次期国王というプレッシャーもあってストレスから市井で流行っている違法薬物に手を出してしまった。性格や思考能力に影響を及ぼすこの薬は依存性が高く手放せなくなる。問題発言や行動が増え王宮で問題視され始めていた頃、第一王子ノエの母親が実はさる王国の王女ということが発覚し・・・。ノエはジェロームの親友で性格も良く優秀な人でした。でも生母の身分がネックで王位は継げないとされていましたが、ここにきてその母の身分が判明し王宮では大騒ぎに。戦争に巻き込まれこの国まで逃げて来た王女は従者と侍女と離れ離れになった後事故に遭って記憶喪失になっていました。王女を介抱してくれた貴族の家で記憶の無いまま働き後に国王に見初められノエを産んだという。当然、王妃より身分が高いことが判ったため、ギャツビーの立場は悪くなり焦った彼は一層薬物にハマっていき、ジェロームによって違法薬物購入とその使用を暴かれ継承権を剥奪されるのでした。サンドラもギャツビーにより薬を薦められて中毒症状を起こしており、幻覚からエステルを襲って敢無く逮捕。薬物の後遺症でギャツビーとサンドラは牢獄でも苦しめられることになります。婚約してからというもの、エステルとジェロームはラブシーンばかりでおいおい婚前交渉しまくりやんけと思ったものの、両親公認なら無問題かと納得。そもそも両想いの男女を屋敷に置いて田舎に引っ込んでるんだから結婚するんだし好きにやれってことなんでしょう。これだけラブラブだったので結婚式後にすぐに妊娠が発覚。無事に長男も産まれて3年後、延期になっていた新婚旅行に出掛ける二人の様子が描かれて終わっています。婚約破棄する王子がバカで最後には破滅するという王道展開でした。変に捻ってないのが逆に良い。評価:★★★★☆
2024.05.08
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2024年4月刊スターツ出版文庫著者:真崎奈南さん現世で一族から虐げられていた美織は、美しき鬼の当主・魁の花嫁となる。あやかしの住む常世で生きるためには鬼の子を身籠る必要があり、美織は息子の彗を生み、魁からは溺愛される日々を送っていた。そんな中、元当主である魁の父と義母に対面する。美織は魁の義母に人間がゆえ霊力が低いことを責められてしまう。自分は魁の妻としてふさわしくないのではと悩む美織。しかし魁は「自分を否定するな。俺にとって、唯一無二の妻だ」と大きな愛で包んでくれて…。一方、彗を狙う怪しい影が忍び寄りーー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 美織=陰陽師の血を引く人間の娘。魁と結婚し出産したことで鬼のあやかしへ と身体が変化した。 魁=鬼のあやかしで美織の夫。一派の頭領を務める。 彗=魁と美織の息子。 信=魁の父親で前頭領。 巴乃=信の後妻。亡き前妻を嫌っており魁とも折り合いが悪い。魁に娶られてから様々な出来事があったが、いよいよ出産の時を迎え、無事に美織は長男・彗を産んだ。産まれてすぐに凄まじい霊力を放った彗は側近たちが期待していた以上の力を持っているらしい。そして美織の身体も人間から鬼へと変化を遂げていた。それから一月ほど経ったある日、町外れに居を構える魁の父・信から出産祝いとして多数の贈り物が届いたのだが、その時になって初めて魁と彼の継母に当たる巴乃との確執を知った美織。由緒ある鬼の一族の生まれという巴乃は元人間の魁の母・沙月を見下し、嫌っていたという。沙月が早逝して巴乃は後妻に収まり次男・瀧を産んだものの、跡目を継いだのは自分の子でなく魁だった。しかも、彼が妻に迎えたのはまたしても人間の女。相当腹に据えかねたのか、彗が産まれてからというもの巴乃が放ったと思われる式属の蝶が度々屋敷内を飛び回っている。一度挨拶に来て欲しいと言われているが、信はともかく巴乃は美織にかなりきつく当たりそうなので、魁は迷っていた。そんな折、古参の頭領・朱蛇が自分の領地の半分を息子に譲ること、更に魁に中央統括首を引き継いで欲しいと打診して来た。彼の実力と美織の内助の功を見込んでのことらしいが、報告を聞いた巴乃は激怒した。大した力も無い元人間の妻が足を引っ張るに違いないと。後日、漸く結婚と出産の報告に屋敷を訪れた美織に、巴乃は無能な嫁など不要と離縁するよう命じた。流石に聞き入れる訳には行かず、突っぱねたが彼が統括首を継ぐとなれば妻の力量も試される。せめて式属くらいは作れるようにならなければね、と嘲笑われ特訓を始めた美織だったが、どうにも上手くいかない。少し前に巴乃の使用人をしている座敷童の杏子と知り合った美織は、その扱いの酷さに心を痛めた。何とか助けてやりたいと思っていた矢先、巴乃が座敷童を使って美織と彗に毒入りまんじゅうを食わせようと画策し・・・。座敷童が美織たちに害をなすこと良しとしなかったことで事なきを得ますが、毒殺を企てたとなると流石に看過できないと、近くにある祝祭で信たちとも話すことに決めた魁。そこでは朱蛇が次の統括首についても公表すると聞き、おそらく巴乃は美織に恥をかかせようとその霊力を見せるよう発言するはず。だが、彼女は未だに式属を作ることができず、困り果てていました。しかし、実は美織の霊力は凄まじいもので、簪の力を借りたとはいえ式どころか高位使役までできるようになっていました。立派に鬼に変化を遂げていた美織の力を見て、若すぎる魁が統括首になることを反対していた者たちも誰も異を唱えることはなく、巴乃の企ても不発に。それどころか、度重なる妻のやらかしに多少は引け目もあったのか大目に見ていた信も巴乃との離縁を決めます。彼女の実家が太く離縁となると悶着が起きそうとは言ってましたが、巴乃さんの数々の問題行動の方が重要視されそう。あらすじを読んで嫁姑戦争かと思いきや、美織ちゃんが奥ゆかしいので姑さんの強烈さだけが印象に残った感じw無自覚ハイパーヒロインはやっぱり強かった。今作から登場の彗も可愛いです。評価:★★★★☆
2024.05.07
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2022年11月刊ルネッタブックス著者:西篠六花さん男爵家令嬢・清乃は結婚を目前に亡くなった姉の代わりとして、侯爵家嫡男・有季の元へと嫁ぐ。身分と資産を交換するような政略結婚で、婚家の誰もが冷たい中、地味で大人しい清乃は健気にふるまう。実は可憐な容貌と聡明さを持つ彼女に、次第に惹かれていく有季。迎えた初めての夜、清乃は彼の甘く蕩けるような激情に包まれ、熱い手に翻弄されながら快感に震えー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 一堂清乃=周防男爵の次女。亡くなった異母姉の代わりに有季の元に嫁いだ。 一堂有季=侯爵家の嫡男。婚約者の死により周防家に不信感を持つ。 石野多恵=有季とは乳姉弟の間柄の使用人。 御厨圭吾=有季の友人。 周防燁子=故人。清乃の異母姉で才色兼備と評判の令嬢だった。商いの成功によって羽振りの良い新華族・周防男爵家の長女・燁子はその美しさと優秀さから、一堂侯爵家の嫡子・有季の婚約者に選ばれた。実はこの縁談、燁子に甘い父が資金援助を盾に侯爵家にゴリ押したからなのだが、姉は有頂天だった。清乃は自らも有季に憧れていたことをひた隠し、燁子を祝福。趣味の刺繍や琴の演奏に打ち込み寂しさを紛らわせていた。姉の結婚式がひと月後に迫ったある日のこと、屋敷ではとある知らせを受けて大騒ぎになっていた。なんと、燁子が人気のない路地裏でこと切れていたというのだ。手には小瓶が握られており、状況的に事件ではなく自死だと判断された。父は嘆き悲しみ燁子の実母である本妻の喜久子はショックでふさぎ込んでいるらしい。しかし、あんなに毎日が楽しそうで式を楽しみにしていた姉が自ら死を選ぶだろうか?清乃は燁子が自殺したという事実がどうにも信じられなかった。喪が明け、一堂家との縁談は無かったことになるかと思われていたが、多額の資金援助をしていた父は破談を良しとはせず、代わりに清乃を貰って欲しいと申し入れていた。当然ながら一堂家は突っぱねた。そもそも、自殺の原因は燁子が不貞の末に結婚を嫌ってのものとあらぬ噂が立ち、すぐに疑いが晴れたとはいえ有季は警察に事情聴取までされたのだ。プライドの高い一堂家当主は大激怒。有季も周防家の対応には内心腹を立てていた。だが、成り上がりとバカにされない為にも男爵はどうしても侯爵である一堂家と姻戚関係になりたかった。清乃を娶ってくれないなら援助した資金を耳を揃えて返済しろと脅し、何とか承諾をもぎ取ったのだった。後日、清乃は父からお前が代わりに嫁ぐのだと命じられて唖然。どうしてそんな恥知らずな事ができるのか。有季は面子をつぶされたも同然なのに。だが、妾腹である自分には父に逆らう力は無い。思う所はあったが、唯々諾々と従った。それから一年後、清乃は一堂家に嫁いだのだが、歓迎されていないのは歴然。舅と姑に当たる当主夫妻は清乃を下賤な者と蔑んで徹底的に無視を決め込み、有季には仕事で多忙だとして披露宴の後から放ったらかしにされていた。そんな彼女を気の毒に思ったのか、有季の乳姉弟だという女中の多恵はなにかと清乃に良くしてくれていた。それから一ヶ月ほど経ち、漸く仕事も落ち着いた有季は自分が不在にしていた間、清乃が屋敷で孤立していたことを知り猛省していた。男爵の対応に腹を立て、清乃には何の落ち度が無いのに、思い返せば婚約中にも燁子相手にはしていたデートも贈り物の類も全くしていなかった。ご機嫌窺いにも来ない婚約者にどれほど彼女は寂しく思ったであろう。しかし、久しぶりに会った清乃はお仕事が忙しかったのでしょう?と一切責めず、それどころか有季の身体を心配していた。その言葉を聞いて思い直した彼は妻として清乃を大事にしようと決心したのだった。翌日から有季は彼女を溺愛、婚約時代の穴埋めをするかのように贈り物をし、デートを重ねた。清乃は内気過ぎて学校も中退していたが博識で字も美しい。ふとしたことで燁子からの手紙も彼女が代筆していたことを知り、彼は異母姉に搾取され続けていた清乃の過去に愕然とした。夫婦仲も深まり、仲睦まじいことを聞きつけたのか姑の和子からは、認められたいなら早く跡継ぎをとせっつかれた。でも無視されていた頃に比べれば話しかけられるだけで進歩だと思う。だが、この頃から清乃の私物が無くなるという出来事が。一番最初に消えたのは有季から贈られた帯どめ。高価な品な上にきっと君に似合うと彼が自ら吟味して買ってくれた大切な物。この時はショックで大騒ぎしてしまったが、騒ぎを聞きつけた彼は失くしたというより盗難であろうと判断。執事に使用人の事情聴取と念のため屋敷内の調度品が全部揃っているか調べるよう命じた。一方、清乃はあのあと、日記帳と有季との写真まで破られているのを見つけて意気消沈。嫁入り道具の簪まで折られており、これはどう見ても金銭目的というより恨みによる犯行に思えた。帯どめ以外は大ごとにしたくなくて黙っていたが、流石に怖くなり多恵に相談すると、数日後新入りの女中の部屋から帯どめが見つかったとして盗難事件は一応の幕を閉じたのだった。何とも釈然としない幕引きではあったが、その日、有季が友人だという御厨圭吾を連れて帰宅。どうしても清乃の顔を見たいと圭吾から頼まれたそうだが、顔立ちは整っているのにどうも苦手な人種だった。しかも商談の電話で有季が席を外すと、自分と火遊びしようと不貞行為に誘って来たので思わず怖気が。手を振り払うと圭吾から有季が吉原に足繁く通っている事、馴染みの娼妓がいることを告げられ・・・。夫に花魁の愛人がいると仄めかされ動揺する清乃。つい嫉妬心もあって有季を拒絶してしまうも、後に誤解だと判明します。娼妓は彼の親友の妹で、不幸にも妓楼に売られてしまったが身請けできるほどの金額は用意できず、せめて少しでも早く年季が明けるよう、客として一緒に酒を飲み金を落としていただけでした。でも、その頃清乃は圭吾の策略によって貞操の危機に。抵抗する中、実はこの圭吾が燁子の不貞の相手だったことを打ち明けられます。有季を妬んでいた圭吾は彼が結婚すると知り、その婚約者を横取りしてやろうと画策。まんまと引っ掛かった燁子は圭吾に骨抜きにされ結婚を迫っていました。でも、これが明るみになれば一堂家から多額の慰謝料を請求される。燁子のことも煩わしくなり彼女に毒を盛って殺害したというのが事件のあらまし。真相を知り愕然とする清乃は駆け付けた有季が間に合い事なきを得ます。さらに圭吾は遊びに来ては一堂の屋敷から調度品を盗み出して換金した上に、その他、勝手に有季を騙って借金までしていたことが明るみとなって逮捕されるのでした。そして、清乃の私物を盗んだり壊していたのは多恵だったと判明。有季に片思いしていた彼女は燁子も清乃も目障りだった。燁子の事件も直接関与はしていないが逢引の手引きをしたりと圭吾に協力していたことが供述から判り、多恵も罪に問われます。まぁこれは読んでても絶対にお前だろうと思ってたので特に驚きはなかったです。お姉さんも何だか浅はかな人でしたねぇ。亡くなってからあれこれ露見してしまってかなり株を落とした模様。周防男爵は狡猾ながら清乃のことも可愛いのか、一堂家で蔑ろにされていないか気にしていたので少し印象は変わりました。一堂家の当主夫妻は多恵からあることないこと清乃の悪口を吹き込まれていたのが判り、こちらも誤解が解けて歩み寄りを始めていました。有季との仲もさらに深まって清乃が待望の第一子を授かったと報告したところで本編は幕。最終的には結構な子沢山家族になるみたいなことが示唆されてて、ふふってなりました。ドアマット系ではありませんが今回のヒロインもなかなかの冷遇っぷり。性悪な姉にいいように扱われていたものの、結婚によって本来の自分を取り戻します。夫となったのは初恋の人で、愛し愛されつつも困難を乗り越えていく、そんなお話でした。あと、今作の悪役ポジの多恵さんのその後があとがきで書かれてましたが、やはり強かですねぇ。転んでもただでは起きないタイプだったか。評価:★★★★★
2024.05.06
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2023年10月刊チュールキス著者:小出みきさん「俺が見合いしたかったのはあなただ」隠し子の一ノ瀬桜愛は、北本家の豪奢な邸宅の小部屋で爪に灯をともす生活をしていた。しかし、突然泉田悠介との見合いの席に呼び出される。引き締まった体躯の悠介は、泉田ホールディングスの敏腕CEOで、北本家との政略結婚かと思われたが、跡取り娘の異母妹ではなく、桜愛がいいと告白されて!?「身も心も、全部俺のものにしたい」熱い想いに、優しく組み敷かれ純潔を散らされる。しかし、悠介の過去の出来事を知ってしまい……!?有望株のイケメンCEOと孤独な乙女の、たっぷり甘やかされる溺愛ラブ!! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 一ノ瀬桜愛=母亡き後、引き取られた父の家で家族に虐げられていた。 泉田悠介=桜愛の見合い相手で大企業のCEO。 北本伸司=桜愛の父。 北本美咲=桜愛の義妹。母子家庭で育った桜愛は、中学2年の時に母を病気で亡くして以来、実父の北本伸司の家に引き取られた。しかし、いくら結婚前に出来た子とは言え、夫に婚外子がいたことに夫人の玲奈は激怒。屋敷の一室を与えられ高校も出してもらったが未だに認知してもらえていない。そればかりか、養育費として母の生命保険を玲奈に取り上げられ、父の会社で働く現在は給料の半分を扶養費として徴収される始末。日用品や出社用の衣服を買うだけで毎月カツカツだ。それでも8年近くかけて漸く100万貯めることが出来た。後は格安アパートを見つけて引っ越すだけ。実父だけでも自分を家族と認めて欲しかったけれど、婿養子なだけに立場も弱いのは判っている。もう期待するのは止めて自由に生きるのだ。そう思っていた矢先のこと。玲奈から無理矢理着物を着つけられた桜愛はホテルのティールームに連れて行かれた。そこにいたのは30前後で背の高いハンサムな青年。やっと君に会えたと話す彼は泉田悠介と名乗り、元々桜愛を指定して縁談を申し込んでいたらしい。なのに、今日現れたのは玲奈の娘の美咲で唖然。話が違うと厳重抗議したら慌てて玲奈が桜愛を連れて来たと言うわけだった。ここ数年でめきめきと業績を上げているという彼の会社と伸司の会社が今度業務提携するそうで、この見合いもその縁で決まった。だが、彼は結婚するなら桜愛さんと、と念押しして伸司の義父に当たる会長に打診した。なのに何を思ったのか悠介と結婚するのは美咲だと当日になって玲奈がゴリ押して来たと言うわけだった。経緯は判ったが、何故彼は戸籍上は北本の娘ですらない桜愛を相手に指定して来たのか。実は以前君と会ったことがあるんだと悠介に言われるも正直覚えが無い。なら次に会う時までの宿題だと告げ、その日は連絡先を交換して別れた。帰宅すると美咲と玲菜は案の定機嫌が悪く余程腹に据えかねたのか桜愛に対して聞こえよがしに悪口を言っていた。伸司から一応と悠介の釣書を貰い改めて読んでみると、物凄い経歴だった。あちら側からは既に結婚を前提にお付き合いしたいと連絡が来ているようで、桜愛の結婚はほぼ確定なようなもの。愛人の子のくせに生意気だと美咲の妬みはすさまじく、翌日出掛けていた桜愛が帰宅すると悠介の釣書がびりびりに破られており、ため息が出た。数日後、悠介から連絡が入り夕食に誘われた桜愛は、ヒントのおかげで彼を思い出すことが出来た。母がまだ存命中の12年前のこと、彼女は刺されて腹に怪我をしていた青年を助けた。家庭教師をしてくれていた医大生に手当を頼み、思ったよりも傷は浅くすぐ動けるようになった青年は桜愛に感謝し荒れていた生活から足を洗うことを決めた。その青年こそが悠介だと判り、桜愛はビックリ。怪我が良くなるまで医大生と桜愛の部屋に訪れ、美術大志望の桜愛は彼らの絵を描いたこともある。母の絵もあったそのスケッチブックは美咲のヒステリーで破り捨てられてしまったけれど。今では有名企業のCEOである悠介も波乱万丈な人生を経験していた。成功した彼は母を失くして父親に引き取られた桜愛を探していたため彼女の事情も把握していた。業務提携はするが、結婚したいのは桜愛だけとの言葉に彼女も心を決めた。だが、結婚が確定となったことで面白くない美咲は、父と桜愛はDNAが一致しないと悠介に報告。どこの馬の骨とも判らない娘と結婚するより自分と、と勝手な物言いをする美咲に悠介はブチキレ。けんもほろろに君とは絶対に結婚しないと告げられ、プライドを気付けられた美咲は彼の過去を調べ上げゴシップ誌にリーク。一時期犯罪すれすれの行為を行っていたという少々盛った過去と学歴詐称疑惑が雑誌に掲載され・・・。ドアマットヒロイン・桜愛に恩義があり、それ以上に惚れてもいたヒーロー・悠介。彼は荒れていた過去については別段隠す必要もないし、あの後努力してアメリカ留学をしてMBAを取得。起業して業績を上げたのは彼自身の努力の賜物でした。美咲のリークで彼は謂れの無い噂に晒されるも、悠介自らの手腕でそれを払拭。極めて悪質で遺憾だと会長に直訴したことで美咲は追い込まれることに。伸司はあのDNA結果に納得がいかず、もう一度検査を依頼。すると桜愛とは実の親子であることが実証されます。そしてあの不一致の検査結果は美咲との親子関係だったというオチ。まぁ、これはそうだと思いました。ぶっちゃけ、北本家の人間は禄でもない。そもそも桜愛の母親は伸司の元カノだっただけなので後ろ指刺される謂れはないんですよね。美咲は完全に玲奈が浮気相手との間に作った子なのでどっちが愛人の子なんだか。おかげで美咲は自身の言葉がブーメランでぶっ刺さる形に。伸司もさすがにこいつらとはやっていけないと離婚を決意し、真摯に謝罪した後、桜愛と和解に至ります。無能な会長と玲奈では伸司の穴は埋められず、悠介の会社に吸収合併のような形でほとんどの業務を奪われ、残ったのは一部の業務だけ。会長が引退した後、北本の会社は倒産の憂き目に。てか、倒産する前に取り上げられて生命保険と給料、弁護士に相談すれば取り返せたんじゃ。ほんの数か月で衰退した北本家の落ちぶれっぷりが凄かった。その後、悠介と桜愛は正式に婚約。倒産前に玲奈と美咲によって不当解雇されていた彼女は兼ねてよりの夢だった美大への進学を決め、伸司と悠介からのサポートを経て無事に国立の美大に合格して終わっています。仮面伯爵コンビで描かれた今回のお話、ヒーロー&ヒロイン共に好感が持てました。評価:★★★★★
2024.05.05
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2024年4月刊富士見L文庫著者:マチバリさん悪質な怪異を退治する一族の娘・明彩は、退魔の力がなく冷遇されて育った。一方、傲慢な弟は禁忌を荒らし、異界の王・涼牙を呼び起こしてしまう!その場に明彩は置き去りにされて…。危機に陥る明彩だが、実は涼牙は穏やかで理知的な美青年だった。彼は明彩の秘めた希少な“癒やしの力”の価値を教え「俺の姫となれ」と彼女を誘う。涼牙の治める異界で明彩は力を発揮して尊重され、居場所をくれた彼に惹かれていく。しかし、現世では家族が涼牙に罪を転嫁し、あろうことか異界への侵攻を企てていてー!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 須央明彩=退魔師一族・須央家の長女。 魔を癒す力を持つことで家族から冷遇されていた。 涼牙=異界の王。明彩を保護する。 須央壱於=明彩の弟。 西の地を守る退魔師の一族・須央家の長女として産まれた明彩は退魔の力を持たないばかりか、天敵である魔を癒す能力を持つことで長らく厄介者扱いされていた。家族として認められず、毎日使用人以下の生活を強いられる日々。この西の地に出現する怪異は他と比べて弱い。おかげで功績を挙げられないと父はいつもイライラしていた。期待していた長女は禄でもない能力だったこともあってか、自然と次に生まれた長男の壱於に過剰な期待を向けている。家族の中で唯一、明彩を慕ってくれた弟はストレスからかすっかり性格が変わってしまい、傲慢な態度をとるようになった。厳しい訓練や勉強、自由時間などない生活ではどこかで発散しなければやりきれないのだろう。弟が明彩にマウントを取って来るようになっても彼女は壱於を気遣っていた。そんなある日、壱於が退魔師選定の儀式を受けることになり、明彩はその付き添いを命じられた。当日、本家からの未届け人として昔須央家にいた退魔師・佐久間と3人で怪異が現れる山中に入ったのだが、全く遭遇しない。プレッシャーもあったのか壱於がイラつき、漸く姿を見せた毛玉のような姿の弱い怪異に攻撃を繰り出したのだった。本来、怪異とはいえ人に害をなさない弱いものの捕獲や攻撃は固く禁じられている。佐久間も指摘したが聞く耳を持たず毛玉を甚振る弟を止めた明彩は逆に殴られてしまった。そこに現れたのは人型の怪異。壱於は佐久間が制止するのを殴って昏倒させ、その怪異に攻撃したが格が違い過ぎたのか全く歯が立たない。戦意喪失した彼は逃げ出し、その場には意識の無い佐久間と明彩が残されたのだった。殺されると覚悟したが、弟に嬲られていた毛玉を治療しなくては。明彩が触れると毛玉は見る見る回復し、彼女を「ひめさま」と呼んだ。人型の怪異は涼牙と名乗り、怪異の間では姫とは癒しの力を持つ女性のことを指すのだと説明してくれた。涼牙は佐久間にも手は出さないと言い、その代わりと称し、明彩を異界へと連れ去ったのだった。あれから半月。異界での暮らしにも随分慣れた。明彩は「姫」として涼牙の眷属たちの治療に当たっていた。彼の屋敷で本当にお姫さまになったかのような厚遇ぶりには驚いたが、「姫」ならば当然の扱いだと聞かされた。それほど稀少で得難い存在なのだと。涼牙の屋敷には力の弱い怪異たちが大勢暮らしていた。皆彼が保護し眷属にしたそうで、中には明彩が見知った者も。父は弱い怪異を生け捕りにして逃げ出さない様、結界を張った道場で飼い、門下の退魔師たちの訓練に使っていた。死なない程度に痛めつさせては、それを明彩に癒させていたのだ。心優しい彼女はそれに耐えられず、怪しまれない程度の期間を空けて1匹ずつ逃がしていた。あの毛玉も先日逃がしたばかりの子で運悪く壱於の儀式に巻き込まれてしまったようだった。毛玉はあれ以来、特に明彩に懐いており、請われるまま「玄(くろ)」と名付けをした。涼牙も多忙ながら、毎日様子見に来てくれるし須央の家では味わった事の無い平穏な日々を過ごしていると異界こそが自分の居場所なのではと思えて来る。「姫」は怪異たちにとって喉から手が出るほど欲しい存在。鴉天狗の頭目が病気で危篤だから助けて欲しいと無理矢理連れ出された時は涼牙が怒り狂い、せっかく頭目を救えたと言うのに大騒動になりかけたりもした。頭目の息子である峡を明彩の護衛として寄越すことで手打ちとなったが、自分が彼にそれほど大事にされていると思うと嬉しくもあった。それにしても涼牙と昔どこかで会ったと事があるような。彼女は気付いていなかった。10年ほど前、涼牙が大怪我をして人界に迷い込んだ際、亡き母の形見でもある花の苗さえも一緒に治してくれた明彩にずっと恩義に感じていたことを。涼牙にとって彼女は初恋の人でありずっと忘れらない人だったのだ。一方、須央家はあれからかなり追い詰められていた。行方不明の明彩があの人型の怪異・鬼に食われたのであるならばまだいい。だが、佐久間が無事に発見されたことで拙い状況になっている。壱於のやらかしは本家にバレたら大問題だ。しかも儀式に失敗し、付き添いの姉が怪異に攫われた。おそらく明彩はその力を知った怪異によって異界に連れ去られたのだろう。立て続けに起きた不祥事についに本家から監査が来るらしい。せめて明彩が無事に戻ってくれば儀式での事故として多少は取り繕えるのに。壱於は自分のせいだというのに姉を異界から取り戻すべく画策し・・・。その後、弟の罠により明彩は異界から連れ戻され屋敷の地下牢に軟禁されます。そして、壱於は姉を救出に来るあろう鬼・涼牙を退治して汚名返上を狙うのでした。が、力の差は歴然。明彩を助けに現れた彼の強大な力に太刀打ちできないまま負ける壱於。この弟、姉に対してシスコンを拗らせてるとんだ勘違い野郎でした。弟と対峙し明彩は異界で暮らしていくことを告げ、家族とも絶縁。佐久間さんによって報告を受けた本家は須央家に相応の罰を下すこと、実は明彩の能力は保護されるべきものだったと告げ、本家に来ることを薦められるもそれを固辞。涼牙と共に生きていくことを話し、異界へと帰るのでした。無知は罪、明彩の両親は本当に愚か。いや、普通にすごいでしょ彼女の力。魔限定とは言えど怪我だけでなく病気も治せるヒーラーなのに。退魔師の中でも希望の光を秘匿していたとなればそりゃあの罰は当然。壱於については、ああこの子作者さんのお気に入りなんだろうなとと思ってたら後書きにてその辺り触れられてましたw やっぱりね。涼牙によって過去が語られ、両想いになった二人。綺麗に終わっているのでこれで終わりでも良い気はしますが、何となく続編ありそうな予感。ヒーロー・涼牙の過去も重要なファクターではあるものの、全部書くと長くなるので割愛してます。でもそりゃ明彩のこと好きになっちゃうよねと。気になる方は本編をご覧ください。評価:★★★★★和風シンデレラストーリーがお好きな方におススメです。
2024.05.04
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月イチ恒例、拙宅ブログ内の記事のアクセス数ランキングです。トップ5は変わらずですが、以降はちょこちょこ変わってます。1位ここ最近またアクセス数が増えて来たので驚いてます。2位こちらの記事も定期的にアクセス数を増やしています。とても面白いお話なので未読の方は是非。3位ロイヤルシンデレラママの記事と抜きつ抜かれつな時期もありましたが、現在も定期的に数字を伸ばし不動のトップ3となりました。4位5位の記事が物凄い追い上げで流石に抜かれるかと思いきや、また伸び始めて来たので驚きました。5位コミカライズ連載効果が凄かったです。本当に4位の記事を抜くかと思いました。6位いやもう本当に10巻はいつになるねん(^_^;)アニメ2期の最終回の恩恵がアクセス数に如実に表れてました。7位シリーズ1作目。未読の方はこの巻だけでも是非。前回から1ランクUPです。8位コミカライズ版が完結して結構経ちますが、根強い人気記事です。9位転生(死に戻り)ものがお好きな方はハマるお話かも。10位シリーズ1作目。不遇ヒロインのシンデレラストーリーです。11位ここ最近急に伸び始めてランクアップ。前作の悪役の娘がヒロインです。12位前回より1ランクダウン。ヒロインの前世が判明する話。13位まさかの3作。個人的には「花嫁きゅんきゅん」がお薦めです。14位こちらも根強いですね。妻子を溺愛する王子が無能な兄のせいで苦労するお話。15位ここにきて急激にアクセス数が増えた記事です。早く続きが読みたい。16位シリーズ3作目。星奈の一族の罪とやらが判明するエピソードでした。17位シリーズ2作目。ヒロインが女版幻想殺しというある意味最強キャラです。18位不遇ヒロインと臣籍降下した王弟との結婚話。悪役ポジのヒロインの継母と義姉がとにかく性格が悪いのでザマァされた時の爽快感は格別でした。19位こちらも不遇ヒロインのシンデレラストーリー。+聖女もの。20位さすがに落ち着いてきました。今回も6位以下に順位変動があり、興味深かったです。結論としてはやはりコミライズ化されると強い。
2024.05.03
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2022年5月刊ベリーズ文庫著者:田崎くるみさん父の作った借金を返すため、危ないバイトをしようとしていたところを御曹司・誠吾に助けられた凪咲。そして、互いの利害の一致から契約結婚することに。やがて借金を完済し、円満離婚ーーしたはずだったのに、就職先の航空会社で敏腕パイロットになった誠吾と偶然の再会。「もう逃がさない」--とある理由から離婚を受け入れた誠吾だったが、凪咲への愛が一度溢れ出したら止まらなくて…!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 鮎川凪咲=新人CA。恩人である誠吾と契約婚をしていた過去を持つ。 真田誠吾=凪咲の元夫。副操縦士として彼女と再会した。 館野=誠吾の先輩操縦士で機長。 金城満里奈=凪咲の先輩CA大学受験を間近に控えた凪咲は、父の酒乱とギャンブル依存症に悩んでいた。数年前、父が営む建築会社で働く従業員が金を持ち逃げしたことで倒産の憂き目に遭ったことからすっかり人間不信にとなり、以来、働きもせずに昼間から酒を飲んではギャンブルに明け暮れる日々。しかし、そんな父に借金が発覚。母を勝手に連帯保証人に仕立てて闇金から3百万も借りていた。最近は暴力まで振るうようになったためついに離婚の決意を固めていた矢先のことだった。このまま離婚して父が失踪でもした日には母が多額の借金を背負う羽目になる。考えた末、少しでも借金を返せるようにと凪咲が高額だが怪しげなバイトに片足を突っ込みかけた所を助けてくれたのが不動産会社の御曹司・真田誠吾であった。彼は泣きじゃくる凪咲から事情を聴いてある提案を持ち掛けた。借金を肩代わりし、離婚も出来るように弁護士も立てる。その代わり、期間限定で自分と契約結婚をして欲しいと。誠吾には余命宣告された祖父がおり、兼ねてより孫の嫁を見るまでは安心して死ねないと溢しているのだそうだ。だが、現在誠吾には交際している女性もおらず、頼めそうな者もいない。誠吾は報酬として5千万を支払い、父の更生にも力を貸してくれるという。しかも当面の間、生活に関すること全ての面倒も見ると。随分と気前の良い話だが、この時の凪咲はまだ高校3年生。フリだけでなくバレないよう万全を期して実際に婚姻届けも出すそうなので、これでも安いくらいだと言っていた。実のところ、誠吾は年齢を聞いて依頼を撤回しようと思っていたらしい。だが借金や彼女の父のことを思うとこの先どうしても大金が必要だろうし離婚についても妻の実家の問題として自分が助けてやれる。彼の本音を聞いた凪咲は覚悟を決めその申し出を受け入れたのだった。両親を早くに亡くした彼の親代わりだという祖父は凪咲を紹介すると大層喜び、誠吾を頼むと涙を流していた。凪咲は足繁く病院に通い祖父を見舞った。自分に出来るのはこれくらいだったが随分感謝された。3ヶ月後、祖父は息を引き取り、その喪が明けてすぐ二人は離婚。半年にも満たない結婚生活であった。あれから5年、大学を卒業し大手航空会社に入社した凪咲は憧れのCAになった。だが、初のフライトでの挨拶時に副操縦士として紹介されたのがまさかの誠吾でビックリ。彼にも夢があって会社は継がないとは言っていたが、それがパイロットだったとは。でも、向こうも気付いてるはずなのに初めましてと言われて少々ガッカリもしていた。それから3ヶ月、何とか大きなミスも無く業務をこなしていた凪咲は、再会時の態度は冗談ですばりに何かと誠吾からアプローチを掛けられて対応に困っていた。見ると結婚指輪もしているし、奥さんもいるんでしょと噛みつけば、外して見せられたそれが5年前のあの指輪と知って驚愕。契約婚だというのに祖父が亡くなった時は誠吾を精神的に支えてくれていた凪咲をずっと忘れられなかったと話す彼は再婚を望んでいたのだ。それに御曹司と言うことで彼にアタックする女性も多く、この指輪はいい虫除けにもなると言っていたが、再婚したいのは本心だとも言っていた。事情を知る母や友人の真琴からもそんなに思われてるなら復縁するのも良いのではないかと後押しされ、迷う凪咲。だが、先輩CAの金城が奥さんがいても誠吾へのアタックは止めないと息巻いているのを聞いて、複雑な心境に。結局自分も彼を忘れられなかったのだと自覚した。悩んだ末に彼からの求婚を受け入れる気になった矢先、凪咲は5年ぶりに父と再会。母との離婚時に弁護士に説教され、泣きながら更生すると誓ったはずの父は働いてはいるようだが未だに酒とギャンブルは止められないらしく、生活が苦しいからと凪咲に金を無心して来て・・・。このクソ親父、いい加減にしなさいよ、と読んでて本当に腹が立ちました。いつまで不幸な身の上に酔っているのか。酒飲んで大暴れした挙句ギャンブルで借金こさえて家族に逃げられたのは自分の弱さのせいなのに。何だかんだ肉親を捨てられない娘の優しさに付け込むとか。結局、いくらかお金を渡してしまったことで図に乗って空港で大声出して、金城に根も葉もない噂を流されてしまった凪咲は窮地に。金城さんも根は悪い人ではないんですが、誠吾のことと言い色々蟠りもあったのと、凪咲の父から嘘を吹き込まれていたことが判って後に和解に至ります。結構中盤で再婚の決心を固めていたので、随分早く纏まるんだなと思ったら、ここにきて最大の障害登場ですよ。誠吾の迷惑になりたくないと諦めかけた所、一人で悩まず彼に頼れと今まで何かと気にかけてくれていた機長の館野のアドバイスによって誠吾に相談することを決めるのでした。結果、元義息子に滾々と諭され、自分がいかに情けないことをしているか知った父は今度こそ立ち直ると約束し、立ち去ります。このやりとりが後に噂になって、凪咲が誠吾の妻に違いないと皆納得。館野による情報操作もあって二人は元夫婦だったという真実は伏せられたまま、再婚に至って本編は幕。書き下ろしの短編は2本。結婚式のメモリアルムービー用の写真が無いことに気付き、慌ててデートに行く二人のエピソードと、もう一つは本編から5年後、第一子・翼が産まれた時のお話。あのクズに成り下がりかけた父が立ち直ってくれたようで本当に良かった。こっそり結婚式に来てたことや、御祝儀に入ってたメモの件は読んでてもう泣けて泣けて😢評価:★★★★★
2024.05.02
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2024年4月刊ヴァニラ文庫著者:すずね凛冷えきった関係のまま夫は戦死、フレドリカも命を失った…はずが目覚めたら一年前に巻き戻っていた!?夫婦としてやり直し、未来の死を回避しようと決意。頑なだった心を開けば、妻の変貌を喜んだユリウスに溺愛される蜜月で。初めて共にしたベッドで心身ともに愛に溺れさせられてしまう。だが、死ぬ原因となった戦のため彼は前線へ赴くことに!? ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フレドリカ=亡国の王女。幼少期に結婚した夫とは長らく疎遠だった。 ユリウス=公爵でフレドリカの夫。戦争で戦死する。 ボリス=公爵家の執事長。 アンドレア=ユリウスの派遣先である駐屯地の館に勤める侍女頭。エクヴァル王国の王女フレドリカは幼少期に同盟の証として大国ヒュランデルにやって来た。しかし、直後にエクヴァルはニクロ帝国に攻め込まれ王族は皆殺されてしまった。生き残ったのはヒュランデルにいたフレドリカのみ。当時7歳だった彼女は扱いに困った王からの打診により、ベンディット公爵家当主ユリウスの元に嫁ぐことになった。歳の差婚は珍しくはないものの、まだ幼い彼女に妻としての役目が果たせるわけもなく、故郷と家族を恋しがって泣き暮らす彼女は夫となった彼のことを気に掛ける余裕も無かった。やがて軍人でもあるユリウスは王命によりニクロ帝国との国境近くにある駐屯地への派遣が決まり、家庭内別居も同然だった二人は一層疎遠に。馬車で幾日もかかる場所の為、年に一度帰宅すればよい方で、自分からも少しは歩み寄るべきだと思いつつもつい素っ気ない態度を取り続けていた。他愛もない噂を鵜呑みにして浮気を疑い大喧嘩をしてユリウスを怒らせてしまったが、まさかあれが彼を見た最後だったなんて。それから暫くしてヒュランデルとニクロ帝国との戦争が始まり、最前線を指揮していたユリウスは戦死。王都にはニクロ帝国軍が侵攻し公爵邸にも火が放たれた。フレドリカは辱めを受けるくらいならとこのまま屋敷と運命を共にする決心をしたが、後悔するのは夫とのこと。結婚して10年、今思えば自分は子供のままだった。死にたくない、やり直したい。そしてもう一度あの人と。崩落した天井に押しつぶされる瞬間、フレドリカは願った。ふと目覚めると見慣れた天井。侍女に起こされた彼女の元に執事長のボリスがやって来て、今日はユリウスが帰って来る日だと告げられた。まさかとは思うが時間が戻っている?というより何故自分は生きているのか。夢ではないようだし、ボリスに念のため今日の日付を尋ねるとなんと1年前に時が戻っていた。どうしてこうなったのかは謎だが、死に際の願いは聞き届けられたのだ。フレドリカは確信すると絶対に夫を死なせないし、彼との人生のやり直しを誓った。そうとなれば、先ず態度と生活を改めなければならない。引き籠りはもうやめた。フレドリカがいつもよりお洒落をして夫を出迎えると、彼は最初は驚いていたが随分嬉しそう。今まで別々に採っていた夕食も共にしてかつてないほど会話をした。きっと内心ではどういう風の吹き回しだと思われているかもしれないが、旦那様をもっと知りたいからと素直な気持ちで伝えた。そしてその夜、二人は結婚して10年で漸く寝室を共にし本当の夫婦となった。翌日からユリウスは妻を溺愛。七歳だった頃のことはともかく年々美しくなっていく彼女に心奪われていたのだと話す彼に、悲劇のヒロインぶって殻にこもりきりだった自分を恥じたフレドリカ。休暇中は今までできなかったデートを重ね、フレドリカも彼を深く愛するようになっていた。しかし、休暇はもう終わり。明日には彼は駐屯地へ帰ってしまう。前の人生ではその後すぐに戦争になり、彼とはそれっきりで会えないまま戦死してしまったのだ。不興を買うのを承知で駐屯地へ行かないでくれと必死に頼んだものの、王命のため任期が終わるまでは無理だと言われた。自分も離れ難いのだから我慢してくれと諭されたものの、もう会えなくなるかもしれない。フレドリカはならば自分も付いて行くと告げると許しが出て、ボリスと侍女たちを連れ駐屯地へ。彼は随分兵たちに慕われているようで、妻ということでフレドリカも歓迎された。元々妻子と共に宿舎に住んでいる者も大勢いる。館の侍女長のアンドレアはフレドリカの来訪を快く思っていないようで、あからさまな敵意を向けて来る。それに気づかないふりをしつつフレドリカは自分にも出来ることをと兵士の妻子たちと混じって麓の農作業の炊き出しにも参加したりもした。この地に来て早数か月、暫くは平穏な日々は続いた。しかし、ある日ニクロ帝国軍が国境を侵犯。ユリウスたちが出陣することに。フレドリカは皆の無事を祈りつつ女たちと駐屯地を守った。半月後ヒュランデル軍が勝利を収め彼らが帰還。きっともう彼が死ぬ未来はやって来ない。ホッとしたのも束の間、ニクロ帝国の宣戦布告によりついに本格的な戦争が始まってしまった。またもや戦場に行った彼を思い不安な日々を過ごしていた。それから暫くして、一人の兵士が形見だと言うサッシュを携えて帰って来た。見覚えのあるそれにフレドリカは卒倒せんばかり。それは彼女が勝利を願って手縫いしたユリウスの物で・・・。ここにきて「えええええええっ」と思ったものの、戦死したと思われていたユリウスは生きていました。このサッシュは戦時のどさくさに紛れて盗み出されたもの。彼を死んだことにして悲しみに沈むフレドリカを追い出す算段だったのです。この時点で自ずと企んだ者が判るんですが、あの侍女、身の程知らずにも主人に横恋慕して妻の座を狙っていました。でも不審に思ったボリスと飼い猫の活躍によって企みは露見し、逆上したアンドレアはバレた途端に彼女の殺害を目論むも自滅。その後、フレドリカは無事に勝利を収めて帰還したユリウスと再会を果たします。ニクロ帝国は完全に敗北し、トップが変わったことで今後戦争することはないと予想され、属国にされていたフレドリカの故郷も解放されることに。将来的に彼女は女王になりユリウスも王配として赴くことが示唆されて終わっています。お互いの真意が判らないまま死に別れた夫婦。やり直しを望んだヒロインの願いによって時は戻り、愛を深めた二人はまたしても戦争に巻き込まれるも愛の力で乗り越えた。そんなお話。どうして死に戻ったのかは作中説明されないままだったけど、細かいことはいいんです。フレドリカと二人エクヴァルに行くと言うことは、子供が何人か産まれたらそのうちの一人に公爵位を継がせるのかな?評価:★★★★★
2024.05.01
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