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これもまた私の暗黒時代に公開・リリースされていた、Suedeのドキュメンタリー「The Insatiable Ones」を今頃ようやく買って観ることができました。とはいえ、全編英語しかないので、意味がわかるとこだけ把握って感じではありますが。Suedeを結成する直前のブレ兄さんやマットの出会い(これとても面白かった)、Suedeの結成とブレイク、バーニーとの関係悪化から脱退、リチャードとニールの加入と再ブレイク、兄さんのドラッグ癖の悪化に伴うバンド状況の悪化、そして活動停止と生々しく記録されています。バーニー脱退のあたりは正直見てて辛い。でも、その後のリチャ&ニールのあたりはにやけるほど二人が可愛い。随所に関係者インタビューも入ってきて、ジャスティーンやちょっとだけドラムスやってたSmithsのマイク・ジョイス、もちろんバーニー、Suedeのジャケットを多く手掛けたピーター・サヴィル、Nudeの社長・サウルなどなど…すごく興味深いインタビューが盛りだくさんでした。盟友エド・ビューラーがリチャとニールを当初「New Boy」って呼んでたのに悶えました。個人的に全然知らなくてびっくりしたのは、リッキー・ジャーヴェイスが初期のマネージャーしてたってこと!私、リッキーは「The Office」のブレント役の印象が強くてファンなので、すごく驚いたと同時にめっちゃ嬉しかった…!もちろん、メンバー個人個人の話も入って来るので、知らなかったこととかも多くて本当に新鮮でした。でも、Head Musicのあたりの兄さんはホントにお薬とアルコールで目がいっちゃってて、怖かった…。Head Musicは好きなアルバムだけれど、その頃はすでに「Self-Destruction」だったんですね。ニールが病気になって、スタジオにも満足に来られなくて電話でやり取りしてたっていうのを見て、胸が痛くなりましたよ。けれど、その後の再結成もちゃんと出てくるし、Suedeがよみがえるさまも観ることができるので、そこはじーんとします。そして、Blue Hourのころに撮ったのかな?メンバー全員で輪になって話し合うシーンとかも、なんだか感動…。兄さんが「ぼくのせいです」って感じで過去のドラッグのこととか反省してる感じなのも。ボーナスDVDは、兄さんとマットが里帰りというやつ。二人の若いころの話とかしてくれます。そして二人の佇まいがカッコ良すぎ。年取った分カッコいいって奇跡。続いては、リチャと王子が2人でインタビューに答えてる映像。これがもう微笑ましい。仲いいんだね、ホントに…。その後、兄さんとピーター・サヴィルの長い会話も入ってます。どうやってあのジャケット群が出来上がったのか、そのプロセスが詳しく語られてて面白いです。もう一枚のボーナスDVDは、Suedeの映像記録担当・サイモンの本領が遺憾なく発揮されています。笑サイモン、どこでもカメラ回してるのね…。いきなり日本の映像が出てきて嬉しかったです。そして、貴重なオフショットも多数。ふだんのクールなメンバーしか知らないので、はしゃいだりしてる様子が珍しい。トータル4時間くらいあるDVDなので、見ごたえたっぷりです。そして何度でも見たくなります。改めて、私、本当にSuedeが好きなんだと感じました。そして、そう思わせてくれてありがとう。
2024.04.29
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「陰陽師0」を観てきました。安倍晴明=コスプレ山﨑賢人=最強。ちょっとだけあるアクションもさすがです。今回は感情を殺した冷静沈着な役でしたが、そんな佇まいも素敵でしたよ。でも、たまにはコスプレじゃないドラマも観たいなと思いました。しかしそれより何より、源博雅=染谷将太がちょっとおバカな役どころで本当に可愛い。可愛いとしか言いようがない。冠に花ついてるのが愛らしすぎる。話の筋はだいたい読めるような展開ですが、映像がカラフルでキレイでした。しかし、女性たちの衣装は艶やかではありますが、あれだとちょっと花魁風味じゃないかなあ?品の良さが皆無だったのが残念。
2024.04.28
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Libertines ザリバティーンズ / All Quiet On The Eastern Esplanade: 東部遊歩道異常なし 【CD】祝・全英チャート1位!まさかまさか、彼らが帰ってきてくれるとは。Suedeが帰ってきたときに次ぐ喜びです。「up the bracket」が2002年の話ですか…そうですよね、私も、彼らも、年を取りました。ピートとカールが揃ってたLibertinesのライヴを観たことがあるというのは、ちょっとした自慢です。2nd、3rdと痛々しいサウンドを鳴らし続けていた彼らが、ついにホンモノのロックバンドになりましたよ。今回リリースされた4th「All Quiet on the Eastern Esplanade」は、完成度としては最高の出来だと私は思います。1stほどの破壊力はありませんが、すべての楽曲が満遍なく素晴らしく、何よりもバランスがいい。安定感も抜群。ピートのヨレったヴォーカルは危うさを秘めつつも詩情たっぷりになり、カールのニヒルな声は渋さを増しました。「Run Run Run」や「Night of the Hunter」、「Shiver」のPVで、彼らはきっとやってくれるとすでに確信めいた予感は抱いていましたが、まさかこんなに素晴らしい一枚が出来上がるとは。冒頭の「Run Run Run」は、新しい彼らのアンセム。「You’d better run, run, run boy, Faster than the past...」という歌詞で胸が熱くなります。過去よりも速く…って。彼らのこんがらかった歴史を思い返せば、なんだか感情移入してしまいますよ。「Mustangs」や「Oh Shit」はカールのVoを存分に堪能できるナンバーで、大好きです。特に「Oh Shit」は往年のLibertines節。そして、この声がセクシーすぎてたまらない。ピートとカール、ふたりの声が存分に絡み合うこれぞLibertines的な「I Have a Friend」も、嬉しくて涙ぐんでしまう。ピートがホントに生き生きと歌っているのも嬉しいポイントです。「Night of the Hunter」はスローなナンバーですが、少し不穏で、哀愁のにじんだメロディを歌い上げる、ちょっとヨレった彼の声がぴったり。本編ラストの「Song They Never Play on the Radio」は、この素晴らしいアルバムのクロージングに、この曲以外考えられない、美しく、優しく、あたたかい一曲。ピートとカールのヴォーカルも、競い合うのではなく、寄り添う雰囲気なのがたまらなくハートウォーミングです。本当に、彼らが戻ってきてくれてよかった。いろんなメディアに露出していますが、4人みんなすごく楽しそうなのが、見ているこっちも嬉しく楽しくなるほどです。ピートはだいぶ太りましたが、カールとの掛け合いはいつ見ても微笑ましい。長く続けていってほしいと思います。そして、願わくば、日本に来て…!!
2024.04.27
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楽天ではジャケット入りの商品がないのでPV貼りました。先日ちょっと触れたとおり、友人が送ってくれたInterpolの来日公演動画のおかげで、すっかり祭り状態となっている私です。なんだかんだと彼らのアルバムはちょこちょこ買っており、El Pintorまでは持っていました。そのあたりから私の暗黒時代が始まったので、そこからの音源をチェックすることはなかったわけです。それで今回一気に買い求めたのが、「Marauder」と「The Other Side of Make Believe」、「A Fine Mess」です。私はそんなにコアなファンではないので、やっぱりInterpolは「Antics」が好きで、「Evil」が流れるとドキドキしてしまう程度なのですが、今回全部の音源を聴き直してみて、当時の感じ方とは少し異なった感覚をおぼえました。単純なもので、私はわかりやすくキャッチーなメロが大好物ではあるのですが、彼らに関しては、トータルでのカッコよさにしびれるのです。タイトで正確なリズムを刻むドラムス、スタイリッシュをきわめたギター、ダークかつゴスっぽい雰囲気をまといながら、淡々と歌い上げるようで内に熱を秘めたヴォーカル。光と闇と官能(これ重要)を兼ね備え、これで完結できるパーフェクトな世界が、本当に素敵。そして今回は「Marauder」。アルバム全体を通してライヴ感がありますが、彼らのパーフェクトな世界観と確かな演奏力で、私はもうこのアルバムが完璧にしか聞こえません。一曲目の「If You Really Love Nothing」はPVも素敵ですが、とにかくギターリフがとんでもなくスタイリッシュでカッコ良くて、どうやったらこうなるんですかと問い詰めたくなるほど。また、youtubeのリンクを張りましたが、「The Rover」のイントロでギターが高く鳴り響く時点で、興奮が静かに湧き上がってきます。「Come and see me maybe you’ll die」なんて歌詞、Interpolにしか似合いません。「Number 10」のライヴっぽさは、艶やかさとクールさの同居が完璧です。なんでも、このアルバムの歌詞に登場する「Marauder」はポールのペルソナでもあるそうで、時にものすごく暴力的で、時にスウィートで、時にあまりにもゲスく、でもやっぱりクールだったりと、アルバムを束ねるイメ-ジみたいな感じで、それが彼らのサウンドにハマっていると思いました。ボートラの「Number 11」が実はかなり好き。インストですが、その分ギターの魅力ががっつりと伝わってきます。
2024.04.24
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EBM [ エディターズ ]先日のTamas Wellsのライヴのおかげで完全に生き返ったと思しき私ですが、音楽を聴くことがこんなに楽しくてワクワクするものだったのかと改めて感じています。とにかく時間が足りないのです。失われた10年の間に聴かなかったもの全部聴きたい。さすがにそれは無理なのですが、ちょこちょこと旧譜を見つけては聴いています。それに今はyoutubeとかspotifyとか便利なものができましたからね。昔では考えられなかった方法で音源をチェックできるので、これはこれで便利。それでも、ショップに行って試聴する興奮には勝てませんが。先日Interpolが来日していて(行けなかった…)、友人が大阪公演に行っており、短いながらも動画を何本か送ってくれました。それでInterpol祭りになったのですが、そのつながりでyoutubeにピコっと出てきたのがEditorsの「KISS」のPVでした。これが本当に衝撃的で。PVは男性のダンサーが2人、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます。絡みにドキッとしますが、この振付は本当に見て欲しい。黒い布を使う部分は圧巻です。7分と長尺ですが、それを感じさせないドラマ性と彼らの音に引き込まれてしまいました。歌詞も素敵だと思うんです。「One kiss pulls me to the light, one kiss steals me from my life」とか、「I wish you knew the way I feel because the way I feel is holding me back inside」のあたりとか。PVにすごく合っている。というわけで彼らの2022年リリース「EBM」をようやく手に入れました。私、Editorsは「BACK ROOM」しか知らなかったです。すみません。なんだかその時と雰囲気が違うなと思ったら、メンバーにBlanck MassのBenjamin John Powerを迎えたとのこと。すごくエレクトロニックでインダストリアルのゴリゴリな雰囲気があるんですが、それがEditorsのクールでダーク、時にゴスと呼ばれる彼らに合ってるんじゃないかと私は感じました。ずっとファンの方だと何か思うところなどあるのかもしれませんが、私はこのアルバム、めちゃくちゃ気に入りました。「EBM」とはEditors+Blanck Massなのだそうで。序盤の4曲「HEART ATTACK」~「PICTURESQUE」~「KARMA CLIMB」~「KISS」の流れが圧巻です。メロウな「SILENCE」を挟み、インダストリアル感強めでカッコいい「STRAWBERRY LEMONADE」、ダンサブルな「VIBE」、イントロのドラムスだけでおかわり何杯もできそうな「EDUCATE」、ラストの「STRANGE INTIMACY」がやたらセクシーでダンサブルで破壊的。対訳がないのでしっかりと意味まで把握しきれない部分が多々ありますが、「きみとぼく」的ではなく「俺とお前」的な感じと私は勝手に思っています。冷たいのに奥底で熱く、暗いのに一瞬の閃光に貫かれて放つ輝き…歌詞も音もそんなイメージです。
2024.04.23
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さて、Tamas Wells2日目は渋谷の7th Floorでした。nestの上なんですね。昔はあのへんのO-EASTとかDuo Music Exchangeとか行ってたのに、いざ行こうとしたらとんちんかんな方向に歩き出してしまって、迷いました。私の知ってた渋谷と違う。なんだか取り残されたような気分にもなりましたが、なかなか面白い迷子体験でした。今回はゆったりめの椅子やテーブルが用意してあって、自分としてもよりリラックスして観ることができたのが良かったです。友人が確保してくれたセンター席は、まさにVIP席でした。ありがとうございます。この日の前座はキム。この人の歌も、胸の奥があたたかくなるような響きがあって、ぐっとくるんですよね。CD買ったよって見せたら嬉しそうな顔をしてくれて、こっちまで嬉しい。そして本編。今回は曲の内容というより、自分と向き合うためのノートです。この日のタマスwithバンドは、少ない語彙力を駆使しても、どうやっても、「最高」としか言いようのない出来でした。全員がピアノを弾けるバンドっていうのもすごい。曲ごとにパートを入れ替えるんですが、タマスは「ぼくはメンバーを信頼してるからね」とにっこり。この日も新譜と旧譜それぞれ入り交ざっての演奏でした。そして私はまた涙ぐむ。この日はVendrediの曲ではなくて、4月は革命的のフレーズで目の前がぼやけました。前日に頭をもたげた私の中の何かは、かつて音楽に没頭していたときの自分でした。約10年前から、私の更新回数はぐんと減りました。そして、ほとんどなくなりました。その時期は個人的にも劇的な変化があり、それを幸せと感じた時期ももちろんありましたが、やがてそれは私の自由を奪い、心を閉じ込め、私は無意識のうちに自分ではない人のコントロール下に置かれていったのです。それが解けたのが2年前。それからの私は、徐々にではありますが、日常に戻りつつありました。それでも、まだそれは完全ではなくて、どこかで何かを恐れる日々が続いていたのです。日常の世界は、生活するには問題ありませんでしたが、心の中では、鈍い灰色がかった世界のままでした。けれど、この2日間のライヴで、私の世界がやっと色づいたのです。前日からその気配はあったものの、2日目のライヴが進むにつれてその感じははっきりとしてきて、ライヴのラスト付近で演奏された、タマスらしからぬ激ロックなアレンジが、ガラスをたたき割るかのように私の心の灰色のもやをぶっ飛ばしてくれました。私は明らかに、生き返った。そして、熱くなる目頭と共に、音楽が好きだったころの自分が戻ってきたと感じました。ライヴ終了後、タマスの奥さんのブロンとお話をする機会がありました。タマスの歌を聴いているうちに、過去のいろんなことが走馬灯のように頭を駆け巡って、私の人生がまた色づいたように思うと言うと、ブロンは「彼の歌は私の人生のサウンドトラックみたいなものよ」と言って笑ってました。そうだ、人生のサウンドトラックか!ちょっとそれパクリたいと思っちゃいました。最初にタマスのアルバムを渋谷のワルシャワで見つけてから、もう16年も経ちます。その間にリリースされた彼のアルバムの曲を脳内で再生すると、その時の私のこともよみがえります。これもある意味、サウンドトラック。クリスはホントに話しやすくて、いろいろなことを話せて楽しかった!キムには私の似顔絵を描いてもらったし(なんかわりと似てる)、ピーターは物静かな紳士って感じでした。タマスは別れ際にも「来てくれて本当にありがとう」とあの優しい笑顔と共に握手をしてくれて…感無量です。これで今日から「ザ・ニュー・xiao」になるのかというと、ガラリと変わるわけにはいかないと思いますが、明らかに、胸の奥がワクワクしていることは実感しています。もっとたくさん音楽を聴きたい。失われた10年を取り戻すために、どんどんいろんな音を聞いて、いろんな映画を見て、自分の心をほぐしていきたいと思いました。
2024.04.22
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なんと10年ぶりの来日。Tamas Wellsの来日公演に2日間とも行ってきました。何というか…楽しみでもあり、少し怖くもあったのです。私は以前のように彼の歌声で感動できるのか。感情が明らかに摩耗し、感受性のかけらもなくなった自分が、彼の歌を聴いていいのだろうか、と。今回はそのことにフォーカスしようと思うので、楽曲構成とかあまり書けません。初日の4月20日は代官山の晴れたら空に豆まいて、にて。代官山もずいぶん変わりましたね。まったく逆方向に歩いていき、まんまと迷いました。懐かしい友人と顔を合わせ、中に入ると、小さい会場でしたがどんどん人が入ってきます。振り返ればもう満員。みんな待ち望んでいたんだと思うと、嬉しくなりました。代官山をフラフラしていたときにタマスご一行を道路の向こうで目撃していましたが、近くで見てみても、彼の優しい笑顔は変わりませんね。白髪は増えてたけど、それはそれで良いのです。サポートメンバーは懐かしいキムと、ドラムスのクリスとピアノ・ヴィオラのピーター。おお、しっかりとバンドだ。A Plea en Vendrediとフライヤーには書いてあったので、てっきりこればっかりやるのかと思っていましたが、過去作からいろいろと披露してくれて、あの時こうだったなとか、こんなことあったなとか、頭の中にいろいろなことが走馬灯のように駆け抜けていきました。そのせいで、現実のタマスの歌と、過去の自分の記憶がないまぜになり、私は過度にセンチメンタルになっていたと思います。やはり、私にとってA Plea en Vendrediは人生における大きな存在です。そのせいで、このアルバムの曲は大いに私の記憶を刺激するわけです。The Opportunity FairやI’m Sorry That The Kitchen is on Fireはその最たるもので、自分でも驚くほどに涙がこみ上げ、彼らの姿がかすむほどでした。あの頃、私は本当にピュアに彼の歌が大好きで、脇目もふらずに音楽ばっかり聴いていた。他のことなんて考えていなくて、今思えば好き勝手に生きていたのだけれど、なんだかあの頃がとても恋しい。そんな気持ちが押し寄せてきて、コントロール不能でした。そんな気持ちを静めてくれたのは、最新作「To Drink up the Sea」の曲たち。大崎さんが「4月はぼくにとって革命」と言及されていましたが、「August I Think Nothing Much At All」は、私の死に体の心にも革命的でした。ここで、私は自分の心の奥底に何かが頭をもたげるのを感じたのです。それがはっきりとした形になったと思ったのは、翌日のライヴの時のことでした。あ、ごめんなさい、Riddleの口笛はどうやっても私には無理です。音すら出ない。ライヴ後に話す機会がありました。覚えていてもらえて嬉しかったです。誰にでも優しく、同じ目線の高さで話をしてくれる彼は、本当に人としてもアーティストとしても素晴らしいと改めて感じました。
2024.04.22
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昨日、一昨日とTamas Wellsのライヴを観に東京に滞在していたのですが、昼間の時間を利用して、「異人たち」を観てきました。ドラマ「シャーロック」シリーズの永遠のヴィラン・モリアーティ役のアンドリュー・スコットが主演だし、「アフターサン」のポール・メスカルが相手役だといったら、観に行かない手はないじゃないですか。そんな、多少不純な動機+山田太一原作の大ファンの友人の後押しがあって行ったわけですが、想像以上に私は泣きました。鼻を何度もかむくらいには泣きました、本当に。幼いころに両親を亡くし、孤独だけを道連れに生きてきたゲイの脚本家・アダム(アンドリュー・スコット)。彼の暮らすマンションには、影のある青年・ハリー(ポール・メスカル)が住んでいて、ある日突然声をかけられるのですが…。また、執筆に行き詰ったアダムは、かつて両親と暮らした家を訪れてみるのですが、なぜかそこには、亡くなった時と同じ姿の両親が暮らしていたのでした。この時点でふつうの物語でないことは明らかなのですが、アダムの両親は、自分より年上の姿になった息子を喜んで迎え入れます。ただ、幼いころから自分のセクシュアリティを自覚しつつも隠してきたアダムの現在を知り、昔のままの価値観の2人は、時に心無い言葉を投げかけてしまうのです。そんなときのアダムの表情がまた、切なく語るんです。そして、「済まなかった」と語る父とそれに抱き着いて泣くアダム。クリスマスツリーの飾りつけをしながら、Pet Shop Boysの「Always on My Mind」の歌詞を呟く母。この歌詞がそのまんま母から息子への謝罪と愛にあふれていて、私はここで涙で前が見えなくなりました。両親の家を何度も訪れ、一緒に暮らせなかった時間を埋めていくにつれ、謎に満ちた青年・ハリーともだんだんと心を通わせていくアダム。最初はなんか変な奴が来たとすげなくあしらった彼ですが、ハリーの佇まいに秘められた影と、そのやさしさに触れていくうちに、ついに受け入れる時が来るのです。なんかね、このラヴシーンが気持ち悪いとか言ってるレビュー見たんですけど。そういうこと書けちゃう人が気持ち悪い。ちょっとゲスい会話も、愛しさがあふれるタッチも、なんだか微笑ましく見守ってしまいました。けど、ふつうにドラッグ決めちゃうとこがやはりイギリスなのですかね?でもここでドラッグがガン決まりになっちゃうアダムの表情を目だけで演じるアンドリュー・スコット。すごい。素敵。好き。けれど、死者であるはずの両親との幸せな時間は、いつまでも続きません。唐突に訪れた別れの日、3人で思い出のショッピングモールへ行き、最後の会話が交わされます。もうここは涙なしには見られません。両親の愛の深さ、子供のように「別れるのは嫌だ」と泣くアダム、もう我慢できずに鼻をすすりまくりました。そして…自宅に戻ったアダムは、ハリーの部屋を訪れます。しかし、そこにあったのは…。これは言えない!言いたくない!ラストシーンは本当に印象的です。ベッドに横たわり、背中からハリーを抱きしめるアダム。ハリーが「何かレコードをかけて」というと、流れるのがFrankie Goes To Hollywoodの「The Power of Love」。最初のシーンでもアダムがかけていたのもこれでした。このバンドというと、やはりセクシュアリティではアダムに通じます。アダムはこの曲をよすがに生きているのかななんて最初は思いましたけれど、ハリーが初めてアダムを訪ねたときに「ヴァンパイアがいるんだよ」と言ったんですが、歌詞を読んで、ここでつながるのか!と納得。「ぼくがきみを守る」とアダムが言って眠りにつくラストは、いろいろ示唆に富んでいて、想像力をかき立てられる終わり方でした。もしかすると、アダムも…。現実と彼岸と、どちらなのか区別もつかない不思議な世界の行き来で構成されていますが、そこがミソだと思います。解釈は人それぞれ。愛の形も人それぞれに違う。孤独に生きていたって、心のどっかにひとかけらくらいはある。忘れているだけで、もしくは忘れようとしているだけで。恋人同士としての愛、親子としての愛、いろんな愛を気づかせてくれる一本でした。そして、親を大事にしなきゃなと改めて強く思わされた一本です。今でも、アダムと両親のシーンを思い出すだけで鼻の奥がつーんとします。それにしても、アンドリュー・スコットがチャーミングすぎる。少年時代に戻って、子供みたいな柄の赤いパジャマを着ているシーンは、唯一、のけぞりそうになりました。
2024.04.22
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フライヤーが映画館に置いてあったときからずっと公開を楽しみにしていた「貴公子」、たっぷり楽しめました。韓国とフィリピンの血を引く青年マルコは、病気の母親を抱え、賭けボクサーとして日銭を稼ぐ日々を送っていましたが、ある日、韓国から父の使いだという弁護士が訪れ、韓国へと行くことになるのですが。そこで、飛行機で出会った謎のイケメン「貴公子」に、いきなり「きみの人生最後の友達」と言われ、そこからなぜかしつこく追い回される羽目になり、マルコはこれでもかというほど痛い目に遭います。そこに絡んでくるのが、マルコの兄だという財団の跡継ぎ(のはずだった)ハン。気に入らない奴は全部ライフルぶっ放して始末する悪党です。貧乏人は存在価値なんてないと思ってる感じの、イヤな奴です。でもシャワー浴びた後のバスローブ姿はセクシー。あと、ハンと対立する後妻側の女弁護士も実にカッコよく、目の保養です。とにかくこの映画の醍醐味は、キム・ソンホ演じる「貴公子(名前がない)」。ゾクゾクっとするほど不気味です。きれいなお顔なだけに、やることなすこと怖い。前半からマルコのストーカー全開で、ヌッと出てくるなり、目だけ笑ってない笑顔。これが怖すぎる。かと思えば、コーラはストローで飲んでたりしてお茶目なところもあるし、走る姿がやたら姿勢よくて笑っちゃうんですが、基本、殺し屋なので怖いです。サイレンサー付きの銃でどんどん人を殺します。猛スピードでマルコを乗せた車と並走して、ニヤっと笑いかけた瞬間にまだ銃をぶっ放す。敵なのか味方なのかわからないまま、どんどんストーリーが進みます。ラストを飾るアクションシーンは壮絶かつクール。ライフルやピストルやらを360度から突き付けられてるのに、そこから挽回してしまうのが、さすが貴公子曰く「プロ」。血まみれになっているところさえもクール。でも、足に銃弾がかすっただけで大騒ぎするところはちょっとお茶目です。結局、貴公子はマルコの味方なのか敵なのか。ラストで明かされた貴公子の目的と結末は、観ているこちらでもちょっと読めていたのですが、この少々予定調和的なところも私は好きです。貴公子がずっと咳をしたり血のようなものを吐いたりしてたので、「病気?」と思ってたし、「これが最後だよ」といってマルコに会いに来たりしてたから…ほろ苦く終わるのかと思ったら!最後の最後がいちばんどんでん返しでした。完全無欠の美男・貴公子とか、捨てられたワンコみたいにほっとけないマルコに萌えたい人には超オススメ。
2024.04.13
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輸入盤 VACCINES / PICK-UP FULL OF PINK CARNATIONS [CD]今年の1月にリリースされたThe Vaccinesの6thアルバム「Pick-Up Full of Pink Carnations」。Vaccinesといえば、たしか私は1stを買ったはずです。けっこう気に入ったはずなのですが…行方不明。そして、何となく音楽から遠ざかっている間に、すっかり彼らのことを記憶の彼方に追いやっていました。が。先日、Drownersの音楽に行き当たった際、VoのMatthew Hittが今なにしてるのかなと思ってググってみたら、彼がVaccinesのサポートをしているという事実を知ったわけですね。そこで、じゃあいまVaccniesはどんな音を鳴らしているのかなと聞いてみたら、ナニコレめっちゃいいじゃないですか。そして久々に手にした彼らのアルバムが、この一枚なのです。1stの感想に「ぼわっとしたとこがいい」とかなんとか書いていたようなのですが、その印象は変わらず。なんというか、浮遊感と高揚感と多幸感が混じり合った、不思議なサウンドに聞こえるのです。メロは強烈にキャッチーでポップ。だけど、VoのJustin Youngの声が、絶妙な低さとハスキーさとセクシーさで、サウンドを見事にロックに塗り変えている。そんな印象を持ちました。本当に、この1枚はどの曲もキャッチーで耳に残るんです。1曲目の「Sometimes, I Swear」なんて一発でサビを覚えるくらいのインパクト。核となるのは「Heartbreak Kid」なのかな。明るい曲調なのに詞はなんとも含蓄がある(ように思える)。タイトルだけ見たらまんま「失恋したの?」とか思いますが、読んでみるとそれだけじゃない。と思ったら、アルバムの曲ほとんど全部が、言葉の裏を推測したくなる、実に意味深な歌詞なんじゃないかと思ったりもしました。まだまだ勉強が必要です、私。「Discount De Kooning (Last One Standing)」や「Sunkissed」も頭の中でずっとぐるぐると回り続けるくらいにキラー・チューンです。Sunkissedの歌詞がなんだかもう好き。甘くて。今回初めて彼らの歌詞を活字で目にすることができて、バンド全体への見方はかなり変わりました。彼らの音は、キラキラとした光の粒子に包まれながらも、それが消え去る瞬間の影もまとっている、カッコいいロックチューン。何といっていいかわからないけれど、すごく楽しい時間とそれが終わる瞬間を同時に感じさせれくれる、そんな感じ。それを支えるのが、時にほろ苦く、くらくらするほど甘く、かと思えば突き刺さるような言葉たち。たまりません。これは困った、過去のアルバムも全部チェックしないといかん。
2024.04.10
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ブロークバック・マウンテン【Blu-ray】 [ ヒース・レジャー ]友人に会ったときに、映画の話題からブロークバック・マウンテンの話になったので、まだ見たことがないという友人に激推ししました。そしてアマプラでまた見返しました。この映画、2005年の作品だったのですね。ずいぶん前だったんだと今さら思いましたが、当時、映画館で観ました。そして泣きました。オスカーにもノミネートされましたが、ほとんど受賞せず、やはり作るのが早すぎたのかなと今になっては思います。でも、これはゲイうんぬんを考えなくても、本当に切なくて純粋で辛いラブストーリーなんです。で、私はこのサントラももれなく買っていたのですが、友人との話で思い出し、ようやく自宅で発見しました。そして聴いてみて、もれなく泣いているわけです。当時よりはもうちょっと英語の理解がマシになった自分のせいか、歌詞が刺さりまくる。全部がイニスとジャックのために作られたような歌。よくこんなに見つけてきたなと思いますよ。Willie Nelsonが歌う「He was a friend of mine」、これはBob Dylanの歌ですが、Willieの渋く深みのある声がたまらない。Emmylou Harrisの「a love that will never grow old」は、声が美しすぎてたまらない。マブダチのTeddy Thompson&Rufus Wainwrightが歌う「king of the road」の切なさにも身もだえしますよ。何より、十数年ぶりに聴いたはずなのに、歌が流れ出した瞬間に涙ぐんでしまったのが、Teddy Thompsonが歌う「I don't want to say goodbye」ですよ。イニスとジャックの物語がもう頭の中にあるせいで、突き刺さるんです。しかもTeddyの透明感があって優しい声がハマる。たぶんこれで彼のことを知ったんですよね。大御所Linda Ronstadtの「it's so easy」でホントにたやすく恋に落ちたいと思ってしまったり、ラストを飾るルー様の「the maker makes」でしんみりと映画全体を思い返し、まだ涙ぐんだのでした。途中途中で挿入される、映画のために作られたインストナンバーも素敵です。ブロークバック・マウンテンの美しく雄大な自然が、脳裏によみがえるようです。本当に素晴らしいサウンドトラック。しばらく私の中でリヴァイヴァルです。
2024.04.07
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アカデミー賞を多くの部門で獲得した話題作「オッペンハイマー」、やっと見てきました。最初は単にキリアン・マーフィーが見たいというミーハーな思いもありましたが、やはり、扱うテーマがテーマなだけに、これは慎重にいかないとなと覚悟を決めるのにちょっと時間がかかりまして。確かにキリアン・マーフィー(と彼の青い瞳!)すごく素敵で、知的で、でも女性には弱くて(笑)、策略にはちょっと疎くて…オッペンハイマーを魅力的に演じていたと思います。でもなんであんなにすぐ女に手を出すの。笑もちろんそういうことだけではなくて、オッペンハイマーの苦悩、憤り、悲しみを眼差しで語る彼の演技が、素晴らしかったです。周りを固める俳優陣も豪華!ちょっとしか出てこないですが、ケネス・ブラナーがやっぱり素敵。ジョシュ・ハートネットも胸板厚くてカッコ良かったです。原爆の父と呼ばれるオッペンハイマーがいかにして原爆をつくり出すに至ったかを描いているわけですが…みんなで楽しそうに量子力学の話とかしているうちは微笑ましく見られるのですが、やはり、原子爆弾の開発のためにロスアラモスの研究所を作るあたりから、だんだんと不穏な雰囲気になります。アイマックスとかで見たわけではないのですが、冒頭の「核」を思わせる轟音で、すでに、物理的にではなく、心の底から震えていました。怖くなりました。そして核実験に成功するシーンは、直視するのもつらかったです。閃光、爆発、轟音、そしてあの特徴的な雲。うまくは言えないけれど、心臓をぎゅっとつかまれる、気持ち悪い感覚がありました。そして鼓動が跳ね上がり、胸が苦しくなりました。あれは怖気立つという表現が正しいのでしょうか?オッペンハイマーは、核実験の成功後、喜ぶみんなの中で少し違う顔をしていますが(でも、ざまみろとかドイツにも落とせばよかったとか別のシーンで言ってます)、彼以外の人々はみんな歓声をあげています。あれが当時のアメリカなのでしょう。複雑でした。広島と長崎の様子は、多くは語られません。私は、映像とかで語られなくて良かったと思います。そんなシーンがなくても十分辛く、心が震え出すくらいなのですから、描写があったら絶対見ていられなかったと思います。原爆をつくり出した当初は、これで戦争が抑止できると信じていたオッペンハイマーですが、実際はその反対で、核の開発競争が始まることに危機感を抱き、罪悪感に苛まれます。そのこともあって、彼はその後水爆の開発には反対するようになりますし、彼を良く思わないストロース(ロバート・ダウニー・Jr/アカデミー授賞式でホントがっかりした)に陥れられてしまうのですが。そこがこの映画の核だったかもしれませんが、原子爆弾のチャプターでダメージが大きかった私は、少々上の空で見てしまったかもしれません。それに、過去と現在、未来が入り乱れて展開するので、瞬時に理解するのが大変です。もうちょっとよく予習していけばよかったなと反省しました。個人的には、後味は決して良くないです。私は、原爆や戦争に関して決して意識が高い方ではありませんが、今回この映画を見て味わったあの気持ち悪い感覚で、やはり自分は日本人の感情が大きいんだなと思いました。フラットに見ろと言われても、そんなに意識高く見られませんでした。ただ、それでも、見るべきものだったと思います。あらためて、いろいろと考えるべきだと思わされたという点においては。
2024.04.06
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