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2009.02.17
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カテゴリ: Travel(フランス)
<きのうから続く>

ベルトコンベアー作業なら、流暢な英語で対応するホテル・ランカスターのフロントの「雇われ」たち。

しかし、変化球となるとフレキシビリティが足りない。柱になってくれるような超ベテランの風格あるホテルマンもいない。

2日目の夕方、最初に案内役をつとめてくれたオネエな彼が立っている。明日は帰国。でも夜遅いフライト。チェックアウトは正午だが、レイトチェックアウトを頼めるかどうか聞いてみた。

「レイトチェックアウト?」
オネエが、慌てたように手元のボードを見る。時間割表で、宿泊客のスケジュールなどが書き入れてあるもののよう。
「何時ぐらいまでご希望ですか?」
「できるだけ遅く」
「できるだけ…」
見る見る表情が曇る。

いや、無理ならいいんだけど…

オネエがボードをひっくり返して、考え込んでいる。

なんでそんなに困ってるんだ? 満室でもなかろうに。

すると、横から、超ショート金髪のあまりイケてないお兄さんが、突如会話に割り込んできた。

「午後3時以降にここにいたいなら、あなたは1日の宿泊代の50%を払わなければいけない」

はあ?

誰が午後3時以降までタダでステイさせろと言ったよ、え? ただ、レイトチェックアウトができるかどうか聞いただけだよ。希望を聞かれたから、「できるだけ遅く」って言っただじゃん。

それに、話しているのは君にじゃなくて、こっちのオネエになんだけど?

さっそくハラが立ったが、もちろんそんなそぶりは見せず、

「では、午後3時前でいいですよ」

と答えた。

超ショート金髪のあまりイケてないオニイは、明らかにオネエに助け舟を出したつもりらしい。手元のボードを(なぜか)必死に見てるオネエをかばうように、しゃしゃり出てきて、

「レイトチェックアウトは、すぐにできるかどうか保証できない」

なんて言い出す。

「じゃあ、いつできるかどうかわかるの?」

だから、君と話してるんじゃないって。どいてよ、オネエが見えないじゃん。なんなんだ、この超ショート金髪のイケてないニイさんは。友情には篤そうだけど、ちょっと出ちゃばりすぎでしょ。そうこしてるうちに、オニイの陰から、オネエがやっと答えを出した。

それは…

「今は約束できない。明日」

また、明日か!

なんでレイトチェックアウトができるかどうか、明日になんなきゃわからないのか、こっちは全然わからない。チェックアウトの時間に合わせて、最終日の予定を少し動かそうと思ったのに、これじゃダメだわ。

で、翌日の朝。

フロントにいたのは、超ショート金髪のイケてないオニイだった。そして、Mizumizuが通りかかると、

「レイトチェックアウトは午後1時まで」

とボードを見ながら言ってきた。

たったの1時間!

それじゃあんまり変わらないわな。でも、もう期待していなかったので、

「わかった。どうもありがとう」

と言うと、オニイが初めて、

「よろしいですか?」

と殊勝な顔をした。よろしくないって言ったら、どうするのよ? まったく。

そんなこんなで、午前中にちょっと外出し、昼前に帰ってきて12時半にチェックアウトした。

このホテルは、電話の内線ボタンがいろいろ分かれてるクセに、「レセプション(フロント)」と「ルームサービス」しか出やがらない。

なので、フロントにかけて、荷物を預けたいのでベルボーイを寄こしてくれるように頼んだ。

対応は速い、それは立派。

すぐにベルボーイがやって来た。最初の日にドアに立っていた、ホテル一番のイケメン君だった。実はその後、彼を全然見なかったのだ。ドアマンは他に2人ぐらい見たのだが、立っていないことのが多い。到着のときにちゃんといたのは、もしかして、こちらの到着時間を事前に聞いていたから、それに合わせて待っていただけかもしれない。

ホテルで預かってもらいたい荷物を渡して、
「午後7時ぐらいに戻ってくるから」
と、チップを1ユーロあげたら、めちゃくちゃ嬉しそうに笑ってお礼を述べるホテル一番のイケメン君。

おいおい、たった1ユーロだよ。そんなに給料安いの? ここ

そんなに喜んでいただけるなら、2ユーロ硬貨にしてあげるべきだった。ホテル一番のイケメンだし(他には視覚にウレシイ人はいなかった)。

そういえば、ベルボーイって、荷物をもってきてもらったときにはチップをわたしやすいけれど、荷物を運びに来てくれたときって、案外チップをあげるのを忘れる。それで、喜んでいたのかな? 

とにかく、イケメンのベルボーイ(ドアマンも兼任)は、とても感じよく丁寧に荷物をもって去って行った。長身でガタイもいいから、荷物がひどく軽そうに見えた。

やっぱり男は、荷物運べてナンボよね――うっとりと(笑)見送るMizumizu。

で、フロントにおりたら、例の、同僚への友情(?)には篤いようだが、客への態度は微妙に悪い、超ショート金髪のイケてないオニイ。

身軽なMizumizuを見て、開口一番、何を言うかと思えば…

「荷物を部屋においてきたのですか?」

はあ?

たった3分前にここに電話して、ベルボーイ呼んだじゃん。そういえば声が違った。さては、横で知らんふりしてるもう1人のフロントマンが電話を受けたのか。

にしても、「あなたは部屋に荷物を置いてきたのか」は失礼でしょう。どこのバカがチェックアウトするときに部屋に荷物を残してくるのよ。そういう場合は、「お荷物はどうされました?」が正解だろう。

頭に来たが、こんなオニイ相手に怒っても仕方ない。忍耐強く、

「いえ、さきほどポーターに来てもらって、荷物は預けた。彼には、午後7時に戻ってくると伝えた」

と説明するMizumizu。

5か6まで言えば10までわかってくれるのが日本のサービスだとしたら、ヨーロッパは10までわかってもらうには、2度ぐらい10まで説明する根気が必要だ。

同僚への友情(?)には篤いようだが、客への態度は微妙に悪い、超ショート金髪のイケてないオニイはそれで納得顔になった。

そして、次に「タダだったはずのホットチョコレート請求」事件が起こった。

ただ、夜7時に戻ってきたときのフロントの対応は完璧だった。顔ぶれがまったく変わっていたのだが、名前を言う前に、もう荷物が出てきた。まるで魔法。ついでに言うと、フロントに立ってたのは、例のオニイとは雲泥の差のイケメンだった。もっと早く立たせてよ、彼を。しかも、とても紳士的で笑顔も麗しい。

「タクシーをお呼びしますか?」

出た! 得意の(苦笑)台詞!

タクシーの手配だけは常に、文句がつけられないくらい完璧なのだった。


しかし、日本に帰ってきてからも、あの超ショート金髪のイケてないオニイの態度には腹の虫がおさまらない。

ランカスターのHPを見たら、ジェネラル・マネージャー(つまり支配人)あてのメルアドがあった。

そこで抗議メール(早い話がチクリ)を送った。

「レイトチェックアウト問答割り込み事件」と「チェックアウト時の失礼な物言い事件」が非常にembarrassedだったこと、それに請求書の間違いも、「バウチャーをわたしておきながら、請求してくるなんで、なぜこんなバカな間違いが起こるのか理解できない」とこきおろした。

そしたら…!

なんと、最初にホテル・ランカスターから返ってきた返事は…

Dear \\GUESTNAME///: Thank you for staying with us at the Hospes Lancaster. We sincerely hope you enjoyed your visit with us and that we were able to exceed your expectations. We look forward to serving you again when your travel plans bring you back to the Paris area. Sincerely, Director of Sales +33 1 40 76 40 76 www.hotel-lancaster.fr


コレ。

脱力するほどダメダメ。

どうしてって…

これはお礼状の「雛型」なのだ。\\GUESTNAME///のところに、本当ならメールをくれたお客の名前を書き入れて送らなければならない。それすらやらないで自動送信してるってことだ。

やれやれ、クレームレターは支配人のところには行かなかったのか、と思っていたら、数時間後、

ちゃんとジェネラル・マネージャーのValentino Piazzi氏から丁寧な謝罪レターが届いた。

きれいな英語で、次回いらしたときに、個人的にお会いしたい、レイトチェックアウトは何時であってもフライトの時間に合わせて無料で保証する、と書いてあった。

一般の日本人観光客のフランス人に対する印象は必ずしもよくない。観光客が接するのは、失礼な「雇われ」が多いからだ。でも経営してるほうは、日本人も含めてお客様にはそれなりに満足してもらえるサービスを提供しようという気持ちはあるのだ。

ただ、権利意識は世界一高く、一流の店に勤めると自分も一流になったような気分でお客を見下す、困った「雇われ」が多いのも、またフランスという国。多くの場合、「雇われ」はお客が自分の上司と接触できないのをいいことに、わざわざ店の評判を落とすような態度を取るのだ。

その証拠に、お客にアンケートをとるような店の「雇われ」は、ビックリするぐらい愛想がいい。

ランカスターのGMは、「当ホテルは、家庭的なサービスで高い評価を得ていますので、今回のご無礼は例外的なことだと思います」とも書いてきた。

それはどうだかね。

だって日本人客を1人も見なかった。3日泊まって1人も。日本人というのは、基本的にとても目ざとい消費者だから、「上質な場所」には、必ずいる。ホテルだって、どんなに高いホテルでも、よいホテルには必ず泊まっている。

でも、ここにはいない。

単に「知られてない」だけではないと思う。いくら隠れ家的な小さなホテルでも、そこがとてもよければ、もっと日本人は来るはずだ。

実際に泊まっているときは、レイトチェックアウトをあれほどしぶって、結局1時間しかのばさなかったのに、文句をつけたらいきなり、次回はフライト時間まで無料で保証しますってのも、なんとなくバツの悪い話だ。

チェックアウトの時間をのばすなど、本当はそれほど難しいことではないのだ。もちろん、1泊しかしないようなときには、お願いすべきではないと思っている。それは客側の良識の問題。ただ、3泊もしたら、多少融通をきかせてもらうのは、別にごり押しでもなんでもないハズ。

バンコクのオリエンタル・ホテルはすぐに「午後4時までどうぞ。そのあとも、ゲストオンリーのプールもご使用いただけますから」と言ってきた。

ランカスターであれほどオネエが困っていたのは、掃除のスタッフの稼動できる時間が限られているからではないかと思う。それに、どうも宿泊客を同じ階になるたけ固めたいという勝手な都合も見え隠れした。

ランカスターは部屋のメイクアップサービスはイマイチだった。たとえば、北海道の洞爺湖の「ザ・ウィンザー・ホテル」はずっと規模が大きいが、部屋をあけて戻ってくるたびに、「いつの間に入ってきれいにしたの?」ってくらい、メイクアップを何度も素早くやってくれた。

ランカスターの朝のレストランは、時間をずらしても行っても、いつもたいして客がいないのに、同じ階の部屋は妙に埋まっていたからだ。もともと部屋数が多いホテルではないのだが、あえて固めて泊めている感じ。そのほうがお客に満室感も与えられるし(けっこう空いてるのはミエミエだけど)、掃除もラクだということだろう。

結局日本、そしてアジアのトップクラスのホテルの人的サービスにはかなわないということ。

そういえば、バンコクのオリエンタル・ホテルで、フランスからホテル経営を勉強しに来ているという青年に会った。バンコクに来る前は、ドバイのホテルで、接客の勉強したと言っていた。

しっかり勉強してくださいネ、おフランスの高級ホテルさん!





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最終更新日  2009.02.17 04:26:20


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