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2009.04.04
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カテゴリ: Figure Skating(2008-2009)
読者の皆様へ

こちらのブログ を運営していらっしゃるTMRowingさんが、先日 ビアンケッティさん にメールを送ったところお返事が来たそうです。

TMRowingさん、およびビアンケッティさんご本人の許可を得て、拙ブログにも転載させていただきます。全文はMRowingさんのブログをご覧ください。

最初の1段落目でビアンケッティさんは、「 スポーツが生き残るためには、ファンの意見は絶対欠かせないものだ 」と説きます。彼女はファンの考えや提案、批判を受け取ることが「 大いなる喜び 」だとしています。

It is always a great joy for me to receive letters from fans expressing their thoughts, their suggestions or critics. The opinion of the fans is vital because you are the lymph for any sport to survive.

本当の一流のプロはファンを素人と侮ったり、ないがしろにしたりしません。それは世界のトップ選手もそうですよね。彼らは自分たちを支えてくれるのは、一部の専門家やマニアではなく、一般のファンだということをわかっているんですね。

根拠のわからない点数を見せておいて、「ジャッジ様がやったことだから無知な素人は黙って納得しろ」と言ったって無理。信頼してもらるように努力すべきなんですね、それが本当のプロ。

2段落目は、ロスの世界選手権に対する私見です。順位についても採点結果と自分の判断の違いに触れていらっしゃいますが、これは特段現在のジャッジ批判ではありませんし、不正があってこうなったということでもありません。

「自分としてはこう思う」ということで、それがそもそもジャッジの仕事なんですね。誰が誰より優れているか。要求されてエレメンツをどの程度こなしているか。選手のスケートの力量はどのぐらいのものか。それは本来は、ジャッジが自分の責任において判断すべきものなんです。

優れた眼をもつジャッジによるフィギュア・スケートの採点。ヨーロッパで長くフィギュアが根強いファンに支持されてきたのは、基本的にファンがジャッジの採点に信頼をおいてきたからだとMizumizuは思っています。

もちろん、根回しのような部分はありましたが、出てきた順位は、わりあい誰にとっても納得できるものが多かった(もちろん、そうでない場合もありますが)。そのジャッジへの信頼を新採点システムが壊してしまったのです。

どこかの個人ブログ(普通のフィギュアファンの方のブログですが、大変に力のこもったよいブログでした)で、ビアンケッティさんの文章を引用されている方がいて、1つ誤訳がありました。「陰謀や裏取引があるのを、一般人がわかっていて…」というように訳された部分があったんです(ウロ覚えですいません)が、そうではなくて、ビアンケッティさんは、「匿名での採点というのは、陰謀や裏取引を隠すための方法だと(大衆やスケート関係者の多くから)思われている」、つまり信頼されていない、ということを言いたいわけなんですね。陰謀や裏取引があるともないとも言っていません。

残念ながら、サーフィンしながら、あら? と思っただけで、指摘させていただくのを忘れました。どなたのブログかわかったら(すごく抽象的で曖昧な記憶ですいません)、ブログ主さんに教えてあげてくださいね。ブログ自体は、本当によくできたブログです。ただ、拙ブログでもビアンケッティさんを紹介したので、サーフィンしてあのブログを見つけた方が、「ビアンケッティさんが不正を認めてる」と誤解してはいけないので。

さて、一番重要だとMizumizuが思うのは、演技・構成点に関する意見です。

As I say in my article the number of Program Components is much too high and all the requirements listed in each one just make it impossible for any judge, in my opinion, to properly assess the marks. And it is totally useless, because, as you can see, there is no difference from one mark to another. The marks of the PC are mainly based on the reputation of the skaters and previous competitions. A real scandal. Besides nobody in the arena and at home can understand the marking now, which is one of the main reasons of the loss of interest in the sport. Since the introduction of the new system the popularity of figure skating has gone downhill! This is why I make the proposal to reduce the PC to two and judge on a relative scale, using marks from 0 to 6. I am very happy to hear that you agree with this proposal.

ここでビアンケッティさんは、演技・構成点は、コンポーネンツを2つにして(Note:現在は5つ)、0から6の比較値とすべきだと主張されています。現在の演技・構成点は高すぎること、点差に意味がないこと、その点が適切かどうか検証不能であることが問題点です。そもそも演技・構成点というのは、だいたいが、その選手の評判とか、それ以前の試合の評価をもとにして出されている。おかしなことです。そのうえ、今や、家でテレビを見ている人も、会場で見ている人も、だれも出てきた点数を理解できない。それが競技に対する興味を失わせる主な原因なんですね。新採点システムになったから、フィギュアの人気はもう、どん底だということです。


適正かどうか検証不能な点差をどんどん匿名でつけられる。これがMizumizuが、「もうフィギュアの採点は終わった」と思った一番の理由ですから、まったく同感です。5つのコンポーネンツなんて、いりませんよ。スケートの技術全体と振付全体を評価する2つぐらいで十分でしょう。今のやり方だと、天井値をどんどん引きあげることで、無意味な点差をどんどん広げていけるのです。爆アゲ、爆サゲの温床にしかなりません。

今みんなが「9」と言う点を見て驚いてるのは、今まで見たことがなかったから。だから異常だと感じる。でも、それが常態化すれば、誰も異常とは思わなくなります。で、9を9.25に9.5にというようにだんだんに引きあげる。そうなると印象点の演技・構成点で、技術点をないがしろにさえできてしまうんです。また、今回のように特定の選手があまりに高い点を出してしまって、見てるほうはしらけます。フリーを見なくてもショートで1位が確定、ではね。しかも、誰もできない技をやったんならともかく、「どうしてそこまで点がでるのか理解できない」――これじゃ、ファンはついてきません。理解できなくても、受け入れろ、なんてのは無理な話です。人は、理解できるから受け入れるんです。

日本は今、浅田真央人気で、沸騰中のフィギュア人気ですが、ヨーロッパではもう死に体のようですね。

選手のほうからも旧採点システムに戻してくれという要請が出てます。見てるほうも耐えられないですが、やってる選手はもっと耐えられないんです。

ISUがどうしても、コストナー選手をアゲたいのもわかりますよね。ジャンプとにかく決めれた、ファイナルで台にのぼっちゃいましたからね。

それに対して、今回のコストナー選手がまるで反抗するような無気力フリー。彼女はわかってるんです。どうしたって、ISUはコストナー選手が必要なんですね。次のイタリア開催のビックイベントのことを考えたって、3F+3Tを跳べる可能性があり、それが無理でも3F+2Tなら決められて(実はこれだって大変なんです)、かつ2A+3Tも(最近はコケが多いですが)入る、ヨーロッパでは稀有な選手です。

前の日にあれほどマトモに3回転ジャンプ跳べてたヒトがいきなりアレ。しかも同国人の会長の前で。急な体調不良とかですかね。まあ、なんとでも言えますね。会長としても、あんまりな銀河点出ると選手がヤル気なくすと知れば、どうにか動いてくれるかもしれませんからね。さすがヨーロッパのイケメンキラー女王です。男を動かす方法を知ってますね。

枠取りのこともあるから頑張れなんて言われて、どの試合も素直にまっすぐに全力で戦い、やたらルールの包囲網を作られてる日本選手とはしたたかさが違うでしょう。

カナダのロシェット&チャンは逆に韓国のファイナルで力を抜いていましたよね。その分、世界選手権では照準ピタリでした。


さて、きのうの続きで、ロシェット選手は本当に強い、という話ですが…

現在の採点はジャンプ、スピン、ステップのテクニックで選手の力量を判断するわけです。ロシェット選手は、世界選手権では、スピンもステップもスパイラルも、レベルを高く揃えています。このエレメンツの部分にキズのない選手なんですね。

カナダ選手権のときは、ここまでレベル4を取れなかったので、キチンと強化して結果を出したってことです。素晴らしいですね。

あとはジャンプのバランス。ショートとフリーで上位4選手の跳んだダブルアクセル以上のジャンプの数を、基礎点の高い順に比較すると

安藤選手
ルッツ(3つ)、フリップ(1つ)、ループ(2つ)、サルコウ(1つ)、トゥループ(2つ)、ダブルアクセル(2つ)。


キム選手
ルッツ(3つ)、フリップ(2つ)、ループ(0)、サルコウ(1つ入れて2回転にすっぽ抜けに)、トゥループ(2つ)、ダブルアクセル(4つ)。

浅田選手
トリプルアクセル(1つ、もう1つは転倒失敗)、ルッツ(1つ入れて2回転にすっぽ抜け)、フリップ(3つ)、ループ(2つ)、サルコウ(0)、トゥループ(1つ)、ダブルアクセル(2つ)。

ロシェット選手
ルッツ(3つ)、フリップ(2つ)、ループ(1つ入れて失敗ではないダブルになった)、サルコウ(2つ)、トゥループ(1つ)、ダブルアクセル(3つ)。

上の数には、あのアホらしいダウングレード判定入れてません。ちゃんと降りたかどうかで判断。もうループへの執拗なダウングレードは、日本女子つぶしとしか、Mizumizuは思っていませんから。

ジャンプは難度の高いものを跳べたほうが有利です。でも、跳べるジャンプの種類が限られるとそれは不利な要素です。

たとえば、キム選手はループが跳べなくなりました。オーサーとしては、本当はフリーにループを入れてダブルアクセルは2つにする方向にもっていきたかったはずです。去年は、今年よりフリーの要素が多かったはずなのに、ループが決まることもありました。ところが今年は2回やって2回失敗。成功率ゼロです。そして、サルコウの確率も落ちてきました。でも、キム選手はサルコウをはずすことはできません。つまり、もうこれ以上ジャンプ構成を落とせないんですね。それでも、ほぼどこか1つ以上のジャンプに失敗が出る。今回はサルコウでしたが、ルッツの着氷、2A+3Tの3Tの着氷に乱れがありました。

これがキム選手の危うさです。これ以上ジャンプ構成を下げるとなると、セカンドに跳べている3Tを2Tにかえるぐらいしかない。

キム選手を世界女王にしたもの、それは3つのルッツとセカンドに跳べる3回転です。安藤選手を世界女王にしたのも、ルッツとセカンドに跳べる3回転(ループ)でした。2人とも世界女王になったシーズンは、特に3回転にもっていく連続ジャンプの確率がシーズン最初から安定してよかった(キム選手のアメリカ大会でのグリ降りのことは考えに入れないことにしています。とにかく降りてるということで)。


<続く>













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最終更新日  2009.04.04 03:59:31
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