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2009.12.13
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カテゴリ: Gourmet (European)
初めてヨーロッパのドイツ語圏に行ったときは、食が合わずに困った。好きだと言える料理はほとんどなかったのだが、唯一気に入ったのが、オーストリアで食べたヴィーナー・シュニッツェル。

ウィーンはドイツ語ではヴィーンと発音する。ヴィーナーとはウィーン風という意味。ただ、濁音を嫌ったのか、日本ではヴィーンをウィーンと書き、ヴィーナー・シュニッツェルもウィンナー・シュニッツェルという書くほうが多いようだ。

一般に、訳は「ウィーン風子牛のカツレツ」とされ、正式には子牛を使うが、安価な豚で代用することもある。

豚肉を使ったウィンナー・シュニッツェルは、「日本のトンカツ(ロース)を薄くしたもの」になってしまい、ブルドックのとんかつソースとご飯が欲しくなる(苦笑)。

ちゃんと子牛を使ったものは、トンカツとは違った味わい。塩・胡椒のシンプルな味、たっぷりレモンを絞るのがいい。

オーストリアではこればかり食べていた記憶がある。シンプルゆえに、当たり外れも多く、ハズレ――たいてい、肉はバサバサしていて、ボケたような味になっている――を引くと、「ああ、せめてここに、ブルドックのとんかつソース(←しつこい!)があったなら・・・」と日本を思って目をウルウルさせることになる。

日本ではあまり人気がなく、出してるレストランも少ない。美味しいヴィーナー・シュニッツェルはなおさら少ない。

そんななか、本場の一流店に混じっても遜色ないであろう、上等なヴィーナー・シュニッツェルを出してくれる店を見つけた。

意外なことに、それはカフェ。

カフェウィーン

昭和のまま時間が止まったようなレトロなショーケース。場所は日本橋の三越の2F、その名も「 カフェウィーン 」。

名前からして、相当にレトロ。

日本橋界隈は、まだ江戸の情緒がわずかに残る都内でも稀有な場所。ここの三越は、銀座よりもずっと老舗感がある。建物の風格が違う。

客も少ないので、最近はおのぼりさんでごった返す銀座のデパートを避けて、日本橋の三越や高島屋に行っている。

カフェウィーン店内

「カフェウィーン」の内装は、これまた「レトロ」。昭和の香りと言うのか、流行遅れもここまで極めればりっぱな様式美だと言うべきか・・・

そもそもオーストリア全体が流行遅れみたいな国なのだが(失礼!)、カフェウィーンは、そのちょいくたびれたオーストリアの雰囲気をよく出している。新聞が置いてあり、老紳士が読んでる姿もかの地とまったく同じ。

今どき「ウィーン」に胸をときめかせる日本人も少ないと思うが、かつて、ある年代の日本人にとってハプスブルク帝国の都ウィーンは、絶大な吸引力を持っていたに違いない。

客層もシニア世代が多い。隣りに座った老婦人は、マリア・テレジア・カラーのニットを着て、マリア・テレジア・カラーのバラ模様の入ったハンカチーフを膝にひろげ、ゴールドのイヤリングとリングを煌かせながら、1人上品に肉料理を口に運んでいた。

Mizumizuと違って、フランス料理やイタリア料理よりもドイツ料理が好きだというMizumizu連れ合いは、この店の本格的なソーセージが気に入っている。
ソーセージ
パンやバターも何気なく上等なものを添えてくる。このあたりが老舗らしい。

こちらが、Mizumizuお気に入りのヴィーナー・シュニッツェル。
シュニッツェル
塩・胡椒の効かせ方が素晴らしい。レモンが多いというのもMizumizuの嗜好に合っている。浸すぐらいレモン汁をかけて食べたいのがMizumizu。

脇にちらと写っているポテトサラダも、一見まったくフツーのポテトサラダだが、酸味があって非常に美味しかった。

案外ダメなのが、意外にも、ここに来れば皆が注文するであろうザッハートルテとメランジュ。

ザッハートルテとメランジュ
ザッハートルテはもっとコクがあり、甘みが強いものだと思うのだが、ここのトルテはシニア向けなのか、ずいぶんと味が薄い。いつだったか、オーストリアから帰ってすぐ、吉祥寺のケーキ屋でザッハートルテを食べてみて、味があまりに同じだったのに驚いたことがある。それに比べるとカフェウィーンのザッハートルテは甘さが控えめすぎる。生地も水分が抜けてしまったよう(作ってから時間が経ってしまったケーキの典型)。

メランジュとは、コーヒーに泡立てたミルクを添えたもの――つまりは、ウィーン風カプチーノだが、どうもこれも水っぽい。

こちらがイタリアの濃い味に慣れてしまったせいもあるかもしれない。だが、苦みが薄いこういう味のほうが、やはり日本のシニア世代には受け入れやすいかもしれない。

アインシュペーナー
こちらは、アインシュペーナー。日本人が「ウィンナーコーヒー」と呼ぶコーヒーの原型。別に今となってはどうということもない飲み物なのだが、惜しげもなく飾られた生クリームに、かつての貴族文化の面影を見る気がする。

そして、ドイツ語圏でのリンゴのスイーツといえばコレでしょう。

アプフェル・シュトゥーデル。
アプフェルシュトゥーデル
薄い生地にリンゴを巻き込んで焼いた素朴なお菓子。レーズンの酸っぱさとシナモンの香りがアクセントになっている。左はブラウナー。要は泡だった普通のコーヒー。

カフェウィーンでは、温め直したあと、甘くない生クリームを添えて供された。これは、コクのないここのザッハートルテよりはるかにイケる。

銀のお盆、アールヌーボー風の装飾のついた銀のカトラリー、ゆったりとした椅子に小さめのテーブル・・・。パリでもローマでもロンドンでも東京でもない、まさしく、ウィーン風のカフェ。ウエイターの年齢層も高く、客の年齢層も高く、味は本場に負けない。

こういう場所に気軽に行けるのも、東京で住んでいる人間の特権だろう。








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最終更新日  2009.12.14 09:37:24


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