仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2009.03.14
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カテゴリ: 東北
かつては市の名称は全国規模でみて重複しないように指導されていた。例えば、陸前高田市は、新潟県の高田市(現在は上越市か)があるためと思われる。

東北以外でもこの調整に基づく市名はかなり多い。東松山市、大阪狭山市、などが多分そうだと思う。

よく、旧国鉄の駅名はそうだった。全国を見渡して同名があると料金計算に支障があるのだろうから、一応合理性はある。旧国名を冠して、陸前原町、陸前山下。また、二戸駅は、かつては北福岡駅と呼ばれていたように思う。

駅名はともかく、公の市名という、それこそ自治で決めるべき基本中の基本にまで、全国的調整が入るというのは、考えてみれば日本ならではかも知れない。しかも、法律に根拠があるでもなし、旧自治省の指導による程度の話だ。それでも、一応みんな従ってきたのだから、まさに日本人の空気の文化なのかも知れない。ずっとそうしているのだから、その秩序を守ることが自然だ、と。

近年では茨城県の鹿嶋市が話題になった。あの時に、(1)市名は重複させないルールがあること、(2)その根拠は単なる行政指導であることを知った国民も多いだろう。私は、(1)の点だけは、小学校の頃から地図帳を開いて気が付いていたが。

鹿嶋市の一件の際には、私はこう思った。まず、自治の基本なのだから自由に考えるべきである。支障はさほどないし、法理論的に考えても、呼称が重複することの支障が、自治の論理を上回るとは到底思えない。だから、国の指導は行きすぎであることは明白。地元が了承するなら格別として、地元が鹿島市としたいのに、敢えてストップさせるとすれば、そんな行政指導はあり得ない。

ただ、実態を考えれば、合併などと言う大事業は、住民の意識もさることながら、決定権を握る首長や町村議会議員の調整に時間と労力を掛けて、やっとのことで漕ぎ着けるものだ。指導ないし仲介している県の立場からしても、最後に市名で、しかも国の指導に逆らう形で決裂しては困る。法理論的におかしいと指導に反旗を翻しても、何にもならない、合併をまとめることが先決、というのが実感だろう。

そんなことも、これまで重複市名がなかった背景かも知れない。ともかく、鹿嶋市は「嶋」の一字を変えることで何とか決着した。音が同一でも表記が異なる事例は従来もあったからだ。泉市(現在は仙台市)、和泉市、出水市など。

前置きばかり長くなったが、福島の伊達市は、この調整ルールを堂々打ち破った形の第一号である。もっとも国と大ケンカしたようでもない。伊達郡の5町が2006年の市制施行の際に、郡名をもって市名としたものだが、「調整相手」の北海道伊達市から異議がなかったため、総務省も容認したものだ。

既存の市から異存がなければ認める、と総務省も指導を後退させていたのである。だとすれば、何のためのルールなのか。国民の混乱を避けるためだったのではないか。既存市の利益を守る為だったのか。などなど疑問は尽きないが、兎にも角にも、伊達市は立派に誕生した。ちなみに、岩手県宮古市は、沖縄の宮古島市誕生の際に、一旦新市名とされた「宮古市」に強行に抗議したという。

北海道伊達市が異議を唱えなかった事情も複雑で、実際には同市も合併で新市名に変更する予定があったが、この変更に住民が反対して、結局市名を継続することになったものだ。当初は、伊達郡側も、北海道伊達市に遠慮して新市名は別な候補を考えていたが、北海道伊達市の合併の動きにおいて、新市名を伊達市としない申し合わせができたので、遠慮無く市名を伊達市にすることとしたようだ。

ところで、北海道の伊達市の名は明治初年、仙台藩の伊達邦成が開拓を始めたことに因む。福島の伊達郡は言うまでもなく伊達家の故地である。東北の長い歴史で結ばれた両地だから、争うこともなかっただろう。

■参考 宇田川勝司『クイズで楽しもう ビックリ!意外 日本地理』思草社、2007年

なお、この本によると、同一名称の市としては伊達市は第2号で、実は東京と広島の府中市が先例である。ともに昭和29年に市制を施行したが、広島県の府中市が一日だけ早く、ルール上は東京都の府中市の方が市名を変える、ということになったはず。しかし、人口規模でも上回る同市は一歩も引かず、結局例外的に同名のペアが誕生した、ということだそうです。





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最終更新日  2009.03.14 09:42:19
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