仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2013.11.25
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カテゴリ: 仙台
前回の記事に続いて、広瀬川に関する30年ほど前の新聞連載を読んで記します。

■前回の記事   鹿落旅館のこと (2013年11月24日)

■朝日新聞仙台支局編『宮城風土記1』(宝文堂、1984年)から


川内追廻の広瀬川河原に、高さ4メートルほどのコンクリートの塊が残っている。気づく人は少ないが、大正末頃、約2キロくだった向山の愛宕下で仙台電気工事会社が行った水力発電の貯水用堰堤の残がい。

川床の堰はその後大水で流されて跡形もない。しかし当時は堰を越えて落ちる水がナイアガラの滝のように壮観だった、と「大橋茶屋」の主人奥山さんは言う。堰堤の上流は、3、4メートルの深さがあり、格好の水泳やボートの遊び場になった。

発電用水は追廻側の取水口から地下に入り、一度地上に顔を出したあと、竜ノ沢口を越えたところで再び地下に潜り、直径2メートルほどのトンネルを通って、約1.5キロ地中を流れ、愛宕山の下で顔を出した。

発電所は大正9年から何年か続いたが、高低差が小さくうまく行かずにしばらくしてやめたという(奥山さん)。しかし、水の流れがもったいないので、昭和の初めに河原を掘ってプールを作った。「愛宕プール」と呼ばれ結構評判だった(奥山さん)。逸見英夫さんによると、仙台のプールで最初は一番丁に昭和2年7月オープンの「仙台プール」で、愛宕はその少し後の2番目。

通水用トンネルは後に東北大で実験に使ったりしたが、今では経緯を知る人は少ない。




思うに、広瀬川が大橋の下流で大きく蛇行することに着眼し、竜ノ口付近から愛宕下に直結するトンネルで導水すれば、本流が評定河原方面に迂回して戻ってくる分だけ効率的に高低差を得ることができるという発想なのだろう。確かに、地図で見れば、大橋の下流は、花壇で回折し、また霊屋下でも屈曲し、愛宕下まで見事にS字を描いていく。

資料によると、取水口は追廻の河畔。私の地図には、東北電力の施設という表示がある場所が関係があるのだろう。川を挟んだ対岸の花壇には、銭形不動尊との記載がある。

そこから川沿いにトンネルとなるが、青葉山公園テニスコートに並行する頃には開渠となる。そして、竜ノ口橋付近で経ヶ峰崖下からトンネル部に入る。トンネルは向山のバス通り沿いに長徳寺下まで進み、そこから広瀬川沿いに愛宕神社北側で発電所に至るという経路のようだ。

長さ1375メートル、高低差0.985メートル。内部の高さは2から3メートル程度。また、この地下トンネルには、広瀬川の段丘崖に出る横坑が計5本ほどあった。

私が仙台に来た最初は向山に住んだ。その頃、広瀬川の南側のこのあたりは地下にトンネルだらけだ、などと誰かに聞かされた。亜炭の坑道のことかも知れないし、この発電所のことだったのかも知れない。

いずれにしても、仙台の中心部に、こんな天然の断崖と蛇行する川があって、歴史と自然豊かでまた近代産業遺跡の雰囲気もある、こんな土地も間違いなく珍しいことだろう。





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最終更新日  2013.11.25 21:26:36
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