全4件 (4件中 1-4件目)
1
前回の「神去なあなあ日常」の続編です。これも、とってもおもしろかったですよ。前作では山の面白さや怖さや敬虔さを、また山の仕事の厳しさを、勇気くんといっしょになって経験したような感じがしましたが、続編は趣がちょっと変わりました。前回同様、勇気くんが古いパソコンで日記のように書き綴るという形態ですが、前回の主人公は山。今回の主人公は、村に住む人々なんです。だから、続編を読んで拍子抜けした人もいるんじゃないかと思います。あちこちのレビューを見ても、パワーダウンとかがっかりしたみたいな意見の人もいますね。勇気くんは、前作では1年間限定の研修生でしたが、今作ではしっかり中村林業株式会社の正社員になりました。つまり、山の仕事やできごとにいちいち驚いている時期は過ぎたんですね。そのかわりに、村の人々との人間関係に関心が移っていくのは当然のことでしょう。私は、両方そろって一つの作品みたいな感じがして、さらに深く楽しめましたよ。あの自然児ヨキのことがよくわかったし、奥さんのみきさんもたくさん語ってくれました。お稲荷さんを畏怖する村人たち、愛想のなかった山根のおっちゃん。山根のおっちゃんの探し物が出てくる経緯には笑ってしまいました。なんとなく江戸時代のおとぎ話みたいです。それから最高におもしろいのは、「しわくちゃの饅頭の妖怪」みたいな繁ばあちゃんです。繁ばあちゃんは、足腰が弱っていて日がな一日座敷に座っている「ミイラの置物」だったはずなのに、いつのまにかパソコンの立ち上げ方を盗み見て覚え、勇気くんのパスワードを想像で割り出し、勇気くんの書くエッセイの続きを勝手に書いてしまいます。それがなんと、「あだると」な内容で・・・そのお茶目さ、精神の活発さ、すっかり繁ばあちゃんファンになってしまいました。わたしもこんなお婆さんになりたいな。三浦しをんさん、できれば、第3弾を書いてくださらないでしょうか。わたしはどうしても詳しく知りたい人がいるんです。それは、おやかたさんの精一さんのことです。立派で尊敬できるおやかたさんだというのはよくわかりますが、それにしても情報が少ない。そして、奥さんの祐子さんとの出会いも知りたいです。精一さんは東京の大学で祐子さんと出会い、祐子さんはこの神去村にお嫁に来ます。そして祐子さんの妹の直紀さんまで、精一さんにひかれてこの村へ。(勇気くんはこの直紀さんに片思い中で、この恋はなんとなくいい方向に向かっているようです。)ぜひぜひ精一さんのことを教えてください。
2014.10.25
コメント(2)
先日の旅行の際、飛行機の中で見た映画「WOOD JOB」がとてもおもしろかったので、原作を借りてきました。わたしは映画も読書も好きなので、その両方を味わってどっちが勝ち~なんて、よく考えて楽しみますが、この映画も本も、どちらもなかなかおもしろかったですよ。映画の方のキャッチコピー(というのかな)「爆笑と感動と衝撃のノンストップ大木エンタテインメント」って、よくぞここまでうまく言えたもんだと感心してしまいましたよ。まったく、嘘はありません。文庫本の裏表紙にある短い解説のいい加減さは、このコピーを見習うべきです。どちらも基本的なストーリーは同じです。都会の無気力な若者が林業の研修生として山に入り、いろいろなことを経験し、恋をし、たくましく成長していくさまがユーモラスに描かれています。だけど実は、根本的なところが全然違います。まず映画の主人公勇気くんは、大学には落ち、彼女にはふられてしまいます。高校の卒業式の後、級友とカラオケで盛り上がりますが、それが終わると急激に自分の情けなさが身に染みて・・・そんなとき、偶然見かけた林業研修プログラムのパンフレット。その表紙にははつらつとした笑顔の美女が。ダメ男勇気くんは、動機はともかく、曲がりなりにも自分からその研修に参加することを決めて、はるばる出かけていくのです。携帯電話も通じない、山奥のそのまた山奥へ。しかし、原作の方の勇気くんは、こうです。「高校を卒業したら、まあ適当にフリーターで食っていこうと思っていた。」つまり、大学受験はしていないんですね。挫折も味わっていないってことですね。「かといって、ちゃんと会社に就職するのも気が進まない。」就職活動で挫折したわけでもない。「でもさ、何十年もさきの将来なんて、全然ピンと来ないじゃん。だから、なるべく考えないようにしてた。」あらら、こりゃ筋金入りのチャランポラン男ですよ。そんな勇気くんに、高校の担任の先生が、「おう、先生が就職先を決めてきてやったぞ。」そしてお母さんまでが「着替えや身の回りの品は、紙去村に送っておいたから。」そうやって、本人の知らないところで先生とお母さんに、林業の研修制度に勝手に応募されて、出て行かざるを得ない状況に置かれてしまうのです。そして、先生に新幹線に押し込まれるように乗って、はるか西の山奥へ。ほらね、同じ林業の研修に向かうのでも、そのきっかけが全然違うでしょう?原作の方では、そんな経緯で林業をすることになった勇気くんの心の変化が、あまり詳しく書かれていないのです。チャランポラン男ですから、もっともっと泣いたりふて腐れたり投げやりになったり、いろいろな葛藤があったはずだと思いますが、それがあまり詳しく書かれていないのは正直、物足りません。しかし、もちろん原作の方が映画の何倍も見事に描かれているものがある。それは、自然の美しさ、荘厳さ、そして自然と共に生きることの厳しさ、いやこんな言葉じゃ言い足りない、山にいる神様との付き合い方とでも言ったらいいのかな。この本を読んだら山には絶対に神様がいるんだと、誰でも信じてしまいます。また、山に暮らす人々の人間関係がすばらしいです。もちろん、現実にはもっと汚いことやいやなこと山ほどあるのが人間てもんだと思うけど、もうほんとに体中の隅々まで洗い流されるようないい気持の人々でした。それから、犬好きの私は、この村で飼われている白い犬「ノコ」にも、ぐっと来てしまいましたよ。ノコに比べたら、うちのわがままな王ちゃま黒パグなんて、犬じゃないね、まったく。というわけで、続編の「神去なあなあ夜話」を読むのが楽しみです。
2014.10.13
コメント(0)
本好きの皆様に質問します。乗り物の中でも、観光地でもいいんですけど、旅先で読書することってありますか。いろいろな意見があるかと思います。ずっと昔、乗り物に乗ったら、何も食べず何も読まず、ひたすら車窓をながめて旅情にひたるべし、みたいなエッセイを読んだことがあります。車窓を見ないで本を読むなんて、もったいないって。また、私の尊敬する本好きの大先輩岡崎武志さんの「読書の腕前」には、見知らぬ土地で本を読む贅沢が紹介されています。わたしは旅先に本をたくさん持っていくタイプ。移動中はもちろんのこと、夜寝る前とか、時差のせいで眠れないとき、目が覚めてしまったとき、必ず本を読みます。そして、そういうときは、とてもスピードが出てどんどん読めます。私にとって、旅行に持っていく本を選ぶのも、旅の準備の一つです。さて、そんな私ですから、先月一週間カナダへでかけたときは、ちゃんと文庫本を用意していきました。私は旅先で読み終わった本は捨ててくるので、ブックオフで100円コーナーの文庫本を買います。持って行ったのは、荻原浩「誘拐ラプソディ」、乃南アサ「結婚詐欺師」、篠田節子「ハルモニア」「第4の神話」「聖域」の5冊です。飛行機の中でも読むし、ホテルでももちろん読みます。が、一番楽しみにしていたのは、カナディアンロッキー観光の中心地バンフで、雄大な山々に囲まれて、ポットに入れたコーヒーを飲みながら、公園のベンチで読書すること。せっかくの景色を見もしないで本を読むって、理解できませんか?でも、私にとっては2度とないであろう、最高のぜいたくです。幸い一週間のほとんどをバンフで過ごす旅程です。本を読む時間はじゅうぶん取れそうです。そして、飛行機を三つ乗り換え、バスに揺られ、到着したバンフは、雄大な山々、美しい川、広々とした公園、本を読むのにちょうどよさそうなベンチも随所に置かれ、夢のような読書環境です。しかし、私はホテル以外の場所で、全然本が読めませんでした。9月のはじめというのに、バンフは大雪で、ベンチは半ば埋もれていたんです。雪をかぶった山々はほんとうに美しく、雪道を歩いていると、エルクという鹿の家族が目の前を横切っていくというラッキーに出会いました。これはこれでとても楽しい経験でしたが、本が読めなかったことは残念でした。とはいえ、持って行った5冊のうち3冊は読了して、バンフのホテルで捨ててきましたが。この次の旅行でどこに行くのかは、まだわかりませんが、きっとこの次も文庫本をいっぱい持っていこう。できれば、乗り物の中でもたくさん読めるよう、遠いところがいいなあ・・・次の旅行の読書をたのしみにするぱぐらなのでした。
2014.10.07
コメント(5)
霊現象とか、超常現象とか、興味はおありでしょうか?霊能力はなくても、そんな写真を見るのは好きとか、そんな本を好んで読む、って人は多いことでしょう。かく言うぱぐらも、実はテレビで心霊写真が出てくると、四つん這いでそばまで行って、テレビにかじりついて見るほど、好きでした。好きでした…と過去形で言うのは、この頃テレビであまりしなくなったでしょ。自分でインターネットや書店で探してみるほどの興味はないので、見なくなったんです。パソコンやスマホで、いつだって検索して見ることはできるけど、ま、そこまでヒマじゃないわって感じです。ムダばなしが長いですが、今日ご紹介する「あなた」という本は、その心霊のお話なんです。とはいっても、乃南アサさんの長編小説ですから、そんじょそこらの心霊じゃありません。なにしろ、この小説、普通の人が、心霊のしわざを、外から眺めたり観察したり、被害にあったりという話じゃありません。心霊そのものが語る、一人称の小説なんです。人間にとりついた心霊自身が、なんでその人にとりついたか、どうしてこういう行動をとるかってことを、細かく説明してくれます。とりついた心霊と(正確にいうと生霊。最後に正体がわかります)とりつかれた人が主役です。とりつかれた若い男性は、人間としてとんでもないヤツなんだけど、そのうち男として大きく成長していく様が描かれます。すると、心霊もちょっとびっくりしたり、見直したり・・・と書くと、ユーモラスに感じられるかもしれませんけど、かなり深刻で怖い話なんですよ。最終的には解決したようで解決していないので、読み終わっても爽快感はありません。それに、終盤になってから登場してきた人が、とても優しいいい人なのに、ひどい目にあって死んじゃうので、この点もスッキリしませんねえ。好みの分かれる小説だと思いますが、わたしはわき目もふらず読み進めて、一日で読了でした。
2014.10.05
コメント(0)
全4件 (4件中 1-4件目)
1