雪白の月

雪白の月

PR

プロフィール

つぐみ@夜空

つぐみ@夜空

カレンダー

カテゴリ

コメント新着

今時の漫画だけ読んでおれば良いのでは?@ Re:細川智栄子 『 王家の紋章 』…… 「完結しないこと」 にイラつく ファンの皆様の心情をお察しします(09/07) 昭和漫画にイライラするんだったら最初か…
きゅうあしま @ ラストコメントが良い指摘です。 お疲れ様です。 コメントおもしろく拝見し…
きゅうあしま @ ゆうきまさみは超一流のB面としてを開き直っています。 お疲れ様です。 つぐみ@夜空さんは丁寧に…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

フリーページ

2018年07月24日
XML
カテゴリ: 漫画・アニメ

『凪のお暇』 コナリミサト( 2017 年~)

電子書籍にて、既刊 4 巻中、 3 巻まで読了。

1 巻を無料期間に読んで、かなり迷った挙げ句、キャンペーンに負けて 3 巻まで購入して読んだ。

先が気にならないわけではないのだが、正直、この先、定価で買うほどのものか、読み続けるべきものなのか、その判断にすら迷っている状況だ。

何かの漫画賞を受賞したらしく、 Amazon の評価も概ね好意的。 しかし、その評価のアベレージの高さには、逆に違和感を覚えた。

と言うのも、レビューの中には低評価のものも少しはあるが、殆どが特定キャラクターの性格などに対する不満で、絵柄や作画への批判が余り見られなかったのだ。

話題性の高い漫画賞を受賞したとなると、やたら作画にこだわるレビュアーが湧いて出てくるのが常。 私的には、この作者の作画は独特のセンスがあって悪くないとは思うが、ハッキリ言って、 『重版出来』 以上に、格好の標的になりそうなタイプ(一部のオタクが求めて止まない美麗さや細密さに欠けたもの)のように見えたのだ。

で、よくよく調べてみたら、受賞したというのは 「 anan マンガ大賞」 ということで、やっと納得した。

いや、決して、 anan の編集や読者のセンスをバカにするわけではない。 実際、過去の受賞作には、 『大奥』 (よしながふみ)や 『高台家の人々』 (森本梢子)など、私の大好きな作品もかなり含まれている。

だが、「 anan マンガ大賞は、「イケメンが出てくること」「ラブストーリーであること」などを審査基準に、編集部のマンガ好きが選考するマンガ賞 」 とされていることからも分かる通り、かなり、読者対象を絞った(アラサー以下の独身女性)作品が選ばれることは確かだろう。

読むのが遅い私でも、この作品は、一冊 30 分もかからず読めてしまったので、ふだん漫画を余り読まない層にも読みやすい作風なのだと思う。

私は中高生向けのベタな少女漫画でも、「良いものは良い」と評価してきたつもりだ。

この作品も、決して面白くないわけではないし、キャラクターに共感したり同情するシーンも多々あるのだが、多分、 anan の読者層にウケるというだけあって、アラサーヒロインの生態が妙に生々しく、 3 巻一気に読むうち、なんだか「どうでもいい相手の愚痴やモテ自慢を 延々聞かされるような胸焼けがしてきた」…というのが本音だ。

空気を読み過ぎて言いたいことを言えず、他人に従い、合わせてばかりいたら、損を食って、裏切られて、傷付けられてプッツン…、仕事も男も断捨離して失業生活。…というのが出だしの大まかなストーリー。

まず、このヒロインに自分を重ねて共感する若い女性読者がやたら多そうで、そういう読者らに おもねる展開引っくるめて、私はちょっと うすら寒く感じる。

言いたいことを我慢して、余計な仕事まで引き受けてしまう女性は、現実にも少なくないだろうが、このヒロインは、さも、自分自身の性格の問題だとエクスキューズしながら、同僚女性たちのレベルの低さや底意地の悪さを、執念深い視線で一つ一つクローズアップし、なんだかんだ言って結局、 「仕事は有能、家事も一級なのに、周りに無神経なバカが多くて正当に評価されない、可哀想な私」 という被害者意識に凝り固まっている。

まるで、太宰治が『人間失格』で、「主人公はダメ人間」と最初に断った上で、周囲の人間への恨みつらみを挙げつらったのに似た手法で、「自分(ヒロイン)が一番悪いけど」と前置きすれば、他人を いくら悪し様に言っても許される …という作者の計算を感じてしまう。

そんな自分を変えたくて断捨離したまでは立派だが、多少、意見を言えるようになったからと言って、ズルズルと他人に振り回され、何でも他人のせいにしたい性格は、そう簡単には変わらない。

女性の間では存在感の薄いヒロインが、男にはやたらモテるという設定も、本来なら「少女漫画のお約束展開」として大目にみたいところだが、このヒロインのようなタイプは、現実にも さもいそうで、やはり生々しい。

ヒロインに付きまとうモラハラの元カレを批判し、「モラハラは治らない」と断じるレビュアーが複数いたが、その発言をそのまま返したくなる。 「ヒロインの性格も恐らく、根本的には治らないであろう」と。

逆に、彼女が大きく変わったら、これ以上なく嘘くさい。 ヒロインは既に「自分の浅ましさ」を自覚し、「自覚できる自分」に酔ってすらいる。 仕事も家事能力も高く、男からはモテモテ …ときて、もはや、どこが可哀想なのかもよく分からない。

そう考えると、これ以上お金払って読んでも、どうなのかな? と思ってしまうのだ(売れて、連載が無駄に長期化していそうなのも懸念材料)。

正直、何度も眺めたくなるほどの絵柄でもなし、あらすじと結末さえ分かれば良いような気もしている。


よしながふみ 『 大奥 』…… 閉ざされた世界の 「種馬」 の悲哀

東村アキコ 『 かくかくしかじか 』…… 確かな 「デッサン力」 があるから、雑の中に味がある

岩本ナオ 『 町でうわさの天狗の子 』…… 「普通の子」 みたいな 「天狗の子」

藤村真理 『 きょうは会社休みます。 』…… 「純情」 を維持することの希少さ

池谷理香子 『 シックス ハーフ 』…… ありきたりな設定でも展開が読めない恋愛漫画

森本梢子 『 高台家の人々 』…… テレパスできるからこそ、ままならない恋

きら 『 パティスリー MON 』…… 淡白でじれったい 「社会人の恋愛」 に好感

東村アキコ 『 東京タラレバ娘 』 …… 「絶望的にありきたり」 な設定を、ギャグやテンポでカバー

海野つなみ 『 逃げるは恥だが役に立つ 』…… 結婚制度や現代社会の問題点を考えつつ ラブストーリーも楽しめる

中原アヤ 『 ダメな私に恋してください 』…… あり得ないストーリーだからこそ、人物設定にはリアリティが欲しい

水城せとな 『 脳内ポイズンベリー 』…… 苦い記憶や加齢の不安で退行する 30女の精神世界

金田一蓮十郎 『 ライアー×ライアー 』…… 「欠陥人間による グズグズな恋愛」 と割り切って読もう

池谷理香子 『 ハコイリのムスメ 』…… 意外に常識的なメインキャラたちが 嘘くささを払拭

御手洗直子 『 31歳 BLマンガ家が婚活するとこうなる 』…… 読み手の状況によって、評価が180度変わる

志村貴子 『 こいいじ 』、 『 娘の家出 』 ・・・ 身近な恋愛模様を見せつけられているような心地悪さ

松田奈緒子 『 重版出来! 』 ・・・ いかに嘘や夢を織り交ぜるかが 職業漫画の肝

芦原妃名子 『 Bread & Butter 』 ・・・ 中年に差し掛かった男女の、恋愛や結婚の現実 

ジョージ朝倉 『 溺れるナイフ 』 ・・・ 現実と幻想 入り混じる作画表現に 感心





凪のお暇 1 (秋田レディースコミックスDX) [ コナリミサト ]



凪のお暇 1【電子書籍】[ コナリミサト ]





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018年10月04日 23時22分28秒
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: