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明けましておめでとうございます
ことしも宜しくお願いいたします
皆様の健康とお幸せをお祈りし
世界の平和を祈念して
心温まる物語を下に置かせてもらいます
1930年の春のこと
イギリスの片田舎の用済みの灯台に
変わった絵描きが、ひとり住んでいました
フィリップと言う名前のその男は
片手が不自由で背むしで髭を生やしていました
時々必需品を求めて村に来る他は
ひとりで暮らしていました
彼は生きもの全てを愛していました
ある日、赤毛の小さな女の子が
白い大きな鳥を抱えて
灯台のドアを叩きました
彼女フィリシアは村人の話を聞いて
フィリップを気味悪く思っていましたけど
彼が生きものの病気や怪我を治すことも聞いていたので
撃たれて傷ついたガチョウを連れて
フィリップを訪ねたのでした
彼は傷ついて飛べない鳥たちを
囲いに入れて世話をしていましたので
フィリシアの連れてきたガチョウも
引きうけて怪我を治してくれました
フィリップはフィリシアに優しく話しました
撃たれたガチョウは、まだ若い雌で
寒いカナダから冬を過ごす暖かな場所への
旅の途中だったんだよと
彼はガチョウの世話をしました
フリシアは、ガチョウの様子を見るために
灯台を訪ねてきました
迷子のプリンセスと名付けられたガチョウは
暖かな季節になると
傷が癒えカナダへ帰って行きました
プリンセスが飛び去ってからは
フィリシアは灯台を訪ねて来ず
フィリップは海の音を聞ききながら
以前のようにひとりきりで
絵を描いて暮らしていました
冬が近づいたある日のこと
空から高くハッキリと鳥の声を聞こえて
空に1点の影が見えたかと思うと
それは見る見る鳥の形になって
灯台の上を旋回して舞い降りました
迷子のプリンセスでした
フィリップの目には涙が溢れました
それから、プリンセスは毎年
冬にはフィリップのところへ来て
夏には北の故郷へ帰って行きました
1940年、灯台のある片田舎の外では
世の中が変化していました
第二次世界大戦でした
そして、ダンケルクの海岸では
ドイツ軍に追われた連合軍の兵士たちが
進退きわまって
死を待つばかりになっていました
兵士たちを助けようとして
沖には大きな船が停泊していましたが
疲労困憊した兵士たちは船まで泳げず
前は海、後ろはドイツ兵で
逃げ場がありませんでした
このことを聞いたフィリップは
自分の小さな船を漕いで救助に向かいます
彼の頭上には、輪を描いて飛び続ける
迷子のプリンセスが付き添っていました
ドイツ軍の飛行機からは
絶え間なく雨あられと弾丸が降り注ぎ
ダンケルクは燃えていました
炎と煙と迫りくるドイツ兵に追われ
前は広い広い海でした
ダンケルクの連合軍の兵士たちは
もう絶望的でした
その時、小さなボートを操って
フィリップがやってきました
その他の救助のボートも来ました
フィリップは一度に7人ずつ
ボートに乗せて沖の船まで運びました
何度も何度も力の続く限り
彼の船の帆は弾丸の穴だらけ
頑張った末にフィリップは
ボートの底に横たわって死んでいました
ボートの縁には、プリンセスが止まっていました
ボートが沈みはじめたとき
プリンセスは空に舞い上がりました
水に呑まれていく
フィリップのボートと遺骸の上で
さようならを言うかのように
3度旋回したプリンセスは
空の彼方へと飛び去って行きました
今は若い女性に成長したフィリシアは
灯台の上で輪を描いて飛び去るプリンセスを見て
フィリップが亡くなったことを知りました
ダンケルクから生還した兵士たちは
片手の不自由なせむしの男と
男に付き添う白いガチョウに助けられた
不思議な物語を語り継ぎました
愛から愛が生まれますね
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