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湯治旅から帰ってきた。さまざまな想定から行った準備だが、旅を終えて、その準備がどうだったかをお知らせする。◉キャリーバッグカバーカバー購入の経緯は、前回をご覧のほど。700円くらいの安物天気予報では、出立日は雨の予報。朝10時過ぎに家を出る予定だったのだが、前日から激しい雨が続いていた。当日朝、いよいよ出かける準備を始めても、一向に雨がやむ気配がなく、カバーをかけて出るか? と思っていたら、家を出る寸前に奇跡的に雨がやんだ。道路は水たまりができるほどの濡れ方だったが、駅の入り口までは100数十歩なので、再び雨が落ちてくる前に駅へと続く地下道に入ることができた。大阪から列車に乗ると雨。やみ間にはまって助かった。移動中、雨はずっと降り続く。旅先の最寄駅でも雨。小雨だったが、迎えのマイクロバスが来てくれていたので、駅舎から数歩でバスに乗れた。宿に着いたらすぐに本降りとなった。危ないところだった。宿での4泊の間はずっと晴れ。ウォーキングも爽快だった。帰阪する朝。宿を出るときは「間もなく雨」といった空模様で、列車に乗った途端、雨が降り出した。3時間ほどの乗車中、雨はずっと降り続いていて、大阪に入ると、雨脚が強くなった。「どこでカバーをかけようか」と思いつつ、天気予報を確認したら、自宅の最寄駅に到着するあたりで、15分間くらい雨がやむという。最悪の場合、最寄駅でカバーをかける覚悟をして、大阪から地下鉄に乗る。スマホで空模様を確認すると、ちょうど雨がやんだタイミング。地上に出ると、雨は降っていなかった。急ぎ足で自宅へ。自宅へ戻った途端、また雨が降り出した。結局、カバーは使わなかった。購入は不要だったのか。いや、準備していたから雨に見舞われずに済んだ、と思うことにしよう。あ、忘れていた。虫けらは晴れ女だった。それも強烈な。◉携帯スリッパ当然宿には備え付けのスリッパがある。前回の旅で経験したのだが、「茶色、つま先開き、ビニール」のスリッパは、使い古されていて『消毒済み』のカバーなどなく、実に気持ち悪い。昔夫が、地元のクリニックで同様のスリッパから水虫を移されたことがあった。スリッパを履くときは、靴下の着用が必須なのだが、温泉に入った後は、素足で履きたいものだ。で、携帯スリッパを所望。軽くて、かさばらないものを探した。800円くらいの安物これは大正解だった。和室なら、宿の廊下を歩くだけなので我慢して備え付けのスリッパを使うが、洋室だったので、部屋ではこれをずっと履いていた。履き心地がとてもよく、軽くてフワフワだ。虫けらは靴下が苦手。冬でも、できるだけ裸足でいたい。このスリッパのおかげで、とても快適に過ごせた。洗えるようなので、次回の湯治までに洗濯して、また持参したい。◉タオル温泉への行き帰りは、浴衣を着用する。汗取りの役目を担ってもらうのだが、2時間もあれば大方乾く。部屋では、汗が引くまでタンクトップと短パン。首にはフェイスタオル。ベッドに腰掛けるのだが、シーツが濡れないようにミニバスタオルを置く。フェイスタオルを2枚、ミニバスタオルを1枚、タオル研究所のちょっといいフェイスタオルを1枚。前回の湯治では、これで事足りた。使ったタオルをタオル掛けに掛けておくと次に使うときには乾いていた。しかし今回は、完全に乾くことがなかった。よく考えたら、前回はエアコン(暖房)を日に数時間つけていた。そのせいで、よく乾いたのだ。今回は、全くエアコンを使わなかったし、湿度が高かったのかもしれない。宿にコインランドリーがあったが、それを使うほどの量でもないので、次回はもう2枚ほどタオルを増やそう。それと、部屋に浴室がないので、干す場所も用具もない。この対策も考えておく必要があろう。としても、前回で得た教訓通りにタオルを持参して大正解だった。これまでの旅行では、部屋に浴室がついていることがほとんどで、部屋にバスタオルとフェイスタオル、温泉の脱衣所にもバスタオルとフェイスタオルが用意されてあって、使ったらそこで回収されるというシステムだった。1泊旅行なら、下着と簡単な化粧品くらいしか持参しない人間だったので、ここ2回の湯治で、意識が変わった。ま、予算的なことがあって、設備の整ったホテルを選ぶことができないという背景があるのは確か。贅沢は言えないのだ。◉経口補水液虫けらは、「アクアソリタ」という経口補水液を定期購入している。200円/500mlくらい。高い抗がん剤治療中は、肌が異常なほど乾燥するので、できるだけ効率よく水分を摂る必要があると考えたのだが、治療をやめた今でも定期購入を継続している。実は、肝臓関係の数値が上がったことがあり、「脱水」が一つの要因であることがわかったからで、酒は浴びるほど飲んでも、水はさほど飲んでいなかったので、朝の経口補水液習慣を続けているのだ。ところが経口補水液という奴は、とても高価だ。1本ずつ購入するのは、価格的にも物理的(持ち帰りが大変)にも大変なので、Amazonで定期購入して、わずかながら価格を抑えている。前回もこれを持参した。今回は、8本、4kg。なかなかの重さであるが、行きだけの問題だし、アクアソリタの収納スペースは、帰りには、土産物の居場所だ。結果、8本は全て飲み干した。これをコンビニで購入するのは大変。旅先は田舎なので、コンビニまでも相当の距離がある。キャリーバッグならではではあるが、次回も荷物の一つにしよう。◉手土産これまで、毎年海水浴に訪れていた(10年間)、民宿以外、手土産など持参したことはなかった。しかし今回は、少し特別だった。旅先の最寄駅までの迎えの車を依頼したのだが、ひょっとしたら、虫けら一人のために車を出してもらうことになるかもしれなかったのだ。これまでも迎えの車に乗せてもらったことはあったが、他にもたくさんの同乗者がいて、乗合バス的な捉え方ができた。前回の旅で、虫けら以外の客は皆車を使っての来訪だったことを知り、車で旅することも検討したのだが、前回記したとおりの状況で、今回も列車の旅にした。そこで、虫けらだけのために車を出してもらった、という想定で、手土産を用意することにした。多分現地にはないであろう「KALDI」のドリップコーヒーと『ラグノオ ポロショコラ』を購入。どちらもKALDIの人気商品宿のスタッフ全員に、となると、とてもこんな物では足りないが、「送迎のスタッフの方でお茶時間に」という体で運転手さんに渡そうと。宿に到着すると、運転手さんが虫けらのキャリーバッグを車から降ろしてくれた。それを受け取ると同時に紙袋を差し出す。虫「スタッフの方々とお茶の時間にどうぞ」と。運「いいんですか?」と少し躊躇。そこに、年配の女性が挨拶に出てきた。年「よくお越しくださいました」運「これ、お客さんから」年「あらー、よろしいんですか?」大ごとになってしまった。虫「いえ、あ、少しで申し訳ないんですが…」ゴニョゴニョ言いながら玄関に入ってしまった。こういうことも考えて、たくさん用意すればよかった、とも思ったが、初めての宿でそんな大仰なこともおかしかろう。が、このささやかな土産が、割と効いたように思う。土産物を受け取ってくれた年配の女性が、この後も大変親切にしてくれた。コーヒーがおいしかった、という感想もくれた。次回、もしこの宿に訪れることがあれば、数量と内容を熟考しよう。ふむ。※(結果的には、もう一組の同乗があった)こんな、とてもローカルチックな話が他人様の旅行の参考になるとは思わないが、小さなヒントになればと。。ならないか。 無 益
2025.05.31
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「雨が降るかもしれない」ふと、虫けらは考えた。前回の湯治を計画したときには、雨のことなどつゆほども考えなかった。ぬかっておったといえばそうなのだが、季節的に雨にならぬだろうと楽観視していた。しかし今回は、梅雨時が近いこともあるし、この5月は例年より気温が上がらず、寝具の交換をいつもより遅らせたり、初夏の装いから、春先の装いに逆戻りしたりと気を使うことが多かった。そんなこんなで、旅行に際しては気候異常を考慮しなければならないという意識が働いたのだ。今回も、Mサイズのキャリーバッグをゴロゴロしながら行く列車の旅を予定している。雨が降ると、傘を差しての移動となるので、結構厄介である。これまでは、車を使った旅がほとんどだったので、雨であろうが、台風であろうが、荷物や服装にさほど気を使わずに済んだ。そこで、車での旅を考えたりもした。大阪でレンタカーを借りるのは容易なのだが、旅行先で返却できない(レンタカー屋がない)ので、旅行期間中ずっと借りることになる。すると、大層な料金を支払うことになるので、これはNG。湯治のことを話したら、「車、貸してあげるよ」と言ってくださったやさしいお客さんがいたのだが、数日間借りっぱなしになるのは申し訳ない。1日、2日なら厚かましくお借りするが、今回の湯治は4泊を予定しているので、そこまで面の皮を厚くすることはできなかった。というわけで、準備しないといけないのがキャリーバッグの防水カバーだ。それと、靴を防水スプレーで防御するのも忘れてはいけない。すぐさまAmazonで探す。そして、楽天で同じ商品を検索。防水スプレーはAmazon、キャリーバックの防水カバーは楽天。準備万端。あ……、着ていく服がない。そう。この12年間、店に没頭していた余り、外出や旅行に使える衣服がほとんどないのだ(何度かここにも書いているが、つくっている料理の性質上、黒〜ダークな茶色のジャブジャブ洗えるトップスとパンツしか持っていない)。前回の湯治のときは、ジャケットを購入したが、あとはあるもので何とかした。今回は、全くない。この微妙な季節に着る服……。この3月に、Amazonのプライムセールで購入した春〜夏物のスカートが1枚。昨年の秋口に購入した羽織れるタイプのシャツが1枚。インナーは何とでもなる。しかし、4泊する予定だし、日中の外出時にも行き帰りとは違う普段着に近いものが必要だ。それと、食事が部屋食ではない場合、食堂に来ていく服も必要。こちらは部屋着クラスでいいのだが、手持ちのヨレヨレのヤツらでは恥ずかしい。少しきちんとしたものを…。ま、これは、死出の旅のときにも利用できるので、そういうカテゴリーで探そう。ショップから着たメールで、いいな、と思ったパンツを購入しようと思ったら、『6月上旬から順次発送します』だと。間に合わんではないか。暑くなる場合と、気温が上がらない場合を考えないといけない。訪問先は、どんな気候なのか、Yahoo天気予報で見てみる。大阪とは随分違う気候だと確認。ジャケット不要の時期こそ厄介だ。もういい!!あるもので何とかする!しかし…、食堂で着る想定の部屋着のみAmazonでポチッた。あ! あ! あ!頭はどうする!?ヘアバンド作戦だ!行き帰りはウィッグとハンチングでごまかす。風呂上がりは汗取りヘアバンド。食堂では、ちょっとおしゃれなヘアバンド。どうだ!どうだというほどではないが、そうするよりほかない、ということだ。Amazonでポチる。女の旅というのは、本当に厄介だ。「誰も見てへんてぇ」わかっている。しかし、見られていることを意識するのが女なのだ。それを忘れてしまったら、おばはんになってしまう。まだ、おばはんはいやだ。いや、同級生の中には、立派な「おばあちゃん」がいる(孫がいるという意味)。……ふん。かくして、旅に出立する日の朝まで悩みに悩む虫けらなのであった。 不 毛
2025.05.25
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昨年の12/20に受けた抗がん剤治療を最後にずっと治療を休止したまま。というのは嘘で、先月初めの診察のとき、虫「抗がん剤はやめます」怖「もうしない?」虫「はい」というやりとりをもって、治療を終了した。抗がん剤治療を始める前、虫「外科治療は無理として、 ほかの治療法は全くないですか?」怖「はい」虫「放射線も?」怖「(固形がんの)数が多いからねぇ」虫「陽子線や重粒子線も?」怖「(首を横に振る)」つまり、抗がん剤治療以外に選択肢がない、と怖い主治医は言ったのだ。で、最初のやりとり。あとは、がんのやりたいようにやらせるだけ。スッキリした。というのも嘘のような気がする。先月の怖い主治医とのやりとりの翌日、朝9時からどんどん熱が上がり、昼前には39℃を超えた。ようやく36℃台に下がったのは翌日なので、丸一日、熱発に苦しめられた。というのも嘘だ。熱はありながら、夕方には酒を飲んでいたし、熱以外の症状もなかったので、さほど心配をしなかった。体重の減少も1kg程度だったので、病のうちに入らない。きっと、怖い主治医とのやりとりに対して相当のストレスを感じていたのだろう。多分、知恵熱的な熱発だと考えられる。もしかしたら、治療終了の知らせを感じたがんたちが狂喜乱舞したのかもしれない。いずれにしても、抗がん剤の副作用から徐々に逃れつつある昨今である。【残る副作用】抗がん剤治療4ヵ月余り、最後の治療から5ヵ月弱。なお残る副作用を列記する。●手指先の痺れ冷たいものに触れると電気ウナギをつかんだような(知らんけど)ビリビリ感が走っていたが、これはもうない。この症状の原因となる抗がん剤は「オキサリプラチン」だが、いまも指先に残る痺れ(洗濯バサミで指先を挟んでいて外したときのような圧迫感)は「フルオロウラシル」が原因だと思われる。指全体から徐々に指先に痺れの範囲が絞られてきているので、あと数ヶ月で消滅するのではないかと思う。●毛のクルンクルン眉毛とまつ毛のクルンクルンは、ようやく落ち着いた。完全に、ではないが、新しく生える毛はストレートになっているようだ。この原因となったのは、「デカドロン」という吐き気どめ。クルンクルンのほか、これまで発毛が見られなかった場所に毛が生えてきたという現象もあったが、これはまだ継続中。恐ろしや、ホルモン剤。●皮膚治療中は、ひどい肌の荒れようだった。顔は、目の周り、口の周りがカサカサになり、皮膚の質が変わってしまった。首から上半身にかけても、保湿剤が切れると粉を吹くほど乾燥してカサカサだった。原因は、「ベクティビックス」。昨年11月後半からは、お尻やもも裏まで乾燥が広がっていたが、今年2月ごろに、うっすい膜のようなものがふぁっさーと取れて元の肌に戻った。が、肌質が変わってしまい。少しの刺激で痒みや赤みを発症する。化粧品を極力使わないようにし、洗顔料にも気を使う必要がある。刺激に弱くなったということは、フェイシャルエステなんかも無理だろう(一度もやったことがないが)。せいぜい皮膚科に相談して、保湿剤や痒み止めをもらうくらいか。がっかりだ。●頭髪4ヵ月かけて脱毛し、残り2割くらいになった。毎朝、洗面所で「オランウータンの赤ちゃんか!」と叫んでいた。こんな感じ(髪のことね)治療中断直後から発毛し出したのだと思うが、気がついたら(3月終わりくらい)、モンチッチになっていた。例に出すのがかわいすぎ?生えてきた髪がなかなかのクセのある奴らで、5ヵ月経った今では、パンチパーマが伸びて緩んだ感じになっている。つまり、変なウェーブのあるオールバックなのだ。おっさんのそれである。クセもさることながら、前髪がまだ短いので、人様にお見せするわけにはいかず、ウィッグを使っているのだが、もう暑くて……。冬の間はウィッグとハンチングの組み合わせだったが、それでは暑いので、昨日の外出時はウィッグなしでキャップを被った。キャップなら、深く被れば前髪がなくても無問題。ちゃんとしたお出かけでなければ、キャップにしようと思う。先日久しぶりにカットサロンに行き、髪型を整えてもらったが、施術してくれたオーナーにオ「なかなか剛毛になってますね」虫「これまでになかったクセが…」オ「もう少し伸びないとわかりませんが、 これは…」と言葉を濁された。厄介である。実は、「副作用」と断定できないような体の変化も幾つかある。人生初体験のことがあったりすると、自身の体の変化を恐ろしく感じたりする。治療前の体調のよさを思い出すと、悔しい気持ちが押し寄せてくるのだ。いたし方ない。これも人生。もっとつらい思いをしている人もいる。嘘を言うな。人と比べたことなどない。これまでの人生を悔いる気持ちもない。治療を後悔することもない。いま、大変幸せである。落ちていた味覚もようやく許せるまでに回復したし、冷たいもので口中や喉が痺れていたのも治り、冷たい酒が存分に飲めるし、皮膚の違和感で夜中に目覚めていた日々も終焉し、睡眠も十分取れているように思う。何より、倦怠感や生活のしづらさが全くない。これは、治療中もそうだったが、薬剤師や怖い主治医にいつも訝しがられていた。入浴の後のビールがおいしい季節になった。夜、好きな人から連絡があったら、ウキウキなのである。……嘘ばかりのブログはこれにて終わり。 空 虚
2025.05.19
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3泊の湯治旅を終え、帰阪する朝。宿でチェックアウトしたものの、最寄駅から鳥取駅までの在来線の所要時間と、鳥取駅で乗車予定(特急券は購入済み)の「スパーはくと」の乗り継ぎ時間に差があり過ぎて、どこで時間を潰すか、フロントでしばし思考。が、ここでそうしていると、宿の迷惑になるだろうと、重い腰を上げて宿を後にする。キャリーバッグをゴロゴロしながらゆっくり駅に向かうが、どう努力しても、5分以内に到着する。復路では、往路で起こった乗車料金事件をどこかで解決する必要があったので、乗車駅を証明するため1区間の乗車券のみを購入する。すると、そのタイミングで列車がホームに滑り込んできた。とりあえず乗ろう。予定の『スーパーはくと』に乗車するために乗らないといけない最終の時刻は分かっている。それよりも1時間ほど手前だが、こんな無人駅で列車を待っていてもらちがあかない。とりあえず鳥取駅まで行こう。と、急いで乗車券を購入。ホームに停車中の列車に乗った。始発駅ではないはずだが、随分長い間ホームに停車している。単線区間があるための列車待ち合わせか。スマホで音楽を聴いていたのだが、YouTubeで朝の番組でも観るか、とチャンネルを探してタップする。が、一向に番組が始まらず、クルクルサインが出る。虫けらが使っているポケットWi-Fiの問題かと、「設定」からWi-Fiの状態を確認。虫けらが使っている機種(宣伝ではありません)虫けらのWi-Fiの名称がちゃんと表示されているし、接続状態になっている。ふと、その下を見ると…認識されたWi-Fiを表示する欄に『腹筋背筋三角筋』という名称が…。面白い命名をする人がいるものだと思っていると、間もなく発車との車内放送。すると、ホームであちこちを撮影していた、20代と思しき男性が急いで乗り込んできた。「あ、この人だな」と直感した。『腹筋背筋三角筋』の主だ。以後、各停の在来線の列車が停まるごとにホームに降り立ち、写真を撮ったり(古い言い方か。スマホで撮影していた)、駅舎(無人)に入ったりしながら、発車時に即座に列車に戻る、を繰り返していた。虫けらは鳥取駅で降りたが、鉄オタと見える『腹筋背筋三角筋』くんはそのまま各停列車に乗って去っていった。虫けらは鳥取駅で往路の乗車料金の処理などに奮闘した後、定刻どおりにやってきた『スーパーはくと』に乗車した。この列車は特急ながら、私鉄各線や新幹線では実現しているフリーWi-Fiや、電源を設置した座席といったいまや当たり前となった装備を全く無視した、旧来型の車両であることは、想像に難くないと思う。虫けらは引き続き自分のポケットWi-Fiを使用していたのだが、山間部を走行することの多いこの列車では、ポケットWi-Fiが電波を受信できないこともしばしば。YouTubeを観ることは早々に諦めたが、ほかのアプリを使っているときも、プツンと通信が切れてしまうことがあり、そのたびにスマホの設定から、Wi-Fiの接続状況を確認することを余儀なくされた。幾つ目かの停車駅に着いたとき、また通信が切れた。設定を開いたとき、『腹筋背筋三角筋』が表示されたえ??在来線で一緒だったあの鉄オタではなかったのか?余り意味がないと思いつつ、座席周辺を見回した。在来線に乗っていた人の顔を覚えていない。鉄オタの彼を除いて。彼は各停列車に乗って去っていったのだ。あ!!! いた!列車の中ではなく、ホームに!あの鉄オタが、ホームをウロウロしていた。虫けらが鳥取駅で過ごした1時間、彼は各停に乗って例の行動をしつつ、ここまでやってきていたのだ。結構大きな駅だったので(有人だった)、ここでも列車の待ち合わせをするのだろう。かなりの時間(10分程度)停車した。彼は、思う存分撮影し、景色を眺め、虫けらの目の前で駅舎の中に消え、2度とホームに戻ってくることはなかった。最終目的は、入構する『スーパーはくと』を撮影するためだったのかもしれない。「さようなら、『腹筋背筋三角筋』くん」別に言葉を交わした訳ではない。『腹筋背筋三角筋』くんは、こちらのことは全く知らない。虫けらも、ポケットWi-Fiの持ち主が彼であろうという状況を認知しているだけなのだが、なぜか少し寂しい気持ちになった。鉄道というものにこの上ない魅力を感じ、各停での長旅を厭わず、無心に写真を撮ってワクワクしながら日々を過ごしている鉄オタの気持ちは全く理解できないのだが、そういう若者が結構たくさんいることも、そういう生活をしていることも認識できている。そして、そういうこだわりの趣味を持つ彼が、ポケットWi-Fiに『腹筋背筋三角筋』という名称をつけているという意味も、なんとなく理解できるような気がして、変に身近に感じたのだろう。田舎の、大した泉質でもない温泉で3泊の湯治をし、大したことのない時間を過ごした虫けらにとって、『腹筋背筋三角筋』の彼との出会いは、最も刺激的な事件だったかもしれない。ということにしておこう。また、湯治旅行を計画している。さて、今度はどんな事件に遭遇するのだろう。 譫 妄
2025.05.04
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