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アクセス記録を見ていたら、昨年に書いたブログが読まれていて、何を書いたのかと読みに行ったら、怖い主治医が少し登場していた。そう。怖い主治医と出会ったときから「運命」という感覚を持っていた。そのときも、もちろんいまでも、その根拠はわかっていない。今回の入院で、怖い主治医が虫けらの病室を訪ねてくれたのは5回だった。そう聞くと、「えー、そんなに何度も?」と思われるかもしれない。が、それぞれに理由があって、1回目〜手術翌日。 この日は怖い主治医が休暇に入る前日で、 術後の様子見と、今回の入院日と重なったために延期した CVポート手術日のリスケの打ち合わせだった。2回目〜朝:手術日の日程調整前の打診と仮決定。3回目〜夕:手術日の決定。 昼間に怖い主治医と整形の担当医が手術室で会い、 虫けらの入院日程を聞いたり、朝に仮決定した 手術日に実施可能かを打ち合わせたらしい。4回目〜手術前日。同意書の取り付けと打ち合わせ。5回目〜手術後(怖い主治医の診察時間後)。 傷口のチェックと虫けらへの慰労。無理も無駄もない。怖い主治医はそういう人なのだ。しかし、3回目の病室訪問の帰り際だったか、怖「ここに来るのが楽しみなんや」と言いながら、部屋を出て行った。どんな理由かは言わなかったが、虫けらの部屋に来るのが嫌ではなかったようだ。虫けらも怖い主治医も、余り自分の話はしないのだが、ふと見た怖い主治医の手と虫けらの手に共通項があったので、虫「体質が似てるのかもしれませんね」怖「そうやな」虫「私、先生とは、前世でも何かの関係があったんじゃないかと 思っていました」怖「え?」虫「きょうだい(姉弟)だったのかも」怖「きょうだい? ちゃうやろ」虫「年齢的には私が姉ですけど、先生の方が上だった ように思います」怖「そうやろな」「そうやろな」の意味はわからないが、怖い主治医も「そんな気がしている、しかし、兄弟ではなく、違う関係だろう」ということかもしれない。前回の入院時に、優しく抱き締めてくれたという話を書いた。そのひと月後の外来診察のとき、怖「僕、9月で退職するんや」と聞かされ、虫けらはいつになく動揺した。その話になったとき、虫「あの日、自宅に帰って呆然としました」と、多分悲しそうな顔をして虫けらが言った。すると怖い主治医が大変申し訳なさそうな顔をした。そんな顔を見たのは初めてだった。いつもポーカーフェイスで、感情を表情に出さない人だし、声も冷静そのもので、口調もトーンも変えない(何度か、イラついたり、怒ったりしているような声を聞いたことはある。が、それは、虫けらがそう仕向けたとも言える。そのときとて、表情は変わらなかった)怖「ほんとは、あのとき(前回の入院時)それを言いに行ったんや。 でも、言えんかった」そう言ったときの怖い主治医の表情は、生涯忘れられないだろう。本当に気の毒そうに、憐れむように言い、哀れみの表情を浮かべる。なぜ言えなかったのか。それを言ったら虫けらが悲しむだろうと推察したからにほかならない。その気持ちが「優しく抱き締める」という行動につながったのだと理解できた。しかし、なぜ虫けらが悲しむと思ったのか、ということは聞けなかった。ところが後に、何かの会話の中で、虫けらの気持ちの話になった。怖「(怖い主治医は虫けらに)嫌われてはいないやろうと思ってた」と言った。これは微妙な言い回しだ。人間の評価は、嫌いか、好きかの判断だけではない。大抵は、ほとんどの人に対して、どちらの感情も持っていない。多分、怖い主治医は虫けらが怖い主治医のことを好きだと思っていると感じていたのだろう。どこでそう思ったのかは謎だ。怖「さーけど、あなたはそういうことは言わん人やと 思った」これは、ふた通りの意味がある。⚫︎「そういうことは言わん人」だから、 そう言わなかった。⚫︎「そういうことは言わん人」なのに、 好きと言った。ということだ。もしかしたら、怖い主治医は虫けらが怖い主治医が好きだと言ったと思ったのか。虫けらは言っていない。「好き」ではないからだ。そんな単純な言葉で表現できる気持ちではないと「怖い主治医と虫けら」に書いた。感情のみを表す短絡的な言葉に込められるような簡単な思いではないのだ。決して「好き」などとは口に出していない。しかし、虫けらの何らかの言動によって、怖い主治医はそう思った(解釈した)のかもしれない。虫けら自身も最近まで、自分の気持ちが理解できていなかった。今回の入院以前に、中途半端な言動をしていたやもしれぬ。もしそうならば、大変申し訳ない。虫けらの性格についても、怖い主治医が分析してくれた。⚫︎大変真面目な人⚫︎男女のややこしいことと対極にある人⚫︎人に寄りかからない強い人⚫︎達観している人実に的を射ている。虫けらの実像と寸分違(たが)わない。よくも正確に見抜いてくれたものだと思う。やはり、運命の人だったのかもしれない(こらこら)。いや、冗談はさておき、怖い主治医は、長年臨床をやっているだけに人を見る目はすごいのかもしれない。聡明で、感性も経験も豊かな人だから、患者の性格や特性を見抜いてしまう。対して、虫けらの怖い主治医に対する理解は中途半端だ。半分以上は妄想だし、勝手につくりあげた人物像を都合のいいように理解しているだけだ。それでよかったのだ。自分の最期を看取ってくれる人が生々しい人間である必要はないのだから。常に虫けらはそういう認識で怖い主治医に接してきた。怖い主治医は虫けらの本質を見抜いていた。齟齬が起こってしかるべきである。怖い主治医が病室を訪ねてくれた間に交わした会話は大した量ではないが、何度も齟齬があるな、と感じた。それは、昨年⑥くらいまで書いたと思う「怖い主治医の謎の言葉の言葉の答え合わせ」でもわかるとおり、怖い主治医と虫けらの根本的な認識の違いが「謎」と「齟齬」を生み、ズレた理解の上に次の事実を重ねるから、余計に互いを理解困難な人間にしていたのかもしれない。しかし、虫けらにとって、怖い主治医の誤解は別に修正するべきものではないと考えた。間もなく虫けらの前から消える人である。怖い主治医にとっていいか悪いかはわからないが(もしかしたら、きちんと修正した方がよかったかもしれない。誤解が怖い主治医を苦しめたり、悩ませたりするものだったら申し訳ない。が、いまとなっては後の祭りである)、その誤解を認識したまま接し続けた。結果、それはそれでよかった。虫けらにとっては。大変優しくしてもらったし、怖い主治医の本当の姿が少しだけ見られらように思う。怖い主治医の言葉遣いも、友達にするそれのようにやわらかく、親しみのこもった、心地いいものだった。虫けらを見つめる視線や表情も、外来の診察室では見たことのない、とても優しくて温かいものだった。もしかしたら、ペットや小さな子供に対する慈しみの表情と同じかもしれないと思った。しかも、また抱き締めてもらった。大きく、深く。その気持ちよさは、最初のときと変わりなかった。これらを思い出しながら、一人ぼっちで死んでいこう。怖い主治医と会うことはもうない。怖い主治医の勤務最終日に虫けらは病院に行った。リハビリの指定日だったからだ。待合室にいるとき、怖い主治医の呼び込みのアナウンスを聞いた。あれが最後の怖い主治医との接点だった。あっけない別れの瞬間だったが、いつも人との別れはそんなものだった。長い人生で経験した、多くの別れの一つとなった。怖い主治医に対して虫けらが抱いていた感情を「好き」以外のものだったと理解してもらうべく、最後に部屋を訪ねてくれたとき、虫「先生には、最期を看取ってもらえると思っていました。 その心算(こころづもり)がかなわないから、 悲しんだんです」と伝えた。これで、少しは修正できたのではないかと思っている。運命だと思ったが、そうではなかった。もし、本当に運命だったのなら、再会のときが訪れるかもしれない。……ないない。怖い主治医のことを考えるとき、「ないない」と思ったことは、本当になかった。だから、「ないない」だろう。 臨 終
2025.09.28
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2014年からiPhoneを使っている。仕事柄、長年Macを使っているので、データのバックアップややり取りが楽だろうという理由。iPhone5を皮切りに、iPhone6、iPhone8と移行し、本業(元業)を休止してほぼ飲食業に専念し出したので新機能やカメラ性能にもこだわる必要がなくなったため、5年近く使って去年5月にiPhone13に機種変した。iPhone13は1年3ヵ月しか使っていなかったのに、入院中の8月に不調に見舞われた。YouTube視聴中、他の用事をしている間に電源が落ちた。しばらくして電源を入れようとしたら、全く電源が入らない。本体が熱くなっていることに気づく。これまでも、充電中に本体が熱くなり、画面を見ると、「充電を中断している」との表示。温度が下がったら、再開するというのだ。これが、バッテリーの問題か、本体に問題があるのかよく理解していなかった。バッテリーの問題なら、バッテリー交換で済む。ということで、修理専門ショップに持ち込む。バッテリーではなく、基板の問題だと告げられる。基板からデータを取り出し、基板を入れ替えれば、元に戻るとのこと。再び修理を依頼するが、修理期間は4週間ほど必要とか。3週間ほど経って、経過報告を求める。すると、基板は基板でも、電源系統の基板で、これは交換不可。が、データの取り出しと、新しい本体への移行が可能という連絡。つまり、iPhone13の復旧はかなわないということ。しかし、データが取り出せるなら、新しい本体を用意すれば、そこに移してやると。仕方ない。新しいiPhoneを購入する。iPhone14でも15でもよかったのだが、もう販売していない。iPhone16を購入する。しかし、iPhone13を廃棄してしまうのは忍びない。復旧の方法を考える。電源系統の基板を交換してくれる業者を見つけた。データの吸い出しと移行が必要なければ、さほど費用はかからないようだ。これができれば、iPhone13はサブ機として利用できる。今回のことで、サブ機の重要性が骨身に沁みた。できるだけメイン機に近い環境を保てば、故障時に今回ほど困ることはないだろう。それと、いつも使っているMacBook Airの買い替えも検討する必要がありそうだ。もう10年前のモデルなので、アプリのアップデートが追いつかないものがある。iPhoneと同期しておきたいデータがあっても、アプリのバージョンが違っていてどうにもならないことがある。夫が使っていたMacBook Airの方が新しいのだが、キーボードが海外仕様で使いづらい。贅沢は言ってられないので、そちらで何とかするか…。というように、スマホが壊れると、大変なことになる。費用をざっくり出してみるとiPhone13 100,000円修理1(調査費) 4,000円修理2(データ取出しと移行) 40,000円iPhone15 120,000円修理3(13復旧) 30,000円iPhone15備品 3,000円というところか。1年ちょっとでこれである。アップルの保証はないものか。1年以内ならあるのかもしれないが、ちょっとでも超えていれば難しいだろう。今回のことがあって、過去の修理履歴を調べてみた。iPhone5で2回(バッテリー交換)iPhone6で2回(バッテリー交換)iPhone8で1回(バッテリー交換)だった。バッテリーが膨張して交換したのは2回。あとは、消耗が激しくなったからというのと、もうバッテリー残量があるのに電源が落ちるというもの。いずれもバッテリーの問題だったので、今回もそうだと思っていた。が、本体とは。。最近の機種は、機能も性能も進化しているので、消費電力量も高いのだろう。しかし、それに見合った部品(性能)に進化できていないということか。アップル製品はデザイン性が高く、製品としての信頼性も高いと思われてきた。しかし、最近ではそうでもないように思う。中核の内部部品を日本製品から中国製品に変更してから、これが顕著になってきたという声がある。今回の故障を経験して、アップル神話はすでに崩壊しているのだろうと実感した。しかも、年末にはスマホ新法という日本政府のアホさが爆発している法律が施行される。EUが先導しているのだが、何も日本がこれに乗ることはない。この法律は、表向きは独占禁止法的要素があり、消費者がスマホを手に入れやすくするためというお題目があるが、裏では、アンドロイドの脆弱性をうやむやにするような、アップルの強さを破壊するような法律になっている。業界団体の陳情があったのだろう。金に弱い自由主義国家の政府が陥りやすい罠だ。いずれにしても、スマホ業界ではiPhoneが圧倒的優位だった時代が終わりを告げようとしているのではないか。アップルも、その時代の潮流に抗うことをやめてしまい、利益優先の経営戦略に走っている、というふうに思えて仕方ない。スティーブ・ジョブズが生きていてくれたら、と思わずにはいられないが、生きていたとて、この混沌の中ではどうにもできなかったのかもしれない。「混沌」の原因を考えなければならない。「グローバリズム」というものは、庶民には何ら利益をもたらさないということを強く自覚する必要があるのである。いま目覚めないと、日本は日本ではなくなる。もう遅いのかもしれないが。 混 沌
2025.09.23
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手術のために入院したことと、入院が短期間で済む(当初予定)ことがあり、今回の入院は個室を取った。大部屋(4人部屋)なら病室自体に料金がかからない。大部屋に入院したこともあるが、結構神経を使う。虫けらの父親は、十分成長したGを素手で掴み、潰すことができる大変サバイバルな人だったが、入院して大部屋に入ったとき、とても些細なことに神経を使う繊細な人間だったと知って驚いた。父「隣のジジイ、ゴロゴロうがいしたお茶を ゴックンしよるんや。気持ち悪い」こんなことを理由に、父「個室に移る!」と言い出した。勘弁してほしい、と思ったが、20年ほど前の話だったからか、田舎の県立病院だったからか、5,000円/日と安価だった。30日の入院だったので、15万円だったが、これは虫けらが負担した。父のつまらぬわがままのために、えらい出費になった。とはいえ、父は開腹手術をしたし、10日もの間、たくさんのカテーテルに繋がれていたためトイレにも行けなかったので、同室の人の迷惑を考えると、個室にしてよかったと、いまになって思う。今回の虫けらの手術は左脚にメスを入れる。1週間は固定装具で膝を固定するので、歩行時は車椅子が必須である。大部屋にも部屋の前にトイレがついているが、4人で一つのトイレ利用するので、車椅子で、しかも時間をかけての利用となると、少なからず他の同室者に迷惑をかけるし、車椅子で移動する自分にとっても負担になる。特に、痛みがひどい術後3日間は、動くのにも苦痛が伴うだろう。かといって、「最初の3日間だけ個室にして、あとは大部屋で」といった、フレキシブルな利用をしたくても、病院側の病床の都合がある。当初は、「1週間の入院」という話だったので、思い切って個室を取ることにしたのだ。料金は、15,000円/日。税込で16,500円である。これってどうだろう。インバウンドで旅行業界がおかしくなる前、大阪でビジネルホテルに宿泊しようとしたら、7,000〜9,000円くらいだったのではないだろうか。病室はビジネスホテルの部屋より広い。車椅子やストレッチャーが入れるドアと廊下の幅が必要だし、医療器具が入るスペースを取っておかねばならない。しかし、ベッドより奥には車椅子では入れないし、見舞客が来なければ、ソファセットも不要である。もっとコンパクトでもいいのだ。病室に置かれている家電製品は、テレビと小さな冷蔵庫だけである。湯沸かしポットやドライヤーはない。電灯は21時には強制的に消されてしまうし、テレビも基本的に21時までの視聴とされている。備品はない。あるのはゴミ箱のみ(大部屋なら、ゴミ箱すらない)。ビジネスホテルなら、バスルームにボディソープ、シャンプー・コンディショナー、歯磨きセット、アメニティーがあるし、バスタオルとフェイスタオルがある。場合によっては、バスローブや浴衣などもあろう。テッシュも使いたい放題だし、煎茶、コーヒー、飲み水などの無料サービスもある。病室のサニタリールームはというと、バスタブなしのシャワースペースのみ。洗面台は前時代的な小さなボウルで、顔が洗いにくい。ビジネスホテルよりすぐれている設備があるとすれば、頑丈な手すりくらいだろう。ビジホより狭いくらいのサニタリールーム毎朝、清掃に入ってくれるのだが、土日は来ない。シーツの交換も週に1回のみ。ゴミの回収も、ある程度溜まってから。ビジネスホテルなら、毎日、である。これで、16,500円とは、高くないだろうか。そんな価格の部屋があってもいいだろう。しかし、6,000円程度の部屋も用意しておいてほしい。若干狭くても、薄汚れていても構わない。病気やケガでそれどころではないだろうから。が、浮き世離れした医療の世界では、これが通用しない。需要があるから供給がある、といえばそれまでだが、入院するときは大抵緊急だし、個室料金が高いからといって、他の病院を探すとか、価格交渉をするといったシステムも余裕もない。しようがない(足元を見られている)のだ。1週間程度だと思っていた入院だったが、手術早々10日ほどになりそうだと判断し、胸のポート撤去の手術があったので、2週間を超えた。……大変な出費になった。最期は、緩和病棟に行くことになろう。ここでの費用だけは置いておねばならぬ。さて、あとどれくらいの命だろうか。懐と命の計算合わせが始まった。かくも悲しき貧乏人なり。 悲 哀
2025.09.21
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虫けらは、23年6月に人生初の手術を受けた。下行結腸を27cmも切除するというもの。近くにあるリンパ節も2つ取ったと後に怖い主治医から聞かされた。開腹手術ではなく、腹腔鏡手術であったのは幸いだが、結局は下腹に7〜8cmの幅でメスを入れているので、その部位の痛さは大概のものだった。手術前に脊髄近くに入れた硬膜外麻酔が効いている間は「イタタ」と言いながらも動けたのだが、4日後に麻酔のカテーテルを抜いた後は、動くことが難しいほど痛んだ。尿バッグは手術の翌日朝に抜けたのだが、点滴、硬膜外麻酔、心電計のケーブル、そして、体液や血液を外に出すためのドレーンと回収バッグが体についていたので、トイレに行くのが大変だった。虫けらは術後すぐに下痢に見舞われたので、手術翌日は30回/日トイレに行った。催したらすぐに、点滴スタンドに硬膜外麻酔とドレンの回収バッグを吊り下げ、トイレに急ぐ。大変な労力だった。何より、同室の方々にとっては大変迷惑だったろう。申し訳ない。しかも、消化器系の手術をすると、術後は3日間絶食、食事は重湯からという過酷なものである。このせいで、虫けらは4kg以上痩せた。もともと余力のない(脂肪が少ない)人間なので、絶食するとすぐに痩せる。一度痩せたら、なかなか戻せない。退院後も大変苦労した。怖「整形はええなぁ」今回(整形外科)の手術の翌日、既に手術着から自前のパジャマに着替え、心電計や点滴などが取れて通常の状態に戻っている虫けらを見て、怖い主治医が言った。怖「盲腸の手術でも、大変やもんなぁ」虫けらも、2年前の自身のことを思い出して、虫「そうですね」と答えたが、整形の手術は痛みとの戦いである。術後、施されたという神経ブロックはまだ十分に解けておらず、左脚の感覚は戻っていない。つま先を動かすも、意思どおりではなく、パコパコと大きく動く。しかし、痛みはある。かかとが痛い。膝から下がざっくり痛い。実際の痛みか、意識下の思い込みによるものかはわからないが、手で脚を持って動かしても、寝ていても、ずっと痛かった。本当の痛みは、神経ブロックが切れた後、思い知ることになるのだが。しかし、食事は術後すぐにできた。9時に手術室に行き、13時に病室に戻った。18時前の食事は普通食で、フルーツを残して平らげた。翌朝のパン食も完食した。食事をしないことには、元気が出ない。手術で消耗した体力やストレスは、栄養がないとどうにも回復しない。消化器系の病気とはここが違う。しかし、体を切り刻むというのは、大変な痛みとストレスを伴う。高齢者になると、痛みに対して鈍感になるし、自分でどうにかしたい、などと抗わないので、気が楽かもしれないが、虫けらは平常の自分とのギャップに苦しんだ。何でも一人でやることが当たり前の虫けらならではのストレスなのかもしれないが、トイレ一つ、自分で行かせてもらえないのだから、心が萎えるのも致し方ない。現在、手術から3週間と少し経過しているが、痛みは持続している。動かすと痛い部位があるが、何もせずとも痛い部位、触ると痛い部位、さまざまである。「慣れてきます」と担当医が言ったが、依然慣れない。虫けらは、痛みに強いのだが、痛みに敏感でもある。人一倍、痛みを感じるセンサーがよく働くのだ。ということは、痛みに強いのではなく、我慢強い、ということになるのか。術後3週間以上を経過しているのに、まだロキソニンを飲んでいる。1日3回だったのを、2回に減らされたが、どうしても夜中に痛くなったときのために、頓用の痛み止め(常用とは別系統)をもらった。夜中に痛みで起きることが未だにあるので、虫けらから申し出た。薬嫌いの虫けらにしては、珍しい話なのだが、術後の痛みは想像を絶するので、備えが必要だ。脛骨の左右に大きなプレートが入っていて、それと骨をつなぐビスが合計8本ほど打たれている。痛くないわけがない。皮膚は痺れていて、触ると痛い。表面が大変過敏になっているのがわかる。いつになったらこの痛みが和らぐのか。プレートの端はその存在が認知できるほど膨らんでいて、そこにいつも痛みが歴然とある。(画像を載せようと思ったが、グロ過ぎるのでやめた。もう少し傷が治ったら…)下腿が変形しているのを見るのは切ない。もう一度、在りし日の左脚をアップしよう。入院前日の遺影である。向かって右側が折れた左脚。膝が腫れ、全体が浮腫んでいるが、特に足首からつま先にかけてがひどいプレートは、1年ほどで撤去できるらしいが、虫けらの命はそれより短い。もう、元の脚に戻ることはできない。いろいろ考えると、手術してよかったのか、悪かったのかと思わないではないが、思っても仕方ない。とりあえず、何のために手術に望んだのかを考え、それに見合った結果を出さねばならぬ。気持ちを切り替えて、これまでの生活に早く戻りたいと願う虫けらであった。 苦 痛
2025.09.19
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左脚の手術から病室に戻り、夕食前にYouTubeを視聴したのを最後に電源が入らなくなった虫けらのスマホ。iPhone13だが、まだ1年と3ヵ月ほどしか使っていない。既に15が発売されていたが、店の経費で落としたいので(10万円を超えると5年の減価償却になる。5年先には確実に生きていない)、10万円以内で購入できる機種を探したら、13しかなかったというのが実情。サブ機はiPhone8。実に古い機種なのだが、SIMがNanoSIMであり、iPhone13と共通であることが幸いだった。入院期間は、1週間〜2週間と聞かされていたが、担当医との話し合いで、10日は超えると決定した週末、虫「週明けに1時間ほど外出したいんですが、 許可を出していただけますか?」担「え、どこに行くの?」虫「スマホが壊れまして、修理に時間がかかるので、 できるだけ早く出しておきたいなと」担「そう。いいですよ。看護師さんに伝えておきます」よかった。固定装具(ニーブレース)を装着することを条件に、1時間程度の外出を許可してくれた。行き帰りはタクシーを使う。ショップへは予約を入れて出向くことにする。看護師さんに、クリップをもらい、iPhone13のSIMを取り出してiPhone8に入れる。8の電話、ショートメッセージ、メールが使えるはずである。エロ男爵との連絡で使っているsignalの設定をしてみる。二段階認証が必要になったが、ショートメッセージで認証コードが届いた。電話とショートメッセージは開通した。あとはメールであるが、これは間違うとえらいことになる。何しろ、スマホが故障してから数日間、サーバーに溜まっているメールを一気におろしてくることになる。失敗すると、それらが消滅する可能性がある。メールサーバーはキャリア(au)にあるので、auの「My au」で、設定の仕方をチェックする。大体は把握できた。あとは、ショップで指導を受けながら、確実に開通させる。というわけで、スマホ救済の第一歩の段取りができた。手術後1週間足らずで外出し、その理由もスマホ修理、という情けない状況は、悲運の虫けらならではだと言えなくもないが、それにしてもハードな人生だと痛感する。家族がいたら……。と思わないでもないが、こんな些細なことはいいとしても、がんだとか、骨折だとか、入院だとか、手術だとかといった、心配と不安に包まれるであろうことを他人に背負わせずに済んでいることは、悲運とはいえラッキーなことだと思わずにいられない。かくして週明け。Uber(タクシー)を病院に呼び、修理専門ショップに出向く。無事、メールの開通を済ませ、iPhone13を修理に出して病院に戻る。iPhone8では、基本的な使い方は網羅できるのだが、●LINE●ネットバンク●生体認証がネックになった。生体認証は、Face IDからID Touchに設定し直せば、使えるようになるものがほとんどだが、端末を登録しているネットバンクはアウト、LINEもアウトだ。メールは全て下りてきたので、8から13に機種変してからのメールも8に吸収できた。しかし、ショートメッセージについては、13を使っていた間のメッセージは落とせない。いろいろ不便はあるのだが、ひと月ほどの辛抱と、余り考えないようにしている。スマホが壊れたときにいたく後悔したのがノーパソを持参しなかったことだ。荷物が重いという理由だったのだが、救急搬送以外の入院のときも、旅行のときも、必ず持参していたのに、今回、持参しない決断をした自分を激しく叱責した。パソコンがあれば、ネットバンクは何とかなった。これが一番の問題で、月末なので、家賃の支払いがあったのだ。これは、どうにもしようがないので、管理会社に連絡して事情を説明し、振り込みが遅れることを了承してもらった。12年以上、延滞したことのない店の家賃だし、人間的な付き合いがあるので、これで解決。あとは、翌月10日のカードの引き落としだ。10日までに退院して、口座に金を入れないと、厄介なことになる。引き落とし口座はあちこちで公開しているので、こちらには引き落とし金額しかお金を入れていない。メインの口座からちょこちょこ振り替える方式で、引き落としに対応している。カードの不正利用などがあっても、引き落としできないなら被害を防げるし、口座の乗っ取りに遭っても、金が入っていないなら、被害は少ない。というわけで、振替作業ができないので、口座残高が足りないのだ。引き落としまでに1週間以上ある。大丈夫だろう、と踏んでいたのだが、怖い主治医にお願いしていたCVポートの撤去手術の日程がまだ決まっていない。怖い主治医は虫けらの手術の翌日に病室に来てくれたが、その翌日から休暇に入ると告げた。次に出てくるのは週明け。つまり、スマホを修理専門店に持ち込んだ日には怖い主治医が出勤してきたはずだが、病室には現れなかった。整形の担当医に相談するようなことでもないので、とりあえず様子見をすることに。翌日、怖い主治医が病室に来てくれたのだが、退職の準備やら診察やらで、週内の手術は難しいという話になった。え、え、え、である。一応、週明け月曜日に仮で予約を入れたが、火曜日には術後2週間の整形の検査ががある(月曜の手術がないなら、次の外来時に検査することになるが、せっかくなら、と。その方が効率的なので、虫けらも了承)。ということは、早くても水曜日に退院、という段取りになる。こ、これは……。引き落とし日は、朝8時の時点で残高が足りないと銀行から「未済のお知らせ」が届く。つまり、前日までに金を入れておかないといけないのだ。カード会社に問い合わせるべく、電話番号を探す。カード会社のサイトを探ると、カードの裏に記載されている番号にかければいいことがわかる。(カード会社と提携している企業にかける場合もある)コールしたが、相手は音声ガイダンスである。こちらの状況にぴったりの項目がない。音声で「はい」「いいえ」と答える項目もあり、何度も答えながら、自分の目的の項目にたどり着く。0570発信である。幾らかかるのか気が気ではない。以前した、ちょっとした問い合わせに700円ほどかかった記憶がある。とりあえず、翌日、つまり11日の午後6時に再引き落としの手続きがあるので、それまでに入れておけばOKという結論を得た。ややこしい。結果的に、10日の退院となったので、退院して自宅に戻り、荷物を置いたらすぐにUbreタクシーを呼んで銀行に向かった。次の引き落としに今回の入院費の引き落としがあれば、ちょっとまとまった金額が必要になるので、引き落とし口座と違う銀行(三菱USJ)に行き、現金で引き出す。ATMでは扱えない金額なので、係員のいる窓口に案内される。ずっとネットバンキングだったので、久々の銀行に少し緊張した。住所変更もしていなかったので(ネットバンク登録時に、本人証明の条件が足りず、本人情報の変更ができなかった)それも併せてすることになり、印鑑や暗証番号といった、もう忘れかけているものを出しながら、アナログの作業をこなした。ふと考えると、三菱USJなど、虫けらがあずかり知らぬ銀行だ。虫けらの口座は三和銀行にあったのだ。口座をつくったのは、もう40年ほど前。暗証番号など、何世代も前のもので覚えていない。多分、途中で強制的に変えさせられたと記憶している。3回チャレンジしてようやく符合した。帯封のついた現金を携えて、引き落とし口座の銀行へ。さらに、店の家賃を振り込むために別の銀行に。ネットバンキングなら、引き落とし口座から振り込むのだが、手数料が安い家賃専用口座から振り込む。と、スマホが壊れただけで、入院生活が気が気ではなくなった。スマホにさまざまな機能を持たせている人は多いが、虫けらは怖くてできない。充電が切れたら……、ネットワークが遮断したら……、アプリに不具合が起こったら……、スマホが乗っ取られたら……、スマホを落としたら……、スマホが壊れたら……。考えられるだけでも、たくさんの危険が潜んでいる。悪い輩はどんどん新手の方法で攻撃してくるし、機械は壊れるものだ。今回も、サブ機を持っていたから、SIMがメイン機と共通だったから何とかなった。サブ機がなかったら…と考えるとゾッとする。便利と危険は裏表である。バックアップや非常時の対処法をよく考えておかないといけないと痛切に感じる虫けらであった。 戦 慄
2025.09.18
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手術を終え、動かぬ左脚を持て余しながら夕食を終えた刹那、発覚してしまったスマホの不調。それとは関係ないものの、病室に戻ってから37℃台だった体温が夕方には平熱近くまで落ちていたのに、夕食後はぐんぐん上昇し、ついに39℃目前となったとき、看「解熱剤、使いましょう」虫「いいです。必要があって上がっているんだから、 解熱剤で下げてもまた上がるでしょう」とは言ったのだが、点滴に強制的に解熱剤を入れられてしまった。解熱剤を使うのは何年ぶりだろう。多分、30年くらい使っていないと思う。前回は、打ち合わせかプレゼンがあり、どうしても熱を下げなければならないなどの切迫した事情があったと思う。病院のベッドで寝ているだけの状態で、わざわざ解熱剤を使う必要はない。何より、熱が下がるときの汗がいやなのだ。全身から吹き出る汗。やがて汗だくになって熱が下がる。平時ならタオルで体を拭き、パジャマを着替えてスッキリできるが、カテーテルやケーブルに囚われの身となっているので、それもできない。ささやかな抵抗はしたが、蟷螂の斧状態である。点滴に入れられた解熱剤はすぐに効果を発揮し始め、日付が変わる頃、熱が下がった。さて、スマホをどうするか。とりあえず朝まで待って、対処法を考えよう。夜中にできることは少ない。朝5時。メイン機のiPhone13を手に取り、強制終了や再起動を試みるが、全く反応がない。諦めてサブ機のiPhone8を起動して、状態を確かめる。電話、ショートメッセージ、メールは使えないが、通信関係は大丈夫。しかし、LINEはアウト。こちらで設定したとて、13と同じ環境にならないし、13上で復帰できるかどうか怪しくなる。触らぬに越したことはない。メッセンジャーは大丈夫のようだ。13と同じ内容が表示された。次に、修理専門ショップを検索する。これまで、歴代4台のiPhoneを修理してきた(全てバッテリー交換)ショップがあるのだが、この支店が近くにないか探す。あった。自宅からだと1kmくらいだが、病院からだとさらに遠い。しかし、それが最も近いショップだ。さて、動けない虫けらに代わって、ショップに持ち込んでくれるのは誰か。探さねばならない。平日。普通の勤め人は難しい。自由業か、勤務時間帯が通常ではない人間…ふと、天満のエロ男爵の顔が目の前に浮かんだ。「そうだ! とりあえず連絡してみよう」エロ男爵とは、いつもsignalを使って連絡を取り合っている。しかし、signalは再設定が必要なようで、しかも、二段階認証になっている。電話が使えないので、アウトだ。しかし、エロ男爵もiPhone利用者なので、FaceTimeが使える。5時50分頃になっていたが、コールしてみる。こんな時間に?と思われるだろうが、エロ男爵は6:00出勤という特殊な勤務体系で働いている。しかし、10分前となると、もう職場の配置についている頃か。10回コールすると切れる。諦めて、昼休憩時間と思われる時間単に掛け直すことにする。出ない。結局、勤務が終わり、家に到着した頃と思われる時間にようやく繋がった(5回目)。エ「はい」虫「虫けらです。突然すみません」エ「あー、着信の表示がおかしくて、誰かわからんかった」エロ男爵が登録している虫けらの名前が出るはずだが…。まぁいい。事情を説明する。エ「明日、仕事終わりにそっち行くわ」と、了承してくれた。よかった。こんなときに助けてくれる人こそ恩人である。何か御礼をせねば、と心に誓う。多分バッテリー交換で済むと信じて準備をする。ショップに予約を入れ、状態を説明しておく。スマホのパスコードや電話番号、メールアドレスなどを書き出しておく。パスコードは絶対必要だが、電話番号やメアドは、ショップに登録している利用者リストから虫けらを見つけやすくするためである。再利用の場合、割引などの特典があったはずだ。準備を整えて、エロ男爵の到着を待つ。バッテリー交換の費用は9600円、修理に要する時間は45分程度。やってきてくれたエロ男爵に伝え、ショップのマップを見せて送り出す。病室を出て15ほどしたら、FaceTimeが鳴る。虫けらの利用履歴に関するものだった。大した話ではないが、対処法をこちらから提案して、電話を切った。さらに15分ほどして再びFaceTimeが鳴る。エ「バッテリーじゃないようや。1時間半くらいかかるって」そんなに時間を要するのか、と平謝りに謝った。18時前にエロ男爵が病院に戻ってきた。エ「基板らしい。どうしますか? 言われたけど、 とりあえず、後で連絡する言うて出てきた」虫「どうしますか? っていうことは、 修理する方法があるってこと?」エ「わからん。雨雲が出てきたから、慌てて帰ってきたんや」な、なんと。。仕方ない。自転車で出向いてくれたので、天候優先になる気持ちはわかる。翌日、病院の公衆電話からショップに連絡した。基板の修理とデータの復元ができるらしい。しかし、3〜4週間を要するとのこと。修理ができるなら、出すしかない。が、退院してからになるだろう。時間がかかる……。ショップの店員さんには、スマホを再び持ち込むと告げ、電話を切った。ショップの電話は「070」発信だったが、250円ほど使った。2分ちょっとの通話だったと思う。高い!スマホ故障の全容ついては、さらに長い話になる。次回に分ける。 困 窮
2025.09.17
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「この先も、主治医は先生ですか?」「先生の患者でいていいですか?」「これからも主治医でいてくださいますか?」お盆真っ最中の外科の外来診察のとき、怖い主治医から《驚愕の話》をされたと書いた。「驚愕」などと言っているが、単純な話である。怖「僕、9月いっぱいで退職するんや」これである。怖い主治医が主治医になって2年と2ヵ月。昨年6月にがんの再発がわかって以来、三度にわたって冒頭の質問をしてきた。その都度、怖「はい」と答えていた主治医が、虫けらの前から消えるというのだ。これにはまいった。突然のこと過ぎてよい言葉が見つからず、虫「急な話ですね」となんとか返したが、怖い主治医の表情は動かなかった。多分、随分前から話があって、決定したのがここ2〜3ヵ月のことだったのではないか。虫けらが聞かされたのが遅かっただけだ。となると、ひと月前の病室でのやり取りのとき、既にこのことは決定していたのだろう。(この顛末は、後に知らされる)虫けらは、怖い主治医のことを一人ぼっちの虫けらの最期を看取ってくれる人と勝手に思っていた。そのことは、つい最近認識できた。つい最近とは、ひと月前の入院時である。わずかひと月の間の淡い願望に終わったわけだ。「退職」の話から、次の話へ話題が移り、一通り診察が終わったとき、虫けらは両手で顔を覆った。「どうしたらいい」という大きな難問が目の前を塞いだからだ。自分の今後、病気との向き合い方、具体的な生活のあれこれ……違う。心の置きどころがなくなってしまったのだ。死ぬまで、怖い主治医がそばにいてくれるものだと信じて(思い込んで)疑わなかったのに、これからの人生の根底が覆されたのだから。手を外し、顔を上げたとき、とても心配そうに虫けらを見る怖い主治医と目が合った。虫「私の心算(こころづもり)が…」と、小さな声で呟いて、言葉を切った。背筋をシャキッとさせて、虫「月末のポートの手術、よろしくお願いします」と言って、診察に区切りをつけた。診察室を出るときは、怖い主治医は引き続き心配そうな表情を見せていたが、虫けらは笑っていた。そうするよりなかった。本当は、新しい主治医のことや、次の診察日を予約するといった実務的な話があったが、そんなところまで神経が回らなかった。とにかく診察室を出たかった。虫けらは、幼少のころから想像を絶するような体験をしてきたせいで、感情を表に出さない癖がついている。感情を大きく揺さぶることであればあるほど極めて冷静な表情と口調で対応する。しかし今回は、表情に出ていたと思う。言葉に詰まって窮したとき、怖い主治医が気持ちを確かめるように虫けらの目を見ていたのを覚えている。待合室でぼぉっとしながら虚空を見つめていると、冒頭のやり取りが脳裏に蘇った。がんの再発がわかったとき、治療を決めるとき、1年前の入院時。1年前の入院時には、このことを予感したかのような会話をした。虫「この病院に来られて10年近くになりますよね。 転勤や昇進があるんじゃないですか?」怖「どうやろね。どんなパターンがあるやろ」虫「別の病院に院長として引き抜かれるとか」怖「ないない」虫「じゃ、ここの院長」怖「判子つく仕事か」虫「先生はそういうタイプじゃないですよね」怖「いや、別に判子人生でもいいよ」虫「先生がよくても、患者さんが許さないでしょう?」怖「そう言ってもらうのはうれしいけどね。 医者としては、そう言ってもらえるうちが花やね」などと明るく話していた。虫けらの勘は鋭いのかもしれない。1年後、そのとおりになった。虫けらの人生は過酷である。「運命の人」などと思ったのが、大変おめでたいことだと今更ながらに思い知った。虫けらの人生に、「幸」「安寧」「安住」などという言葉は無縁なのだ。最期くらい、そうした要素を添えてくれてもいいではないか。しかし、そうはいかないのが、虫けらの今生である。 絶 望
2025.09.16
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朝9時。飲まず食わずの状態で手術室に向かう。手術室には既にDr.Iがスタンバッてくれていた。虫「おはようございます。よろしくお願いします」Dr.I「おはようございます。体調いかがですか?」虫「万全です」朝9時にここに準備完了状態でいるということは、遅くても8時には出勤しているのだろう。前日は、禁酒して早寝するのが必須。大変な仕事である。酒飲みにはできない仕事だ。もちろん、毎日のことではあるまい。が、週に2〜3日だとしても、虫けらには苦痛である。とはいえ、虫けらとて若いときは過酷な労働に耐えたものだ。接待をこなした後午前様となって自宅に戻り、入浴と翌日の支度をして就寝。翌朝6時のロケ地での集合に間に合わせるように5時に車を出したり、26時終了という香盤表(自作)で撮影を進め、結局28時終了となったのだが(予定通り)、「監督、飲みに連れてってや」というカメラマンの要求を聞き入れてスタッフ全員でおでん屋に行き、6時過ぎまで飲み食いした後、カメラマンは次の撮影現場へ、虫けらはスタッフを数人送って8時ごろ自宅へ戻り、シャワーからの9時に出勤してそのまま終日就業、プレゼンのための企画書を徹夜でつくり、始発から2本目(始発はとにかく混むので、2本目を取るのが慣例)の新幹線に飛び乗って東京に行き、丸の内で朝一のプレゼンに望む、なんてことも平気でこなしていた。しかし、現在の自分を省みると、もうそんな無理はできないと思う。と言いながら、こういう成功体験を持つ人間は、自分に限界を置かないので、無理をしなければならない場面では、超人的な働きをするものだ。が、以前とは体が違う。無理は無理だろう。無理をしなければならない場面がないことを願うのみである。そんなことを考えながら、麻酔が即座に効いて手術室に入室して、多分10分ほどで意識がなくなった。次に目覚めたのは病室。13時頃だった。手術は2時間ほどと聞いていたので、目覚めたのが4時間後であることに不安感がわいた。虫「手術は1.5〜2時間と聞いていましたが、 もっとかかったんですか?」病室にいた看護師さんに聞いた。看「手術前後の時間があるし、 麻酔が解けるのにも少し時間がかかるので、 こんなもんだと思いますよ」虫「そうですか」手術に難航したということではなさそうなので、心配はしないことにした。胸には心電計がつなるケーブルが3本、左腕には点滴、右腕には血圧計の腕帯、人差し指に酸素濃度計がはまっている。尿道にはカテーテルが入っていて、尿バッグに尿が流れ込む状態。手術後、こういう状態になるのが嫌だ。全く動けない。ここで便意を催したらどうしたらいいのだ。消化器や長時間の観察が必要な手術後なら、オムツをしているのだが、今回はすぐに食事もできる状態に回復するため、オムツはつけていない。しかし、催すときには催すもので、手術前にトイレに行けなかった虫けらは不安でしかなかった。虫けらは30過ぎから下痢症体質になってしまった。下痢は時と場所を選ばない。こういうときに便秘症ならよかったのに、と思わずにいられない。左脚は、痛みは感じるのだが、全く動かない。膝上から爪先まで、神経が生きていない状態だ。眠りたいのだが、最初は10分ごと、1時間後からは1時間ごとに血圧計が作動するので、その音と腕の圧迫感で眠れたものではない。眠るのを諦めて、15時過ぎからスマホでYouTubeを観ることにした。看護師さんにスマホを取ってもらい、イヤホンを耳につけて朝にライブをやっていた番組のアーカイブを観ていたら、外が慌ただしくなってきた。夕食の時間である。足は痛いし、腕には血圧計の腕帯、人差し指には酸素濃度計がついている。点滴も心電計も尿バッグもそのままで、夕食を食べろというのだ。看護師さんがテーブルに食事ののったトレイを置く。看「テーブル、そちらに向けます?」と言いながら、勝手にテーブルの高さを変える。虫「いえ、そのままで」細かい指示を出すのが苦手は虫けらは、自分でやることを覚悟して看護師の動きを制する。全く動かない左脚のみならず、カテーテルやケーブルで囚われの身となった虫けらは、動けるだけ動いて、テーブルの高さを元に戻し、箸箱を手にとって、食事を食べようとする。しかし!右手の人差し指についてる心電計をどうしろというのだ。箸が持てない。しかし、外すと「ピーーー」という警告音が鳴る。仕方なく、小指に付け替えて食事を始める。「そんなときに卑しい」と言われるかもしれないが、前回の退院後ひと月余りで3kg近く落ちてしまった体重をこれ以上落としてはいけない、という強迫観念に駆られた虫けらにとって、食事の中身や味は意識のほか。食べるしかない、と思っていたのだ。食事を終え、再びYouTubeを見ようとしたが、スマホの電源が落ちているようだ。虫「え? さっき、電源切ったっけ?」電源を入れようとするが、何をどうしても画面が暗いままだ。強制終了など、電源に関係する方法を試みるが、一切反応がない。本体がちょっと熱いと思った。水のペットボトルをスマホの背面に転がしたり、ベッドの寝具の冷たいところにこすったりして本体を冷やそうとする。虫「少し置いておくか」嫌な予感を抱きながらも、どうしようもないと諦め、枕の下にスマホを押し込む。30分ほどしてスマホを取り出すも、さっきより熱くなっている。これはまずい。バッテリーが過熱した場合、充電を止めるなどの自己防衛策を取るのだが、電源が入っていないのに過熱するのはこの不具合の原因がバッテリーではない可能性が浮上してしまう。バッテリーではないとしたら、本体…基板…その他の重要部位……。やめてくれーーーー。この状態でスマホを失うと、万事休すだ。リュックの重さが原因で、ノーパソを持参していない。外部との通信手段はスマホが全てなのだ。サブ機は2台あるが、SIMが有効なのはメイン機のみ。Wi-Fiがあれば、サブ機でも通信できるのだが、電話やメールは不可、SNSアプリも使えないものが多い(他の端末で使っていた場合、再設定が必要で、二段階認証など、電話やメール機能がないと使える状態にならないという場合がある)。YouTubeを観ることは辛うじてできるのだが、観る気にはならない。もしサブ機もお釈迦になれば…と考えると、無理に使わずに、温存することを選ぶしかない。動かない左脚、たくさんのケーブルやカテーテルで囚われの身となった虫けらは、メインのスマホを失うという悲運に見舞われ、絶望の淵に叩き込まれたのであった。 悲 愴
2025.09.15
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8月も残りあとわずかという月曜日の朝、前回の退院から6週間弱のインターバルを置いて再び入院するためにUber(タクシー)を呼ぶ。背中には荷物を詰めたリュック、左脚にはニーブレース(固定装具)、両手には杖を持って自宅を出た。リュックニーブレースクラッチ杖リュックは30Lの容量があるが、バスタオルやパジャマ、下着などでパンパン。大変な重量だ(7〜8kg)。ニーブレースは、その時点では必要ないが、手術後の数日間必要になるので持参すればよいのだが、残念ながらリュックには入らないので、脚に装着。さらに両手で杖をつくと、「何者だ!」と驚かれるような出で立ちとなった。入院予定は1週間。手術痕の状態やリハビリの状況によっては2週間。それが整形外科の担当医から聞かされた入院期間。随分幅がある。虫けらの心算(こころづもり)では、10日と見ている。手術は入院日翌日。1週間を置いて術後の状態を図る。即退院とはならない。翌日か、担当医の予定によっては1〜2日ずれる。最短10日だという結論。それを見越しての持参品。●タオル 術後のベッドに敷くための大判バスタオル 洗髪やシャワーに必要なミニバスタオル 洗顔時に使うふわふわのフェイスタオル 何にでも使えるフェイスタオル×2 身の回りで使うハンドタオル●パジャマ 2着(洗濯を考えても考えなくても) パジャマ下に着るタンクトップ×2 リハビリの時などに着るTシャツ×2●下着・靴下 ショーツ×5(洗濯してもしなくても) 靴下×3(履く機会は少ないが、退院時には必要) 弾性靴下(手術時着用。以前使用したもの)●グルーミング 歯磨きセット シャンプー・リンス/ヘアケア用品・ブラシ スキンケア用品 マウスウォッシュ 爪切りセット マスク ティッシュ●モバイル スマートホン 予備スマホ×2 イヤホン×2 充電ケーブル(ライトニング、USB/C)●その他 アイスバッグ(氷嚢) タンブラー×2 ストロー(術後、寝たまま給水するため)必要最低限だったと思う。ストロー以外、使わなかったものはなかった。足りないものは…一つだけあったが、後述するとして。これまでの入院、通院で付与された書類などのファイル、筆記具、財布、ハンドグリップ(握力維持用)を加えて全ての品々をリュックに詰め込むと、体重47kgの人間にはちと重い重量になった。キャリーバッグが使えないのが痛い。負傷した日の1週間後に予定していた旅行のために購入した新しいキャリーバッグがあるのに……。Uberタクシーの運転手さんには大変心配された。「どういう客だ!」と驚いたことだろう。リュックを見ると、旅行か出張だろうが、脚には仰々しいものを着けているし、両手には杖。旅行などという呑気な話ではないはずだが、入院なら、付き添いの一人もいるだろう。とにかく無理に無理を重ねたような姿だ。という状態での再入院だった。一人で生きるというのは、こういうことだ。平常時は問題ないが、非常時には大変無理な状況になる。が、虫けらはずっとこういう人生だった。自分一人で何とかしてきた。自分の姿を俯瞰で眺めながら、「死ぬまでこういう人生なんだ」と改めて思う虫けらであった。 悲 哀
2025.09.14
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退院して二日。退院日は自宅に戻ってすぐにUber(タクシー)を呼んで銀行に出向き、合計3行回って各種手続きを済ませ、ようやく落ち着いたのが13時前。リビングの定番の席に座り(ケガをして以来、余り座れていなかった)、大好きなサッポロビールで祝杯を上げ、窓からの景色は最高!黒ラベルも赤星も大好き。入院中使えなかったPCを開けてさまざまなチェックを済ませたのが15時くらい。左脚の違和感に気づいて例のマッサージチェアに寝転んだが、むくみの酷さと手術跡の痛み、左下腿全体のヒリヒリ感に嫌な感じを受けた。病院では、ベッドの脚の部分を上げてむくまないようにしていたし、一日の大半を寝転んで過ごしていたので、5時間も外を歩いたり(杖あり)、椅子に座って過ごしたりしたことの弊害はある程度の予想はできたのだが、やらなければならないことはとにかく先に処理したい、というわけで、ちょっと無理をした。詳しくは後日記すつもりだが、退院日は運命の分かれ目の一日だった。ひどくむくみ、熱を持ち、絶えず痛みを発する左脚をできるだけ高く上げながら、手術をしたことが良かったのか悪かったのか……と考えずにはいられなかった。その上、である。退院2日前に、右胸に入っていたCVポートの撤去手術を受けた。その傷跡も、それなりに痛む。1日3回の鎮痛剤(ロキソプロフェン)服用によって、左脚以外の痛みも常に鈍化するのでさほど痛みは感じないのだが、何かに当たったり、間違って触れたら痛い。しかも、退院日の夕方近くからは熱発し、翌日、翌々日の午前中まで熱が下がらなかった。とはいえ、最高でも37.9℃なので、通常の虫けらにとっては、微熱の域を超えないのだが、今回は、いつになくしんどかった。環境の変化によるストレスが原因だろうと思うが、食欲が全くわかないのが気に食わない。いつもなら、38℃以上あっても平常運転ができるのに、39℃を超えたかのような食欲不振と倦怠感。せっかく、落ちた体重を入院中に少し回復させたのに、これではまた落ちてしまう。何かを食べねば…と思うのだが、冷蔵庫から食材を取り出しては仕舞うということの繰り返し。結局、アーモンドとクッキータイプの栄養調整食品、干し芋しか食べられなかった。「また痩せてしまう」という恐怖が襲う中、睡眠だけは十分取りたいと発奮し、ケガ以来使っていなかった2階の寝床で寝ることにした。これは大変な決意だった。まだ杖生活ゆえ、トイレなどの用があって動こうとすると、階段の昇り降りが必須なのだ。慌てて階段から落ちたりすると、また緊急入院になりかねない。救急車を要請できるならまだいい、打ち所が悪ければ、そのまま孤独死…も考えられるのだ。が、2階に上がった21時から翌朝6時まで2度ほど目覚めて、寝落ちしてしまったために観られなかった有料チャンネルを見直したりした以外、1階に降りることも、不自由な脚を苦にする作業をすることもなく、よく眠れた。朝はまだ体温が高かったが、昼過ぎには平熱に落ちた。これを書くうちに退院三日目になった。きのうはネットスーパーで食料品を購入した。Amazonを経由すると、初回20%OFFのクーポンがあったのと、前回の退院から1ヵ月半もの間、備蓄食材で何とか食いつないできたものの、もうそれでは賄い切れないと判断したためだ。8,000円以上購入すれば、配送料が無料になるとのことで、買い物かごにめぼしい商品を入れていくと、すぐに到達した。ここから20%OFFされ、さらに欠品があり、代替品がなければその分がマイナスされるので(オーダーした『カツオのたたき』が欠品。残念だが、致し方ない)、6,000円ちょっとの買い物になった。ちょうどいい感じ。しかし、実際にスーパーで買い物するよりかなり割高になっているし(単に値上がりしているのかもしれない)、セール商品が少ない。やはり、店頭に出向くのが一番だと実感。そんなこんなの二日間。きょうは、やることが少しあるので、睡眠と食事、入浴の時間を調整しつつ、健やかに過ごしたいと思う。と言いながら、「健やか」などという言葉とは無縁な人生を送ってきた虫けらのこと、あすになったら、また違ったアクシデントに見舞われているのだろう。入院中のあれこれは、一気にアップしたい。少々お待ちを。 愚 者
2025.09.13
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