Welcome  BASALA'S  BLOG

Welcome BASALA'S BLOG

PR

×

Calendar

Comments

ske芭沙羅 @ Re[3]:孤独の虫けら(03/27) harmonica.さんへ ご心配させてしまったよ…
harmonica. @ Re[2]:孤独の虫けら(03/27) ske芭沙羅さんへ 4月はただでさえ疲れや…
ske芭沙羅 @ Re[1]:孤独の虫けら(03/27) harmonica.さんへ 珍しく、体調がおかしく…
harmonica. @ Re:孤独の虫けら(03/27) 加齢とともに孤独に強くなりますね。 幼…

Keyword Search

▼キーワード検索

2007.05.07
XML
カテゴリ: I write
(8)置き去りにされた幼子たち 2

朝、起床した私は、兄に私のクラス担任への伝言を託し、
送り出してから、前夜に使った食器を洗い(このときは
冬だったが、湯沸かし器がなかった我が家では、水道口
から出る冷たい水で食事をつくり、食器を洗い、顔を洗い、
洗濯した)、たらいいっぱいにたまった洗濯をした後、
共同通路側にあった物干竿に洗濯物を干し、着替えを
した。

お年玉をためて自分で買ったディズニーの時計を腕に
はめ、財布を入れた鞄を持って、家を出た。
安物の家に似つかわしい簡単な鍵で施錠をした私は、
徒歩で駅へと向かった。

最寄り駅には10分ほどで到着した。
我が家には電話がなかったので、事前の連絡を入れては
いなかったが、母方の祖母の家に向かうつもりだった。
持病がある母が、一人で仕事をして生活しているわけは
ないのだが、母が家出して10日ほどして、私あてに
手紙が届いていた。内容は、“旅館で仲居をしている。
自分の部屋と制服をもらって、これまでにない充実した
生活を送っている”というものだった。私は、祖母の
計らいがあったはずだと直感した。

とりあえず祖母の家に行けば、何らかの情報が得られると
確信していた。

それまでにも何度か一人で祖母の家に行ったことが
あった。要領はわかっている。もちろん、8歳の子ども
には難しい漢字はわからないし、少しでも勘違いすると
とんでもないところへと行き着いてしまう危険性が
あったが、私には自信があった。景色を覚える能力に
たけていたからだ。音(駅の場内アナウンス)や文字
の形に加え、自分が歩いた景色を、色やモノや距離感で
鮮明に覚えていた。

近鉄大阪線(普通)から大阪環状線へと乗り換える。
最寄り駅からおよそ1時間、常々親が「子ども一人で
電車に乗っていると“子取り(子どもをさらう輩。そのころ
決まって〈サーカスに売られる〉と説明された。子どもには
言いようのない恐怖感を与えた)”が来る」と言い、「知らない
おばさんでいいから、親子に見えるようにくっついて
いなさい」と教えてくれていたので、シートの端に
座っていたおばさんの横に陣取り、おばさんに
寄り添うようにして立って、親子に見える演技をした。

無事、目的の駅に到着し、祖母の家に向かった。
そのころも、若いころ花柳界で生きた経歴を生かし、
祖母は働きながら一人で暮らしていた。

駅から15分ほど歩き、祖母の家(アパート)に着いた。
しかし、折悪しく祖母はいなかった。
私は時間をつぶすべく、街に出た。歩いて10分ほどの
スーパーに行った。このスーパーはおもしろかった。
1階は食品売り場、2階は衣料品や日用雑貨を置いて
いるという、ごく普通のスーパーだったが、1階から
2階への階段に、いろいろな動物や小鳥がかごに入れられて
展示されている。もちろん売られているのだが、とても
かわいいサルやオウム、九官鳥がいて、見ていて飽きない。
祖母や母と来ると、満足に見させてもらえないので、
このときとばかり、存分に見て、声をかけて楽しんだ。

そして、靴屋にも行った。そのころはやりのエナメルの
靴が欲しかった。母や祖母と行けば、気に入ったのが
なくても見栄を張って「どれがいいの?」と聞いてくる。
いいのがなければ、店を出ればいいと思う私を制止し、
どれかを選ばせようとする。私は自分のお金で、自分の
欲しい靴を買いたいと思っていた。一人で、靴屋の
ショウウィンドーから、ディスプレイしてある靴を
つぶさに見た。しばらくしてお目当ての靴を見つけた。
小遣いを貯めて買いにくることができるのはいつかと
計算した。

そんなこんなで時間をつぶした後、再び祖母の家に
向かった。幸いなことに、今度は祖母がいた。
「おかあちゃんはどこ?」
「言うたらあかんって言われているんや」
「……」

私は、“1時間かけてここまで来たことが無駄になるのか”
と、わずかな脱力感を覚えた。

しかし、祖母は優しかった……と言えるかどうか微妙な
結末を迎えるのだが。


                      つづく







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.05.08 00:56:39
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: