Serendipity

2011.06.11
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カテゴリ: 思い出
もう5年近く前のことですが、私には塾講師をしていた時代がありました。
個別指導の学習塾で、主に英語を教えていました。

いろいろな生徒がいましたが、なかでもイトウ君は思い出深い生徒のひとりです。

イトウ君は、とにかくやる気がなかった。
英語が大嫌いで、そして苦手だった。

だから、英語の授業中は、よく寝ていました。
目を離すと必ず寝ているイトウ君を起こすのが、私の仕事でもありました。


ある日、事件が起きました。

それは、ある暑い夏の日のことでした。

夏期講習の半ばぐらいのことで、毎日塾に通ってくる生徒たちには、だんだん疲れの色が見て取られるようになってきていました。

イトウ君も、日々の勉強にかなり疲れていたのだと思います。
イトウ君は、もうろうとした様子で、ある問題を前に手をとめていました。

その問題をみると、答えは簡単。
「行く」という意味の"go"を記入する問題でした。

私は、この問題ならさすがにわかるはずだと思い、イトウ君を起こしにかかりました。

「イトウ君、ちょっと起きて。この問題はわかるはずだよ。」

「・・・・・・」

「イトウ君、ここは『行く』だよ、『行く』!」

「・・・・・・いく・・・?」

「そうだよ、絶対に知っているはずだよ。ほら、アルファベットで2文字の『行く』だよ!」

「うーん・・・2文字?」

私はしびれを切らして、最大のヒントを与えました。

「イトウ君、"g"から始まるあの単語だよ?!」

「・・・うーん・・・、g・・・?」

「"g"と、あともう1文字だよ?!」

「・・・うーん・・・・・・」

「ほら、『レッツなんとか』、ってよく言うでしょ?」

「・・・レッツ・・・・・・・・・」

・・・そう言い残して、イトウ君は眠りの世界へと帰って行きました。

私は不安になりました。

イトウ君は、中3なのに、もう冬には受験が迫っているのに、本当に"go"がわからないのだろうか・・・?
あんなにヒントを出してあげたのに・・・(というか、もうほとんど答え)?

夏の日の事件でした・・・(笑)。


結局イトウ君は、私の心配をよそに、無事志望校に合格してくれました。
今では、もう高校も卒業し、どこかで青春をエンジョイしていることでしょう。

そして、もしかすると、もう英語を勉強しなくてもよくなったかもしれない。・・・でも、願わくは、あの夏あの後必死で覚えてもらった"go"ぐらいは、覚えていてほしいなぁ。





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最終更新日  2011.06.12 00:39:17
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