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名作「ロミオとジュリエット」の舞台イタリア、ヴェローナにある“ジュリエットの生家”からはじまる50年の時を超えた愛の物語。今回は、11/25にDVD&ブルーレイが発売された実話を基に贈る上質なラブ・ストーリー『ジュリエットからの手紙』(2010年)他、アマンダ・セイフライド出演作をご紹介します。 記者を目指すソフィ(アマンダ・セイフライド)は、婚約者のヴィクター(ガエル・ガルシア・ベルナル)とイタリアへプレ・ハネムーン旅行に出かけます。でも、レストラン開店に情熱を燃やすヴィクターは、ワインや食材の仕入れに夢中。仕方なく、ソフィは一人で“ジュリエットの生家”を訪れることに。そこで50年前にクレア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)というイギリス人女性がジュリエットに出した手紙を偶然に見つけ、クレアに励ましの返事を書きます。すると、クレアは孫のチャーリー(クリストファー・イーガン)と共にヴェローナへやって来ます。そうして、クレアの50年前の恋人ロレンツォ(フランコ・ネロ)を探す旅が始まりますが…。 今も“ジュリエットの生家”に届く年間5000通もの手紙(映画上映後は4万通に膨れ上がったそうです)。そこには、恋の悩みが真剣に綴られており、“ジュリエットの秘書”と呼ばれる女性たちが世界中の悩める女性たちに心のこもった返事を送っています。 エルヴィス・コステロのアルバム「ジュリエット・レターズ」によって“ジュリエット・レター”の存在を知ったプロデューサーのキャロライン・カプランと、本作が初プロデュースとなる女優のエレン・バーキンは、“ジュリエット・レター”についての本を読んで感銘を受け、映画製作を決意。 脚本には『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2003年)でアカデミー賞にノミネートされたホセ・リベーラを、撮影監督には『アルジェの戦い』(1968年)のジッロ・ポンテコルヴォ監督を父に持ち、『ロミオとジュリエット』(1968年)や『ベニスに死す』(1971年)の撮影監督バスクァリーノ・サンティスのアシスタントを10年手掛けたマルコ・ポンテコルヴォを起用。 監督を依頼されたゲイリー・ウィニックは、優秀なスタッフ、キャストを得て、“愛の都ヴェローナ”にふさわしい普遍的な愛の物語を丹念に描き、これぞ、王道というウェルメイドされた究極のラブ・ストーリーを作り上げました。 主演のソフィを演じるのは、若手実力派のアマンダ・セイフライド。 1985年12月、アメリカ・ペンシルヴェニア州生まれの彼女はモデルからキャリアをスタート。女優に転身後、米TV『ヴェロニカ・マーズ』『Dr.HOUSE ドクター・ハウス』、映画『ミーン・ガールズ』(2004年)などに出演。2006年、TV『ビッグ・ラブ』がゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、映画『マンマ・ミーア!』(2008年)出演で一気にブレイク。その後は、ラブコメから悪女まで様々な役に挑戦しています。 ここで、アマンダ出演映画を2本ご紹介します。 10/19にDVD&ブルーレイが発売された『赤ずきん』(2011年)は、『トワイライト』シリーズのキャサリン・ハードウィックが監督したホラー・ファンタジー。恐ろしい狼のいる村で、主人公ヴァレリーの姉が殺され、村人は狼退治に乗り出します。しかし、そこには恐ろしい真実が隠されていたのでした…。アマンダは、村一番の美女ヴァレリーを演じ、婚約者がいながら幼馴染との恋に燃える女性を演じています。『トワイライト』同様、ティーン向けのおとぎ話で、アマンダの相手役シャイロー・フェルナンデスなどブレイク必至の若手俳優も要チェックです。 11/2にDVD&ブルーレイが発売された『クロエ』(2009年)は、仏映画『恍惚』(2003年)をハリウッド・リメイクしたエロティック・サスペンス。オリジナルではエマニュエル・ベアールが演じたコールガール役をアマンダが演じる、アマンダファン必見作です。大学教授である夫(リーアム・ニーソン)の浮気を心配した妻(ジュリアン・ムーア)がコールガールを雇い、夫に接近させて夫の動向を探ろうとします。すると、夫はコールガールと関係を持ってしまい、遂には最愛の息子にまで近づき…。ヨーロッパ調のムード漂う演出の中、リーアムやジュリアンといった演技派との共演など、見応えたっぷりの大人向けサスペンスです。『親愛なるきみへ』(2010年)など純愛ストーリーへの出演が多いアマンダですが、悪女役もはまっています。 さて、『ジュリエットからの手紙』に話を戻しましょう。 アマンダ演じるソフィは、記者を目指すキャリア志向の女性。ガエル・ガルシア・ベルナル演じる婚約者のヴィクターは、レストラン経営に意欲的で、ワインや食材にもこだわる、いわば料理オタク。ヴィクターは性格もよくてイイ奴ですが、彼には、彼の情熱を影で支えてくれるような家庭的な女性の方がお似合い。二人はこの旅を通してお互いの方向性の違いに気付かされます。 そんなソフィの前に現れたのは、上流階級で育ったスノッブなイギリス人青年チャーリー。祖母クレアに付き添ってヴェローナまで来たものの、祖母をそそのかした張本人としてソフィに冷たく当たります。 チャーリーを演じるのは1984年6月、オーストラリア・シドニー生まれのクリストファー・イーガン。TVスポットで彼を観た時にはさほどの魅力は感じませんでしたが、このチャーリー役は魅力的。はじめは嫌味な青年のチャーリーが、旅をするうちに次第に本当は優しい自分の内面を見せるようになります。そして、ラストには、これをせずして「ロミオとジュリエット」を語るなかれ、という大感動のクライマックスを熱演してくれます。詳しくは書けませんが、最初のキャラクターとのギャップが大きいだけに高感度大。 そして、作品を美しく彩る50年越しの恋を演じるのは、プライベートでもパートナーであるヴァネッサ・レッドグレーヴとフランコ・ネロ。 ヴァネッサ・レッドグレーヴは、年を重ねても変わらぬ美貌と品格を兼ね備えたイギリスの国民的大女優。スクリーンに映っているだけで場面がグンと引き締まります。そして、旅の終わりに再会するフランコ・ネロの登場シーンもお楽しみ。マカロニ・ウエスタンのスターを象徴する心憎い演出が待っています。実はヴァネッサとネロはミュージカル映画『キャメロット』(1967年)で初共演し、恋が芽生え、その後、同棲したものの、離別。けれども数年前に再び愛を蘇らせて結婚したという映画さながらのロマンチック・カップル。そんな二人の久しぶりの共演というだけでも、ファンにとってはお宝。さすがに息もぴったりです。 また、イタリアの美しいロケ地風景も見どころの一つ。ヴェローナ地区のヴィラ・アルヴェティやソアヴェの小さな村、アレーナ、ガルダ湖、トスカーナのアルジャーノぶどう畑、オルチャ渓谷など、観光地だけではない、イタリアの様々な情景がラブ・ストーリーを盛り上げています。 TVスポットを見れば、大体のストーリーが想像出来そうな作品ですが、ハッピーエンドに至るまでのキャラクター描写や脚本が秀逸なので、彼らの行く末が最後まで気になり、泣いたり笑ったりしながら、クライマックスまで目が離せません。 情熱的な愛の告白や、感動の再会といったラブロマンスの王道要素を照れずに展開させているのが本作の特徴。そんな基本に忠実な作りが私たちをとても心地よい気持ちにしてくれるのです。 2011年公開のラブ・ストーリーの中では、ひと際輝くおススメ作です。 最後になりますが、監督のゲイリー・ウィニックは、これまでにも、心は13歳のままで30歳の自分と入れ替わってしまった少女の恋や仕事の経験を描いたラブ・コメディ『13 LOVE 30』(2004年)や、ダコタ・ファニング主演の児童書が原作のファンタジー『シャーロットのおくりもの』(2006年)など良質な作品を手掛けています。 今後の活躍が期待されていましたが、2011年3月に脳腫瘍のため、49歳の若さで亡くなりました。心よりご冥福をお祈りいたします。 次回は、12/1に早くもDVD&ブルーレイ予約が解禁される洋画大ヒット作をご紹介します。
2011年11月29日
レズビアンの母二人と精子提供で授かった母違いの姉、弟の4人家族。一風変わった家族のひと夏の騒動を描くゴールデン・グローブ賞作品賞、主演女優賞(アネット・ベニング)受賞作が11/25にDVD発売。今回は、アネット・ベニング&ジュリアン・ムーア共演のファミリー・コメディ『キッズ・オールライト』(2010年)をご紹介します。 南カリフォルニアに住む女医のニック(アネット・ベニング)と造園業を始めたジュールス(ジュリアン・ムーア)はレズビアンの夫婦。精子提供で授かった母違いの長女ジョニ(ミア・ワシコウスカ)と長男レイザー(ジョシュ・ハッチャーソン)と平穏に暮らしていた。ところが、思春期のニックが精子提供者である生物学上の父親と会いたいと言い出し、レストラン経営者のポール(マーク・ラファロ)を探しだす。姉ジョニはポールを慕い、母ジュールスもポールと意気投合。父親代わりのニックは、父親の座を奪われていい気がしない。仲が良かった家族の中に突然入り込んできたポールの登場で、家族の関係が微妙に狂いだす…。 レズビアンの両親と子供二人というちょっと変わった現代の家族のひと夏を、シニカルに温かく描き出すホームドラマの秀作です。 監督・脚本は、1964年カリフォルニア州出身のリサ・チョロデンコ。コロンビア大学大学院映画学科で学び、同大学で教鞭をとるミロス・フォアマン監督(『カッコーの巣の上で』(1975年)、『ヘアー』(1979年)、『アマデウス』(1984年)等)に師事。監督・脚本作には、インディペンデント・スピリット賞作品賞、サンダンス映画祭脚本賞を受賞した『ハイ・アート』(1998年)、フランシス・マクダーマンド&クリスチャン・ベール&ケイト・ベッキンセールらが出演した『しあわせの法則』(2002年)、TV演出作にはレズビアンの恋愛群像劇を描いた『Lの世界』などがあります。 今回は、アネット・ベニングとジュリアン・ムーアというオスカー常連の大女優を配役し、アカデミー賞作品賞、脚本賞、主演女優賞(アネット・ベニング)、助演男優賞(マーク・ラファロ)にノミネート。本作で一気にアカデミー賞を狙える新鋭監督の一人に躍り出ました。 本作の面白さは、キャラクター設定のリアルさと、小気味良い台詞の数々にあります。レズビアン夫婦といっても、彼らの日常は、ごくありふれた一般家庭と変わらないもの。女医のニックは、家計を支え、常識を重んじ、一家の大黒柱といった感じ。パートナーのジュールスは、仕事がうまくいかずに悩んでいますが、自由奔放で子供たちのよき理解者。そして二人の娘と息子はいたってノーマル。大学進学を控えた優等生タイプのジョニは、レストランを経営するポールに対し、女の子にありがちな憧れを抱き、若い父親とのデートを楽しみます。弟レイザーは、女性にモテる、型にはまらない父親に違和感を覚え、ジョニとは対照的に嫌悪感を表します。 そうした家族の日常が、肩ひじ張らずに自然体で描かれ、たくさん笑えて、誰もが共感出来るホームドラマの一篇に仕上がっています。 出演者の中では、父親代わりのニックを演じるアネット・ベニングの演技にいつもながら感嘆します。アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた『アメリカン・ビューティー』(1999年)や『華麗なる恋の舞台で』(2004年)など、女性らしく味のある演技に定評あるアネットですが、今回は、ショートヘアで声質も低くして、本来の女性らしさを封印し、堅物のニックを熱演しています。 一方のジュリアン・ムーアは、自由奔放な女性というお得意の役どころ。ジュールスは型にはまらないポールと意気投合。厳格なニックや仕事が上手くいかない自分へのいらだちから、ポールによりどころを求め、関係を持ってしまいます。ジュリアンは、そんな悩める中年女性を等身大に演じています。 さらに、ポールを演じるのはマーク・ラファロ。本作がオスカー初ノミネートとなりましたが、演技力は確かで、『死ぬまでにしたい10のこと』(2003年)や『エターナル・サンシャイン』(2004年)といった恋愛ドラマから、最近ではデヴィッド・フィンチャー監督作『ゾディアック』(2006年)やマーティン・スコセッシ監督作『シャッター アイランド』(2009年)など名だたる監督作にも重要な役どころで出演。今回も、気のいいイタリア系アメリカ人の青年を好演しています。 子役の二人もなかなかの顔ぶれです。大学進学を控える18歳の姉ジョニには、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)で主人公アリスを演じたミア・ワシコウスカが、ちょっぴり反抗期の15歳の弟レイザーには、『テラビシアにかかる橋』(2007年)の主役ジェスや、『ダレン・シャン』(2009年)の親友スティーブなど子役時代から経験豊富なジョシュ・ハッチャーソンが演じています。 ジュールスの浮気がバレて、大ピンチの一家.気まずいままに時は流れ、やがてジョニが大学へ進学する日がやってきます。彼らの行く末はどうなっていくのか…。 さらりと軽い調子で描かれているようでいて、良く練られた脚本で、それぞれに欠点を抱えながらも、愛すべき彼ら、家族の関係を丁寧に描き出した2011年の洋画ベスト10に入れたい1本です。 実はこの作品、アメリカでTVドラマ化が決まっており、監督のリサ・チョロデンコがパイロット版の製作をすることが決定しているそうです。5人の主要キャストはまだ未定ですが、彼らの今後が観られるのは嬉しいですね。 次回は、10/19『赤ずきん』、11/2『クロエ』、そして11/25に『ジュリエットからの手紙』と発売作品が目白押しの若手売れっ子女優、アマンダ・セイフライド出演作をご紹介します。
2011年11月22日
『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)や『ジャイアント・ピーチ』(1996年)など映画化作品も多いロアルド・ダール原作の「すばらしき父さん狐(父さんギツネバンザイ)」がストップモーション・アニメになりました。今回は、11/2にDVD&ブルーレイが発売された、アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート作『ファンタスティックMr.FOX』(2009年)をご紹介します。 農家からニワトリやアヒルを盗む泥棒家業から足を洗い、貧乏な穴倉生活を送っていた野性ギツネのMr.FOX(ジョージ・クルーニー)は、今の生活に嫌気がさし、Mrs.FOX(メリル・ストリープ)やアナグマの弁護士バジャー(ビル・マーレイ)の反対も聞かずに丘の上の見晴らしのいい大木の家を購入し移り住みます。でも、そこは丘の反対側に、ボギス、バンス、ビーン(マイケル・ガンボン)という悪名高き農場主が住んでいる危険地帯。野性の本能に目覚めたMr.FOXは泥棒家業に戻ってしまい、農場主たちの飼育場に盗みに入るようになります。怒った農場主たちは、結束してキツネ退治に乗りだしました。果たして、Mr.FOXたちは逃げ切れるのでしょうか…。 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001年)、『ダージリン急行』(2007年)でウェス・アンダーソン監督が、自身の幼い頃からの愛読書である「すばらしき父さん狐」を思い入れたっぷりにアニメ映画化。 何しろ、これまで配役、美術、ファッション、音楽、シュールな笑いなどなど、全てに徹底的にこだわった作品を発表してきた、お洒落センスも抜群のウェス・アンダーソン監督の事、今回も、CGアニメや3D映画が全盛の時代に、あえてパペットを使ったストップモーション・アニメに挑みました。構想10年、撮影期間2年(総カット数125,280)をかけて完成させた入魂作になっています。 初のアニメ映画作品ということで、声優も実写映画さながらの顔ぶれ(声ぶれ?)を揃えました。 主人公のMr.FOXにはジョージ・クルーニー。詐欺師っぽく、いたずら好きでリーダー格のキツネは、まさにジョージ・クルーニーにぴったり。クルーニーが声を担当しているだけで、Mr.FOXがセクシーで魅力的なキツネに見えてくるから不思議です。妻のMrs.FOXには大女優のメリル・ストリープ。クルーニーの妻役が出来るならと出演を快諾したとか。 そして、ウェス映画に欠かせないヘタレ君役の息子アッシュには『天才マックスの世界』(1998年)で主人公マックスを、『ダージリン急行』で三男ジャックを演じたジェイソン・シュワルツマン。Mr.FOXの友人でアナグマのバジャーには『ライフ・アクアティック』(2005年)などウェス映画常連のビル・マーレイ。アッシュの従兄弟でスポーツ万能のイケメン、クリストファソンには監督の弟エリック・アンダーソン。農場主ビーンには『ハリポタ』シリーズの二代目ダンブルドア校長を演じた大御所俳優のマイケル・ガンボン。 その他、曲者のラットにウィレム・デフォー、体育コーチのスキップにオーウェン・ウィルソン、カイリにウォーリー・ウォロダースキー、ピーティーには本作にオリジナル楽曲を提供している元パルプのジャーヴィス・コッカー、さらに『ダージリン急行』の次男ピーターを演じたエイドリアン・ブロディもカメオ出演。 これだけの大物役者たちを集めたウェスは、なんと(!)俳優たちに野外で演技をさせて、その音声を録音するという異例の撮影方法をとりました。俳優たちは音声を録音するためだけに、実際に野原を駆け回ったり、穴を掘ったり、ニワトリを追いかけまわしたりしたのだそうです。スタジオ録音には無い臨場感溢れる音声を収録することが目的だったそうですが、なんとも贅沢な話ですね。豪華俳優陣が野原を駆け回っている姿を想像するだけでも楽しくなってしまいます…。 そもそも、監督が本作の脚本を執筆するにあたり、世界観の源となったのは、イギリス、オックスフォード近郊の町にあるダール邸(通称:ジプシーハウス)でした。監督はロアルド・ダールの未亡人、フェリシティ・ダールを訪ねて夫人の許可を得ることに成功。共同脚本のノア・バームバックと共にジプシーハウスに2週間滞在し、そこで脚本を完成させました。実際にロアルド・ダールが暮らした町や自然やジプシーハウスなどからインスピレーションを得て、脚本を執筆することが出来たのです。そのため、FOX一家が住む大木も、ジプシーハウスの近くにある実在の木をデザインしたもので、書斎の内装や小物も、全てダール家そっくりに再現されています。また、農場主のビーンは、ダール氏そっくりのキャラクターデザインとなっています。 こうして出来あがった脚本は、ブラックでウィットに富んで、登場人物たちのキャラクターが生き生きと描き込まれた、魅力的なものに仕上がったのです。監督が、小さい頃から繰り返し読み、穴掘りをして遊ぶほど夢中になったと言うだけあって、ロアルド・ダールとウェス・アンダーソン監督の世界観が見事にはまった作品となっています。 FOX家の暮らしぶり、息子アッシュの成長物語、FOX家と彼らを取り巻く愉快な仲間たちとの交流、人間とキツネとの騙し合いなど、ユーモラスかつ温かな物語が展開し、最後にはホロリとさせられます。 さらに、本作最大の魅力は、監督が凝りに凝って作り上げたストップモーション・アニメの完成度の高い世界観です。 動物たちは、監督の意向で擬人化され、人間同様に二足歩行でスーツやワンピースをお洒落に着こなしています。キャラクターやセットの色味は、緑や青を使わず、オレンジ、黄色、ベージュといった秋色で統一。パペットやセット、小さな小道具に至るまで、すべてが手作りで、Mr.FOXのスーツは、監督行きつけの仕立屋の布地を使用し、パターンも監督と同じに縫製するという気合の入れよう。 職人たちの匠の技が結集した精巧でぬくもりのあるパペットやセットの数々に、子供も大人も心惹かれずにはいられません。 ロアルド・ダールの未亡人、フェリシティ・ダール公認のストップモーション・アニメ『ファンタスティックMr.FOX』。今年の必見作です。 11/2発売のBlu-rayとDVDは、どちらも53分の映像特典を収録。映像特典を見ると、1秒間に24コマづつ撮るという、膨大な時間と根気が必要なストップモーション・アニメ製作の裏側を知る事が出来ます。こちらもぜひ、ご覧ください。 次回は、11/25にDVDが発売される、アネット・ベニング&ジュリアン・ムーアがゲイ・カップルを演じるファミリー・コメディ『キッズ・オールライト』(2010年)をご紹介します。
2011年11月19日
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