森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.01.02
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岡田尊司氏は「境界性パーソナリティ障害」(幻冬舎新書)という著書の中で次のように述べておられる。

この障害の人が回復に向かい始めたとき、共通して見られる兆候がいくつかある。
その一つは、刺激的なことよりも日々の日常的なことを大切にし、瞬間的な楽しみよりも持続的な喜びを与えてもらえるものに、多くの関心とエネルギーを注ぐようになることである。
大きな夢や他人があっと驚くようなことを成し遂げなければ、自分はつまらない存在だと思いこんでいた人が、地味なことに対して、地道な努力を続けるようになる。
成果の華々しさよりも、その努力自体を楽しむようになる。

これは神経症を克服した人も同様ですね。
他人の目を引き付けて賞賛を浴びることばかり考えていた人が生活スタイルを一変させています。
その辺にいくらでも転がっている、小さなしあわせのかけらを大事にするようになります。
毎日小さな感動を数多く味わうことができるようになります。
平凡な生活の中で、満ち足りた穏やかな気持ちで生きていくことができるようになります。
自分が生きていること、周りの人や自然と調和していることに心から感謝できるようになります。
以前のその人の生き方が、まったく新しい生き方にとって代わっているのです。
森田理論学習ではこのような人生観の確立を目指しているのです。

岡田尊司氏はもう一つの特徴をあげておられます。
その人を囚えていた激しい怒りが薄らぎ、心が穏やかになるとともに、これまで生きてこられたことへの感謝の思いが兆してくることである。
生まれてこなければよかったという思いに囚われ、自分を産み育て親に怒りと憎しみをぶっつけていた人も、自分に生を与えてくれたこと、そして、この世に今こうして存在することの奇跡に深い畏敬の念を覚え、素直に感謝の気持ちを口にするようになる。

これはどうでしょうか。感謝即幸福の状態です。
これはハードルが高いと思われるでしょうか。私は長らく父親を憎んでいました。
神経質性格は父親のせいだ。父親が自分を否定するばかりで、片寄ったしつけや教育をしたおかげで対人恐怖症になった。どうしてくれるんだ。責任をとってくれと気持ちだったのです。

森田とかかわっていま感じていることは、父親も父親の親父から、非難や否定されて育ってきたのだと思います。対人恐怖症を抱えて、アルコールに逃げて、最後には肝硬変で52歳という若さで亡くなってしまいました。森田に出合うこともなく、きっと後悔の残る一生だったと思います。
一人で苦しみなすすべもなく亡くなったのです。

その父親は私に神経症という人生の課題を残してくれました。
どうだ、この神経症から逃げないでなんとか乗り越えて見せてくれと言う気持ちだったのではないかと思います。
私は苦しみのたうち回る中で、幸運にも、森田理論と生活の発見会活動に出合うことができました。
ひとすじのかすかな光を見つけることができたのです。幸運以外の何物でもありません。
神経症にならないで順風満帆な人生もそれはそれでよいかもしれません。
でも神経症になったからこそ、森田理論に出合い、人生をより深く見直してみる機会を与えられていたということです。人生はどんなことでもいい。やるべきことや問題や課題を持つことが大切だと思います。
だれでも持っているのですが、それに気づいて、何とかしようと思って取り組むことが「努力即幸福」なのではないでしょうか。

親父にはその課題を与えてくれた存在として、感謝するこそすれ、憎む相手ではないと思います。
今も生きていたならば、神経質性格同士として、生き方をつまみにして酒を酌み交わしてみたいと思っています。しかし「親孝行 したいときには 親は無し」昔の人はうまい事を云ったものです。





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Last updated  2020.01.02 18:42:54
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