森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.01.15
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カテゴリ: 行動のポイント
今日は集中するということについて投稿してみたい。

仕事などでミスをすると、もっと集中して仕事に取り組みなさいと叱責されることがある。
そういわれればあの時彼女のことを考えていた。子供のことを考えていた。
遊びや趣味のことを考えていた。
仕事以外のことを考えていた自分を自己否定することがある。

一般的には、集中しないとよい仕事はできない。勉強ははかどらないという先入観を持っている。
たしかにプロ野球の選手を見ていると、打つ瞬間、投げる瞬間は、そのことに集中しているから成果を上げることができるともいえる。

しかしいつまでも目の前の一点に集中することが可能なのだろうか。
一点に集中するということは、ことさらひとつのことにとらわれて、感情の自然の流れをあえて阻止しているとも言える。
普通目の前の状況は、時間の経過とともに刻々と変化していく。
その変化の波に乗って、次から次へと気になることに瞬間的にとらわれていく。
生きるということは、その時々の状況に瞬間的にとらわれ続けることである。
時間が経てば、前にとらわれていたことが、たとえ解決できなくても、そのままにしておくしかない。
神経症で苦しんでいる人は、そのままにしておくということを苦手としている。
今すぐにすっきりと解決したいと思って、かかわっているうちに、変化の波に乗り損ねてしまう。
山あいの谷を勢いよく流れる小川は、雑菌などとは無縁なきれいな水である。飲み水として使える。
それをお城のお堀に引き入れて、流れを引き留めてしまうと、途端に藻が生え、雑菌が繁殖し、汚い水に変わってしまう。とても飲めるような代物ではない。

そういうときは忘れないようにメモしておくだけにする。
それに取り組むにしてもすぐには手をつけない。
後ろ髪を引かれる思いが湧いてきても、次にとらわれたことに対応していく。
解決できることだけを処理して、また次のとらわれていることに対応していく。
とらわれの状況にどんどん乗っかっていくという生活態度が精神の健康を保つ。

過度に集中していると、周りのことが見えなくなってしまう。
自然界の動物は一点に集中している状態だと簡単に命を落とす。
たとえば、アフリカの草原で、川に行って一心に水を飲んでいるとすぐに肉食獣の餌食になる。
仲間と協力しながら、四方八方に神経を張り巡らせて、一点集中を避けることが重要なのだ。

「一点集中」の対語は、「拡散集中」である。
複数のものに同時にとらわれている状態である。
森田理論ではこの方法をお勧めしている。
森田先生が大学で講義しているとき、講義の内容には当然注意が向いている。
しかし、その時でも机の上に置いてある資料や文房具が気になる。
コップがひっくり返らないか気になる。
退屈そうに聞いている学生が気になる。
遅れて入ってきた学生のことも気になる。
時間も気になる。校舎の外から聞こえてくる騒音も気になる。
喘息の咳のことも気になる。
いろんなことにとらわれながら、また講義内容に注意が戻っていく。

「拡散集中」は、湧き起こってくる感情のままに、変化の波に上手に乗っている状態である。
やってくるものはそのまま素直に受け入れ、去っていくものはあえて深追いはしないのである。





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Last updated  2020.01.15 06:35:20
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
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